財産の共有とは|各共有者の権利と義務・共有物の分割方法など
民法における「共有」は、所有権を共同で保有していることを指します。
最近では、社会の男女平等が進み、夫婦で対等に自宅を共有するなど、共同所有権を選択する人が増えています。また、相続においても、遺産分割協議が完了するまでは相続人全員の共有状態となるなど、生活に身近な問題です。
この試験範囲では、覚える知識量はそれほど多くありませんので、基本的なルールを確実に押さえ、宅建試験で得点できるようにしましょう。
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「共有とは/共有者の権利/共有物の分割」の試験科目
権利関係
「共有とは/共有者の権利/共有物の分割」が含まれる試験分野
共有
「共有とは/共有者の権利/共有物の分割」の重要度
★★☆☆☆
「共有とは/共有者の権利/共有物の分割」過去10年の出題率
30%
2020年宅建試験のヤマ張り予想
このテーマの出題率は30%と決して高くはありません。ただ、直近では2017年・2018年と出題されており、例年よりやや出題率が高くなっています。
また、このテーマの問題は、基礎的なルールを覚えておくだけで確実に正解できる分野です。覚えるべき知識量もそれほど多くありませんので、出題される予定で無難に学習しておくといいでしょう。
「共有とは/共有者の権利/共有物の分割」の解説
共有とは
「共有」とは、1つのものを複数人が共同で所有することです。共有している場合、各共有者が共有物の全部を使用することができます。
そのため、1人の共有者が他の共有者に無断で共有物全部を占有することも可能です。
ただし、所有権は分けて持っている状態です。共有における各共有者の所有権の割合を「持分」と言います。
また、共有物の全部を使用できるとはいえ、「持分に応じて使用できる」と定められています。
持分の割合は、共有者同士で自由に決めることができます。なお、持分を特別に決めない場合や持分が不明な場合は、持分は平等と推定されます。
共有者の1人が持分を放棄した場合、または共有者の1人が死亡し相続人や特別縁故者もいない場合には、その持分は他の共有者に帰属します。
共有者の権利
共有物に対するさまざまな行為を行うのに、それぞれの共有者に与えられる権利は、どのように規定されているのでしょうか。各共有者が行う行為について、共有者同士で同意を得る必要があるのでしょうか。
各共有者に与えられる権利は、行為の内容により、以下のように定められています。
行為の分類 | 行為の定義 | 具体例 | 各共有者の権利 |
保存行為 | 現状を維持する行為 | 共有物の修理、不法占有者への明渡し請求など | 各共有者が単独で行える |
管理行為 | 共有物の性質を変えない程度の利用(収益を上げる)
改良(価値を向上させる)行為 |
賃貸借契約やその解除、小規模な造作など | 持分価格の過半数の同意があれば行える |
変更行為 | 共有物の性質または形状を変える行為 | 共有物の処分、共有物の増改築 | 全員の同意があれば行える |
管理行為にかかる費用は、持分に応じて共有者全員で負担するとされています。
また、ある共有者が管理費用の負担義務を1年以内に履行しない場合は、他の共有者が相当の償金を支払って、その共有者の持分を取得することができます。
なお、ある共有者が自分の持分を処分するのに、他の共有者の同意を得る必要はありません。
共有物の分割
各共有者は、いつでも自由に共有物の分割を請求することができます。
期間限定で分割をしない旨の特約を結ぶことも可能です。その場合、分割禁止期間は5年以内でなくてはいけません。
この期間は更新することができ、更新後の分割禁止期間も5年以内とします。
共有物の分割方法は、共有者同士で協議し決定します。合意に達しない場合には、裁判所に分割を請求することも可能です。
・共有物の分割方法
- 現物分割…共有物そのものを分割する方法 例:1筆の土地を共有者の人数分に分筆する
- 代金分割…共有物を売却・換金して分割する方法
- 価格賠償…共有者1人が単独で所有権を得て代わりに他の共有者に代金を支払う方法
「共有とは/共有者の権利/共有物の分割」に関連する法律
この項目に関連する法律は以下のとおりです。
民法 (令和2年3月1日時点)
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
各共有者の持分は、相等しいものと推定する。
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。 2 共有者が一年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。
共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。 2 前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から五年を超えることができない。
共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。 2 前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。 |
実際に過去問を解いてみよう
問題:
次の記述が民法の規定及び判例において正しいか誤りか答えなさい。
共同相続に基づく共有物の持分価格が過半数を超える相続人は、協議なくして単独で共有物を占有する他の相続人に対して、当然にその共有物の明渡しを請求することができる。
答え:×(誤り)
解説
各共有者は、持分の程度に応じて、共有物の全部を使用する権利を有します。
そのため、1人の共有者が無断で共有物を占有することだけでは違反とはいえず、他の共有者が当然のこととして共有物の明渡し請求をすることはできません。
「共有とは/共有者の権利/共有物の分割」ポイントのまとめ
この項目で押さえておくべきポイントは以下のとおりです。
- 各共有者は共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる
- 特別な取り決めがない場合、各共有者の持分は平等と推定される
- 各共有者が自分の持分だけを処分するのに、他の共有者の同意を得る必要はない
- 共有物について、保存行為は共有者が単独で行える
- 共有物について、管理行為は各共有者の持分価格の過半数の賛成で行える
- 共有物について、変更行為は共有者全員の同意を得る必要がある
- 管理費用は共有者全員で持分に応じて負担する。
- 各共有者はいつでも共有物の分割を請求することができる
- 共有物を分割しない旨の特約を結ぶ場合は、5年以内の期間を定める。
最後に
共有についての問題は、出題率こそ高くはないものの、宅建士となってからの実際の業務では必須となる知識です。また、それほど知識量が多くないため、習得しやすい分野です。
そのため、この分野の学習はスピーディに済ませ、他の分野に時間をかけたいところです。基礎的なルールを整理しながら学習すると、覚えやすいでしょう。
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