建物滅失登記を怠ると10万円以下の罰金が発生|申請方法・必要書類・費用を確認
住民がいなくなった空き家を解体したときには、その建物を物理的に消し去るだけでなく、登記簿からも消し去られる必要があります。
しかし実際には、建物がなくなっても登記情報だけが残存しているケースがよく見受けられます。
解体した建物の登記をそのままにしておくと、どんな問題が生じるのでしょうか。
今回は不動産の滅失登記について解説します。
滅失登記とは
滅失登記は「めっしつとうき」と読みます。意味は不動産の登記情報を除去することです。
その存在を登記上からなくすときに、法人では「解散登記」および「清算結了登記完了」を行います。不動産登記でこれにあたるのが「滅失登記」です。
不動産の滅失登記は土地・建物の両方が対象になりますが、建物をなくせても土地をなくすことはできません。そのために事実上、滅失登記と言えば建物滅失登記を指します。
建物滅失登記が必要なケース
建物滅失登記が必要になる状況は、主に以下のケースです。
- 建物を解体したとき
- 火災で建物が焼失したとき
- 存在しない建物が登記簿に記録されていたとき
なお上記の「1.建物を解体したとき」の際は、滅失登記以外にも手続きが必要です。
自治体により補助金の適用などが受けられるところもあるので、建物を解体する前に概要をつかんでおきましょう。
建物を解体したときには、解体後1ヶ月以内に滅失登記を行う義務があります。滅失登記を怠ると10万円以下の罰金が登記上の所有者に課せられます。
滅失登記を怠った場合のデメリット
滅失登記をしないと罰金がかかるだけでなく、他にもいろいろなデメリットが生じます。主に想定されるデメリットは以下の4つです。
建物滅失登記の申請方法
滅失登記は、その建物の所在地を管轄している法務局で申請をします。郵送での申請書送付も可能です。
申請書を郵送する際は、申請書と返送用封筒を入れた封筒に「不動産登記申請書在中」と書き、簡易書留で送ります。このとき返送用封筒に切手を貼り忘れないように注意してください。
滅失登記は誰が申請するか
滅失登記の申請を誰が行うかは、主に以下の3つから選択します。
- 所有者が行う
- 相続人が行う
- 土地家屋調査士に依頼する
以下ではそれぞれのやり方や費用について説明します。状況に合わせて誰が申請するかを選びましょう。
所有者が行う
滅失登記は不動産登記の中でも比較的簡単な手続きのため、プロに依頼しなくても自分で行うことが可能です。滅失登記は無料なので、自分でやれば費用もほとんどかかりません。
法務局では登記手続きについて質問や相談ができる相談コーナーを設けていますから、はじめての登記手続きに不安な人でも安心できます。
ほとんどの法務局では登記相談は予約制になっています。あらかじめ管轄地域の法務局に電話して予約をとる必要があります。
画像引用:東京法務局|窓口での登記手続きに関するご案内は事前に予約が必要です
相続人が行う
建物の所有者が既に亡くなっている場合には、所有者に代わって相続人が滅失登記を行います。あらかじめ被相続人から相続人に名義変更をする必要はありません。
ただし相続人が滅失登記をする場合には、申請人が正当な相続人である旨を証明するための書類添付が必要です。そのため登記簿謄本や除籍謄本など、相続関係の証明書類を取得するための費用がかかります。
土地家屋調査士に依頼する
日頃いろいろと忙しくて申請書類の作成時間もとれない人は、土地家屋調査士に手続きを依頼しても良いです。所有者移転などの一般的な登記手続きは司法書士に依頼しますが、滅失登記の場合は土地家屋調査士への依頼となります。
土地家屋調査士は現在の登記状態と土地の現況を調査した上で、所有者に代わり滅失登記申請を行います。土地家屋調査士への報酬相場は3~5万円程度です。
滅失登記の流れ
◎所有者自身もしくは相続人が滅失登記を行う場合
ステップ1:実際に建物が登記されているか確認する
ステップ2:滅失登記申請書類を作成する
ステップ3:添付書類を用意する
ステップ4:法務局窓口に書類を提出する(郵送も可)
ステップ5:登記完了証を受け取る
登記完了証とは申請した登記が完了したことを証明する書類です。再発行できないため、紛失すると再び手に入れることはできません。ですが登記完了証には権利関係などの法的な証明力はないため、紛失してもさほどのダメージはありません。
法務局に申請書類が到着してから登記が完了するまでにかかる日数はおよそ1週間です。申請に不備がある場合には登記完了予定日の翌日以降に繰り延べされます。
画像引用:法務局|東京法務局各庁別登記完了予定日(令和1年12月6日(金)~令和1年12月16日(月)申請分)(板橋出張所の例)
滅失登記を土地家屋調査士に依頼すれば、上記ステップ1~5までをすべて土地家屋調査士が代行してくれます。その場合の流れは以下のとおりです。
◎滅失登記を土地家屋調査士に依頼する場合
ステップ1:土地家屋調査士と契約を締結する
ステップ2:依頼者の印鑑証明と委任状を用意し、土地家屋調査士に渡す
ステップ3:土地家屋調査士が現況確認~申請手続きまで代行する
ステップ4:登記完了証を受け取る
必要書類
滅失登記を自分で行う場合に必要な書類は以下のとおりです。
1. 建物滅失登記申請書
画像引用:法務局|23)建物滅失登記申請書
2.建物滅失証明書
画像引用:法務局|23)建物滅失登記申請書
建物がなくなった理由が解体でなく焼失の場合には、消防署の罹災証明書をもって証明します。
画像引用:福岡市|福岡市り災証明書等発行規程
3.建物を解体した請負人の登記事項証明書および印鑑証明書
請負人が法人で、申請書に請負人の会社法人等番号が記載されているときは(3)の登記事項証明書と印鑑証明書の添付は不要です。
相続人が建物所有者に代わり滅失登記を行う際には、上記の書類に加えて以下の書類を添付します。
4.所有者の戸籍謄本(もしくは除籍謄本)
5.相続人の戸籍謄本(所有者の戸籍謄本に相続人の名前が記載されている場合は不要)
6.所有者の住民票の除票(もしくは戸籍の附表)
滅失登記が完了した後の登記簿
滅失登記が完了すると、その建物の登記は閉鎖します。建物の登記簿の表題部に抹消の表示がされ、閉鎖登記簿として法務局内で保存されています。希望すれば管轄の法務局で取得できます。
閉鎖登記簿の保存時間は、建物の場合は30年間です。なお土地の閉鎖登記簿は50年間保管されます。
滅失登記が完了すると法務局から各市区町村役場へ自動的に通知されるため、課税台帳の変更をするための役所手続きをする必要はありません。
まとめ
滅失登記は決して難しい手続きではありませんが、建物が物理的に見えなくなっているだけに、つい忘れがちな手続きでもあります。
土地を売却したいと希望されるお客様がいらしたときに、調べてみると建物の登記情報が残っていた…という登記忘れもよくありがちです。
滅失登記をしないと土地の売却ができない旨をご説明し、1日も早く申請を行って頂くようにお願いしましょう。
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