【宅建】媒介契約書面(第34条の2書面)とは|約款・記載事項を解説

投稿日 : 2020年05月30日/更新日 : 2023年04月10日

媒介契約を締結するときには、宅建業者とお客様との間で媒介契約書面を取り交わします。

お客様との間でトラブルが生じないように、宅建業に従事する者は媒介契約書面に何が記載され、何の目的で書面を取り交わすのかをしっかり理解しておかなければいけません。

今回は、媒介契約書面について、交付方法や記載事項など詳しく解説していきます。

 

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「媒介契約書面(34条書面)」の解説

媒介契約書面とは、不動産の売買または交換の媒介契約における一定の事項を記載し、依頼主と宅建業者が互いに契約内容を確認するための書類です。

媒介契約書面の作成と交付は宅建業法第342で定められているため「第34条2書面」と呼ばれています。

賃貸の媒介契約に際しては、媒介契約書面を作成・交付する義務はありません。

提出方法

宅建業者は媒介の依頼について依頼主と合意したら、遅滞なく媒介契約書面を作成し、記名押印の上依頼主に提出する義務があります。

媒介契約書面の作成では、宅建士が関与する必要はありません。

標準媒介契約約款とは

媒介契約書面には、国土交通大臣が定めたひな型があります。このひな型を標準媒介契約約款と言います。

参考:国土交通省|宅地建物取引業法施行規則の規定による標準媒介契約約款

媒介契約書面を作成する際には、必ずしも標準媒介契約約款を用いる義務はありませんが、国土交通省のガイドライン「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」では約款を使用するよう指導しているため、特殊なケースを除き、ほとんどの場合は標準媒介契約約款に基づいた作成を行います。

画像引用:東急リバブル|専属専任媒介契約書サンプル

媒介契約書面(34条書面)の記載事項

ここからは、媒介契約書面の記載事項を説明します。記載すべき項目は8項目です。

物件を特定するために必要な表示

物件の所在地や土地・建物面積・地目・構造など、媒介を行う宅地建物の概要を記載します。

売買すべき価額又はその評価額

物件の販売価格、あるいは物件の評価額を記載します。

宅建業者が評価額について意見を述べる際には、その根拠を明示する必要があります。ただし、評価額に関する宅建業者の意見は媒介契約書面ではなく口頭でも許可されます。

媒介契約の種類

媒介契約が一般媒介であるか、専任媒介であるか、専属専任媒介であるかを区別します。

一般媒介契約の場合には、他の宅建業者に依頼したときの報告が明示型か非明示型かについても記載します。

建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項

対象物件が既設建物の場合、取引後のトラブル回避を目的として売買契約前に建物状況調査が行われることがあります。

媒介契約書面では、建物状況調査の制度があること、売主もしくは購入希望者の希望に応じて既存住宅状況調査技術者の斡旋を行う旨を記載します。

有効期間及び解除に関する事項

媒介契約の有効期間を記載します。専任媒介契約および専属専任媒介契約の場合には、契約期間は3ヶ月以内と定められています。

有効期間満了の際には、依頼主が更新の意思表示をしない限りは自動的に解除となる旨も記載します。

依頼主が明示型の一般媒介契約で他の宅建業者名を教えなかったり、専任媒介・専属専任媒介契約で他の宅建業者と契約を成立させた場合などの契約違反が行われた場合の措置についても記載し、違約金等の規定がある場合にはその旨も記載します。

指定流通機構への登録に関する事項

指定流通機構(レインズ)への登録の有無を記載します。一般媒介契約で登録しない場合には、しない旨を記載します。

報酬に関する事項

宅建業者が受け取る報酬について記載します。

媒介契約の時点では物件の売却額は決定していないため具体的な報酬額は記載せず、報酬の割合や支払い方法、消費税の取り扱いなどを記載します。

その他国土交通省令・内閣府令で定める事項

媒介契約書面が国土交通大臣が定めた標準媒介契約約款に基づいているか否かを記載します。約款に基づかない書面である場合には、その旨を記載します。

「媒介契約書面(34条書面)」に関連する法律

この項目に関連する法律は以下のとおりです。

宅地建物取引業法(令和231日時点)

34条の2(媒介契約)

宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約(以下この条において「媒介契約」という。)を締結したときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければならない。

一 当該宅地の所在、地番その他当該宅地を特定するために必要な表示又は当該建物の所在、種類、構造その他当該建物を特定するために必要な表示

二 当該宅地又は建物を売買すべき価額又はその評価額

三 当該宅地又は建物について、依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することの許否及びこれを許す場合の他の宅地建物取引業者を明示する義務の存否に関する事項

四 当該建物が既存の建物であるときは、依頼者に対する建物状況調査(建物の構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として国土交通省令で定めるもの(第三十七条第一項第二号の二において「建物の構造耐力上主要な部分等」という。)の状況の調査であつて、経年変化その他の建物に生じる事象に関する知識及び能力を有する者として国土交通省令で定める者が実施するものをいう。第三十五条第一項第六号の二イにおいて同じ。)を実施する者のあつせんに関する事項

五 媒介契約の有効期間及び解除に関する事項

六 当該宅地又は建物の第五項に規定する指定流通機構への登録に関する事項

七 報酬に関する事項八 その他国土交通省令・内閣府令で定める事項

実際に過去問を解いてみよう

問題:

宅地建物取引業者Aは、Bから、Bが所有し居住している甲住宅の売却についてAとBの間で専任媒介契約を締結した場合、Aは、法第 34 条の2第1項の規定に基づき交付すべき書面に、BがA以外の宅地建物取引業者の媒介又は代理によって売買又は交換の契約を成立させたときの措置について記載しなければならない。(平成30年度本試験 問33より抜粋)

答え:〇(記載する)

解説

専任媒介契約を締結する場合には他の宅建業者に媒介・代理を重ねて依頼するのは媒介契約違反となりますので、その場合の措置について媒介契約書面に記載する必要があります。

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「媒介契約書面」の試験科目

宅建業法

「媒介契約書面」が含まれる試験分野

媒介・代理契約

「媒介契約書面」の重要度

★ ★ ★ ★ ★ 契約形態により記載事項が変わります

「媒介契約書面」過去10年の出題率

80%

2023年宅建試験のヤマ張り予想

媒介契約書面は、一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約と、契約形態によって記載すべき内容が異なります。

そのため、媒介契約書面の記載事項は、媒介の契約形態からきちんと理解してからでないと系統立てて学ぶことができません。

媒介契約は、過去の宅建試験でも出題率100%の頻出項目ですので、しっかり覚えておきましょう。

宅建士を目指している方は「目指せ!宅建士への道」を参考にしてみてください。

「媒介契約書面」ポイントのまとめ

この項目で押さえておくべきポイントは以下のとおりです。

  1. 媒介契約書面の作成・交付は宅建業法第34条2で定められている(第34条2書面)
  2. 国土交通省では標準媒介契約約款を用いるよう指導している
  3. 媒介契約書面に記載すべき事項は8項目

最後に

今回は、媒介契約書面について解説しました。

不動産の売却を希望されるお客様が契約書の細かい記述を見ても、内容を理解できないことが多々あります。

宅建業者は不動産のプロとして、契約に不慣れなお客様にもわかりやすく説明する必要があります。

宅建試験対策だけでなく実務の上でも役立てられるよう、媒介契約書面の内容をしっかり理解しましょう。

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。