「保証」とは|保証契約の成立と保証人の要件・保証債務の性質を解説

投稿日 : 2020年04月22日/更新日 : 2023年04月10日

保証に関する知識は、宅建の業務において住宅ローンを取扱う際に必要なため、宅建士にとって必須です。

そのため、出題頻度は高くないとはいえ、数年に1度のペースでコンスタントに出題されます。15%の合格率を突破するには、ぜひマスターしておきたいテーマです。

そこで今回は、「保証・連帯債務」の分野の中から、より出題頻度の高い通常の保証について、その概要と法的性質を解説します。

 

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「保証とは/保証債務の性質」の解説

保証とは

「保証」とは、主たる債務者が債務を履行しないときに、代わりに履行する責任を負うことです。保証の責任を負う人を「保証人」と言い、保証人が債権者に対して負う義務を「保証債務」と言います。

 

保証契約

保証債務の成立には、債権者と保証人の間で「保証契約」が結ばれる必要があります。保証契約は、書面または電磁的記録で行わなければ効力を持たないと定められています。

また、主たる債務者が自分の保証人になってくれるよう依頼する契約を「保証委託契約」と言います。

保証委託契約は、保証契約において必須ではありません。保証契約は、主たる債務者の委託がなく、主たる債務者の意思に反していても、債権者と保証人の間で結ぶことができます。

 

 

保証人の要件

保証人になるには、次の要件を満たしていなければいけません。

  1. 行為能力者である…法的行為を行う十分な判断能力がある
  2. 弁済の資力(財力)がある

保証人に「2.弁済の資力」がなくなった場合には、債権者は要件を満たす代わりの保証人を立てるよう請求できます。

ただし、債権者自身が保証人を指名した場合には、債権者の自己責任の範囲内ですので、代わりの保証人を立てるよう請求することはできません。

 

保証債務の範囲

保証債務には、利息・違約金・損害賠償など主たる債務に従たるもの全てが含まれます。

また、保証人は保証債務についてのみ、違約金または損害賠償の額を債権者と約定することができます。

 

保証債務の性質

保証債務には、大きく分けて次の3つの性質があります。

  1. 付従性=主たる債務と運命をともにする
  2. 随伴性=主たる債務の移転についていく
  3. 補充性=主たる債務を補う役割を担う

以下、詳しく解説していきます。

 

保証債務の付従性

保証債務は、主たる債務と成立・存続・態様・消滅などの運命をともにします。これを「保証債務の付従性」と言います。

保証債務の付従性には、次のような性質があります。

  1. 保証債務は、主たる債務がなければ成立しない
  2. 主たる債務が消滅すれば、保証債務も消滅する
  3. 保証債務は、主たる債務より重くなることはない
    【例】主たる債務が100万円から50万円に減額された場合、保証債務も50万円に減額される
  4. 主たる債務に生じた事由は、保証債務にも及ぶ
    【例】主たる債務についての消滅時効の完成猶予や更新は、保証債務にも適用される
  5. 保証人は、主たる債務者が有する抗弁権を援用できる(=主たる債務者が債権者に主張できることは、保証人も債権者に主張できる)
  6. 主たる債務より軽くなることは認められる
  7. 保証契約後に主たる債務が重くなったとしても、それに従い保証債務が重くなることはない
    【例】主たる債務者と債権者の間で利息を上げることになっても、保証債務の利息は上げられない

 

 

相殺の抗弁権の援用

債権者と主たる債務者の間で債権を相殺できる状態であった場合、主たる債務者は債権者に対する債務の履行を拒むことができます。そのとき、保証債務の付従性により、保証人も債権者に対して保証債務の履行を拒むことができます(相殺の抗弁権の援用)。

例えば、債権者Aさんが主たる債務者Bさんに対する債権1,000万円を持っており、その保証人がCさんであったとします。そして同時に、BさんはAさんに対して700万円の債権を持っていたとすると、AさんとBさんとの間で債権を相殺できる部分が生じます。

このとき、Bさんは相殺できる700万円について支払いを拒否することができるため、AさんはBさんに対して残りの300万円についてのみ、支払いを求めることができます。

同じく、抗弁権を援用できるCさんも、700万円については支払いを拒否することができますが、300万円は支払わなければいけません。

 

保証債務から主たる債務への影響

反対に、保証債務そのものに発生した事由は、原則、主たる債務に対して影響を及ぼしません。保証債務はあくまで主たる債務に従う性質のものだからです。

ただし、次の場合には特別に、保証債務が主たる債務に影響を与えます。

  1. 保証債務が「履行」によって消滅した場合→主たる債務者の債務も消滅する
  2. 保証人と債権者の間で債権を「相殺」して、保証債務が消滅した場合→主たる債務者の債務も消滅する

 

保証債務の随伴性

債権譲渡などで主たる債務が移転すると、それに伴い保証債務も移転し、保証人は債権の譲受人(新しい債権者)に対して保証債務を負います。

 

 

保証債務の補充性

保証債務は、債務の履行を保証し、主たる債務を補う役割のものです(保証債務の補充性)。

そのため、保証人には以下の権利が認められます。

  1. 催告の抗弁権
  2. 検索の抗弁権

1.催告の抗弁権

保証債務の履行義務は、主たる債務者が債務不履行となって初めて生じます。債権者はまず主たる債務者に対して債務履行の請求(催告)を行うべきです。

そのため、もし債権者が主たる債務者に催告することなく初めから保証人に履行請求をしてきたら、保証人は「まず主たる債務者に請求してくれ」と主張し、その請求を拒否することができます。この保証人の権利を「催告の抗弁権」と言います。

 

2.検索の抗弁権

債権者が主たる債務者に催告をした後でも、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があること、強制執行が容易であることを証明すれば、債権者はまず主たる債務者の財産に対して執行をしなければならないとされています。これを保証人に認められた「検索の抗弁権」と言います。

 

分別の利益とは|共同保証について

複数人が共同で保証人となる「共同保証」の場合、原則として、各保証人が負う保証債務の額は、主たる債務額を保証人の人数で割った額となります。

例えば、主たる債務者Bさんが債権者Aさんに対して100万円の債務を負い、その保証人にCさんとDさんがなった場合、Cさん・Dさんが負う保証債務額は、それぞれ50万円となります。

したがって、Bさんが債務不履行に陥り、Cさんも保証債務を履行できない場合でも、Dさんは自分が負担した保証債務の50万円さえ支払えばよいのです。

 

 

「保証とは/保証債務の性質」に関連する法律

この項目に関連する法律は以下のとおりです。

民法 (令和2年3月1日時点)

第446条(保証人の責任等)

保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。

2 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。

3 保証契約がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。

 

第447条(保証債務の範囲)

保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する。

2 保証人は、その保証債務についてのみ、違約金又は損害賠償の額を約定することができる。

 

第448条 (保証人の負担が主たる債務より重い場合)

保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する。

【改正後】(令和2年4月1日施行)

第448条(保証人の負担と主たる債務の目的又は態様)

保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する。

2 主たる債務の目的又は態様が保証契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は加重されない。

 

第450条(保証人の要件)

債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、その保証人は、次に掲げる要件を具備する者でなければならない。

一 行為能力者であること。

二 弁済をする資力を有すること。

2 保証人が前項第二号に掲げる要件を欠くに至ったときは、債権者は、同項各号に掲げる要件を具備する者をもってこれに代えることを請求することができる。

3 前二項の規定は、債権者が保証人を指名した場合には、適用しない。

 

第452条(催告の抗弁)

債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。

(以下省略)

 

第457条(主たる債務者について生じた事由の効力)

主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の中断は、保証人に対しても、その効力を生ずる。

2 保証人は、主たる債務者の債権による相殺をもって債権者に対抗することができる。

【改正後】

第457条(主たる債務者について生じた事由の効力)

主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は、保証人に対しても、その効力を生ずる。

2 保証人は、主たる債務者が主張することができる抗弁をもって債権者に対抗することができる。
3 主たる債務者が債権者に対して相殺権、取消権又は解除権を有するときは、これらの権利の行使によって主たる債務者がその債務を免れるべき限度において、保証人は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

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「保証とは/保証債務の性質」の試験科目

権利関係

「保証とは/保証債務の性質」が含まれる試験分野

保証・連帯債務

「保証とは/保証債務の性質」の重要度

★★★★☆  数年に1度は出題される

「保証とは/保証債務の性質」過去10年の出題率

40%

 

2023年宅建試験のヤマ張り予想

「保証」の分野には、この記事で解説している「通常の保証に関する問題」と「連帯保証に関する問題」があります。

この分野の問題は、2〜3年に1度の頻度でコンスタントに出題されています。

また、連帯保証よりも通常の保証に関する問題の方が出題頻度は高くなっているため、この分野の勉強では今回の記事で解説している「通常の保証」についての知識をメインに習得するといいでしょう。

宅建士を目指している方は「目指せ!宅建士への道」を参考にしてみてください。

「保証とは/保証債務の性質」ポイントのまとめ

この項目で押さえておくべきポイントは以下のとおりです。

  1. 保証契約は、書面または電磁的記録で行わなければ効力を持たない
  2. 保証契約は、主たる債務者の同意がなくても保証人と債権者の間で結ぶことができる
  3. 保証人は、行為能力者で、弁済の資力を有する者でなければならない
  4. 保証人に弁済の資力がなくなった場合には、債権者は弁済の資力のある代わりの保証人を立てるよう請求できる
  5. 保証債務は、主たる債務の成立・存続・態様・消滅などに従い、同様の効果を有する
  6. ただし、主たる債務の内容が加重されても、保証債務の内容が加重されることはない
  7. 債権者が主たる債務者の前に保証人に催告した場合、保証人はその請求を拒否できる

 

最後に

 

今回ご紹介した保証についての知識は、勉強を始めたばかりの頃には複雑で理解しにくく感じるかもしれません。

しかし、ある程度ルールが決まっており、個々の判例をひとつずつ覚える手間もないため、学習を進めるうちに整理しやすくなってくるはずです。基本のルールを覚えて過去問を繰り返し解いておけば、難しい分野ではないでしょう。

また、関連する知識として、「連帯保証人・連帯債務」について合わせて学習するのがおすすめです。通常の保証と連帯保証の違いを整理しやすくなりますので、まとめて取り組みましょう。

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。
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