宅地建物取引士とは|宅建士の専門業務・倫理規範・資格試験など解説

投稿日 : 2020年05月21日/更新日 : 2023年01月24日

宅地建物取引士(宅建士)となるには、宅建士とは何か、どのような業務に従事するか、宅建士とはどうあるべきかを理解していなくてはいけません。

根本的なテーマですが、宅建試験で問われることが多い問題ですので、確認しておきましょう。

また、宅建試験を始め、正式な宅建士となるためのステップもご紹介します。

 

住宅ローン業務を軽減したい
不動産事業者様はこちら
\ 住宅ローン業務を軽減したい不動産事業者様はこちら/
資料請求・お問合せはこちら

宅建受験者はここをチェック!

「宅地建物取引士とは/宅建士になる方法」の試験科目

宅建業法

「宅地建物取引士とは/宅建士になる方法」が含まれる試験分野

宅地建物取引士

「宅地建物取引士とは/宅建士になる方法」の重要度

★★★☆☆  宅建士になるための前提知識

「宅地建物取引士とは/宅建士になる方法」過去10年の出題率

50%

 

2020年宅建試験のヤマ張り予想

このテーマの問題は、必ず出題されるわけではありません。しかし、宅建士であれば理解していることが前提となる内容です。出題されたら必ず正解できるようにしましょう。

また、要点も覚えやすいので、合格ラインを超えるためには確実に得点しておきたい問題です。

 

「宅地建物取引士とは/宅建士になる方法」の解説

宅地建物取引士(宅建士)とは

宅地建物取引士(宅建士)とは、不動産取引が適切に行われ、取引当事者(売主・買主・貸主・借主など)の権利が守られるようサポートする職業であり、不動産取引における専門的な事務を行うことができる国家資格です。

宅建士が不動産取引をサポートし、専門事務を請け負うことで、不動産取引で起こりやすい様々なトラブルを防ぐことができます。

 

◆宅建士を介さない個人間取引で起こりやすいトラブル例

  • 契約後に目的物が条件に合わないことが分かった
  • 口頭で合意したものと金額が違った など

 

宅建士が専門で行う事務

 

不動産業者が不動産売買を行ったり、顧客の媒介(仲介)などを行う場合に、以下の事務を行う必要があります。これは、宅地建物取引士でなければ行えない事務です。

  1. 重要事項説明
  2. 重要事項説明書(35条書面)への記名押印
  3. 契約書(37条書面)への記名押印

なお、上記の契約書には宅建士の記名押印が必要ですが、顧客への契約書の発行と内容説明については宅建士でなくても行うことができます。

また、宅建士は事業所の専任である必要はなく、非正規雇用やフリーランスの宅建士でも行うことが可能です。

宅建士に求められる基本の倫理規範3ヵ条

2014年に宅建業法が改正され、宅建士個人が持つべき基本的な職業倫理を規定した3ヵ条が追加されました。

具体的な説明は、国土交通省が公開している「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」に記されています。

 

①宅地建物取引士の業務処理の原則

宅建士は不動産取引の専門家として、取引当事者の利益保護と円滑な不動産の流通に貢献するように、公正かつ誠実に法律で定められた事務を行い、関連業務の従事者(リフォーム会社・瑕疵保険会社・金融機関など)と連携しなければいけません。

 

②信用失墜行為の禁止

宅建業法では、宅建士に対して「宅建士という職業・資格の信用や品位を害する行為」を禁止しています。この規律は、職務内に限らず、職務に直接関係しない私的行為においても適用されます。

それぞれの宅建士は、1人の取引相手からの信用だけでなく、社会からの信用・信頼も守らなくてはいけないためです。

 

◆宅建士の信用や品位を害する行為の例

  • 顧客や取引相手の秘密漏洩
  • 威圧・脅迫行為
  • 差別的行為
  • 虚偽の説明・詐欺行為
  • 悪質な勧誘 など

③知識及び能力の維持向上

宅建士は、不動産取引の専門家として、法的事務を扱う資格を与えられます。

ただ、法律は随時改正されるものですので、常に最新の法令を的確に把握しなくてはいけません。また、法律改正などに合わせて実務でも変更対応する必要があります。

そのため、資格取得後も知識の更新や実務能力の維持向上に努める必要があります。

宅建士になるまでのステップ

 

宅建士になるには、次のような過程で資格を取得し、証明書の交付を受ける必要があります。

宅地建物取引士資格試験(都道府県ごとに実施)を受験する

合格

宅地建物取引士資格試験合格者」となる(一生有効)
国交省が定める登録実務講習の受講(2年以上の実務経験がある者は不要)
都道府県知事の登録を申請する

登録基準をクリア

宅地建物取引士資格者」となる(一生有効)
都道府県知事が指定する法定講習を受講する

受講が完了すると

宅地建物取引士証」(有効期限5年)が交付され、正式に宅建士となる

 

資格試験で不正があった場合の措置

不正手段を使って資格試験を受けたり受けようとした場合、都道府県知事指定の試験機関によって合格を取り消されたり、受験を禁止される可能性があります。

また、それ以降、都道府県知事によって3年以内の期間が定められ、受験を禁止されることがあります。

「宅地建物取引士とは/宅建士になる方法」に関連する法律

「宅地建物取引士とは/宅建士になる方法」に関する法律には、以下の条文が挙げられます。

宅地建物取引業法(令和元年9月14日時点)

第15条(宅地建物取引士の業務処理の原則)

宅地建物取引士は、宅地建物取引業の業務に従事するときは、宅地又は建物の取引の専門家として、購入者等の利益の保護及び円滑な宅地又は建物の流通に資するよう、公正かつ誠実にこの法律に定める事務を行うとともに、宅地建物取引業に関連する業務に従事する者との連携に努めなければならない。

 

第15条の2(信用失墜行為の禁止)

宅地建物取引士は、宅地建物取引士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。

 

第15条の3(知識及び能力の維持向上)

宅地建物取引士は、宅地又は建物の取引に係る事務に必要な知識及び能力の維持向上に努めなければならない。

 

第16条(試験)

都道府県知事は、国土交通省令の定めるところにより、宅地建物取引士資格試験(以下「試験」という。)を行わなければならない。

2 試験は、宅地建物取引業に関して、必要な知識について行う。

3 第十七条の三から第十七条の五までの規定により国土交通大臣の登録を受けた者(以下「登録講習機関」という。)が国土交通省令で定めるところにより行う講習(以下「登録講習」という。)の課程を修了した者については、国土交通省令で定めるところにより、試験の一部を免除する。

 

第17条(合格の取消し等)

都道府県知事は、不正の手段によつて試験を受け、又は受けようとした者に対しては、合格の決定を取り消し、又はその試験を受けることを禁止することができる。

2 指定試験機関は、前項に規定する委任都道府県知事の職権を行うことができる。

3 都道府県知事は、前二項の規定による処分を受けた者に対し、情状により、三年以内の期間を定めて試験を受けることができないものとすることができる。

 

実際に過去問を解いてみよう

問題:

宅地建物取引業法(以下この問いにおいて「法」という。)に規定する宅地建物取引士及び宅地建物取引士証(以下この問いにおいて「宅地建物取引士証」という。)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。(平成23年本試験 問28より抜粋)

  1. 宅地建物取引業者は、20戸以上の一段の分譲建物の売買契約の申込みのみを受ける案内所を設置し、売買契約の締結は事務所で行う場合、当該案内所には専任の宅地建物取引士を置く必要はない。
  2. 未成年者は、成年者と同一の行為能力者を有していたとしても、成年に達するまでは宅地建物取引士の登録を受けることができない。
  3. 宅地建物取引士は、法第35条の規定による重要事項説明を行うにあたり、相手方から請求があった場合のみ、宅地建物取引士証を呈示すればよい。
  4. 宅地建物取引士資格試験に合格した日から1年以内に宅地建物取引士証の交付を受けようとする者は、登録している都道府県知事の指定する講習を受講する必要はない。

答え:4〇

 

解説

合格して間もない4の場合の人は最新の法律知識があるため、法定講習を受講せずとも宅地建物取引士証の交付を受けることができます。

 

「宅地建物取引士とは/宅建士になる方法」ポイントのまとめ

「宅地建物取引士とは/宅建士になる方法」の試験範囲で重要なポイントを、以下にまとめました。

  1. 宅地建物取引士とは、不動産取引における専門的な事務を行うことができる国家資格である
  2. 宅建士にしか行えない事務は、重要事項説明、重要事項説明書・契約書への記名押印である
  3. 顧客への契約書の作成と内容説明は宅建士でなくても可能である
  4. 宅建士は事業所の専任である必要はない
  5. 宅建士の倫理規範は、公正誠実義務、関連従事者との連携、信用失墜行為の禁止、知識・能力の維持向上である
  6. 宅建士になるには、資格試験に合格し、登録実務講習の受講または2年以上の実務経験を経て、資格者登録を行い、宅地建物取引士証の交付を受ける
  7. 「宅地建物取引士資格試験合格者」としての権利は、一生有効である
  8. 資格試験で不正を行った場合、合格取消または受験禁止、それ以降3年以内の受験禁止となる

 

最後に

不動産は財産としての価値が大きいため、その取引や事務を行う宅建士には社会的信用が求められ、たとえ私的行為であっても、信用失墜行為は禁じられています。宅建士になったら、常に身を引き締めていなくてはいけないのです。

ただ、責任が大きい分、やりがいもとても大きい職業です。

また、近年は副業として働く宅建士も増えており、宅建士の資格があればライフスタイルの選択肢も広がります。

受験生の皆さんは、ぜひ頑張って試験勉強に励んでください。

次の記事(宅地建物取引士の登録|資格者がクリアすべき基準・各種届出方法など)を読む

前の記事(事務所以外の場所における3つの義務|標識・宅建士の設置・案内所等の届出)を読む

スペシャルコンテンツに興味がある方は下記の記事をご覧ください。

スペシャルコンテンツ

宅建に興味がある方は下記の記事をご覧ください。

宅建コラム記事

不動産業務実務の基本関連記事

  1. 不動産業務効率化
  2. 不動産DXサービス特集
  3. 不動産DX導入インタビュー
  4. 不動産業界DX
  5. 「宅建とは」宅建士の仕事内容やメリット・なるための方法などを徹底解説
この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。