危険負担はリスク負担と読み替える|債務者主義に変更された改正民法の内容

投稿日 : 2020年03月08日

宅建試験の勉強をする多くの受験者にとって、危険負担は比較的軽く流してしまいがちな項目です。また、勉強をしようと思っても「危険」の意味が理解できず、頭になかなか入りにくいようです。

しかし2020年の民法改正により危険負担の考え方も変わっています。次の宅建試験でも、新しい民法の考え方をしっかりと把握しておかなければ対応できない問題が出題されるかもしれません。

今回は危険負担について、これまでの民法から改正された経緯を紹介しながら、新しい民法での考え方をわかりやすく解説します。

kobayashi

この記事の監修者:
平山 和歌奈
宅建スペシャリスト

不動産会社や金融機関にて、ローンの審査業務、金消・実行業務などに従事。その過程で、キャリアアップのため自主的に宅建の取得を決意。試験の6ヶ月前には出勤前と退勤後に毎日カフェで勉強、3ヶ月前からはさらに休日も朝から閉館まで図書館にこもって勉強。当日は37℃の熱が出てしまったが、見事1発で合格した。現在はiYell株式会社の社長室に所属。

 

宅建受験者はここをチェック!

 

「危険負担」の試験科目

権利関係

「危険負担」が含まれる試験分野

危険負担

「危険負担」の重要度

 ★ ★ ☆ ☆ ☆ 2020年度試験においては注意

「危険負担」過去10年の出題率

0%

2020年宅建試験のヤマ張り予想

権利関係の試験科目では過去10年間、危険負担に関する分野の問題は1問も出題されていません。

そのため2020年度試験においても出題されないだろうと考えている人が多いです。

しかし、令和2年4月施行の改正民法では債務者の危険負担に関する変更があるため、久しぶりに出題される可能性があります。

また、危険負担については宅建業法の科目でも出題される可能性があり、試験対策をする上では決して無視できない項目と言えます。

 

「危険負担」の解説

 

それでは、今回の危険負担とは何かからご説明していきましょう。

建物の売買契約が成立した後、引き渡しが完了するまでの間に火災等で建物が滅失してしまう可能性はゼロではありません。

引き渡し予定の建物が滅失したときに不動産売買契約はどうなるか、そして建物の引き渡し義務と代金の支払い義務はどうなるかを規定したのが危険負担です。

 

「危険」とは

「危険」という単語を一般的な「あぶない」という意味でとらえると、危険負担に関する理解が難しくなります。

民法においては「危険」をdangerではなくriskとしてとらえましょう。

つまり民法で言われている危険負担とは「危険を負担するのは誰か = リスクを負うのは誰か」という意味になります。

 

債権者主義から債務者主義へ

債権と債務とは、契約により発生する権利と義務のことです。

 

債権 特定の人物に対して一定の給付を請求できる権利
債務 特定の人物に対して一定の給付をしなければいけない義務

 

債権を持っている人のことを債権者、債務を持っている人のことを債務者と呼びます。

現行の民法では売買の目的物が滅失しても、売主側に帰責性がない場合では買主の代金支払義務が消滅しないという考え方でした。

これは、売主の債務が履行不能になったとしても、売主には「代金をもらう」という債権が残っているという考えによるものです。これを債権者主義と言います。

しかし買主側にしてみれば、商品(不動産)が得られないのに代金だけは支払わなければならないのは理不尽です。そのため民法が改正されて、危険負担は債務者主義が取られるようになりました。

 

民法改正後の危険負担の内容

 

危険負担を規定している新民法536条の施行は2020年4月1日ですので、2020年度の宅建試験には改正後の民法が適用されます。

新しい危険負担の取り扱いについて確認しましょう。

 

火災等で建物が滅失したときの取り扱い

買主に引き渡すべき建物が滅失した際の取り扱いは、引渡し前の管理者である売主に帰責性があるか否かで判断します。

火災の原因が売主の過失等によるもので、売主に帰責性があると判断される場合には、危険負担ではなく売主の債務不履行となります。買主は売主との契約を解除することができ、売主に対して損害賠償を請求できます。

災害や第三者の放火による火災など、売主側に帰責性がないと認められる場合には、危険負担の問題となります。

危険負担として考える場合には不動産売買契約自体は消滅しません。しかし引き渡し前の建物の危険は売主が負担します。建物の引き渡し債務は債務者が負担すべきだという考え方(債務者主義)だからです。

そのため、買主建物代金の支払いを拒絶することができます。ただし売主に対して引き渡しができなかったことに対する損害賠償請求はできません。

 

買主が代金支払いを行わなければならないケース

建物が滅失した原因が買主側にあり、買主に帰責性があると認められる場合には、買主側は代金支払いを拒絶できません。

また、建物の引き渡しが既に完了している場合には、危険負担は買主に移行します。そのため当然のことながら、建物が滅失しても代金の支払い義務があります。

 

「危険負担」に関連する法律

危険負担に関連する改正民法の条文は以下のとおりです。

民法(施行日:令和2年4月1日)

第536条(債務者の危険負担等)

当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。

2 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

 

「危険負担」ポイントのまとめ

この項目で押さえておくべきポイントは以下のとおりです。

  1. 民法改正により危険負担の考え方は債務者主義が優先される
  2. 契約の目的物が滅失した場合でも、双方に帰責性がなければ契約自体は有効
  3. 不動産売買においては引き渡し前の危険負担は売主側となる
    そのため買主は代金支払いを拒絶できる

 

最後に

 

今回は宅建試験「権利関係」に登場する危険負担の考え方について解説しました。

危険負担が含まれる試験科目は「権利関係」だけでなく、別の科目「宅建業法」にも関連してくる分野です。

ここで危険負担は債務者主義であることを頭に入れておけば、後々に幅広い分野の役に立ちます。

宅建業界で必要な知識をトータルで学べるように、ポイントポイントをしっかり押さえておきましょう。