事務所以外の場所における3つの義務|標識・宅建士の設置・案内所等の届出

投稿日 : 2020年05月20日/更新日 : 2023年04月10日

宅建業者が業務を行う場所である事務所には、標識の掲示を始めとするさまざまな規制があります。

しかし、宅建業者が営業する場所は、本店や支店などの事務所に限った話ではありません。案内所や出張所、モデルルームや不動産フェアなど各所あります。

事務所以外の場所には、事務所と同様の規制は存在するのでしょうか。

今回は事務所以外の場所における宅建業法の規制について解説します。

 

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「事務所以外の場所」とは

 

まず、宅建業法ではどのような場所を事務所以外の場所と定義しているか確認しましょう。

宅建業者が宅建業に従事する場所で、何らかの規制の対象となるのは以下の場所です。

継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で事務所以外の場所 特定のプロジェクトを行う現地出張所など
一団の宅地建物(10区画以上の宅地又は10戸以上の建物)の分譲を行う際の案内所 現地案内所など
他の宅建業者が行う一団の宅地建物(10区画以上の宅地又は10戸以上の建物)の分譲の代理媒介を行う際の案内所 他社物件の現地案内所など
業務に関する展示会その他の催しを実施する場所 不動産フェア・住み替え相談会など
一団の宅地建物(10区画以上の宅地又は10戸以上の建物)の分譲をする際の当該宅地建物の所在する場所 マンション等の所在する場所

 

事務所以外の場所に対する義務

上記で定義された事務所以外の場所には、以下3つの義務が課せられます。

  1. 標識の掲示義務
  2. 宅地建物取引士の設置義務
  3. 案内所等についての届出義務

それぞれの義務について詳しく見ていきましょう。

 

標識の掲示義務

案内所等の事務所以外の場所も事務所と同じように、来訪者に対して正規の宅建業者である旨を証明するための標識の掲示が必要です。

 

ただし、事務所と事務所以外の場所では、標識に掲示する項目が若干異なります。

標識に記載する事項 事務所における掲示 事務所以外の場所における掲示
免許証の番号 必要 必要
免許証の有効期間 必要 必要
会社の商号(または名称) 必要 必要
代表者氏名 必要 必要
主たる事務所の所在地および電話番号 必要 必要
専任の宅地建物取引士氏名 必要 宅地建物取引士を置かない場合は不要
当該場所における業務内容 不要 必要
売主の名称および免許証番号 不要 必要

 

クーリングオフ制度適用の表示

事務所以外の場所に専任の宅地建物取引士を置かない場合には、クーリングオフ制度の適用がある旨も標識に記載する必要があります。

関連記事:不動産にもクーリングオフ制度がある|適用条件・対処法を詳しく解説

 

宅地建物取引士の設置義務

事務所以外の場所で契約・予約・申し込みを受け付ける場合には、成年者である専任の宅地建物取引士を最低1名以上設置する義務があります。

成年者であると見なす基準や専任と見なす基準は、通常の事務所と同様です。

 

複数の宅建業者が同一場所で業務を行う場合

同一の物件を販売するために、売主の宅建業者と代理・媒介をする宅建業者が同一場所で業務にあたる際には、売主か媒介・代理いずれかの宅建業者が1名以上の宅地建物取引士を設置すれば足ります。

ただし、複数業者がそれぞれに異なる物件を販売する不動産フェアなどの場所では、それぞれの宅建業者が各1名以上ずつ宅地建物取引士を設置しなければいけません。

 

案内所等についての届出義務

 

前項の宅建士を置いた案内所等においては、同時に案内所等についての届出義務も課せられます。この義務を果たさなくてはならないのは、当該場所に関わる全ての宅建業者です。

案内所等を設置した宅建業者はもちろん、売主、あるいは代理・媒介業者など、どのような業務内容であってもそれぞれに届け出る必要があります。

 

届出期間

案内所等についての届出期限は、当該案内所等で業務を開始する10日前までです。

 

届出事項

届出の際に知らせる内容は以下の事項です。

  1. 案内所等の所在地
  2. 当該場所で行う業務内容
  3. 当該場所で業務を行う期間
  4. (専任の宅地建物取引士を置く場合)宅地建物取引士の氏名

届出先

案内所等についての届出先は以下の2箇所です。

  1. 免許権者(国土交通大臣もしくは主たる事務所の所在地の都道府県知事)
  2. 案内所等の所在地を管轄する都道府県知事

 

「事務所以外の場所の規制」に関連する法律

この項目に関連する法律は以下のとおりです。

宅地建物取引業法施行規則(令和231日時点)

15条の52(法第31条の31項の国土交通省令で定める場所)

法第三十一条の三第一項の国土交通省令で定める場所は、次に掲げるもので、宅地若しくは建物の売買若しくは交換の契約(予約を含む。以下この項において同じ。)若しくは宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介の契約を締結し、又はこれらの契約の申込みを受けるものとする。
※以下1項~4項省略

 

15条の53(法第31条の31項の国土交通省令で定める数)

法第三十一条の三第一項の国土交通省令で定める数は、事務所にあつては当該事務所において宅地建物取引業者の業務に従事する者の数に対する同項に規定する宅地建物取引士(同条第二項の規定によりその者とみなされる者を含む。)の数の割合が五分の一以上となる数、前条に規定する場所にあつては一以上とする。

 

19条(標識の掲示等)

法第五十条第一項の国土交通省令で定める業務を行う場所は、次に掲げるもので第十五条の五の二に規定する場所以外のものとする。
※以下1項~5項省略

 

実際に過去問を解いてみよう

問題:

宅地建物取引業者が、一団の宅地建物の分譲を案内所を設置して行う場合、その案内所が契約を締結し、又は契約の申込みを受ける場所であるときは、当該案内所には、専任の宅地建物取引士を置かなければならない。(令和元年度本試験 問40より抜粋)

答え:〇

 

解説

分譲マンション等の案内所が「契約を締結し、又は契約の申込みを受ける」場所であるときは、その案内所に専任の宅地建物取引士を設置する義務があります。

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「事務所以外の場所の規制」の試験科目

宅建業法

「事務所以外の場所の規制」が含まれる試験分野

事務所

「事務所以外の場所の規制」の重要度

 ★★★★★  事務所との違いを理解しましょう

「事務所以外の場所の規制」過去10年の出題率

70%

 

2023年宅建試験のヤマ張り予想

事務所に関する出題率は過去の宅建試験でも非常に高いので、それに絡めて事務所以外の場所についても出題される可能性があります。

「事務所」と「事務所以外の場所」には、どのような規制の違いがあるかを確認しておきましょう。

宅建士を目指している方は「目指せ!宅建士への道」を参考にしてみてください。

 

「事務所以外の場所の規制」ポイントのまとめ

この項目で押さえておくべきポイントは以下のとおりです。

  1. 宅建業者は事務所以外のさまざまな場所で営業活動をしている
  2. 事務所以外の場所では「標識の掲示」「宅地建物取引士の設置」「案内所等についての届出」が義務
  3. 契約や予約、申し込みを受け付ける場所は専任の宅建士を置く必要がある
  4. 宅建士を置かない場所にはクーリングオフ制度適用の表示義務がある
  5. 案内所等の届出を出す先は免許権者と案内所等を管轄する都道府県知事

 

最後に

 

今回は、宅建業者が業務を行う事務所以外の場所における規制について解説しました。

宅建業者は、業務の拠点となる事務所以外の場所で営業活動をする際にも、来訪されるお客様に対して「安心」と「誠実」をお約束する必要があります。

事務所以外の場所に課せられている3つの義務も、お客様や取引相手に対して「安心」と「誠実」を提示するためのものであることを理解しましょう。

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。