宅建業とは|宅地・建物・取引・業それぞれの意味や定義を解説
宅地建物取引業法(宅建業法)は、宅建業を営むために宅建士が守るべきルールを定めた法律です。
そして、宅建業法の初めには、まず宅建業の定義が記されています。「宅建士とは何か」という根幹に関わる重要な部分です。
「宅地」「建物」「取引」「業」それぞれの意味をきちんと理解しましょう。それらは、一般的な意味とはその範囲や定義が異なるので、注意が必要です。
「宅地・建物・取引・業の意味」の解説
「宅地建物取引業」とは何か
宅地建物取引業法(以下、宅建業法)は、宅建業を営むために守るべきルールを定めた法律です。宅建業を営むためには、原則として宅地建物取引士の免許を取得している必要があります。
しかし、どのような行為が宅建業に該当するのか明確になっていなければ、免許を必要とするかどうかも曖昧になってしまいます。
そのため、宅建業法の冒頭にはまず、宅地建物取引業の意味が定義されています。そして、「宅地」「建物」「取引」「業」という各用語が指す意味も明確にされています。
以下、それぞれの定義と意味する範囲を解説します。
宅建業法における「宅地」とは
辞書(三省堂 大辞林 第三版)で調べると、宅地とは「建物の敷地。建物を建てるための土地。」と書かれています。しかし、宅建業法における「宅地」の定義と範囲は、辞書とは異なります。
◆宅建業法における「宅地」の定義
- 建物の敷地に供される土地
- 用途地域内の土地
1.建物の敷地に供される土地
宅建業法における宅地には、現在建物が建っている土地だけでなく、将来建物の敷地として使用する目的で取引される土地も含まれます。
建物の種類や場所にかかわらず、上記に該当すればすべて宅地となります。
また、将来建物を建てる目的で取引されるのであれば、現在の地目が何であっても宅地となります。
2.用途地域内の土地
用途地域とは、都市計画法に定められた土地の区分で、市街化区域内のそれぞれの土地に使用目的や利用制限を設けたものです。
用途地域の土地であれば、建物の有無や建物を建てる目的があるかどうかに関わらず「宅地」となります。
ただし、用途地域内の土地であっても、道路・公園・河川・広場・水路は「宅地」に該当しません。
なお、将来道路などになる予定がある土地については、計画段階であっても、その時点では「宅地」に該当します。
宅建業法における「建物」とは
「建物」については、宅建業法で特に定義されているわけではありません。
住宅や事務所・店舗・工場・倉庫など、柱・壁・屋根のある建築物が該当します。また、マンションの1室についても1つの建物として扱われます。
宅建業法における「取引」とは
宅地建物取引業における「取引」とは、以下のような行為を指します。
◆宅建業法の「取引」に該当する行為
自らの宅地または建物の売買・交換 | 自ら当事者となり自己所有の宅地または建物を販売・交換する行為
※他人の代理・媒介によって自己所有の宅地または建物を売買・交換した場合も含む ※ただし、自ら当事者となる貸借(転貸を含む)については取引にあたらず、宅建士の免許は不要 |
宅地または建物の売買・交換・貸借の代理 | 依頼者の代理人として売買・交換・貸借の契約を締結する代理行為 |
宅地または建物の売買・交換・貸借の媒介 | 宅地または建物の売買・交換・貸借の当事者同士を引き合わせる媒介(仲介)行為 |
宅建業法における「業」とは
宅地建物取引業の「業」とは、①不特定多数の者に対して、②反復継続して取引を行うことを言います。この条件に当てはまらない場合は、宅地または建物の取引を行う際に宅建士の免許を受けている必要はありません。
①「不特定多数の者」とは
例えば、企業が社員に限定して不動産を売却する場合には、特定の者とみなされるため、宅建業法の適用は受けません。しかし、多数の友人や知人を相手に反復継続して取引を行う場合には、不特定多数とみなされます。
②「反復継続」とは
不動産の分譲は反復継続的な取引とみなされます。一方、不動産を一括して売却する場合は、反復継続とはみなされず、宅建業ではないとされます。
「宅地建物取引業」の定義
前項までの内容を総合すると、宅地建物取引業とは、以下のように定義できます。
宅地建物取引業とは
宅地(建物の敷地に供される土地・用途地域内の土地)や建物の取引(売買・交換、または売買・交換・貸借の代理・媒介)を、不特定多数に対して反復継続して行うこと |
上記の「宅地または建物」「取引」「業」の条件がそろって初めて宅地建物取引業とみなされ、行う際に免許が必要となります。
宅建業と不動産業の違い
宅建業は不動産を取扱う仕事であるために、不動産業と混同されやすい用語です。しかし、このふたつは異なります。
宅建業は、前項の通り「不動産取引を事業として行うこと」で、取引専門の業種を指します。
一方、不動産業は、不動産取引(宅建業)だけでなく、賃貸物件や取扱い不動産の管理、入居者対応などを総合的に行う業種であることを意味します。
「宅地・建物・取引・業の意味」に関連する法律
宅地建物取引業の定義に関する法律には、以下の条文が挙げられます。
宅地建物取引業法(令和元年9月14日時点)
この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号の定めるところによる。 一 宅地 建物の敷地に供せられる土地をいい、都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第八条第一項第一号の用途地域内のその他の土地で、道路、公園、河川その他政令で定める公共の用に供する施設の用に供せられているもの以外のものを含むものとする。 二 宅地建物取引業 宅地若しくは建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うものをいう。 三 宅地建物取引業者 第三条第一項の免許を受けて宅地建物取引業を営む者をいう。 四 宅地建物取引士 第二十二条の二第一項の宅地建物取引士証の交付を受けた者をいう。 |
実際に過去問を解いてみよう
問題:
次の記述のうち、宅地建物取引業法(以下この問いにおいて「法」という。)の規定によれば、正しいものはいくつあるか。(平成27年本試験 問26より抜粋)
ア.都市計画法に規定する工業専用地域内の土地で、建築資材置き場の用に供されているものは、法第条第1号に規定すると宅地に該当する。
イ.社会福祉法人が、高齢者の居住の安定確保に関する法律に規定するサービス付き高齢者向け住宅の貸借の媒介を反復継続して営む場合は、宅地建物取引業の免許を必要としない。
ウ.都市計画法に規定する用途地域外の土地で、倉庫の用に供されているものは、法第2条第1号に規定する宅地に該当しない。
エ.賃貸住宅の管理業者が、貸主から管理業務とあわせて入居者募集の依頼を受けて、貸借の媒介を反復継続して営む場合は、宅地建物取引業の免許を必要としない。
1 一つ 2 二つ 3 三つ 4 四つ
答え:1 一つ(アのみが正しい)
解説
正しい答えはアのみなので、正解は1の一つとなる。
ア.〇 工業専用地域(用途地域)の土地は宅地となるので正しい。
イ.✖
ウ.✖
エ.✖
宅建受験者はここをチェック!
「宅地・建物・取引・業の意味」の試験科目
宅建業法
「宅地・建物・取引・業の意味」が含まれる試験分野
宅地建物取引業の定義
「宅地・建物・取引・業の意味」の重要度
★★★★★
「宅地・建物・取引・業の意味」過去10年の出題率
100%
2023年宅建試験のヤマ張り予想
今回解説する「宅建業の定義」は、宅建試験において毎年出題される重要なテーマです。「宅建業とは何か」「宅建士とは何か」という宅建士免許の根幹に関わるテーマですので、頻出問題であるのもうなずけます。
そのため、2022年もかなり高い確率で出題されると考えられます。
実際の試験では、「何が宅建業にあたるか=どんな場合に宅建士の免許が必要か」を問われることが多いため、その点を念頭に学習を進めましょう。
宅建士を目指している方は「目指せ!宅建士への道」を参考にしてみてください。
「宅地・建物・取引・業の意味」ポイントのまとめ
この項目で押さえておくべきポイントは以下のとおりです。
- 宅建業法における「宅地」の定義は、①建物の敷地に供される土地②用途地域内の土地である
- 用途地域内の土地であっても、道路・公園・河川・広場・水路は「宅地」に該当しない
- 将来道路などになる予定の土地は、計画段階では「宅地」に該当する
- 宅建業法では、マンションの1室についても1つの建物として扱われる
- 宅建業法の「取引」に該当する行為は、①宅地または建物の売買・交換、②宅地または建物の売買・交換・貸借の代理・媒介である
- 宅建業法における「業」とは、①不特定多数の者に対して、②反復継続して取引を行うことである
最後に
今回は、宅地建物取引業のそれぞれの語句の意味する範囲をご説明しました。宅建業や宅建士とは何かがクリアになったかと思います。
このテーマは、宅建試験の根幹部分であるため、独学で勉強すると見落としてしまう知識かもしれません。しかし、資格試験ではとても重要視され、毎年のように出題されていますので、入念に確認しておきましょう。
宅建士資格取得に関しては以下の記事もご参照ください。
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