売主の契約不適合責任|売買契約の効力と買主の権利保護

投稿日 : 2020年03月01日

「契約不適合責任」は、2020年の民法改正で「瑕疵担保責任」から変更された部分です。

瑕疵担保責任は、売買に関する法律の中で最も重要な規定のひとつで、宅地建物取引業においても必須の知識です。

その規定が今回の改正で大幅に改正されたため、2020年の宅建試験で取り上げられる可能性が高いといえます。

そこで今回は、新たな不動産用語となる「契約不適合責任」について解説します。

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この記事の監修者:
平山 和歌奈
宅建スペシャリスト

不動産会社や金融機関にて、ローンの審査業務、金消・実行業務などに従事。その過程で、キャリアアップのため自主的に宅建の取得を決意。試験の6ヶ月前には出勤前と退勤後に毎日カフェで勉強、3ヶ月前からはさらに休日も朝から閉館まで図書館にこもって勉強。当日は37℃の熱が出てしまったが、見事1発で合格した。現在はiYell株式会社の社長室に所属。

 

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「売主の契約不適合責任」の試験科目

権利関係

「売主の契約不適合責任」が含まれる試験分野

契約不適合責任

「売主の契約不適合責任」の重要度

★★★★☆  売買契約における最も重要な点のひとつ

「売主の契約不適合責任」過去10年の出題率

60%

 

2020年宅建試験のヤマ張り予想

2020年の民法改正で大きく変更される上、例年の出題率も5割を超えているため、出る可能性の方が高いでしょう。

また、他科目の「宅建業法」で出題率の高い「自ら売主制限」に関する問題にも関係する知識ですので、必須の分野です。

 

「売主の契約不適合責任」の解説

売買契約の効力

売買契約は、売りたい人と買いたい人との間で意思表示が合致した時点で成立します。

契約書の作成は、必ずしも必須ではありません。

売買契約により、売主は目的物を引き渡す義務を負い、買主は代金の支払い義務を負います。

目的物が他人の権利であった場合、その全部・一部に関わらず、売主はその権利を取得して買主に移転する義務を負います。

そして、登記や登録その他の売買の目的である権利の移転についての対抗要件を買主に備えさせる義務も負います。

 

売主の契約不適合責任

 

契約不適合とは、売買契約において売主から買主へ引き渡された目的物に、欠陥や不足があるなど契約内容に適合しない状態のことです。

 

◆契約不適合の例

種類に関する契約不適合 本マグロを購入したのに、帰宅して開封したらめばちマグロだった
品質に関する契約不適合 新築住宅を購入したのに、蛇口の締まりが悪い
数量に関する契約不適合 7号のチーズケーキを購入したのに、帰宅して開封したら5号のチーズケーキだった

 

売買契約に契約不適合があった場合、売主は買主に対して様々な責任を負います。

この責任を「契約不適合責任」または「担保責任」といいます。

売買されたのが権利であっても、契約内容を満たさない場合は物と同じく契約不適合とみなされます。

例えば、売主Aさんから買主Bさんが土地を購入したとき、Bさんは単独所有権を得るつもりであったにもかかわらず、実際には共同所有権であった場合などです。

 

契約不適合である場合の売主の義務

売買契約が契約不適合であった場合、売主は買主が持つ以下の権利に応じる義務を負います。

 

◆契約不適合における買主の権利

  1. 追完請求権
  2. 代金減額請求権
  3. 損害賠償請求権
  4. 契約解除権

 

履行の追完請求権

履行の追完とは、売主が契約内容を成し遂げるために、後から追って不適合分を補い、債務を完了することです。

 

◆「履行の追完」の例

目的物の補修 壁紙の張替え工事の後、一部破れが見つかり、その部分だけ張りなおしてもらった
代替物の引渡し

(買主に不都合がない場合)

現品限りで購入した掃除機が壊れて動かなかったため、同程度の値段・スペックの別商品に交換してもらった
不足分の引渡し 3枚セットのタオルを購入したが2枚しか入っていなかったため、後でもう1枚渡してもらった

 

売主は買主から追完請求をされると、売主の帰責性の有無(売主に責任があるかどうか)に関わらず、その求めに応じなくてはいけません。

ただし、買主の責めに帰すべき事由(買主の故意や過失)があった場合には、売主は追完義務を負いません。

 

 

代金減額請求権

期限を定めて追完請求をしたにも関わらず、その期間内に実施されない場合には、買主は不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができます。

この請求もまた、売主の帰責性の有無は問われず、買主の責めに帰すべき事由があった場合には売主は義務を負いません。

 

◆「代金減額請求」の例

ホームパーティーのために缶ビールを20本買ったが、ケースには19本しかなかった。パーティーの日までに残りの1本を引き渡すよう売主に請求したが実施されなかったため、後日1本分の代金を減額するよう請求した。

 

代金減額請求を行うには、原則まずは追完請求をする必要がありますが、以下の場合には、催告(請求)不要ですぐに代金減額請求をすることができます。

  1. 履行の追完が不能である場合
  2. 売主が履行の追完を拒絶する意思を明示した場合
  3. 契約の性質上または当事者の意思表示により、特定の日時または一定の期間内に履行されなければ、買主が契約の目的を達成できない場合

 

損害賠償請求および解除権の行使

買主には、売主の債務不履行を理由とする損害賠償請求権や契約解除権を有しています。

この権利は、追完請求・代金減額請求をすることができたとしても、買主に認められます。

 

契約不適合責任の期限

買主が売主の契約不適合責任を追及するには、買主が不適合を知ったときから1年以内に売主に通知しなければいけません。

たとえ消滅時効期間内であっても契約不適合責任の期限を過ぎると、契約不適合に関する買主の諸権利を主張できなくなります。

ただし、売主が不適合を知っていたり重大な過失によって知らなかった場合は例外とされます。

 

 

契約不適合責任を負わない旨の特約

売買契約では、契約不適合があっても売主が責任を負わないとする特約を設定することができます。

ただし、事業者と消費者の契約においては、事業者の契約不適合責任をすべて免責とすることはできません。

 

「売主の契約不適合責任」に関連する法律

どのような要件のときに契約不適合責任が問われるのか、条文でどのように書かれているか確認しておきましょう。

 

民法(施行日:令和2年4月1日)

第562条(買主の追完請求権)

引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。

2 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。

 

第563条(買主の代金減額請求権)

前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。

2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。

一 履行の追完が不能であるとき。

(以下省略)

 

第564条(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)

前二条の規定は、第四百十五条の規定による損害賠償の請求並びに第五百四十一条及び第五百四十二条の規定による解除権の行使を妨げない。

 

第566条(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)

売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。

 

「売主の契約不適合責任」ポイントのまとめ

  1. 権利の売買契約では、売主は権利移転についての対抗要件を買主に備えさせる義務を負う
  2. 契約不適合責任とは、売買契約で買主に渡された目的物が契約内容と異なる場合の売主の責任を指す
  3. 契約不適合における買主の権利には、追完請求権・代金減額請求権・損害賠償請求権・解除権がある
  4. 契約不適合責任の時効は買主が不適合を知ってから1年以内である

 

関連分野と合わせて学習するのがおすすめ

 

「売主の契約不適合責任」に関する法令は個々の事例で適用できるよう細かく規定されているため、試験でもややこしく解答しにくい問題として登場します。

まずは概要=大枠から理解し、徐々に詳細に学習していく方がスムーズに習得できます。

また、この分野は関連する他分野と合わせて学習すると、より理解が深まります。

そのため、初めからこの分野だけに注力するより、まずは宅建試験の科目を通して目を通し、少しずつ学習の難易度を上げていくといいでしょう。