家屋解体に関する手続きと利用できる補助金・制度まとめ

投稿日 : 2019年11月28日/更新日 : 2023年02月03日

家屋の解体工事の際にはどのような手続きが必要なのか

被相続人が親や親戚から古い物件を相続した際に、「既に家を持っている」、「相続した物件の所在地が地方にある」などの理由から、売却を希望される場合もあります。

 

家屋が古い場合には解体して更地の状態に戻してから土地を売却するという方法があります。

では、古い家屋の解体工事を行う場合にどのような手続きが必要なのでしょうか。

本記事では解体工事に必要な手続きや費用、利用できる補助金や制度に関して解説いたします。

 

解体工事を依頼するために必要な手続き

 

画像引用:建物の解体工事に必要な主な手続き – 国土交通省

 

発注者(=物件を解体したい被相続人)が行う手続き

 

1. 建設リサイクル法に伴う届け出

平成14年5月以降に施行された建設リサイクル法、正式名称「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」により、延床面積80㎡以上の解体を行う場合には届け出が義務付けられました。

工事着手の7日前までに、建設部局への届け出が必要です。

 

2. 大気汚染防止法・環境確保条例に伴う届け出

解体・改造・補修する物件が、石綿を含有する吹付け材や保温材等を使用していた場合、大気汚染防止法に基づく「特定粉じん排出等作業実施届出書」の提出が必要です。

また、次の規模要件のいずれかに該当する場合には、環境確保条例に基づく「石綿飛散防止方法等計画届出書」も合わせて提出します。

・使用されている石綿含有吹付け材の面積が15㎡以上

・建築物の延べ面積(建築物以外の工作物の場合には築造面積)が500㎡以上

提出期日は工事着手の14日前、提出先は環境部局です。

 

3. 家具の処分やライフラインの停止

工事前に家の家具や荷物を処分し、ライフライン(電気・ガス・上下水道・インターネットなど)を停止します。水道に関しては工事の前に止めてもよいか解体業者に確認をとります。

 

元請業者が行う手続き

工事の依頼先である元請業者が行う必要のある手続きは以下です。

 

1. 発注者への説明

建設リサイクル法及び大気汚染防止法・環境確保条例に伴う届け出が必要である旨を発注者に対して説明します。

これらの届け出は原則として発注者が提出するものですが、業者が代行することも可能です。代行を依頼された場合は発注者からの「委任状」が必要です。

また、発注者が対象ではないですが、自治体によっては近隣住民への説明が条例で義務付けられているところもあります。

 

2. 建築基準法に伴う「建物除却届」の提出

建築基準法第15条および建築基準法施行規則第8条により、建築物の建築・除却を行う場合は、該当建築物または該当工事に係る部分の床面積の合計が10㎡以内の場合を除いて、建築主事を経由して都道府県知事に届け出なければなりません。期限は解体工事を行う前日まで、届け出先は建設部局です。

 

3. 安衛則・石綿則に伴う届け出

特定元方事業者(とくていもとかたじぎょうしゃ)は、所属する労働者及び関係請負人の労働者が同一の場所で作業を行い、以下のいずれかに該当する場合に労働基準監督署に対して「事業開始に関する報告」をする必要があります。

① 建設工事の元請負人となった場合

② 統括安全衛生管理義務者として指名された場合

提出期限は、①の場合は作業開始後、②の場合は指名後できるだけ早めに提出することになっています。

※作業に従事している労働者数が常時10人未満の場合は報告を省略可能

下記関連法規に基づいて、対象物件が石綿を含有する吹付け材や保温材等を使用していた場合、解体工事開始の14日前までに「アスベスト(石綿)工事の計画書」を、同様に労働基準監督署に対して提出する必要があります。

  • 労働安全衛生法第88条第3項 労働安全衛生規則第90、91条(安衛則)
  • 労働安全衛生法第100条 石綿障害予防規則第5条(石綿則)

下請け業者が行う手続き

実際に解体工事を実施する下請け業者が行う必要のある手続きは以下です。

 

1. 道路使用許可申請

解体する対象物件に面している道路の幅が狭く、大型車両やトラックを駐車するスペースがなく道路上に駐車する必要があるときは、道路使用許可の申請が必要です。解体工事を行う業者は、工事開始前にできるだけ早く管轄する警察署に申請を行います。

 

解体工事後に必要な手続きはあるのか

解体工事後には「建物滅失登記」という手続きが必須です。解体工事が終了したら1ヶ月以内に、所轄の法務局にて滅失登記の申請を行います。

 

画像引用:不動産登記の申請書様式について

 

手続きは、「発注者自身が行う」、「司法書士に依頼する」という2つの方法があります。専門家に依頼した場合は約4万円前後の費用が必要になります。

注意しなければならないのは、建物滅失登記の手続きを怠った場合、最大で10万円のペナルティが発生し、存在しない建物に対して固定資産税が課税され続けます。

 

利用できる補助金や制度など – 各自治体等での補助制度

自治体等によっては古くなった物件や空き家の解体工事に対して、補助制度を設けているものがあります。いくつかの例をご紹介します。

 

・【北海道】苫小牧市

苫小牧市内に存在する空き家等を解体する場合に、申請を行うことで市から補助金が支払われます。補助金額は工事費の1/2(上限50万円)となっています。詳しい条件等は市のHPを確認してください。

 

空家等解体補助金の制度内容と手続きについて – 苫小牧市役所

 

・【神奈川県】横須賀市

横須賀市では2種類の補助金を利用できます。

1. 空き家解体費用助成事業

市職員による老朽度判定の結果、所定の点数を上回る住宅であり、横須賀市内の解体工事事業者による解体工事の場合、解体工事費用の1/2(上限35万円)までの補助金を利用できます。

2. 旧耐震空き家解体助成事業

横須賀市内にある空き家のうち、旧耐震基準(昭和56年5月以前)により建築され、その後耐震改修がされていない住宅かつ過去5年以上使用していない場合、解体工事費用の1/2(上限15万円)までの補助金を利用できます。

 

空き家に対する解体助成制度 – 横須賀市

 

・【兵庫県】神戸市すまいの総合窓口すまいるネット

神戸市すまいとまちの安心支援センター「すまいるネット」では、老朽空き家や、その予備軍である建替等が困難な老朽家屋の早期解体を促進するための補助制度を設けています。

神戸市内にある昭和56年5月31日以前に着工された家屋の解体工事に対して、解体費の1/3以内かつ50万円を上限とした補助金が支給されます。

 

神戸市老朽空家等解体補助事業 – 神戸市すまいの総合窓口すまいるネット

 

まとめ

解体工事の手続きと、利用できる補助金や制度の例をご紹介しました。

工事前の手続きは数が多く複雑であり、工事後の「建物滅失登記」は怠るとペナルティが発生するため、発注者に負担や損失を与えないためにしっかりとした知識が必要です。

また、少しでも損をさせないためにも、各自治体の補助金や制度の情報は事前に調べておきましょう。

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