民法の賃貸借契約と賃貸人・賃借人の権利義務|宅建の試験範囲を整理
今回は、民法における賃貸借契約の概要と、各当事者の権利義務について解説します。
宅建業を営む上では「事務所」の設置が必要になります。
では、その事務所とは何でしょうか。いわゆるオフィスのこととして考えれば良いのでしょうか。
宅建業法では「事務所」を定義し、事務所として営業するために必要なものを義務付けています。
今回は宅建業法における事務所とは何かについて解説します。
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この記事の監修者: 平山 和歌奈 宅建スペシャリスト不動産会社や金融機関にて、ローンの審査業務、金消・実行業務などに従事。その過程で、キャリアアップのため自主的に宅建の取得を決意。試験の6ヶ月前には出勤前と退勤後に毎日カフェで勉強、3ヶ月前からはさらに休日も朝から閉館まで図書館にこもって勉強。当日は37℃の熱が出てしまったが、見事1発で合格した。現在はiYell株式会社の社長室に所属。 |
宅建業法で定義している事務所とは、宅建業者が宅建業務を行うために営業している事業所のことです。
事務所は宅建業者により以下の3つに分類されます。
複数の拠点で営業している企業の場合、本店と支店が存在します。企業で行う業務が多岐にわたる場合、すべての事業所で宅建業を営んでいるとは限りません。
本店・支店における宅建業務の有無と事務所とみなされるかどうかの関係を、宅建業法では以下のように定義しています。
【本店】
宅建業を営んでいる | 事務所として扱われる |
宅建業を営んでいない | 事務所として扱われる(支店に対しての司令塔の役目を果たすため) |
【支店】
宅建業を営んでいる | 事務所として扱われる |
宅建業を営んでいない | 事務所として扱われない |
企業の事業所でなくても「継続的に業務を行うことができる施設を有する場所」である案内所等は事務所と同様に扱われます。具体的には現地案内所や分譲マンションのモデルルームなどです。
なお、現地オープンハウスなどに設けられたテント張り案内所は継続的な業務を行わないために事務所とはみなされません。
上記で「事務所」として定義された事業所には、以下の掲示および備付けの義務が課せられます。
それぞれの規定を確認しましょう。
標識は正式には「宅地建物取引業者票」と言います。
縦30㎝以上×横35㎝以上の耐久性がある材質で作成したものを、宅建業者自らが作成して掲示します。
画像引用:公益社団法人全日本不動産協会 東京都本部|不動産業者を訪れよう
宅地建物取引業者票には以下の項目を記載します。
宅地建物取引業者が、宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額をあらかじめ掲示します。
画像引用:有限会社キンタロウ|報酬額表(宅地建物取引業者)【最新版】
取引の都度記載する帳簿(取引台帳)を各事務所に備え付け、その事務所で行った取引履歴を5年間保存する義務があります。
また、宅建業者自らが売主となった新築住宅に係る取引については10年間保存します。
帳簿(取引台帳)に記載する事項は以下のとおりです。
各事務所で宅建業に従事する全ての従業員に関する名簿を作成し、最終の記載をした日から最低10年間は保存しなければいけません。
従業者名簿に記載する事項は以下のとおりです。
従業者名簿の閲覧請求を取引先等より受けたときには、閲覧に供する義務があります。
これは不動産取引の関係者の利益を保護するために、従業者のなりすまし防止や従業者がミスを犯した際の責任追及ができるようにするためです。
この項目に関連する法律は以下のとおりです。
宅地建物取引業法(令和2年3月1日時点)
宅地建物取引業を営もうとする者は、二以上の都道府県の区域内に事務所(本店、支店その他の政令で定めるものをいう。以下同じ。)を設置してその事業を営もうとする場合にあつては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては当該事務所の所在地を管轄する都道府県知事の免許を受けなければならない。
4 宅地建物取引業者は、その事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、第一項の規定により国土交通大臣が定めた報酬の額を掲示しなければならない。
3 宅地建物取引業者は、国土交通省令で定めるところにより、その事務所ごとに、従業者名簿を備え、従業者の氏名、第一項の証明書の番号その他国土交通省令で定める事項を記載しなければならない。
宅地建物取引業者は、国土交通省令の定めるところにより、その事務所ごとに、その業務に関する帳簿を備え、宅地建物取引業に関し取引のあつたつど、その年月日、その取引に係る宅地又は建物の所在及び面積その他国土交通省令で定める事項を記載しなければならない。
宅地建物取引業者は、事務所等及び事務所等以外の国土交通省令で定めるその業務を行う場所ごとに、公衆の見やすい場所に、国土交通省令で定める標識を掲げなければならない。 |
問題:
宅地建物取引業者Aは、マンションを分譲するに際して案内所を設置したが、売買契約の締結をせず、かつ、契約の申込みの受付も行わない案内所であったので、当該案内所に法第 50 条第1項に規定する標識を掲示しなかった。この場合Aは宅地建物取引業法の規定には違反していない。(平成28年度本試験 問29より改題)
答え:×(違反している)
一団の宅地建物の分譲をする際の現地案内所は、たとえ契約の締結や申込の受付を行わなくても標識を掲示しなければいけません。宅地建物取引業法の規定に違反しているため、答えは×です。
宅建業法
事務所
★★★★★ 試験だけでなく実務でも重要
70%
例年の宅建試験でも事務所に関する出題率は高く、特に事務所に必要な掲示物等については十分な知識が求められます。
また、本記事でご説明する内容は、今後宅建業界で働く上では当然必要になってくる基本的な知識です。試験対策としてだけでなく、宅建業界人としてしっかり理解しておきましょう。
宅建士を目指している方は「目指せ!宅建士への道」を参考にしてみてください。
この項目で押さえておくべきポイントは以下のとおりです。
今回は宅建業法が定義している「事務所」について解説しました。
事務所とは、宅建業界で働く皆さんが実際に仕事をする場所です。どんな規定があり、その目的は何かをよく理解しましょう。
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