不動産売買の諸費用計算書とは?必要項目と計算方法、費用の目安を紹介

投稿日 : 2022年11月06日/更新日 : 2023年06月08日

不動産売買の諸費用計算書とは?必要項目と計算方法、費用の目安を紹介

不動産の売買取引において、買主様または売主様が本体価格以外にどれくらいのお金がかかるのか不安を抱いていらっしゃる場合があります。

売買仲介をする不動産会社が質問を受けた際には、金額に余裕を持ってお伝えすることでクレーム防止につながるケースが多いです。

その際、諸費用計算書として詳細を提示すると、お客様により安心していただけます。

今回は、そういった場合に用いる不動産売買の諸費用計算書に必要な項目や各諸費用の目安などについて解説します。

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不動産売買の諸費用計算書とは

不動産売買の諸費用計算書とは、エクセル等を利用して不動産の購入や売却にかかる諸費用を項目ごとに計算し、お客様に提示するための書類です。

不動産の購入や売却にかかる諸費用は物件価格に比例するため、お客様から諸費用について質問を受けた時、物件価格×〇%と伝えるケースがあります。

しかし、大まかな数字だけでなく、書面として詳細にお伝えすることで、お客様により安心していただけます。

また、物件の内見時など、お問い合わせいただいた初期の段階でお客様へ提示することで、お客様からの信頼を得ることができ、他社の営業担当と差別化できる場合もあるでしょう。

不動産売買の諸費用とは

不動産売買の諸費用とは、土地や建物などの不動産を購入または売却する際、物件価格本体の他にかかる費用です。

諸費用には各種税金、仲介手数料、住宅ローンの事務手数料などがあります。

諸費用は住宅ローンに組み込まず、現金で支払うケースが一般的です。

諸費用の価格は物件価格に比例するため、物件の本体価格が高くなるほどお客様の負担が大きくなります。

1件の取引が数千万円以上になる不動産売買取引では、諸費用だけでもお客様にとって大きな負担となります。

何にどれくらいの費用がかかるのか、事前に書面で提示しておくとお客様も安心です。

購入にかかる諸費用

不動産の購入にかかる諸費用の目安は、新築で物件価格の約4~7%、中古で物件価格の約8~10%です。

ただし、お客様の住宅ローン借入の有無、購入する不動産の種類等によって異なるため、あくまでも目安とお考え下さい。

購入にかかる諸費用一覧

不動産の購入にかかる一般的な諸費用を、以下の表にまとめました。

費用 概要※ 支払い時期
税金 印紙税 売買契約書、住宅ローンの契約書にかかる収入印紙代
目安:1万円~10万円
売買契約・ローン契約時
登録免許税 所有権保存・移転登記、抵当権設定登記にかかる税金 登記時
固定資産税税金・都市計画税清算金 購入する年の固定資産税等を売主と清算する費用 残金決済時
不動産取得税 土地や建物を取得した人にかかる税金 購入から数ヶ月後
住宅ローン関連 融資事務手数料 融資を受ける際、金融機関に支払う手数料
目安:借入金額×2.2%
ローン契約時
保証料 保証会社に支払う費用 ローン契約時
団体信用生命保険 住宅ローン借入時に加入する保険料
目安:金利に+0.1~0.3%上乗せ
毎月の返済時
損害保険料 火災保険料、地震保険料等
目安:10万円前後
引き渡しまでに手続き
司法書士報酬 登記手続きを司法書士に依頼する際の費用
目安:4万円~
登記時
仲介手数料 不動産会社に仲介を依頼する際、不動産会社に支払う費用
目安:物件価格×3%+6万円(消費税別)
売買契約・
残金決済時

※記載している目安金額はあくまでも参考です。詳細は、後述する各項目の説明をご覧ください。

また、目安の記載がない項目に関しても、各項目で目安等を解説しています。

上記の他にも、引っ越し代金、家具の購入費用など、手続き以外にかかる費用や、戸建ての水道負担金、マンションの管理費精算金など、購入する物件によって諸費用がかかる場合があります。

各項目の詳細

不動産の購入にかかる諸費用のそれぞれの項目について解説します。

仲介手数料については、「売買の仲介手数料」の章で解説しているので、こちらをご覧ください。

印紙税

印紙税は、不動産売買契約書、住宅ローンの金銭消費貸借契約書など契約書を作成する際に貼付する収入印紙代です。

契約書1通につき課税されます。

【印紙税の税額】

税額
契約金額 本則 軽減措置※
1,000万円超え5,000万円以下 2万円 1万円
5,000万円超え1億円以下 6万円 3万円
1億円超え5億円以下 10万円 6万円

参考元:No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁 (nta.go.jp)
No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置|国税庁

※不動産売買契約書の場合、令和4年3月31日までに作成された契約書は税額が軽減されています。

登録免許税

登録免許税は、所有権保存登記、所有権移転登記、抵当権設定登記など、登記をする際にかかる税金です。

登録免許税の計算方法は、

  • 土地・建物の登録免許税=固定資産税評価額×税率
  • 抵当権設定登記の登録免許税=借入金額×税率

で算出します。

【登録免許税の税率(マイホームを売買する場合)】

税率
本則 軽減税率※
土地の所有権移転登記 2% 1.5%
建物 所有権保存登記 0.4% 0.15%
所有権移転登記 2% 0.3%
抵当権設定登記 0.4% 0.1%

※土地にかかる登録免許税は令和5年3月31日まで、マイホーム(建物)・抵当権設定登記にかかる登録免許税は、令和4年3月31日まで軽減税率が適用されます。

参考元:No.7191 登録免許税の税額表|国税庁 (nta.go.jp)
登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ(国税庁)

固定資産税・都市計画税精算金

固定資産税・都市計画税は、毎年1月1日時点での所有者に課税されるため、引き渡し日に応じて日割り計算で清算します。

税額は購入する不動産によって異なり、市町村から送られてくる納税通知書に記載されているため、売主に確認しましょう。

不動産取得税

不動産取得税は、土地や建物を取得した人に課税される地方税です。

不動産を取得した数ヶ月後に、市町村から納税通知書が送られてきます。

不動産取得税は課税標準額×税率0.3%で計算しますが、不動産に応じて軽減措置が取られているため、詳細は各自治体の公式サイトでご確認ください。

融資事務手数料

融資を受ける際、金融機関へ融資事務手数料を支払います。

融資事務手数料には、定率型と定額型の2つの支払い方法があります。定率型は借入金額×〇%のように、借入金額に応じて手数料を支払う方法、定額型は借入金額に関係なく一律で支払う方法です。

融資事務手数料の目安は以下の通りですが、金融機関によって異なるため金融機関へ直接ご確認ください。

【融資事務手数料の目安】

  • 定率型:借入金額×2.2%
  • 定額型:3万円~

保証料

保証料は住宅ローンの融資を受ける際、保証会社に支払う手数料です。

保証会社は万が一契約者の返済が滞った場合、金融機関へ代位弁済する会社です。

保証料の支払いは、契約時に一括で前払いする方法と金利に上乗せして支払う方法の2種類あります。

金利に上乗せして支払う方法の場合、保証料の目安は金利+0.2%です。

ただし、保証料に関しては無料の金融機関もあるなど、金融機関によって大きく異なります。

団体信用生命保険料

団体信用生命保険(団信)は、契約者が万が一死亡または高度障害状態になった場合、残債が0円になる保険です。

一般的な生命保険は、保険会社から残された家族に保険金が支払われますが、団信では保険会社から金融機関へ保険金が支払われる仕組みです。

団信への加入はほとんどの住宅ローンで必須となっており、団信に加入することで残された家族が住宅を手放すことなく、残債の返済も不要になります。

死亡のみの保障の場合、金融機関が保険料を負担するケースが一般的です。

ガンや三大疾病など保障を充実させる場合、金利に上乗せして保険料を支払います。

団体信用生命保険料の目安は、金利に+0.1~0.3%です。

保険料は、保障内容や金融機関によって異なります。

損害保険料

住宅ローンの融資を受ける場合、火災保険への加入は必須となっているケースが一般的です。

火災保険は風災、水災など補償内容によってさまざまな補償が付帯していますが、地震や地震が原因の火災等による損害は補償されません。

そのため、地震保険とセットで加入することをおすすめします。

火災保険料の目安は、木造・10年契約で10万円前後ですが、地域や建物の構造、契約期間などによって大きく異なります。

司法書士報酬

不動産購入時に必要な登記をする際、トラブルを防ぐために司法書士に依頼するケースが一般的です。

司法書士報酬の金額は依頼内容によって異なり、報酬と実費に分かれます。

例えば、所有権移転登記の場合、報酬の目安4万円~+登録免許税がかかります。

司法書士によって報酬の相場が異なるので、詳細は各司法書士へお問い合わせください。

売却にかかる諸費用

不動産の売却にかかる諸費用は、購入にかかる費用と似ているものもあります。

ただし、購入時以上に売主様の事情によって必要な費用が異なるため一概には言えません。

お客様へのご案内をスムーズに行うために、最低限かかる費用の項目や計算方法を確認しておきましょう。

売却にかかる諸費用一覧

不動産の売却に最低限かかる諸費用は、以下の通りです。

 

費用 概要※ 支払い時期
税金 印紙税 売買契約書、住宅ローンの契約書にかかる収入印紙代
目安:1万円~10万円
売買契約時
登録免許税 抵当抹消登記にかかる税金
目安:不動産1個につき1,000円
ローン完済後の登記時
譲渡所得税 不動産を売却して利益が出た場合にかかる税金 確定申告後
司法書士報酬 登記手続きを司法書士に依頼する際の費用
目安:1.5万円~
抵当権
抹消登記時

※記載している目安金額はあくまでも参考です。詳細は、後述する各項目の説明をご覧ください。

また、目安の記載がない項目に関しても、各項目で目安等を解説しています。

上記の他にも、土地の測量費、リフォーム費用、建物を取り壊して土地として売却する際の解体費など、売主様の事情や売却する不動産によってかかる費用はさまざまです。

各項目の詳細

不動産の売却にかかる諸費用のそれぞれの項目について解説します。仲介手数料については、「売買の仲介手数料」の章で解説しているので、こちらをご覧ください。

印紙税

印紙税は、売買契約書を作成する際に貼付する収入印紙代です。契約書1通につき課税されます。

【印紙税の税額】

税額
契約金額 本則 軽減措置※
1,000万円超え5,000万円以下 2万円 1万円
5,000万円超え1億円以下 6万円 3万円
1億円超え5億円以下 10万円 6万円

参考元:No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁 (nta.go.jp)
No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置|国税庁

※不動産売買契約書の場合、令和4年3月31日までに作成された契約書は税額が軽減されています。

登録免許税

売主様に住宅ローンの残債がある場合、買主様の残金決済時にローンを完済して、抵当権の抹消登記を行います。

抵当権とは、住宅ローンの融資を受ける際、金融機関が融資の対象である不動産に設定するものです。

金融機関が抵当権を設定することで、契約者が万が一ローンの返済に滞った時に不動産を競売にかけることができます。

不動産を売却する際は、ローンを完済して抵当権を抹消する必要があります。

売却代金でローンを完済できず、売主様に自己資金もない場合、抵当権を外せず売却できません。

売主様にローンの残債や自己資金の有無を事前に確認しておくと、売却時のトラブルを防止できるでしょう。

抵当権抹消登記にかかる登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。

土地と建物を売却する場合の登録免許税は、2,000円です。

譲渡所得税

不動産を売却して出た利益を譲渡所得と言い、譲渡所得金額に応じて譲渡所得税が課税されます。

譲渡所得税は、売却した年の1月1日時点で不動産の所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得、5年以下であれば短期譲渡所得となる仕組みです。

所有期間によって税率が大きく異なるため、売却のタイミングに注意が必要です。

【譲渡所得税の計算方法】譲渡所得=売却代金ー(取得費※+譲渡費用※)
譲渡所得税=譲渡所得×税率※取得費:売却した不動産を取得する際にかかった購入代金と諸費用の合計
※譲渡費用:売却にかかった諸費用

【譲渡所得税の税率】

所得税 住民税
長期譲渡所得 15% 5%
短期譲渡所得 9% 3万円

※令和19年まで、基準所得税額×2.1%の復興特別所得税も課税されます。

譲渡所得税の詳しい計算方法は、国税庁の公式サイトでご確認ください。

司法書士報酬

不動産を売却する際の抵当権抹消登記も、司法書士に依頼する場合、司法書士報酬がかかります。

抵当権抹消登記の目安は1.5万円~ですが、こちらも司法書士や登記の複雑さなどによって異なるので、司法書士へご確認ください。

売買の仲介手数料

不動産売買の仲介を行う際、成功報酬として買主様・売主様へ仲介手数料を請求できます。

買主様・売主様双方の仲介を行う場合、両者に請求可能です。

ただし、仲介手数料には上限が決められているので、上限を超えて請求しないように注意が必要です。

売主または買主一方に請求できる仲介手数料の上限は、売買価格×3%+6万円(別途消費税)となっています。

不動産売買の仲介手数料は高額になるため、お客様によってはご納得いただけない場合もあるでしょう。

しかし、専門知識がない個人間での不動産売買は大きなリスクを伴います。

専門知識を持った不動産会社が仲介することの重要性を、お客様にご理解いただくことが大切です。

まとめ

不動産売買にかかる諸費用は、買主様・売主様にとって大きな金額になるため、事前に詳細をお伝えしておくと安心して手続きを進められます。

エクセル等を利用して諸費用を計算し、諸費用計算書として提示すると、お客様との信頼構築につながるでしょう。

この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。