不動産業界のビジネスモデル|日本の課題と将来性を解説
「不動産会社がどのようなビジネスを展開しているのか」
不動産業界を志す学生の方の中には、このような疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか?
現在の不動産業界は大いに複雑化し、様々なビジネスモデルによって収益を上げる企業が存在します。
本記事では不動産業界のスタイルとビジネスモデルについて解説します。不動産業界の現状と将来性についても触れますので、不動産業界を目指している方はぜひ読み進めてみて下さい。
不動産業界のスタイルとビジネスモデル
現在の不動産業界で主流になっているビジネススタイル・ビジネスモデルについて紹介します。
以下のようなビジネスに分類されています。
■不動産業界のビジネス分類
- 不動産開発
- 不動産流通業
- 不動産投資
- 不動産管理
不動産開発
不動産開発は、法人や個人から買い取った土地に、住宅・マンション・商業施設などを建設して販売する事業のことです。
土地を造成してそのまま土地を売却することもありますが、多くは大規模商業施設やオフィスビルを建設して売買・賃貸につなげることになります。
設計段階からはさまざまな企業との協力・協業が欠かせません。
建設会社(ゼネコン)や設計事務所が設計を行いますが、施工はゼネコン、販売は不動産販売会社、賃貸は不動産管理会社と協業しています。
不動産開発業者(デベロッパー)は、プロジェクトの進行管理を担うマネージャーの役割です。
不動産流通業
不動産流通業者は、第三者が所有する不動産の売買や賃貸の仲介をする業者です。
大きく分けて以下の2種類に分かれます。
- 不動産売買
- 不動産賃貸
不動産売買
個人・法人の不動産の売り手と買い手の間を取り持ち、契約まで進めることをサポートする業種です。
売買契約の場合、仲介した不動産会社が片方の依頼者から受け取る仲介手数料は「宅地建物取引業法」で算出方法と上限額が以下のように定められています。
- 物件の売買価格が400万円を超える部分:対象額の3パーセント+消費税
- 物件の売買価格が200万円超~400万円以下の部分:対象額の4パーセント+消費税
- 物件の売買価格が200万円以下の部分:対象額の5パーセント+消費税
ビジネスの特性上、取り扱う不動産は中古になります。買主と売主それぞれに対して営業を行い、双方から仲介手数料を得る取引方法を「両手取引」、片方から手数料を得るモデルを「片手取引」と呼びます。
■両手取引
■片手取引
不動産賃貸
自社で保有している不動産物件を貸し出すことで収入を得るビジネスモデルです。
賃貸仲介業者の場合は自社で保有していない物件を紹介して仲介手数料を受け取ります。
仲介事業で重要になるのが「利回り」という考え方です。不動産の利回りには、表面利回りと、実質利回りがあります。
- 表面利回り=年間収入÷購入価格
- 実質利回り=( 年間収入-年間支出 )÷ 購入価格
不動産流通について詳しくは以下の記事を参考にしてみてください。
あわせて読みたい:宅建業者はどのような立場で不動産に関わるのか|取引形態と役割を紹介
不動産投資
文字通り、不動産に投資して利益を得るビジネスのことです。
個人・法人から資金を募ってビルの運用で家賃収入等を獲得し、利益の一部を投資家に還元するビジネスモデルを展開しています。
不動産を証券化することによって投資家が小口で投資できるようになり、資金調達が容易になります。
あわせて読みたい:【LIFULL×iYell対談】自由な不動産投資を実現する「STO」とは?
不動産管理
文字通り、不動産を管理する業務です。一般的には「マンションの管理人」などが知られています。
「清掃や設備のメンテナンス」「管理組合・テナントとの調整業務」「修繕維持」といった内容が業務であり、大手企業が行う事業というよりは系列子会社に一任する事業という位置づけです。
ただし、近年は新規の不動産開発が難しくなっていることもあり、「既存不動産の価値を高める」「管理業務を通じて安定したインカムゲインを得る」というビジネスとして注目されています。
主な不動産会社について詳しくは以下の記事も参考にしてみてください。
あわせて読みたい:【2022年最新版】大手不動産会社ランキング|仲介実績が多い会社を比較!
日本の不動産業界の現状とは
総務省が公表する「平成30年住宅・土地統計調査」によれば、空き家が「848万9千戸」と、総住宅数(6240万戸)の13.6%を占めて過去最高を記録しています。
住宅が余っている状況にもかかわらず、新築住宅が供給され続けていることも見逃せません。2013年と比べ,178万戸(2.9%)も増加しています。
さらに「両手仲介を利用した囲い込み」が横行しているのも問題です。「囲い込み」とは、自社が紹介できる買い手を紹介することで、売り手と買い手の両方から手数料を得ることを指します。
囲いこみを成功させるために「物件紹介サイトへの登録を遅らせる」「値段を相場より高くする」などして、自社の紹介以外の買い手がつかないようにする方法が行われることもあるようです。
ゆえに、「日本の不動産業界は透明性がない」と言われてしまっている現状があります。
SREホールディングスが導入した米国のビジネスモデルとは
2019年に「ソニー不動産」から名称変更されたSREホールディングス。
当時のSREホールディングスが打ち出したビジネスモデルが「常識外れ」とも「画期的」ともいわれており、不動産業界に大きな影響を与えました。
SREホールディングスが目指したのは「消費者同士で取引が完結するシステム」です。
CtoCとも呼ばれ、最近では「メルカリ」「ヤフオク」を始めとしたフリーマーケットやオークションサイトで導入されています。
このビジネスモデルを不動産業界に導入することで仲介業者が不要になり、仲介手数料が発生しないことで囲い込みもできなくなります。日本の不動産業界では売り手からも買い手からも手数料を受け取る「両手仲介」が未だに一般的に行われている現状があります。
アメリカでは両手仲介は禁止され、買い手と売り手が直接取引できる「CtoC」のサービスが整っています。
SREホールディングスが導入したビジネスモデルは世界標準に近い形態といえるでしょう。
最近の動きでは、2022年9月に株式会社ワークスベイ×SREホールディングスが共同開発した「KUSABI」という個人間売買プラットフォームが発表されています。
ただ、従来の仲介業者の仕事を奪うことから、批判も起きています。消費者の点からみても、売却を自分で行うのは簡単ではなく、不動産という高額なものを個人で取引するのはハードルが高いという懸念もあります。
不動産業界のビジネスモデルの将来性は
不動産業界のビジネスモデルは、前述した従来型のビジネス以外にも、新興の不動産テック企業の勢いが増しています。
たとえばアメリカでは、物件を売りたい人がオンラインで情報を入力するとAIによる査定が瞬時に行われ、商談がまとまれば買い取りが行われるビジネスが登場しました。
AIを活用することで査定がスピーディーな上に、数日以内に現金で買い取ってもらえるのがメリットです、
今後このようなテック化の流れが、日本の不動産業界に浸透することも予想されます。
たとえば管理業務においては画像認識技術などを活用することで、物件の傷みを早期に発見できるようになり、修繕費用の削減も実現できるでしょう。
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まとめ
不動産業界のビジネスモデルは「不動産開発」「不動産流通」「不動産管理」など多岐にわたり、収益構造もさまざまです。
日本の不動産業界では一部で「両手仲介」などの問題もあり、先進国のなかで透明性の低さが指摘されています。
今後は世界標準のビジネスモデルが導入される可能性もあり、ビジネスモデルの変遷については注意深く観察していきましょう。