土地の贈与税の計算方法|節税して税金をお得にすることは可能

投稿日 : 2020年04月20日/更新日 : 2023年06月03日

人から財産を譲り受けた際に発生する贈与税の支払い額は高額になることもあるため、その負担に悩んでいるお客様もいます。

贈与税にはいくつかの計算方法があるので、それらを理解していないと、どれくらいのお金を納めるべきなのかが分からないまま贈与を受けることとなってしまいかねません。

今回は土地を譲り受けた場合の贈与税の計算方法について解説します。

住宅ローン業務を軽減したい
不動産事業者様はこちら
\ 住宅ローン業務を軽減したい不動産事業者様はこちら/
資料請求・お問合せはこちら

どのような場合に土地の贈与税がかかるのか

そもそも贈与税が、どのような条件下で発生するのかよく分からないという不動産関係の方も多いのではないでしょうか。

贈与税というのは「人から一定の金額以上の価値があるものを譲り受けた際に発生する税金」のことを指しています。

 

贈与税が発生する財産の一例が、土地です。

土地の贈与税とは、文字通り土地を人から譲り受けた際に生じる税金のことで、その支払い義務は土地を譲り受けた側に発生します。

ただし、土地に対する贈与税が発生するケースにはいくつかの条件があり、それらに該当しない場合には贈与税が発生しないこともあるのが特徴です。

 

参考 国税庁のNo.4402 贈与税がかかる場合

 

 

土地の贈与税がかからない場合

土地の取引で贈与税が発生する条件としては、「個人から土地を譲り受けた場合であること」と定められています。

したがって、例えば法人が個人へ土地を譲った場合、贈与税は発生しません。ただし、このようなケースでは贈与税の代わりに所得税が発生します。

そのため、税金の納付義務そのものが免除されるというわけではありません。

 

 

土地の贈与税がかかる場合

国税庁は、贈与税がかからないケースを細かく取り決めていますが、そのほとんどは金銭を譲り受けた場合に関するものです。

したがって、個人から土地を譲り受けるほとんどのケースでは、贈与税が発生しない条件を満たすことはないため、ほぼ贈与税が発生すると考えておいたほうがよいでしょう。

 

また、贈与税は債務の免除に伴って、財産を譲り受けた場合にも発生することもあります。

これには何らかの財産を貸していた債権者が債務自体を放棄することで、その財産が借りていた人の所有物となるケースが該当します。

このようなケースでは、債務の放棄によって債権者から財産を譲り受けたと考えると、贈与税が発生してしまう理屈が理解できるでしょう。

 

 

土地の贈与税の計算方法

 

個人から土地の贈与を受けた場合には、贈与税の支払い義務が生じます。その計算方法は、どのようにして算出されるのかを確認しておきましょう。

 

課税価格 = 贈与財産価額 – 110万円(基礎控除)

税額 = 課税価格 × 税率 – 控除額

 

このように土地を譲り受けた場合の贈与税の計算では、最初に課税価格を算出し、その金額をもとにして税額を計算する必要があります。

また、この2つの計算では基礎控除が深く関係するということも覚えておきましょう。

 

一方で「贈与財産価額」と「税率」に関しては、条件によって計算方法が異なるため、そのことを考慮したうえで計算する必要があります。

それぞれの税額の算出方法に関しては、以下の各項目で詳しく解説します。

 

贈与財産価額を算出

土地に対する贈与税を計算する際に必要な「課税価格」は、「贈与財産価額」を明確にしなければ詳細な金額を把握することができません。

この贈与財産価額は、以下の2つの方法にて計算することが可能です。

  • 路線価で求める
  • 倍率で求める

 

続いて、路線価と倍率を元にした、贈与財産価額の計算式をご紹介すると同時に、具体的な事例に基づく計算例を解説します。

また、倍率から計算する方法では「固定資産税評価額」について理解しておくことも重要です。こちらに関しても併せて解説していきます。

 

路線価で求める

路線価から贈与財産価額を計算する方法は、路線価が定められている地域の土地を譲り受けるケースで有効となるものです。

この方法では最初に対象となる土地が面している道路の1㎡当たりの路線価を調べ、それをもとに以下の式で計算します。

 

正面路線価 × 奥行価格補正率 × 面積

 

正面路線価と奥行価格補正率に関しては路線価図で確認することができるため、計算をする際にはあらかじめ入手しておきましょう。

 

また、1㎡当たりの価格を算出するためには、以下の2つの計算をする必要もあります。

 

側方路線影響加算額 = 側方路線価 × 奥行価格補正率 × 側方路線影響加算率

二方路線影響加算額 = 裏面路線価 × 奥行価格補正率 × 二方路線影響加算率

 

側方路線影響加算率と二方路線影響加算率の詳細な数値に関しては、地区区分をもとに公示されているものを確認しておきましょう。

 

路線価での計算例

ここでは以下の条件のもと、具体的な贈与財産価額の計算式をご紹介します。

正面路線価:5,000(500万円)

奥行価格補正:90%

 

側方路線影響加算額:1,000(100万円)

奥行価格補正:80%

側方路線影響加算率:0.05

 

二方路線影響加算額:900(90万円)

奥行価格補正:80%

二方路線影響加算率:0.05

 

土地面積:100㎡

 

まずは、これらの数値を「正面路線価×奥行価格補正率」の式にあてはめます。

 

5,000,000 × 0.9 = 4,500,000

 

続いて、側方路線影響加算額と二方路線影響加算額を算出します。

 

側方路線影響加算額 = 1,000,000 × 0.8 × 0.05 = 40,000

二方路線影響加算額 = 900,000 × 0.8 × 0.05 = 36,000

 

以上の計算で求めた数値をすべて足すと、1㎡当たりの価額を算出できます。

 

4,500,000 + 40,000 + 36,000 = 4,576,000

 

最後にこの価額に面積をかけると、贈与財産価額を算出できます。

 

4,576,000 × 100 = 457,600,000

贈与財産価額 = 4億5,760万円

 

倍率で求める

日本国内には路線価が定められていない地域も多くあります。そのような地域では、上述した路線価によって贈与税を計算する方法が適用できません。

そのため、このような地域ではその代わりとして、倍率で求める方法にて贈与税を計算する必要があるのです。

 

倍率で求める場合の計算式は、以下のようになります。

 

固定資産税評価額 × 一定の評価倍率

 

ここでかける「一定の評価倍率」に関しては、場所などの条件によって異なるため、あらかじめ確認しておくようにしましょう。

この計算により、上述した路線価から求める方法と同様に贈与財産価額を算出することができます。

それをもとに、詳細な贈与税額を計算することも可能となるのです。

 

固定資産税評価額とは

倍率から贈与財産価額を算出するためには、まずは「固定資産税評価額」がどのようなものなのかを知っておかなければなりません。

 

固定資産税評価額とは、簡単に言ってしまうと行政によって算出された固定資産の価値を明確にするための基準額のようなものです。その額は贈与税額を計算する上で非常に重要となります。

詳細な固定資産税評価額は毎年送付される固定資産税納付通知で確認することができます。

そのため、贈与税を計算する際には、最新の通知を確認するようにしましょう。

 

以上より、贈与税を計算する際に算出する必要な「贈与財産価額」を明確にするために、まずは「固定資産税評価額」を調べることから始める必要があります。

 

倍率での計算例

続いては以下の条件のもと、倍率方式で贈与財産価額を計算してみましょう。

 

固定委資産税評価額:5,000万円

固定資産税評価額にかける一定の評価倍率:1.9

 

これらの数値を「固定資産税評価額×一定の評価倍率」の数式に置き換えると、以下のようになります。

 

50,000,000 × 1.9 = 95,000,000

 

以上の計算をした結果、この土地の贈与財産価額は「9,500万円」であるということが分かります。

 

また、固定資産税にかける一定の評価倍率は国税庁のこちらのページにて確認することができますので、あらかじめ調べておくようにしましょう。

 

贈与税の税率

土地を譲り受けた際に発生する贈与税は、課税価格に税率をかけ、そこから控除額を差し引くことで算出することができます。

したがって、贈与税額を計算するうえでは、税率も把握しておかなければなりません。

 

贈与税額を計算する際に適用される税率は、贈与が以下のどちらに該当するのかで異なります。

  • 特例贈与財産
  • 一般贈与財産

そのため、贈与税額を計算する際には、贈与がどちらの財産に該当するのかを知っておくことが必須です。続いては、贈与税の税率を贈与の種類ごとに分けて、確認していきましょう。

 

特例贈与財産の税率と控除額

贈与税が発生する際の贈与のひとつとして挙げられるのが「特例贈与財産」です。この贈与は祖父母や父母などの直系尊属から20歳以上(その年の1月1日の時点で)の子や孫へ贈られた財産を指しており、詳細な税率や控除額は以下のようになります。

画像引用:国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

 

この場合の基礎控除後の課税価格とは、その年の1月1日から12月31日の間に贈られた財産の総額を指しているのが特徴です。

したがって、土地以外にも譲り受けた財産がある場合には、土地だけでなく、それ以外の財産も含めた総額から贈与税額を計算しなければなりません。

 

一般贈与財産の税率と控除額

贈与税の対象となる財産には「一般贈与財産」と呼ばれるものもあります。この一般贈与財産とは、特例贈与財産に該当していない贈与財産のことを指します。

一般贈与財産に対して発生する贈与税の税率や控除額は、特例贈与財産の場合のものとは若干異なるため、注意しなければなりません。

 

一般贈与財産に対して発生する、贈与税の税率と控除額は以下のとおりです。

画像引用:国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

 

一般贈与税に該当する場合の例としては、夫婦間での贈与や兄弟・姉妹間での贈与などが挙げられるでしょう。

また、贈与を受けた人が未成年者の場合にも、その財産は一般贈与財産に分類されます。

 

 

土地の贈与税の計算例

 

上述したように、贈与税額の計算をするためには、事前に各種金額や税率などを算出しておかなければなりません。

続いては、以下の条件のもと具体的な計算例を見ていきましょう。

 

贈与された財産の種類:一般贈与財産

贈与財産価格:600万円

 

まずは贈与税の計算式をおさらいしておきましょう。

 

課税価格 = 贈与財産価額 – 110万円(基礎控除)

税額 = 課税価格 × 税率 – 控除額

 

この計算式に上述の条件を当てはめると、以下のようになります。

 

課税価格 = 600万円 – 110万円 = 490万円

 

これにより、基礎控除後の課税価格に対する税率と控除額は以下のようになります。

 

税率:30%

控除額:65万円

 

これを、税額を求めるための計算式にあてはめてみると、

 

税額 = 490万円 × 0.3 – 65万円 = 820,000

 

となります。

 

よって、このケースでの贈与税額は「82万円」となることが分かります。

 

 

生前贈与のときの節税方法

土地の贈与を受けた場合に発生する贈与税額は、高額になりやすいという特徴があります。そのため、多くの方は少しでも節税をしたいと考えるでしょう。

土地を生前贈与するケースでは以下の仕組みや制度をうまく利用することで、節税することが可能となります。

  • 110万円の控除
  • 相続時精算課税制度
  • おしどり贈与(夫婦間贈与)

 

続いて、上記3つの制度の仕組みや、制度を利用した節税方法を確認しておきましょう。

 

110万円の控除を利用する

財産の贈与とそれに伴って発生する贈与税に対しては、年間控除額として110万円が一律で差し引かれ、それによって算出した金額が贈与税の課税対象になる仕組みとなっています。

したがって、年間の贈与金額が110万円以内であれば、贈与税の課税対象額は0円となるため、贈与税自体が発生しません。

 

この仕組みを利用した節税方法としては、110万円未満の土地贈与を複数年にわたって毎年行うという方法が挙げられます。

ただし、この方法で節税をする場合には、贈与額が110万円を超えないよう毎年計算をする必要があるため、その分多くの手間がかかるということは覚えておいたほうがよいでしょう。

 

また、毎年の贈与が「定期贈与」とみなされてしまうと課税対象となることもありますので、注意が必要です。

 

相続時精算課税制度を利用する

60歳以上の祖父母・父母から、20歳以上の子ども・孫へ贈与をする場合には、「相続時精算課税制度」を利用することが可能です。

この制度を利用すると、贈与する財産の価値が2,500万円までの場合に限り、贈与税は発生しません。そのため、贈与税自体の大幅な節税が可能です。

 

一方、この制度を利用した場合には一時的に無税とはなるものの、相続が完了した時点で相続税が発生します。したがって、節税となるのは相続が完了するまでに時間がかかり、その間に相続税額が本来発生するはずだった贈与税額よりも安くなる場合などに限られてしまうのです。

 

また、この制度を利用することで、年間110万円の基礎控除に影響が生じるということも覚えておく必要があります。

 

おしどり贈与(夫婦間贈与)を利用する

贈与税を節税する方法としては、おしどり贈与(夫婦間贈与)と呼ばれる特例制度を利用するという方法も挙げられるでしょう。

この制度は婚姻期間20年以上の夫婦間で居住用不動産、または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合に適用され、基礎控除とは別に最大で2,000万円が配偶者控除となるのです。

 

ただし、この控除制度は、贈与された不動産が居住用として使用された場合にだけ適用されます。

そのため、長期的にそこに住む見込みがないと判断されると、控除の適用外となってしまうことがあります。

したがって、居住できる建物が建っていない更地の状態の土地を贈与するケースなどでは、この制度を利用するのは難しいでしょう。

 

参考 国税庁 No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除

 

 

まとめ

土地に対してかかる贈与税を計算する際には、ここでご紹介した計算式をもとに算出する必要があり、そのためには路線価や贈与財産価額、固定資産税評価額などの各数値・金額を調べておかなければなりません。

これらの情報を調べるためには多くの時間を要することもあるため、決められた期日までに贈与税額を計算しなければならない場合には、日にちに余裕を持って行動を開始するのがよいでしょう。

不動産営業実務マニュアルに興味がある方は下記の記事をご覧ください。

不動産営業実務マニュアル

不動産業務実務の基本に興味がある方は下記の記事をご覧ください。

不動産営業実務の基本

不動産業務実務の基本関連記事

この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。