宅地建物取引士の登録|資格者がクリアすべき基準・各種届出方法など

投稿日 : 2020年05月22日/更新日 : 2023年01月24日

宅地建物取引士(宅建士)として実際に働き始めるために必要なのは、資格試験に合格することだけではありません。

宅建士として都道府県に登録し、「宅建士資格者」となり、さらに宅建士であることを証明する書類を交付されて初めて実務に従事することができます。

今回は、そのうちの「宅建士資格者登録」についてご説明します。登録方法や登録条件、資格登録の効力範囲などをまとめました。

 

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「宅地建物取引士資格者の登録」の試験科目

宅建業法

「宅地建物取引士資格者の登録」が含まれる試験分野

宅地建物取引士

「宅地建物取引士資格者の登録」の重要度

★★★★☆  資格条件など宅建士としての前提知識

「宅地建物取引士資格者の登録」過去10年の出題率

60%

 

2020年宅建試験のヤマ張り予想

このテーマの出題率は、例年やや高めです。ここ3年に関しては連続で出題されているので、2020年も出題される可能性が高いと考えておきましょう。

実際の資格者登録手続きや資格者としての行動を規定した部分ですので、宅建士になろうとする人なら必ず知っておかなくてはいけない知識です。そのため、試験で確認されることが多くなります。

かなり細かい情報が多く、暗記するのが大変な試験範囲ではありますが、登録条件は宅建業者免許基準と共通する部分が多く、合わせて学習するようにして時間短縮を図りましょう。

 

「宅地建物取引士資格者の登録」の解説

 

宅建士資格者登録の基準

宅地建物取引士資格者として都道府県に登録するには、登録基準を満たす必要があります。

登録基準は、以下の2つです

  1. 2年以上の実務経験がある者、または国土交通省の定める登録実務研修を受講した者
  2. 宅建士として相応しくない条件に該当しない

1の登録実務研修は、登録後に受講する法定講習とは異なりますので、注意が必要です。

2の条件は全部で13項目あります。宅建士の登録基準と宅建業者の免許基準は共通する部分も多く、合わせて覚えることをおすすめします。

 

◆宅建士資格者として登録できない者

宅建業に携わる場合に成年者と同一の行為能力を有しない未成年者

(法定代理人から許可された未成年者は登録可)

破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
不正手段による免許取得・情状が特に重い業務停止処分・業務停止処分違反などの理由で、宅建業免許の取消処分を受けた日から5年以内の者
③が法人であった場合、免許取消処分の聴聞の期日・場所の公示日前60日以内に役員であった者で、取消日から5年以内の者
不正手段による免許取得・情状が特に重い業務停止処分・業務停止処分違反などの理由で、免許取消処分の聴聞の期日・場所が公示された日から処分決定までの間に、相当の理由なく廃業の届出をした者で、届出日から5年以内の者
⑤の期間内に、相当の理由なく合併により消滅した法人または解散・廃業の届出をした法人の聴聞の期日・場所の

公示日前60日以内に役員であった者で、消滅または届出日から5年以内の者

禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行終了または執行を受けることがなくなつた日から5年以内の者
宅建業法・暴力団対策法違反、または刑法の傷害罪・脅迫罪・背任罪などを犯し、罰金の刑に処せられ、その刑の執行終了または刑の執行を受けることがなくなった日から5年以内の者
暴力団員(または暴力団員でなくなった日から5年以内の者)
不正登録などの理由で登録消除処分を受けた日から5年以内の者
不正登録などの理由で登録消除処分の聴聞の期日・場所が公示された日から処分決定までの間に登録消除の申請をした者で、消除日から5年以内の者
事務禁止処分の期間中に本人の申請により登録が消除され、まだ禁止処分期間が満了していない者
心身の故障により宅地建物取引士の事務を適正に行うことができない者として国土交通省令で定める者

※「○」は免許基準と共通のもの、「-」は登録基準特有のものです。

 

登録手続きと資格者登録の効力

 

宅建士資格者登録の手続き

宅地建物取引士資格者として登録するには、資格試験に合格した試験地の都道府県に申請する必要があります。

 

宅建士資格者登録の効力

宅建士の資格は、全国で有効です。また、期限もなく、一生有効です。

変更登録と登録移転

変更登録と登録移転方法は以下のとおりです。

 

登録内容の変更について

宅建士の登録を行うと、都道府県知事が管理している「宅地建物取引士資格登録簿」に必要事項が登録されます。

 

◆登録事項

  1. 氏名
  2. 住所
  3. 本籍または国籍(外国籍者のみ)
  4. 勤務先宅建業者の商号または名称
  5. 勤務先宅建業者の免許証番号
  6. 生年月日・性別
  7. 合格年月日・合格証書番号

上記のうち1~5の登録事項に変更があった際には、遅滞なく変更登録の申請をする義務があります。

 

登録の移転について

宅建士の資格は全国で有効ですので、転勤や転職などで資格登録している都道府県以外の場所で就業する場合でも、手続きなしで問題ありません

しかし、登録している都道府県が遠方ですと、登録事項の変更などさまざまな手続きを行う際に不便です。特に、5年ごとの宅建士証の更新では法定講習を受講する必要があり、それは登録都道府県で行わなくてないけません。

そのような場合には、登録の都道府県を変更すると便利です。これを「登録の移転」と言います。

登録移転は、業務に従事する場所が変更になった場合のみ可能です。居住地の変更(自宅の引越し)だけではできませんので、注意が必要です。

また、事務の禁止処分を受けている場合には、禁止期間が終了するまで登録移転はできません。

なお、登録移転手続きは、移転前の都道府県に申請します。

 

宅建士資格者登録の消除

 

以下の場合には、宅建士の業務に従事することができないため、本人やその親族・代理人が届出を行い、資格者登録を抹消(登録消除)する必要があります。

 

届出が必要となる場合 届出義務者
死亡した場合 資格者の相続人
成年者と同一の行為能力を有しない未成年者となった場合 資格者本人
破産手続開始の決定を受けて復権を得ない場合
不正手段による免許取得・情状が特に重い業務停止処分・業務停止処分違反などの理由で、宅建業免許の取消処分を受けた場合
④の免許取消処分の聴聞の期日・場所が公示されてから相当の理由なく廃業等の届出をした場合
禁錮以上の刑に処せられた場合
宅建業法違反行為、または暴力団対策法に違反する行為、刑法に該当するような傷害罪等を犯し、罰金刑に処せられた場合
心身の故障により宅地建物取引士の事務を適正に行うことができなくなった場合 本人、または法定代理人、もしくは同居の親族

 

なお、届出がなくても、上記の事由が判明した場合や資格試験の合格が取り消された場合には、都道府県知事によって登録消除されます。

また、本人の自主的な申請による登録消除も可能です。

上記の届出は、その事由が発生した日(またはその事実を知った日)から30日以内に行わなければいけません。

 

 

「宅地建物取引士資格者の登録」に関連する法律

「宅地建物取引士資格者の登録」に関する法律には、以下の条文が挙げられます。

宅地建物取引業法(令和元年9月14日時点)

第18条(宅地建物取引士の登録)

試験に合格した者で、宅地若しくは建物の取引に関し国土交通省令で定める期間以上の実務の経験を有するもの又は国土交通大臣がその実務の経験を有するものと同等以上の能力を有すると認めたものは、国土交通省令の定めるところにより、当該試験を行つた都道府県知事の登録を受けることができる。ただし、次の各号のいずれかに該当する者については、この限りでない。

一 宅地建物取引業に係る営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者

(以下省略)

 

第19条の2(登録の移転)

第十八条第一項の登録を受けている者は、当該登録をしている都道府県知事の管轄する都道府県以外の(中略)事務所の業務に従事し、又は従事しようとするときは、(中略)登録の移転の申請をすることができる。ただし、(中略)規定による禁止の処分を受け、その禁止の期間が満了していないときは、この限りでない。

 

第21条(死亡等の届出)

第十八条第一項の登録を受けている者が次の各号のいずれかに該当することとなつた場合においては、当該各号に定める者は、その日(中略)から三十日以内に、その旨を当該登録をしている都道府県知事に届け出なければならない。

一 死亡した場合 その相続人

二 第十八条第一項第一号から第八号までのいずれかに該当するに至つた場合 本人

三 第十八条第一項第十二号に該当するに至つた場合 本人又はその法定代理人若しくは同居の親族

 

第22条(申請等に基づく登録の消除)

都道府県知事は、次の各号の一に掲げる場合には、第十八条第一項の登録を消除しなければならない。

一 本人から登録の消除の申請があつたとき。

二 前条の規定による届出があつたとき。

三 前条第一号の規定による届出がなくて同号に該当する事実が判明したとき。

四 第十七条第一項又は第二項の規定により試験の合格の決定を取り消されたとき。

実際に過去問を解いてみよう

問題:

宅地建物取引士資格登録(以下この問において「登録」という。)又は宅地建物取引士に関する記述のうち、宅地建物取引業の規定によれば、正しいものはいくつあるか。(平成28年度本試験 問38より抜粋)

ア.宅地建物取引士(甲県知事登録)が、乙県で宅地建物取引業に従事することとなったため乙県知事に登録の移転の申請をしたときは、移転後新たに5年を有効期間とする宅地建物取引士証の交付を受けることができる。

イ.宅地建物取引士は、取引の関係者から宅地建物取引士証の提示を求められたときは、宅地建物取引士証を提示しなければならないが、従業者証明書の提示を求められたときは、宅地建物取引業者の代表取締役である宅地建物取引士は、当該証明書がないので提示をしなくてよい。

ウ.宅地建物取引士が家庭裁判所から後見を開始する旨の審判を受けたときは、その後見人は、3月以内に、その旨を登録をしている都道府県知事に届けなければならない。

エ.宅地建物取引士の氏名等が登載されている宅地建物取引士資格登録簿は一般の閲覧に供されることはないが、選任の宅地建物取引士は、その氏名が宅地建物取引業者名簿に登載され、当該名簿が一般の閲覧に供される。

1 一つ  2 二つ  3 三つ  4なし

答え:1の一つ(エのみが正しい)

 

解説

エのみが正解です。宅地建物取引士資格登録簿は一般に閲覧できるようにはなっていませんが、一般に閲覧できる宅地建物取引行業者名簿には氏名が載ります。

ア ✖ 前の宅地建物取引士証の有効期限の残りの期間が有効です。

イ ✖

ウ ✖ 3月ではなく30日以内です。

エ 〇

 

「宅地建物取引士資格者の登録」ポイントのまとめ

「宅地建物取引士資格者の登録」の試験範囲で重要なポイントを、以下にまとめました。

  1. 宅建士として働くためには、資格試験合格後、資格者登録をし、その後証明書類の交付を受ける必要がある
  2. 資格者登録の条件は、2年以上の実務経験または登録実務研修の受講を経ていることと、登録者として除外すべき基準に該当しないことである
  3. 宅建士資格者登録は、資格試験に合格した試験地の都道府県にて申請する
  4. 宅建士資格者登録の効力は、全国・一生有効である
  5. 登録事項に変更があった際には、遅滞なく変更登録の申請をしなくてはならない
  6. 登録移転は、業務に従事する場所が変更になった場合のみ可能で、任意である
  7. 宅建士の業務に従事することができない一定の事由が発生した場合には、30日以内に登録消除を行わなければならない

 

最後に

登録基準は、宅建士資格者として相応しくない人を廃除するための条件です。そのため、ほとんどの受験者や合格者は該当しないでしょう。

その分覚えるのが煩わしい部分もありますが、信用性と品位が求められる宅建士の前提となる必須の知識です。

また、登録方法や変更・移転方法などは、実際の手続きで必要となる情報です。試験合格のためだけでなく、合格後にも活かされますので、きちんと学習しておきましょう。

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。