区分建物の登記は3種類|分離できない敷地権・敷地権付き区分建物と規約の例外

投稿日 : 2020年04月27日/更新日 : 2023年02月01日

マンション等の区分建物は、所有権などの権利が共用部分・専有部分・敷地に分かれているため、戸建住宅に比べて登記が複雑です。そのため区分建物では、表題登記について特別な取り決めがあります。

また、戸建住宅では建物を利用する権利があれば当然のごとく敷地も利用する権利がありますが、区分建物の場合には1棟の建物に多数の専有者が存在するため、建物の利用権と敷地の利用権が分かれています。

今回は区分建物の登記と敷地利用権について解説します。戸建住宅の土地建物の登記を行うときとは何がどのように違うのかを確認しましょう。

住宅ローン業務を軽減したい
不動産事業者様はこちら
\ 住宅ローン業務を軽減したい不動産事業者様はこちら/
資料請求・お問合せはこちら

「区分建物の登記」の解説

 

区分建物の登記は、以下の3つに大別できます。

  1. 建物全体の登記(申請)
  2. 区画ごとの所有権保存登記
  3. 敷地権の登記

建物全体の登記と区画ごとの所有権保存登記は、登記記録の表題部になされます。

ここからは、区分建物の3種類の登記について詳しく見ていきましょう。

 

建物全体の表題登記申請

区分建物の表題登記は、当該建物を最初に所有した者がまとめて申請します。具体的には分譲マンションの開発・販売業者が登記申請を行います。

しかし、上記の申請者は登記を申請しても、所有権保存登記(初めての所有権登記)を必ずしも行う必要はありません。分譲マンション等の完成後にすぐ売買契約が行われた場合には、以下の各区画購入者が所有権保存登記を行うことになります。

 

区画ごとの所有権保存登記

建物全体の登記を最初に行った者(表題部所有者)から各区画を購入して所有権を取得した者は、所有権移転登記ではなく所有権保存登記ができます。

分譲マンションの開発・販売業者が所有権保存登記をしてから所有権移転登記をすると二重に登録免許税が発生してしまうため、それを回避できるように定められた規定です。

ただし、当該の区分建物が敷地権付区分建物である場合には、敷地権の登記名義人の承諾を得なければいけません。

 

敷地権の登記

区分建物の各区画を購入した所有者は専有部分の割合に応じた共用部分と敷地の権利を持っています。しかし、多数の専有者すべての氏名を土地の表題登記に記載すると、膨大な量の記述になってしまいます。

また、区分建物の敷地権は、建物の専有部分および按分の共用部分と分離して売却等の処分を行うことはできません。

そのため区分建物の敷地権は独立した土地登記をするのではなく、区分建物の表題登記の申請時に、土地の所有権・地上権が敷地権であることを明記し、権利部の甲区または乙区にて登記するものとします。

 

敷地権付き区分建物の解説

 

敷地利用権とは、分譲マンション等の購入者が専有部分および共用部分の按分を利用するために必要な敷地の利用権です。

敷地権の項でご説明したとおり、区分建物の敷地権は専有部分および按分の共用部分と連動するのが原則です。そのため敷地利用権も、規約敷地に関する定めがない限り専有部分の所有者が権利を有します。

共有部分は①法定共有部分と②規約共用部分に分かれます。法定共有部分は敷地に住んでいる住人が共有して使用するエレベーターや廊下、階段などの部分を指します。

規約共用部分は独立している集会場や管理人室を規約により共用部分としたものです。

敷地権は建物を利用するための登記された敷地利用権で, 建物と分離処分できない土地のことを指します。

 

画像引用:HOME4U|マンションの敷地権とは?売買や相続する前に抑えるべきポイント

 

規約で定めることができるのは、以下の「規約敷地」の部分です。

法定敷地 マンションの底地
規約敷地 通路や緑地など区分建物と一体化して管理される土地

 

「区分建物の登記」に関連する法律

この項目に関連する法律は以下のとおりです。

区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)

第2条(定義)

6 この法律において「敷地利用権」とは、専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利をいう。

 

不動産登記法

第48条(区分建物についての建物の表題登記の申請方法)

区分建物が属する一棟の建物が新築された場合又は表題登記がない建物に接続して区分建物が新築されて一棟の建物となった場合における当該区分建物についての表題登記の申請は、当該新築された一棟の建物又は当該区分建物が属することとなった一棟の建物に属する他の区分建物についての表題登記の申請と併せてしなければならない。

 

第74条(所有権の保存の登記)

2 区分建物にあっては、表題部所有者から所有権を取得した者も、前項の登記を申請することができる。この場合において、当該建物が敷地権付き区分建物であるときは、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない。

 

実際に過去問を解いてみよう

問題:

敷地権付き区分建物の表題部所有者から所有権を取得した者は、当該敷地権の登記名義人の承諾を得ることなく、当該区分建物に係る所有権の保存の登記を申請することができる。(平成25年度本試験 問14より抜粋)

答え:×(申請できない)

 

解説

区分建物においては表題部所有者から所有権を取得した者も所有権保存の登記を申請することができますが、その建物が敷地権付区分建物である場合には、敷地権の登記名義人の承諾を得る必要があります。

宅建受験者はここをチェック!

 

「区分建物の登記」「区分建物の敷地利用権」の試験科目

権利関係

「区分建物の登記」「区分建物の敷地利用権」が含まれる試験分野

建物区分所有法

「区分建物の登記」「区分建物の敷地利用権」の重要度

★ ★ ☆ ☆ ☆ 引っかけ問題に注意が必要です

「区分建物の登記」「区分建物の敷地利用権」過去10年の出題率

10%

 

2023年宅建試験のヤマ張り予想

区分建物の登記に関する問題が出題される場合には、建物全体の登記と各区画の登記のどちらを指しているのかを見極めるのがポイントとなります。本記事でその違いをしっかり覚えておきましょう。

敷地権と敷地利用権についても同様に、問題文はどちらの権利を指しているのかを正しく読み取らなければいけません。

どちらも出題率はあまり高くありませんが、確実に1点を取るためには書かれている内容をしっかり理解する必要があります。

宅建士を目指している方は「目指せ!宅建士への道」を参考にしてみてください。

「区分建物の登記・敷地利用権」ポイントのまとめ

この項目で押さえておくべきポイントは以下のとおりです。

  1. 区分建物の登記は建物全体・各区画・敷地の3つに分かれる
  2. 表題登記の申請者から各区画を購入した者は所有権保存登記ができる
  3. 敷地権は専有部分と分離して処分ができない

 

最後に

 

区分建物は建物全体・専有部分・敷地権(敷地利用権)と登記が分かれるために混乱しがちですが、それぞれの登記の目的を考えていくと違いが明確になります。

宅建試験においても登記関係の問題を苦手としている人が多いですが、わかりづらい文言に惑わされずに落ち着いて対処しましょう。

質の高い不動産業務を提供するためにも業務効率化は必須といえます。「いえーるダンドリ」なら住宅ローンに関する業務を代行することができ、業務効率化を図ることができるので、ぜひご活用ください。

次の記事(民法の賃貸借契約と賃貸人・賃借人の権利義務|宅建の試験範囲を整理)を読む

前の記事(区分建物の登記は3種類|分離できない敷地権・敷地権付き区分建物と規約の例外)を読む

スペシャルコンテンツに興味がある方は下記の記事をご覧ください。

スペシャルコンテンツ

宅建に興味がある方は下記の記事をご覧ください。

宅建コラム記事

不動産業務実務の基本関連記事

  1. 不動産業務効率化
  2. 不動産DXサービス特集
  3. 不動産DX導入インタビュー
  4. 不動産業界DX
  5. 「宅建とは」宅建士の仕事内容やメリット・なるための方法などを徹底解説
この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。