弁済業務保証金制度とは何かを解説|分担金の納付から保証協会の供託まで

投稿日 : 2020年05月26日/更新日 : 2023年01月24日


宅建業を開業するときには営業保証金を供託する必要がありますが、供託所ではなく、保証協会に金銭を納めることもできます。

保証協会に納めた金銭は、営業保証金ではなく弁済業務保証金と呼ばれます。では営業保証金と弁済業務保証金では何が違うのでしょうか。

今回は、弁済業務保証金制度について保証協会と社員(宅建業者)の両方の側面から解説します。

 

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「弁済業務保証金制度」の試験科目

宅建業法

「弁済業務保証金制度」が含まれる試験分野

弁済業務保証金

「弁済業務保証金制度」の重要度

★ ★ ★ ★ ★ 営業保証金との違いを理解しましょう

「弁済業務保証金制度」過去10年の出題率

100%

 

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弁済業務保証金制度に関する問題は、営業保証金制度とからめて出題される傾向があります。納付(または供託)の時期や納付手段など、営業保証金との違いを覚えておきましょう。

また以下で解説するとおり、弁済業務保証金と弁済業務保証金分担金には違う意味があります。試験問題にどちらかが出題されたときには、問題文の読み間違いに注意しましょう。

 

「弁済業務保証金制度」とは

 

弁済業務保証金制度とは、宅建業者が行った取引によって損害を受けた相手に対して弁済をするための制度です。

宅建業を開業する際には供託所に営業保証金を納付する義務がありますが、保証協会に加入して弁済業務保証金分担金を納めれば、営業保証金の納付が免除されます。

保証協会は社員(宅建業者)の代わりに弁済業務保証金を供託所に供託します。

 

保証協会とは

保証協会とは、宅建業者が任意加入できる組織です。

日本国内には2つの保証協会が存在し、宅建業者の多くは、以下どちらかの保証協会の社員となっています。

▶公益社団法人不動産保証協会(ウサギのマーク)

全国宅地建物取引業保証協会(ハトのマーク)

1つの保証協会に加入して社員になった宅建業者は、もう1つの保証協会の社員になることはできません。

 

「弁済業務保証金」と「弁済業務保証金分担金」

 

弁済業務保証金と弁済業務保証金分担金には以下の違いがあります。

弁済業務保証金 保証協会が供託所に供託したお金
弁済業務保証金分担金 社員が保証協会に預け入れたお金

 

弁済業務保証金分担金の納付

保証協会加入時に宅建業者が納付する弁済業務保証金分担金の額は、宅建業者が設置する事務所数で決定されます。

主たる事務所 60万円
その他の事務所 30万円×事務所数

営業保証金の場合には主たる事務所で1,000万円、その他の事務所1ヶ所につき500万円を供託する必要がありますから、保証協会の社員になることで開業コストが大きく軽減できます。

 

納付期限

弁済業務保証金分担金は、保証協会の社員になろうとしている宅建業者が、加入しようとする日までに納付する必要があります。

 

納付手段

弁済業務保証金分担金は必ず金銭で納付しなければいけません。

営業保証金の供託では金銭に加えて有価証券も認められていますが、弁済業務保証金分担金の場合には有価証券で納付することはできません。

 

弁済業務保証金の供託

社員から弁済業務保証金分担金の納付を受けた保証協会は、納付額に相当する金額を弁済業務保証金として供託します。

供託先は法務大臣および国土交通大臣の定める供託所で、現在は東京法務局がそれにあたります。

 

供託期限

弁済業務保証金は、社員から分担金の納付を受けた日から1週間以内に供託する必要があります。

 

供託手段

弁済業務保証金は営業保証金と同様に、金銭に加えて有価証券でも供託できます。

供託できる有価証券の種類と評価額の割合も営業保証金と同様です。

 

供託の届出

保証協会は供託所に弁済業務保証金を供託したら、供託書の写しを添付して免許権者に届け出る義務があります。

届出先の免許権者は、社員(宅建業者)に免許を与えた国土交通大臣もしくは各都道府県知事です。

 

社員が新たな事務所を設置したとき

 

社員(宅建業者)が新たな事務所を設置したときには、その事務所の数だけの弁済業務保証金分担金を追加納付する必要があります。

 

追加納付の額

追加で納付する金額は30万円×開設する事務所数です。

 

追加納付の期限

納付期限は新たな事務所を設置した日から2週間以内です。

 

分担金を追加納付しなかったときの処遇

期限までに納付が完了しなかった際には、社員はその地位を失います。

社員の地位を失った後でも引き続き宅建業を営もうという宅建業者は、社員の地位を失った日から1週間以内に営業保証金を供託所に供託し、その旨を免許権者に届け出る必要があります。

 

「弁済業務保証金制度」に関連する法律

この項目に関連する法律は以下のとおりです。

宅建業法(令和241日施行)

64条の4(社員の加入等)

一の宅地建物取引業保証協会の社員である者は、他の宅地建物取引業保証協会の社員となることができない。

 

64条の7(弁済業務保証金の供託)

宅地建物取引業保証協会は、第六十四条の九第一項又は第二項の規定により弁済業務保証金分担金の納付を受けたときは、その日から一週間以内に、その納付を受けた額に相当する額の弁済業務保証金を供託しなければならない。

2 弁済業務保証金の供託は、法務大臣及び国土交通大臣の定める供託所にしなければならない。

3 第二十五条第三項及び第四項の規定は、第一項の規定により供託する場合に準用する。この場合において、同条第四項中「その旨をその免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事に」とあるのは、「当該供託に係る社員である宅地建物取引業者が免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事に当該社員に係る供託をした旨を」と読み替えるものとする。

 

64条の9(弁済業務保証金分担金の納付等)

次の各号に掲げる者は、当該各号に掲げる日までに、弁済業務保証金に充てるため、主たる事務所及びその他の事務所ごとに政令で定める額の弁済業務保証金分担金を当該宅地建物取引業保証協会に納付しなければならない。

 

実際に過去問を解いてみよう

問題:

営業保証金を供託している宅地建物取引業者Aと宅地建物取引業保証協会の社員である宅地建物取引業者Bが新たに事務所を設置する場合、Aは、主たる事務所の最寄りの供託所に供託すべき営業保証金に、Bは、保証協会に納付すべき弁済業務保証金分担金に、それぞれ金銭又は有価証券をもって充てることができる。(平成27年度本試験 問42より抜粋)

答え:×(Aはできる・Bはできない)

 

解説

営業保証金は金銭または有価証券による納付ができますが、弁済業務保証金分担金は必ず金銭のみで納付しなければいけません。

 

「弁済業務保証金制度」ポイントのまとめ

この項目で押さえておくべきポイントは以下のとおりです。

  1. 弁済業務保証金分担金を保証協会に納付すると営業保証金の納付が免除される
  2. 弁済業務保証金分担金の納付額は主たる事務所で60万円、その他の事務所で1ヶ所につき30万円
  3. 弁済業務保証金分担金の納付期限は社員になろうとする日まで
  4. 保証協会は社員から分担金の納付を受けたら1週間以内に弁済業務保証金を供託し免許権者に届け出る
  5. 新たな事務所の開設後は2週間以内に弁済業務保証金分担金を追加納付する

 

最後に

 

今回は弁済業務保証金制度について解説しました。

営業保証金に比べて弁済業務保証金分担金は納付すべき金額が非常に安いため、多くの宅建業者が弁済業務保証金制度を利用しています。

宅建業に携わる人にとって身近な存在である保証協会と弁済業務保証金について、深く理解しておきましょう。

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。
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