宅地建物取引士の登録|資格者がクリアすべき基準・各種届出方法など
宅地建物取引士(宅建士)として実際に働き始めるために必要なのは、資格試験に合格することだけではありません。
借地借家法は宅建試験でも毎年出題される分野ですが、令和2年4月1日には新しい借地借家法が施行されるため、今年度の宅建試験では注意が必要です。
新しい借地借家法の施行以前に建てられた建物に対しては旧法が適用され、以降に建てられる建物に対しては新法が適用されるなど、新旧が混在による実務上の混乱も想定されます。
今回は、実務上でもまだ理解が必要な旧法の借地借家法について解説します。新法になる前に現在の法律をしっかり覚えておきましょう。
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この記事の監修者: 不動産会社や金融機関にて、ローンの審査業務、金消・実行業務などに従事。その過程で、キャリアアップのため自主的に宅建の取得を決意。試験の6ヶ月前には出勤前と退勤後に毎日カフェで勉強、3ヶ月前からはさらに休日も朝から閉館まで図書館にこもって勉強。当日は37℃の熱が出てしまったが、見事1発で合格した。現在はiYell株式会社の社長室に所属。 |
権利関係
借地借家法
★ ★ ★ ★ ★ 毎年出題されています
100%
冒頭でお伝えしたとおり2020年には借地借家法が改正されるため、今年度に出題される可能性は例年よりも高くなることが予想されます。
出題範囲が広いために勉強する時間もかかり大変ですが、基本的な考え方を学び、ポイントを絞った試験対策をしましょう。
借地借家法で学ぶ範囲は広いため、本記事では「借家」の適用範囲、残存期間と更新、造作買取請求権、オーナー変更時に賃借人を保護するための対抗力について説明していきます。
借地借家法は「しゃくちしゃっかほう」と読みます。「しゃくちしゃくやほう」ではないので注意しましょう。
建物の賃貸借契約には、原則としてすべて借地借家法が適用されます。ただし以下の場合については、借地借家法ではなく民法が適用されます。
建物賃貸借契約は主として賃借人を守るための法律ですので、契約の期間や更新・解約等については、できるだけ「借主が長く住み続けられる」ような仕組みをとっています。
建物賃貸借契約の期間については特に決まりはありません。期間を定めずに賃貸借することも可能ですし、30年や60年など、長期間にわたっての賃貸借契約も可能です。
ただし契約期間を1年未満としている場合には、期間の定めがないものと見なされます。
期間を定めた賃貸借契約の場合、賃貸人もしくは賃借人が期間満了の1年前から6ヶ月前までに相手方に対して更新しない旨を通知しない限り、賃貸借契約は自動的に更新されます。これを法定更新と言います。
期間の定めがない賃貸借契約の場合には、賃貸人が解約の申し入れをした日から6ヶ月を経過した時点で契約終了となります。
期間の定めの有無に関わらず、賃貸人からの更新拒絶・解約申し入れには正当な理由が必要です。
また、期間満了前に賃借人が更新をしない旨を通知していても、期間満了後に賃借人が使用を継続していて、賃貸人が異議を申し立てなければ契約を更新したものとして見なされます。
賃貸人が正当な理由により解約申し入れをしたい場合でも、賃借人が建物賃貸借契約の存続期間の満了を1年前までに知らなかった場合に限り、期間満了後の1年間は明渡が猶予されます。
この場合、賃借人は裁判所に明渡猶予の請求を申し立てる必要があります。
賃貸借契約が終了して賃借人が退去する際に、賃借人が自費で取り付けた造作を賃貸人に買い取ってもらうことができます。これを造作買取請求権と言います。
◆造作とは
畳や作り付け棚・エアコンなど、居住に必要かつ建物の利用価値を向上させるもの |
造作買取請求権が行使できるのは、以下2つのうちいずれかの造作です。
収益物件のオーナー変更などにより、建物賃貸借契約の途中で賃貸人が変わるケースがあります。
この場合でも、賃借人の建物賃借権は保護されます。もし新しいオーナー(賃貸人)が建物の立ち退きを請求しても、オーナー変更時に既に賃借人が建物の引き渡しを受けていれば、新しい賃貸人に対する対抗力があります。
なお、このときに賃借権の登記をしている必要はありません。
この項目に関連する法律は以下のとおりです。
借地借家法(平成三年法律第九十号)
借地権の目的である土地の上の建物につき賃貸借がされている場合において、借地権の存続期間の満了によって建物の賃借人が土地を明け渡すべきときは、建物の賃借人が借地権の存続期間が満了することをその一年前までに知らなかった場合に限り、裁判所は、建物の賃借人の請求により、建物の賃借人がこれを知った日から一年を超えない範囲内において、土地の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。 (以下省略)
建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合には、建物の賃借人は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときに、建物の賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求することができる。建物の賃貸人から買い受けた造作についても、同様とする。 (以下省略)
建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。 |
問題:
Aが所有する甲建物をBに対して3年間賃貸する旨の契約をした場合において、AがBに対し、甲建物の賃貸借契約の期間満了の1年前に更新をしない旨の通知をしていれば、AB間の賃貸借契約は期間満了によって当然に終了し、更新されない。(平成29年度本試験 問12より改題)
答え:×
これは「当然に」を正しく読み取れるかどうかの引っかけ問題です。
期間の定めがある賃貸借契約では、期間満了前に更新をしない旨の通知をしていても、期間満了後に賃借人が使用継続して賃貸人が特段の異議を申し立てなければ、法定更新により更新したものとして見なされます。
「当然に終了」はしないため、答えは×です。
この項目で押さえておくべきポイントは以下のとおりです。
借地借家法は基本的に、賃借人を守るために作られた法律です。
「どうすれば賃借人が長く借り続けられるか」を基準にして考えれば、借地借家法の規定がわかりやすくなります。
宅建試験の過去問を解くときには、目線を賃借人に置いて回答するようにしてみましょう。