抵当権抹消登記とは?費用から手順まで必要な知識を徹底解説

投稿日 : 2023年07月10日

抵当権抹消登記に関する知識は、不動産売却事業を行っている不動産会社が知っておくべき知識の一つです。

相談に来たお客さまが、売却予定の不動産の抵当権抹消登記について認識していなければ、後にトラブルになりかねません。事前に必要性や費用など、しっかり説明を行うことが大切です。

また、抵当権抹消登記の費用を抑えるために、司法書士に依頼せずに自分で手続きしたい人もいるでしょう。自分で抵当権抹消登記の手続きをしたいお客さまへ、不動産の専門家として適切に案内できると、お客さまも安心です。

ここでは、以下について解説します。

  • 抵当権抹消登記とは何か
  • 抵当権抹消登記が必要なタイミング、誰が手続きするのか
  • 抵当権抹消登記の費用
  • 抵当権抹消登記の手順と必要書類
  • 抵当権抹消登記の注意点

抵当権抹消登記に関する幅広い知識を持ち、不動産売却の相談に来たお客さまへ適切な案内をできるようにしておきましょう。

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抵当権抹消登記とは?手続きはいつ・誰がするのか

抵当権抹消登記とは、住宅ローン借入時に金融機関が設定した抵当権を登記簿から消すための手続きです。抵当権を外すと、不動産売却時に第三者へ所有権移転をしたり、不動産を担保に新たにローンを組んだりすることできます。

ここでは、抵当権抹消登記が必要なタイミングや、手続きをするべき人について解説します。

抵当権抹消登記が必要なタイミング

抵当権の抹消登記が必要なタイミングは、以下のとおりです。

  • 住宅ローンを完済した時
  • 不動産を売却する時
  • 不動産を相続した時

特に、不動産売却時に抵当権抹消手続きをしなければ、買主側に迷惑がかかってしまいます。

お客さまの中には、住宅ローンを完済したら抵当権が自動的に外れると考える方もいるかも知れません。お客さまから不動産売却の相談を受けた際、抵当権抹消登記が必要なことをあらかじめ伝えておきましょう。

ちなみに、相続した不動産に残債があり、相続した方がローンを完済した場合は、抵当権抹消手続きの前に相続登記が必要です。相続登記とは、被相続人から相続人へ所有権を移転させる手続きです。

相続した不動産を売却したいお客さまの場合、手続きの流れに気をつけましょう。

抵当権抹消登記は誰が手続きする?

一般的に、抵当権抹消登記の手続きは、以下の3つのパターンに分かれます。

  • 住宅ローン契約者が直接行う
  • 住宅ローン契約者の家族(配偶者など)が代理として行う
  • 司法書士に委任する

抵当権抹消登記は、住宅ローンの契約者が行うことも、代理や委任された人が行うことも可能です。

住宅ローンの契約者やその家族が手続きする場合、書類の取得や作成に手間がかかるため、事前に伝えておくことをおすすめします。

次の章で解説しますが、司法書士に委任する場合は別途費用がかかるため、事前にお客さまへ伝えておきましょう。

また、本来、抵当権抹消登記は金融機関(債権者)と住宅ローンの契約者(債務者)の間での手続きです。

抵当権を持っているのは金融機関のため、金融機関の許可なしに住宅ローンの契約者のみで手続きを完了させることはできません。

そのため、金融機関から住宅ローンの契約者への委任状を作成することで、手続きが可能となる点には注意が必要です。

抵当権抹消登記にかかる費用

抵当権抹消登記にかかる費用は、以下の通りです。

費用
登録免許税 1,000円/不動産1件
登録免許税 登記事項証明書を取得する場合 法務局窓口での受取 600円
オンライン請求・郵送 500円
オンライン請求・窓口受取 480円
登記情報提供サービス※ 334円
司法書士報酬 1~2万円(相場)
抵当権抹消登記の完了確認費用 不動産謄本を取得する場合 法務局窓口での受取 600円
オンライン請求・郵送 500円
オンライン請求・窓口受取 480円
登記情報提供サービス※ 334円

※登記情報提供サービス…登記情報提供サービスは、一時利用する方法と利用者登録をする方法があり、個人の登録には300円の登録料かかります。詳しくは登記情報提供サービスの公式サイトをご確認ください。

登録免許税

抵当権抹消登記には、登録免許税が課税されます。課税額は不動産1件につき1,000円です。

例えば、土地と建物に抵当権が設定されている場合、登録免許税は2,000円になります。

登記内容の確認費用

登記内容の確認費用は、抵当権抹消予定の不動産の登記内容を確認するための手数料です。

登記内容を確認するには、登記事項証明書を取得するか、登記情報提供サービスで確認する方法があります。登記事項証明書を取得する場合、法務局の窓口で申請するよりも、オンラインで請求した方が手数料も安く済むため便利です。

登記情報提供サービスは、インターネット上で登記内容を確認できるサービスですが、こちらは閲覧のみです。

登記情報提供サービスの詳細は、公式サイトをご確認ください。

司法書士報酬

抵当権抹消登記を司法書士へ依頼する場合、司法書士報酬が別途かかります。報酬額は全体の平均値として約15,000円前後ですが、司法書士によって異なるので、事前に確認しておきましょう。

出典:抵当権抹消登記|日本司法書士会連合会 司法書士の報酬

抵当権抹消登記の完了確認費用

抵当権抹消登記が完了した後、抹消されたかどうか確認するための手数料です。手数料の内訳は登記内容の確認費用と同じです。

自分で抵当権抹消登記の手続きをする際の手順と必要書類

ここでは、お客さまが自分で抵当権抹消登記の手続きをする際の手順と必要書類について解説します。

自分で抵当権抹消登記の手続きをする際の手順

不動産売却をするお客さまが、自分で抵当権抹消登記の手続きをする際の手順は以下の通りです。

  1. 金融機関へ抵当権抹消書類を依頼し、決済日までに受領する
  2. 売却する不動産を管轄している法務局を確認する
  3. 抵当権抹消登記の申請書を記入する
  4. 法務局へ必要書類を提出する
  5. 登録完了証を受け取る

1.金融機関へ抵当権抹消書類を依頼し、決済日までに受領する

不動産売却の時、すでに住宅ローンを完済している人や、預貯金で完済できる人は決済前に抵当権抹消登記の申請ができます。

しかし、実際は決済日に買主から得た代金で住宅ローンを完済する人も多いでしょう。その場合、決済日までに抵当権抹消書類を受領して、決済日に手続きできるように、金融機関へ依頼します。

抵当権抹消書類の作成には数週間かかる可能性があるため、できるだけ早く、お客さまから金融機関へ確認してもらいましょう、

2.売却する不動産を管轄している法務局を確認する

お客さまが売却予定の不動産がある地域によって、法務局の管轄が異なります。法務局の管轄は、法務局公式サイト「管轄のご案内」から確認できます。

3.抵当権抹消登記の申請書を記入する

抵当権抹消登記の申請書は、法務局で入手または法務局公式サイトの「不動産登記の申請書様式について」からダウンロードできます。住所、名前、不動産の所在地など必要事項の記入が必要です。

法務局公式サイトでは記載例も公開されているため、お客さまから質問があった場合に案内してくださいね。

4.法務局へ必要書類を提出する

抵当権抹消登記の必要書類は、大きく分けて以下2種類です。

  • 住宅ローンの契約者が記入する「抵当権抹消登記申請書」
  • 金融機関が用意する「抵当権抹消書類」(詳細は次の章の表を確認してください。)

必要書類の詳細を確認したい場合、次の章で表にまとめています。必要書類の不足がないようにお客さまへ案内しましょう。

5登録完了証を受け取る

抵当権抹消登記が完了したら、登録完了証を受け取る必要があります。

登録完了証は、法務局の窓口での受取りまたは郵送・オンラインでの交付です。

抵当権抹消手続きの必要書類

抵当権抹消手続きの必要書類は以下の通りです。

必要書類 入手方法
抵当権抹消書類 登記済証または
登記識別情報
金融機関から受け取る
代理権限証明書情報
(委任状)
登記原因証明情報
(弁済証書、解除証書)
資格証明情報
抵当権抹消登記申請書 法務局または法務局公式サイト
  • 登記済証または登記識別情報:抵当権設定時に法務局が発行した書類
  • 代理権限証明書情報:金融機関が契約者に抵当権抹消手続きを委任するための書類
  • 登記原因証明情報:金融機関が住宅ローンの完済を証明する書類
  • 資格証明情報:金融機関の登記事項証明書が記載されている書類
    ※有効期限は発行から3カ月以内です。
  • 抵当権抹消登記申請書:契約者が記入する書類
    ※法務局公式サイトの不動産登記の申請書様式についてからダウンロードできます。

抵当権抹消登記における注意点

ここでは、抵当権抹消登記に関する注意点を解説します。

抵当権抹消登記の必要書類を紛失した場合

抵当権抹消登記の必要書類は、再発行可能なものと再発行に別途手続きが必要なものがあります。

注意すべき書類は、登録済証または登録識別情報です。紛失の場合は別途手続きが必要になるため、お客さまへ注意喚起しましょう。

抵当権抹消手続きを長期間行わなかった場合

抵当権抹消手続きは、手続きが必要になった時にできるだけ早めに行うことをおすすめします。

特に、不動産売却時に手続きを行わないと、売却予定の不動産の抵当権を外せず、所有権移転登記を行えません。

また、住宅ローン完済後、抵当権抹消手続きを長期間行わないと、以下のようなデメリットもあるため、注意が必要です。

  • 将来、不動産を担保に新規でローンを組めない
  • 金融機関の登記情報が変更されて手続きが複雑になる

まとめ

今回は抵当権抹消登記に関する手続きや費用、注意点について解説しました。
どのような場合に抵当権抹消登記が必要で、手続きを行わないことのデメリットについてもご理解いただけたかと思います。

抵当権抹消登記に関する知識は、不動産売却事業を行う不動産会社が知っておくべき知識の一つです。

抵当権抹消登記の必要性や注意点などをしっかりお客さまへ案内し、お客さまが安心して不動産売却できるようにしましょう。