低炭素住宅にメリットはあるの?低炭素住宅の条件・税金・注意点のまとめ
地球温暖化が進む昨今、地球環境に配慮した低炭素住宅について税制も後押ししています。低炭素住宅の購入を検討されるお客様も増えることが予想されます。
不動産の営業として低炭素住宅のメリットを知っておくとお客様の信頼度も上がります。今回は、低炭素住宅のメリットや条件、注意点について説明します。
低炭素住宅とは
低炭素住宅とは、市街化区域内の建築された住宅のうち二酸化炭素の排出を抑えた省エネルギー性の住宅のことを言います。都市の指定する認定基準をみたしたもののことをいい、国土省では次のように定義しています。
- 省エネルギー基準を超える省エネルギー性能を持つこと、かつ低炭素化に資する措置を講じていること
- 都市の低炭素化の促進に関する基本的な方針に照らし合わせて適切であること
- 資金計画が適切なものであること
引用:国土交通省低炭素建築物認定制度パンフレット
低炭素住宅の条件 必須項目と選択項目について
低炭素住宅と認定されるには、いくつかの条件があります。定量的評価項目という必須項目と選択的項目の条件について説明していきます。
定量的評価項目(必須項目)
省エネ法に定める省エネルギー基準よりもさらに10%以上一次エネルギー消費量を抑えるというものです。
わかりやすく言えば、二酸化炭素を排出させないために、10%以上省エネにした家にしましょうというものです。一次エネルギーとは、身の回りにあるエネルギーの元になるもので、具体的には住宅の天井、床、壁、窓の断熱性能のことを言います。
選択的項目
下の8つのうち2つ以上基準を満たしていること
条件 | 内容 | |
1 | 節水に関する機器(節水トイレや節水水栓など)の導入 | 設置する便器など半数以上に節水措置がとられていること |
2 | 雨水または雑排水設備の導入 | 貯水タンクなどの雨水の再利用の設置 |
3 | HEMSの導入 | HEMSとは電気、ガス、水道などと連携し使用料を項目単位で把握できるもの。エネルギーの見える化を行い、節電対策に必要なデータがわかること |
4 | 創エネルギー設備や蓄電池の設置 | 太陽光など再生エネルギーを利用できる蓄電池が設置されていること |
5 | ヒートアイランド対策の実施 | 大規模マンションやオフィスビルなど住宅以外に講じられる項目で、都市部の高温化を防ぐための対策のこと |
6 | 住宅劣化軽減に資する措置 | 劣化対策をすることにより住宅が長寿化すれば、解体されるときにでる産業廃棄物の総量が削減でき、結果的に環境負荷が軽減されるというもの |
7 | 木造住宅であること | 木造住宅の材料からでる二酸化炭素排出量は、RC造りの3割程度と言われている。低炭素化に貢献できる |
8 | 高炉セメント又はフライアッシュセメントを構造耐力上主要な部分に使用している | 高炉セメント又はフライアッシュセメントは、製造時二酸化炭素の排出が低い |
低炭素住宅のメリット
低炭素住宅には健康面や税金面など多くのメリットがあります。ここでは7つのメリットをご紹介します。
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電気・ガス・水道料金が安くなる
低炭素住宅は、電気代やガス代を安くすることができます。選択的項目で節水対策として節水型の便器や水栓などを設置した場合は水道水が安くなります。
また、HEMSや蓄電池として太陽光を設置すれば、電気を効率的に使用でき節約することができます。長く住むほどメリットがでてきます。 -
ヒートショックを防ぎ、健康に考慮した生活が送れる
ヒートショックとは、急激な温度変化によって血圧が大きく変動して体調に影響を及ぼす現象のことです。急激な温度変化により血圧が変動すると、結果として脳梗塞、心筋梗塞、失神などを起こすことがあります。
例えば、寒い脱衣所で服を脱いだ後暖かいお湯に浸かる時などに起こります。このヒートショックは高齢者が家庭内で死亡する原因の1/4をも占めると言われており、高齢社会には無視できない問題になっています。省エネ性能に優れた低炭素住宅では断熱性にも優れ、部屋間の温度差も少ないので、ヒートショックの予防にもなります。 -
二酸化炭素の排出を抑制でき社会的意義がある
低炭素住宅すると住宅の劣化が抑えられます。住宅が長寿化することで不必要な新築住宅の建設が減り、結果として二酸化炭素の排出が抑制され、環境負担が軽減します。
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住宅ローン控除
住宅ローン控除とは、住宅ローンを借りて居住用の不動産を購入した場合、年末のローン残高に応じて所得税や住民税が戻ってくる制度のことをいいます。
一般住宅と低炭素住宅での住宅ローン控除の違いを比較してみましょう。
住宅の種別 一般の住宅 低炭素住宅 控除対象借入限度額 4,000万(2,000万) 5,000万(3,000万) 年間控除額 40万(20万) 50万(30万) 最大控除額 400万(200万) 500万(300万) ・控除率1.0% ・控除期間10年間
・消費税8%から10%の場合の額
・( )はそれ以外の場合の額
・適用期間は居住年平成26年4月1日から平成33年12月31日
ポイントは、最大控除額です。低炭素住宅であれば一般の住宅より控除額が100万円増えます。住宅ローン減税額の計算上、年収800万以上で借入額4,300万以上の場合、低炭素住宅の住宅ローン控除のメリットがあります。
また、平成31年10月1日から消費税10%引き上げ対策として、住宅ローン減税の拡充の措置がとられています。10%の増税に伴い、控除期間が10年から13年へと3年間延長されます。
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登録免許税引き下げ
住宅を購入した際、所有権の保存登記や移転登記を行います。登記を行う場合登録免許税がかかりますが一般の住宅の場合0.15%のところ、低炭素住宅を建築、購入する場合は0.1%まで税額が軽減されます。
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フラット35の金利優遇
民間住宅ローンである「フラット35」を利用し省エネルギー性に優れた住宅を建築した場合、金利優遇措置を受けることができます。認定低炭素住宅の基準を満たした場合、フラット35 S(金利Aプラン)が利用でき、フラット35の基準金利より0.25%金利が引き下げられるというメリットがあります。
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投資型減税(すまい給付金)
一般的な住宅では、10年以上住宅ローンを組まなければ減税を受けることはできません。しかし、低炭素住宅を新築し認定された場合、住宅ローンを組まなくても所得税の減税を受けることができます。
性能強化費用として算出して支出した額の10%が所得税から控除されます。性能強化費用とは、低炭素住宅とすることにより一般の住宅より多く費用がかかってしまった場合の費用のことを言います。現金取得のみの場合は投資型減税のみ利用できますが、10年ローンを組んだ場合投資型減税と住宅ローン減税のどちらかを選択することができます。
控除対象限度額 | 650万(500万) |
控除率 | 1年間 |
控除期間 | 10% |
最大控除額 | 65万(50万) |
・消費税8%から10%の場合の額
・( )はそれ以外の場合の額 ・適用期間は居住年平成26年4月1日から平成33年12月31日 |
低炭素住宅の注意点
建築前に技術的審査料がかかる場合も
低炭素住宅を所轄行政庁に認定申請する際には、技術的審査を経て、適合証を得ておくと認定がスムーズです。その場合、技術的審査料がかかります。
建築主が事前に住宅性能評価を受ける事前審査の形と所管行政庁へ直接申請するかなどによって費用は変わりますが、10万円はかからない程度と考えて良いでしょう。
設計図や説明書など必要書類はご自身(建築主)では用意せず、建築会社がそれら書類を作成して申請する場合が多いです。その必要書類を合わせると申請コストに15~25万円程度かかります。
建築後もメンテナンスが必要
低炭素住宅を建築後も、太陽光や設備を維持するためにメンテナンスに費用がかかります。10年に1度の頻度で点検する必要があり、当然ながら修繕には費用がかかります。
また、住宅履歴情報を作成・保管しなければならず、履歴情報の作成を業者に依頼する場合は費用がかかります。認定住宅に認定されるということは、住宅履歴情報の作成が義務化されるためです。
まとめ
低炭素住宅を購入するには条件がいくつかありますが、住宅ローンや税金の面でも優遇されており、長い目で見ても節約に繋がるためメリットは多いです。
しかし、設備費用が高額になるなどの注意点もあるため、お客様へ説明していくことが大切です。
低炭素住宅のメリット・デメリットをおさえ、お客様からの信頼度を上げていきましょう。
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