広告等に関する宅建業法の決まりを確認|取引態様の明示と誇大広告の禁止

投稿日 : 2020年05月31日/更新日 : 2022年11月25日

分譲マンションや新築・中古戸建の売り出し広告など、宅建業者が営業活動をする上で広告を使った宣伝は必須です。

広告に興味を持ち来店されたお客様が物件の実物を見て、広告とあまりにも違うようでは、宅建業者の信用が失われてしまいます。

そのため宅建業法では、広告等に関しても厳しい規制を設けています。

今回は広告等に関する規制の中から、取引態様の明示についてと、誇大広告等の禁止について解説します。

 

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「取引態様の明示」「誇大広告等の禁止」の試験科目

宅建業法

「取引態様の明示」「誇大広告等の禁止」が含まれる試験分野

広告等に関する規制

「取引態様の明示」「誇大広告等の禁止」の重要度

★ ★ ★ ★ ★ 一般的な社会常識を踏まえて理解しましょう

「取引態様の明示」「誇大広告等の禁止」過去10年の出題率

80%

 

2020年宅建試験のヤマ張り予想

広告等に関する規制の全体を通して見ると、過去10年の宅建試験でも100%出題されている超頻出項目です。

今回解説する取引態様の明示と誇大広告の禁止についても高い出題率ですので、設問には確実に回答できるように細かい規制まで覚えておきましょう。

 

「取引態様の明示」の解説

 

取引態様とは各取引におけるそれぞれの立場のことです。

宅建業者が広告をするときは、必ず自分の取引態様を明確にして、買主がどんな取引態様の相手と取引するのか、それによって手数料などの費用がどれだけかかることになるのかを明らかにしておかなければいけません。

 

宅建業者の取引態様の種類

宅建業者の場合、取引態様は以下の3種類に分かれます。

媒介(仲介) 宅建業者が売主と買主の間に立って契約成立のための仲立ちを行う
代理 宅建業者が売主もしくは買主の代理人として契約等の手続きを行う
売主 宅建業者自らが保有する物件の販売を行う

 

複数回に分けて広告するとき

区画の宅地や分譲マンションなどを複数回に分けて販売し、広告をするときには、広告のつど取引態様を明示する必要があります。

初回の広告時に取引態様を明示したとしても、次回以降の広告に取引態様を省略してはいけません。

 

注文を受けたとき

広告によって取引態様を明示していても、買主から注文を受けた際には遅滞なく、改めて取引態様を明示する必要があります。

注文の際に行う取引態様の明示は、文書等ではなく口頭による明示でもかまわないとされています。

 

「誇大広告等の禁止」の解説

 

広告でウソをつくのは論外ですが、ウソとまではいかなくても、大げさな表現やまぎらわしい表現は買主を誤認させる恐れがありますので、宅建業法ではそのような広告を誇大広告として厳しく禁止しています。

 

誇大広告にあたる表示

以下のような広告表示を行った場合、誇大広告にあたります。

  1. 著しく事実に反する表示
  2. 実際のものよりも著しく優良もしくは有利だと誤認させる表示

 

誇大広告として禁止される内容

具体的に禁止されている誇大広告は以下の内容です。

物件に関する表示
  • 所在
  • 規模
  • 形質
環境に関する表示 (現在または将来の)

  • 利用の制限
  • 環境
  • 交通その他の利便性
金銭に関する表示
  • 代金の額および支払方法
  • 代金および交換差金に関する金銭の貸借のあっせん

 

おとり広告の禁止

 

実際に広告をする販売物件には誇大広告をしていなくても、その物件を買わせるためにおとり広告を使って顧客を集める行為も、誇大広告同様に禁止されています。

おとり広告として挙げられるのは、以下の3つのタイプの広告です。

  1. 存在しない物件の広告
  2. 存在はしているが取引対象とはなり得ない物件の広告
  3. 存在はしているが所有者に取引の意思がない物件の広告

 

誇大広告等を行った場合の罰則規定

誇大広告やおとり広告を行った宅建業者は業務停止処分の対象となり、場合によっては6ヶ月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金刑に処せられます。

上記の罰則は、誇大広告もしくはおとり広告によって損害を受けた買主が存在するか否かは関係なく、誇大広告もしくはおとり広告を行った行為自体が違反対象となります。

 

「取引態様の明示」「誇大広告等の禁止」に関連する法律

この項目に関連する法律は以下のとおりです。

宅建業法(令和241日施行)

34条(取引態様の明示)

宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買、交換又は貸借に関する広告をするときは、自己が契約の当事者となつて当該売買若しくは交換を成立させるか、代理人として当該売買、交換若しくは貸借を成立させるか、又は媒介して当該売買、交換若しくは貸借を成立させるかの別(次項において「取引態様の別」という。)を明示しなければならない。

2 宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買、交換又は貸借に関する注文を受けたときは、遅滞なく、その注文をした者に対し、取引態様の別を明らかにしなければならない。

 

32条(誇大広告等の禁止)

宅地建物取引業者は、その業務に関して広告をするときは、当該広告に係る宅地又は建物の所在、規模、形質若しくは現在若しくは将来の利用の制限、環境若しくは交通その他の利便又は代金、借賃等の対価の額若しくはその支払方法若しくは代金若しくは交換差金に関する金銭の貸借のあつせんについて、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない。

 

実際に過去問を解いてみよう

問題:

一団の宅地の売買について、数回に分けて広告する際に、最初に行った広告以外には取引態様の別を明示しなくても良い。(令和元年度本試験 問30より改題)

答え:×

 

解説

取引態様の明示は広告をする都度に行う義務があります。一団の宅地を複数に分けて販売するときでも広告ごとに明示しなければいけないので、答えは×です。

 

「取引態様の明示」「誇大広告等の禁止」ポイントのまとめ

この項目で押さえておくべきポイントは以下のとおりです。

  1. 広告の際には取引態様を明示する義務がある
  2. 取引態様は広告の都度明示し、顧客から注文を受けた際にも遅滞なく明示しなければならない
  3. 誇大広告として禁止される内容は物件・環境・金銭で区別される
  4. 「おとり広告」も誇大広告と同様に禁止される

 

最後に

今回は、広告等に関する規制の中から「取引態様の明示」と「誇大広告等の禁止」について解説しました。

不動産売買は高額な取引になりますから、物件を購入されるお客様の権利関係を守り、お客様にかかる費用を明確にするためにも、取引態様をきちんと明示しておく必要があります。

また、広告を見て接触してくるお客様を落胆させないためには、広告は物件の内容を正しくご紹介できるものでなければいけません。

ありのままの物件の魅力を正確にお客様に伝えられるように、正しい内容の広告を常に表示しましょう。

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。