宅建業者の設置義務|従業者証明書や成年者である専任の宅地建物取引士の設置も紹介

投稿日 : 2020年05月17日/更新日 : 2022年11月25日

この記事を読む人のほとんどは、宅建士の資格を得るために試験勉強の真っ最中でしょう。

では、なぜ宅建士は資格が必要なのでしょうか。

その理由の一つに、宅建業者の事務所では宅地建物取引士の設置が義務付けられているというものがあります。

今回は宅建業者の事務所での宅地建物取引士の設置義務と、宅建士であるなしに関わらず、全ての社員に課せられる証明書の携帯義務について解説します。

 

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「宅地建物取引士の設置義務」「従業者証明書制度」の試験科目

宅建業法

「宅地建物取引士の設置義務」「従業者証明書制度」が含まれる試験分野

事務所

「宅地建物取引士の設置義務」「従業者証明書制度」の重要度

 ★★★★★  宅建試験を受けるそもそもの目的と言えます

「宅地建物取引士の設置義務」「従業者証明書制度」過去10年の出題率

60%

 

2022年宅建試験のヤマ張り予想

本記事の内容は宅建試験を受けるそもそもの目的とも言えますので、試験に出る・出ないに関わらず当然知っておくべき内容です。

試験対策として特に覚えておきたい部分は、設置人数の割合や欠員時の補充期限などの細かい数字です。

従業者証明書制度に関しては試験の出題率は高くないものの、こちらも宅建業界で働く人にとって必要になるものです。宅建業界の基礎知識として覚えておきましょう。

 

「宅地建物取引士の設置義務」の解説

 

宅建業を営む事務所では、宅建業者の代表者および常勤役員を除く全ての従事者5名に1名以上の割合で、成年者である専任の宅地建物取引士の設置義務があります。

この場合の従事者とは、業務として不動産の媒介等を行う担当者だけでなく、事務職や秘書、受付などの全ての職員です。

ただし、宅建業務と関係が乏しい業務を行うために採用された臨時職員は除外します。

社員の退職や異動などにより、事務所内の宅地建物取引士の人数が規定の割合に満たなくなった際には、2週間以内に欠員を補充しなければいけません。

 

「成年者である」とは

成年者とは、原則として成人した満20歳以上の人のことです。

ただし、結婚している人は、満20歳以下であっても成年者として扱われます。これを婚姻による成年擬制と言います。

 

「専任」とは

事務所に設置されている宅地建物取引士は、資格を持っているだけでは不十分です。

宅地建物取引士の資格を持ち、実際に当該事務所内で専ら宅建業務に従事していて初めて、専任の宅地建物取引士として扱われます。

 

宅建業者(法人役員等)が宅地建物取引士である場合の特例

上記の「専任」では専ら宅建業務に従事していることが条件となっていましたが、宅建業者(法人においてはその役員)が宅地建物取引士である場合には、その者が「成年者である専任の宅地建物取引士」と見なされる特例があります。

また、宅建業者(法人においてはその役員)は未成年者であっても同様に「成年者である専任の宅地建物取引士」と見なされます。

 

「従業者証明書制度」の解説

宅建業者で働き宅建業務に携わる従業者は、代表者・使用人の区別なく全ての人に従業者証明書の携帯義務があります。これを従業者証明書制度と言います。

 

画像引用:公益社団法人全日本不動産協会 東京都本部|不動産業者を訪れよう

また従業者が宅地建物取引士である場合には、従業者証明書と宅地建物取引士証の2つを携帯し、重要事項説明の際や取引関係者から請求があった際に提示する義務があります。

 

従業者証明書の記載事項

従業者証明書に記載する項目は以下のとおりです。

  1. 従業者の氏名
  2. 従業者の生年月日
  3. 従業者証明書番号
  4. 宅建業者の商号又は名称
  5. 宅建業者の免許証番号
  6. 主たる事務所の所在地
  7. 宅建業者の代表者の氏名
  8. 業務に従事する事務所の名称及び所在地
  9. 従業者証明書の有効期間

パート・アルバイトに対する携帯義務

従業者証明書の携帯義務は、常勤・非常勤の区別なく全員に課せられます。

法人の非常勤役員はもちろん、パート・アルバイト等の非正規雇用者でも同様に証明書の携帯が必要です。

 

「宅地建物取引士の設置義務」「従業者証明書制度」に関連する法律

この項目に関連する法律は以下のとおりです。

宅地建物取引業法(令和231日時点)

31条の3(宅地建物取引士の設置)

宅地建物取引業者は、その事務所その他国土交通省令で定める場所(以下この条及び第五十条第一項において「事務所等」という。)ごとに、事務所等の規模、業務内容等を考慮して国土交通省令で定める数の成年者である専任の宅地建物取引士を置かなければならない。
2 前項の場合において、宅地建物取引業者(法人である場合においては、その役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。))が宅地建物取引士であるときは、その者が自ら主として業務に従事する事務所等については、その者は、その事務所等に置かれる成年者である専任の宅地建物取引士とみなす。
3 宅地建物取引業者は、第一項の規定に抵触する事務所等を開設してはならず、既存の事務所等が同項の規定に抵触するに至つたときは、二週間以内に、同項の規定に適合させるため必要な措置を執らなければならない。

 

48条(証明書の携帯等)

宅地建物取引業者は、国土交通省令の定めるところにより、従業者に、その従業者であることを証する証明書を携帯させなければ、その者をその業務に従事させてはならない。
2 従業者は、取引の関係者の請求があつたときは、前項の証明書を提示しなければならない。

 

 

実際に過去問を解いてみよう

問題:

宅地建物取引業者A社は、その主たる事務所に従事する唯一の専任の宅地建物取引士が退職したときは、30 日以内に、新たな専任の宅地建物取引士を設置しなければならない。(平成24年度本試験 問36より抜粋)

答え:×

 

解説

主たる事務所に従事する唯一の専任の宅地建物取引士が退職したときには「2週間以内」に新たな専任の宅地建物取引士を設置しなければいけません。「30 日以内」ではないため答えは×です。

 

「宅地建物取引士の設置義務」「従業者証明書制度」ポイントのまとめ

この項目で押さえておくべきポイントは以下のとおりです。

  1. 事務所の人数5名に1名以上の割合で宅地建物取引士の設置義務がある
  2. 宅地建物取引士の欠員が出た場合には2週間以内に補充しなければならない
  3. 宅建業者で働く従業者には従業者証明書の携帯義務がある

 

最後に

今回は成年者である専任の宅地建物取引士の設置義務と従業者証明書の携帯義務について解説しました。

皆さんが宅地建物取引士の資格を取得する理由は、本記事で解説した内容が元となっています。

宅地建物取引士として不動産業界で大きく羽ばたくために、本記事や他の記事も参考にしながらしっかり試験対策をしましょう。

次の記事を読む:宅建業の開業に必須の免許制度を解説|免許権者と免許の基準とは

前の記事を読む:【宅建業法】事務所とは何か|定義や事務所に必要な標識も徹底解説

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。
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