建物の高さを決定するには「斜線制限」の確認が必要
高さ制限の中でも特に難しい斜線制限
建築物の高さ制限には、高度地区の設定と絶対高さ制限・日影規制・斜線制限の3種類があります。
中でも一定の勾配面による高さの限度を規制している斜線制限は特に算出が難しく、多くの宅建業者が斜線制限の計算に苦しめられています。
今回は斜線制限についてわかりやすく解説し、建物の高さを決めるうえで困らないための知識をお伝えします。
斜線制限には3種類ある
建築基準法や都市計画法で定められている斜線制限は以下の3種類です。
- 道路斜線制限
- 隣地斜線制限
- 北側斜線制限
◎道路斜線制限
道路斜線制限の目的は、道路向かい側の日照を確保することにあります。道路を挟んだ向かい側に建物が建っても既存の建物が良好な環境を維持し日照を確保できるように、向かい側境界線から一定距離の勾配面に建つ建物の高さが決まっています。
道路斜線制限は、すべての用途地域(用途地域の指定のない区域も含む)で適用されます。具体的には、住居系地域では道路向かい側境界線から1mにつき1.25m、その他の地域では1mにつき1.5m上がる斜線の内側に建築物を建てなければなりません。
前面道路幅員が10mの場合、敷地境界線に建てられる高さの限度は住居系で12.5m、その他の地域では15mとなります。
画像引用:suumo(スーモ)|道路斜線制限って建物の高さや形にどう影響するの?
敷地が角地の場合には、それぞれの道路に対して斜線制限が適用されます。
なお、道路から建物を後退して建築した場合には、後退距離に応じて斜線制限が緩和されます。
◎隣地斜線制限
隣地斜線制限の目的は、隣地の日照および通風を確保することにあります。
基本的には道路斜線制限と同じ算出方法をしますが、隣地斜線制限の場合には、無条件に隣地境界線より垂直に20mの高さが与えられます。さらに特定行政庁で指定された地域では31mとなります。
具体的な隣地斜線制限の内容は、住居系地域(第1種低層住居専用地域・第2種低層住居専用地域・田園住居地域以外)は隣地境界線上20mの高さで隣地境界線から1mにつき1.25m、商業系・工業系地域の場合は隣地境界線上31mの高さで1mにつき2.5m上がる斜線の内側での建築が必要です。
第1種低層住居専用地域・第2種低層住居専用地域・田園住居地域が隣地斜線制限の適用外になっている理由は、これら3地域ではもっと厳しい絶対高さ制限の規制があるためです。
◎北側斜線制限
北側斜線制限の目的は、北側隣接地の日照を確保することにあります。
北側の前面道路境界線を基準にして、第1種低層住居専用地域・第2種低層住居専用地域、田園住居地域では北側境界線上5m、第1種中高層住居専用地域・第2種中高層住居専用地域では北側境界線上10mの高さで、1mにつき1.25m上がる斜線の内側での建築が必要となります。
画像引用:多気町ホームページ|建築形態制限の指定状況
第1種中高層住居専用地域と第2種中高層住居専用地域に日照規制が適用されている場合は、より規制の厳しい日影規制が適用されるため北側斜線制限は適用されません。
まとめ
今回は建物の高さを決めるうえで避けては通れない斜線制限について解説しました。
斜線制限はなかなか取り組みづらい項目のひとつですが、道路斜線制限・隣地斜線制限・北側斜線制限をひとつひとつ丁寧に考えれば、決して難しい計算ではありません。
冷静に判断して、間違いのない計算をしましょう。
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