【民法】不法行為・違法行為とは?|2つの違いや違反するとどうなるのかも徹底解説

投稿日 : 2020年05月05日/更新日 : 2023年09月15日

宅建業者がお客様に物件を媒介する際には、法律にのっとり誠実な業務を行わなければいけません。

宅建士資格においてもその点は重要視されており、宅建試験で出題される問題でも、不法行為に関連する内容の出題率は高くなっています。

今回は「民法上の不法行為とは何か」に加えて、宅建業者が業務上で顧客等に損害を与えた場合の「使用者責任」について解説します。

 

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「不法行為」の解説

 

不法行為とは、単に法律違反のことを指すのではありません。

例えば、飲酒運転は違法な行為ではありますが、ただ飲酒運転をしただけでは「不法行為」にはなりません。

民法では不法行為をどのように定義しているかを確認しましょう。

 

不法行為が成立する条件

不法行為は以下3つの条件が満たされた場合に限り、初めて成立します。

  1. 加害者の故意または過失によってなされた行為である
  2. 他者に何らかの損害を与えている
  3. 加害者が行った行為が法律に違反している

 

違法行為と不法行為の違い

違法行為とは読んで字のごとく「法律に違反する行為」を指した一般的な言い方です。民法上では特に「違法行為」に関する取り決めはありません。

対して、不法行為とは民法で規定されている行為です。上記の3条件を満たし不法行為が認められることにより、被害者は加害者に損害賠償請求が行使できます。

 

損害賠償請求

不法行為者が損害賠償請求の債務を負う時期は、不法行為が行われたとき(=損害発生時)です。その債務は不法行為が行われた時点から直ちに遅滞となります。

債務が時効となるのは以下の年数を経過した時点です。

  1. 不法行為から20年を経過しても被害者もしくは代理人が損害賠償請求権を行使しないとき
  2. 被害者もしくは代理人が損害発生を知った時点から3年を経過しても損害賠償請求権を行使しないとき

また被害者に過失があったときには、裁判所の判断により損害賠償額が減額される場合もあります。

 

「不法行為の使用者責任」の解説

 

事業者には、雇用等をしている従業員の業務上の行動に対して責任を負う義務があります。これを使用者責任と言います。

 

使用者と被用者

使用者と被用者の関係は以下のとおりです。

使用者 従業員の雇用等を行っている事業者
被用者 雇用等をされている従業員

 

使用者・被用者の使用関係が成立するかどうかは、雇用契約締結の有無には関係がありません。雇用契約を締結していなくても、実質的に指揮監督関係があると認められれば使用関係が成り立ちます。

 

事業者が使用者責任を負う条件

使用者責任が成立するのは、以下の条件を満たした場合です。

  1. 使用者と被用者の間に使用関係がある
  2. 被用者が行った行為が不法行為である
  3. 業務上で行われた行為である
  4. 使用者に免責事由がない

上記(3)に関して補足すると、被用者が業務以外に行った不法行為に対してまで使用者が使用者責任を問われることはありません。

 

使用者への損害賠償請求

被用者が業務上で行った不法行為に対し、その被害者は使用者に対して損害賠償請求を行使できます。また被用者本人に対して損害賠償請求をすることもできます。

使用者責任により被害者に損害賠償を行った使用者は、不法行為を行った被用者に対して賠償分の求償ができます。求償できる範囲は被用者の業務内容などを考慮して、信義則上相当だと認められる限度までとなります。

 

「不法行為」「使用者責任」に関連する法律

この項目に関連する法律は以下のとおりです。

民法(令和5年9月15日時点) 

709条(不法行為による損害賠償)

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

715条(使用者等の責任)

ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。

3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

 

実際に過去問を解いてみよう

問題:

Aに雇用されているBが、勤務中にA所有の乗用車を運転し、営業活動のため顧客Cを同乗させている途中で、Dが運転していたD所有の乗用車と正面衝突した(なお、事故についてはBとDに過失がある。)この場合、事故によって損害を受けたCは、AとBに対して損害賠償を請求することはできるが、Dに対して損害賠償を請求することはできない。(平成25年度本試験 問9より改題)

 

答え:×(請求できる)

 

解説

被害者である顧客Cは、不法行為者であるBおよび使用者Aに対して損害賠償請求ができる他、共同不法行為者であるDにも損害賠償を請求することができます。

※共同不法行為…複数人による不法行為のこと

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「不法行為」の試験科目

権利関係

「不法行為」が含まれる試験分野

不法行為

「不法行為」の重要度

★ ★ ★ ★ ☆ 不法行為が成立する条件に注意

「不法行為」過去10年の出題率

60%

 

2023年宅建試験のヤマ張り予想

冒頭でも説明したとおり、不法行為に関する問題は毎年よく出題されるので注意が必要です。不法行為の成立条件についてしっかり理解しておきましょう。

また使用者責任については、使用者の責任範囲と求償権についてもきちんと理解しておく必要があります。

宅建士を目指している方は「目指せ!宅建士への道」を参考にしてみてください。

 

「不法行為」ポイントのまとめ

この項目で押さえておくべきポイントは以下のとおりです。

  1. 不法行為とは加害者の故意・過失を原因として第三者に損害を与えた違法行為のこと
  2. 違法行為と不法行為は違う(不法行為は民法で規定されたもの)
  3. 不法行為の被害者は加害者に対して損害賠償請求権を行使できる
  4. 従業員の雇用等をしている使用者には使用者責任がある
  5. 使用者責任により損害賠償をした使用者は被用者に対して求償できる

違法行為とは

違法行為とは法律によって禁止されている行い、法律に違反する行為のことです。

法秩序に反する行為により、損害賠償を負うなど、何らかの法律上の制裁が課せられる行為のことを指します。

「不法行為」と「債務不履行」とがあり、これらの行いにより損害賠償責任が生じます。

 

最後に

 

今回は民法上の不法行為とは何か、不法行為の成立により被害者にはどのような権利が生まれるかについて解説しました。

使用者責任は、今後宅建業界に従事する人にとって、使用者・被用者ともに深く関わりがある内容です。

自分たちが法律に違反しないのは当然としても、宅建業の業務を行う上では他者の不法行為が業務遂行上で関わってくる可能性もあります。あらかじめ不法行為についても十分な知識を持っておきましょう。

あわせて読みたい:共同不法行為と土地の工作物責任の損害賠償請求先|不法行為の定義を確認

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。