三為契約とは|三為業者は違法?利用することのメリットとリスクを解説

投稿日 : 2022年07月28日/更新日 : 2023年04月10日

三為規約を交わす人

インターネットで調べてみると「危ない」「ご用心」といった検索結果が多く表示される第三者のための契約(三為契約)。

違法性はない正規の契約でありながら、不動産投資を検討している方の中には「何となく不安……」と感じている人もいるのではないでしょうか。

今回は三為契約の基本的な内容と、三為業者を利用するメリット・デメリットを解説します。

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第三者のためにする契約(三為契約)とは

契約 握手

三為契約は、AとBの間で譲渡契約が行われる際に第三者であるCに直接権利を取得させる内容とする契約です。

具体的にはA・B間とB・C間で以下のような契約を行います。

  1. A・B間で「Bは代金完済までに所有権の移転先を指定し、AはBが指定する人に直接権利を取得させる」と特約付きで売買契約をする
  2. 特約に従ってBがCを所有権の移転先に指定する
  3. CがAに対して受益の意思表示を行う
  4. BがAに対して売買代金の全額を支払った後に所有権がAからCに直接移転される

宅地建物取引業者は原則として「他人物売買契約の契約」は禁止されていますが、この三為契約が締結されている場合は例外的に締結できます。

中間省略登記とは

中間省略登記は所有権をAからB、BからCに移転する際、登記についてはBを飛ばしてAからCに移転を行う方法です。

現在は禁止されているため行われていません。法律上、AからB、BからCに移転した場合は登記上も同じように移転を明記すべきという考えがあるからです。

新中間省略登記とは

中間省略登記は禁止されていますが、不動産業界の実務上は高いニーズがあります。合法的に中間省略登記と同じ効果をもたらす方法として考えられたのが、上述の「第三者のための契約(三為契約)」です。

中間省略登記が禁止された理由は所有権があったBの名義を登記上省略している点です。

所有権が中間者であるBを経由せず、直接AからCに移転すれば登記にB名義を反映させる必要性がなくなります。

第三者のための契約ではBさんはAさんから所有権を買うわけではありません。「第三者のためにする契約(三為契約)とは」の項で説明した1~4を登記原因証明情報に記載することにより AからCへの所有権移転登記が可能です。

このように合法性が高い手段で行われる中間省略登記を「新中間省略登記」と呼びます。

三為契約は違法ではない

中間省略登記は現在では禁止されているものの、三為契約及び三為契約を利用した新中間省略登記に関しては違法ではありません。

三為契約については民法537条~538条に記載されている通り、法律で認められたれっきとした契約行為です。

(第三者のためにする契約)
第五百三十七条 契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。
2 前項の契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない。
3 第一項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。
(第三者の権利の確定)
第五百三十八条 前条の規定により第三者の権利が発生した後は、当事者は、これを変更し、又は消滅させることができない。
2 前条の規定により第三者の権利が発生した後に、債務者がその第三者に対する債務を履行しない場合には、同条第一項の契約の相手方は、その第三者の承諾を得なければ、契約を解除することができない。
引用元:民法|537条・538条

三為契約業者の印象が悪い理由

印象 悪い

三為契約を利用して転売行為をする業者のことを「三為業者(さんためぎょうしゃ)」と呼びますが、不動産投資家からのイメージが良いとはいえない場合があります。

三為業者の印象が悪い理由を紹介します。

かぼちゃの馬車の不動産投資問題

審査基準が緩いと評判だったスルガ銀行の融資の取引先として問題になったのが「かぼちゃの馬車」という三為業者です。

「かぼちゃの馬車(スマートデイズ)」は女性用シェアハウスを運営していましたが、2018年5月に運営会社のスマートデイズが経営破綻。多くのサラリーマン投資家が借金を背負うことになりました。

かぼちゃの馬車の問題点は本来の価格よりも高い価格をつけて物件を販売していたことです。入居者の賃料は安い一方、物件価格の利益でマイナスを相殺する、いわゆる「自転車操業」のスタイルになっていました。

さらにオーナー募集の際の虚偽記載が発覚し、日銀に対してはスルガ銀行が虚偽報告を行うなど不正が横行していました。募集していた家賃よりも実際にはもっと低いケースやローン返済ができない赤字経営に陥ることも多かったようです。

このような経緯が、三為業者の印象が悪くなった要因と考えられます。

リスクをとらないこと

三為業者では登記を入れずに物件を転売できます。物件の買主を見つければ自社で決済する必要がありません。

売主から買主にそのまま登記を移転できるので、買主の決済金を仕入れ元の売主にそのまま支払えば良いのです。

大きなリスクを取らずに儲けるというビジネスモデルも、敬遠される要因でしょう。

価格を上乗せして販売すること

三為契約ではA・B間、B・C間で別の契約を交わすため、売主であるAは最終売買代金が分かりません。

三為業者は購入した価格に上乗せして買主に販売している(2~3割程度)とされています。第三者にあたる買主からすれば、相場よりも高額な値段で購入することになるでしょう。

業者である以上は利益を得ることが必要なのですが、その金額設定や透明性に疑問を感じる人もいます。

三為業者を利用することのメリット

メリット

一般的には評判が良くない三為業者ですが、利用することで得られるメリットもあります。

提携金融機関で物件が融資付けされている

三為業者との契約では、提携金融機関で融資付けされている場合があります。すでに鑑定が完了しているため、融資を受けやすいのがメリットです。

瑕疵担保責任を追及することができる

万が一購入した物件に瑕疵があった場合、購入から2年以内であれば三為業者に瑕疵担保責任を請求できます。

一般の売主から購入した場合は契約時に瑕疵担保責任が免除されるケースもありますが、三為業者からの購入であれば免除されることがありません。

フルローンやオーバーローンを利用できることがある

三為業者との取引では三為業者側が物件価格を決めています。物件の取引に関係する全額をフルローンで融資してもらうことや、登記費用などの諸費用をプラスして融資してもらうオーバーローンが利用できる場合があります。

自己資金があまりない場合でも不動産投資に臨みやすいのは、三為業者を利用するメリットの1つといえます。

三為業者を利用することのリスク・デメリット

メリット リスク

三為業者を利用することには一定のメリットがありますが、リスク・デメリットもあります。

売主は安く買われ、買主は高値掴みになる

三為業者は転売で利益を得る不動産会社です。ビジネスである以上、当然ながら買う時は安く買い、売る時は高く売ります。

売主にとっても買主にとっても、金額面ではデメリットになる可能性があります。

売却額が買主に開示されない

三為業者があいだに入る契約はそれぞれ別個で、売主・買主はお互いの売買金額が分かりません。また、三為業者から開示されることもありません。

三為業者は売主から購入したあとに利益を上乗せして転売するため、不動産相場をこまめにチェックしていないと高い金額で買うリスクが増大します。

悪条件の物件を掴むリスクがある

物件の見極め方や相場に詳しくない人の場合、悪条件の物件を勧められる可能性もあります。

まとめ

今回は三為契約の基本的な内容と、三為業者を利用するメリット・デメリットを解説しました。

三為契約も三為業者も違法性がない正規の不動産業者ですが、過去の「かぼちゃの馬車」問題や不透明なビジネスモデルから悪い印象を持っている人も少なくありません。

ただ、利用することのメリットもあり、無条件で敬遠するのは得策ではありません。メリットやデメリットを見極め、必要であれば利用を検討してみましょう。

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。
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