【宅建問題】代理人・代理権・代理行為の瑕疵|責任範囲や関連法律も紹介

投稿日 : 2020年03月03日/更新日 : 2023年02月01日

代理行為は、不動産取引において頻繁に行われる行為です。そのため、宅建試験においても、この分野は重要視され、出題率・出題数も多いのが通例です。

ただ、代理行為の問題には、判例や法解釈を問うものが多く、きちんと理解していなければ正解できません。

そこで今回の記事では、代理行為の概要や判例について解説します。

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「代理行為・代理人・代理権」の試験科目

権利関係

「代理行為・代理人・代理権」が含まれる試験分野

代理

「代理行為・代理人・代理権」の重要度

★★★★☆  頻出問題の基礎知識

「代理行為・代理人・代理権」過去10年の出題率

40%

 

2022年宅建試験のヤマ張り予想

この記事で取り上げるテーマは、宅建試験では「代理行為のトラブル」「代理人の行為能力」「代理権の発生・消滅」に関する問題として出題されます。

このテーマそのものの出題率はそれほど高くはありません。ですが、別の記事で詳しく取り上げる「無権代理」は頻繁に出題されており、その基礎知識となるのが今回のテーマです。

したがって、「権利関係」科目の最も重要な分野の1つとして、入念に学習しておく必要があります。

無権代理行為の条件と本人・相手方の権利保護|宅建試験の頻出問題

 

「代理行為・代理人・代理権」の解説

代理制度とは

代理制度とは、本人以外の者が本人のために意思表示・法律行為を行い、その効果が本人に帰属するという制度です。本人に代わって意思表示・法律行為を行う者を「代理人」といいます。

例えば、Aさん(本人)が不動産を売却したい場合に、Bさんに代理人なってもらい、相手方のCさんとの交渉や売買契約を依頼したとします。

Cさんとの交渉や売買契約を行うのは、代理人であるBさんですので、AさんはCさんと直接やりとりすることはありません。

しかし、売買契約が成立すれば売却金はAさんが受け取り、CさんはAさんに対して不動産の引渡し請求権を持ちます。Aさんは直接契約手続きを行っていなくても、法的効果はすべてAさんに生じるのです。

 

代理行為の成立要件

代理行為が本人と相手方の間に法的効力を生じさせるには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 代理人に代理権がある
  2. 代理人が相手側に顕名(本人のための代理行為であると示すこと)をする
  3. 代理行為が行われる

 

代理権の種類

代理権には「任意代理権」と「法定代理権」の2種類があります。

 

任意代理権 本人の依頼に基づく代理権

本人が依頼しなければ発生しない

法定代理権 法律の規定に基づく代理権

本人が依頼しなくても発生する(法定代理人の例:親権者・成年後見人など

 

代理人は代理権があるからといって、本人に関する法律行為を何でも行えるわけではありません。各種類の代理人には、それぞれに認められる権利の範囲が異なり、限られています。

 

◆代理権の範囲

  • 任意代理権…本人との約束によって決まる(厳密な定義は法解釈により異なる)
  • 法定代理権…各種類の法定代理人により民法で定められている

特に代理権の範囲を定めていない場合には、売買契約などの「処分行為」は行うことができず、「管理行為」のみが許可されます。

 

◆権限の定めのない代理人に許可される管理行為

保存行為 財産の現状を維持する

(例:建物の修繕、債務履行期の支払い手続き、応訴など)

利用行為 財産を利用して収益を得る

(例:不動産の賃貸、預金など)

改良行為 財産を改良して価値を高める

(例:小規模なリフォームなど)

 

代理人の行為能力

 

本人の依頼さえあれば、任意代理人には誰でもなることができます。たとえ未成年や成年被後見人などの制限行為能力者であっても可能です。

なぜなら、任意代理人は必ず本人の意思で人選しているためです。本人が任命した相手の行為能力を判断して決定したのであれば、その行為の結果は本人の責任の範囲内となるのです。

そのため、代理人が制限行為能力者だからという理由で、代理人が行った契約を取消すことはできません。

ただし、それは任意代理人に限った規定で、法定代理人においては一部異なります。

制限行為能力者Aさんの法定代理人となったBさんが、後に自身も制限行為能力者となった場合には、代理人Bさんが行った行為を取消すことができます。

 

無権代理になるケース

無権代理とは、代理権を持たない者が他人の代理人として法律行為・意思表示をすることです。無権代理となるのは次のような場合です。

 

①自己契約

依頼主本人が行おうとする契約や交渉の相手方に代理人自らがなる「自己契約」行為は、無権代理となります。なぜなら、代理人が相手方では、自分に都合のいいように取引きを進める危険性があり、依頼者の権利が脅かされるためです。

 

②双方代理

代理人が契約・交渉の当事者双方の代理をかけもちで行う「双方代理」も無権代理となります。これは、双方にとっても完全に公平でいることは非常に難しく、どちらか一方にとって有利または不利な契約・交渉となる危険性があるからです。

 

自己契約・双方代理が認められる条件

ただし、債務の履行や登記申請など既に取引内容が確定している行為の代理や、当事者が許諾または追認している場合には、自己契約や双方代理が認められます。

この場合には、依頼者の不利益になる危険性が低く、依頼者が納得の上で承諾しているからです。したがって、これらの場合に行われた代理行為は、本人に帰属します。

 

代理権の消滅原因

 

一度は認められた代理権でも、以下のような原因が起こった場合には消滅します。

  1. 本人または代理人が死亡した場合
  2. 代理人が代理契約後に成年被後見人になった場合
  3. 代理人が破産した場合
  4. 本人が破産した場合(任意代理のみ)

ただし、2については、代理人が代理契約時にすでに制限行為能力者であった場合には、代理権が認められます。

「3代理人の破産」が消滅理由であるのは、経済的に困窮した者が代理人となると、代理人が依頼者の財産を着服するなどの不正行為をする危険性が高まるためです。

 

代理行為の瑕疵

代理行為に瑕疵(欠陥)があった場合、司法の場ではどのような法解釈がなされてるのでしょうか。宅建試験でも、事例形式の問題で出題されることが多いため、判例を確認してみましょう。

 

①代理人が相手方の詐欺などにより契約した場合

代理人が錯誤(認識不足・勘違い)や相手方による詐欺・強迫によって、依頼者本人に不利な契約を不当に締結させられた場合、この契約は本人によって取消すことができます。代理人が行った代理行為の効果・結果は、すべて本人に帰属するからです。

そのため、代理人に取消権はなく、もし依頼者の取消権行使を代理人が行う場合には、そのための権限を有することが求められます。

また、特定の代理行為を本人が指定して委託した場合の代理人の錯誤などは、本人が事情を知っていたり本人の過失によって知らなかったのであれば、取消しや損害賠償を主張することはできません。

 

②代理人の詐欺により契約が成立した場合

代理人が詐欺や虚偽表示、心裡留保(真意を伝えないこと)、強迫などにより代理行為を行った場合、本人の善意・悪意に関係なく、相手方は取消権を有します。

また、本人が代理人に騙されて契約した場合には、第三者による詐欺として扱われます。そのため、相手方が詐欺の事実を知っているときにだけ、本人は契約を取り消すことができます。

 

「代理行為・代理人・代理権」に関連する法律

代理人の権限、どのような場合の代理行為が認められないのか確認しておきましょう。

 

民法(施行日:令和2年4月1日)

第99条(代理行為の要件及び効果)

代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。

2 前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。

 

第100条(本人のためにすることを示さない意思表示)

代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第一項の規定を準用する。

 

第101条(代理行為の瑕疵)

代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。

2 相手方が代理人に対してした意思表示の効力が意思表示を受けた者がある事情を知っていたこと又は知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。

3 特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。

 

「代理行為・代理人・代理権」ポイントのまとめ

  1. 代理権には、本人の依頼に基づく「任意代理権」と、法律の規定に基づく「法定代理権」がある
  2. 任意代理人には、制限行為能力者がなることもできる
  3. 相手方に代理人自らがなる「自己契約」や、双方の代理をかけもちで行う「双方代理」は無権代理となる
  4. 相手方の詐欺などで代理人が契約した場合、本人によって取消すことができる
  5. 代理人が詐欺を働き契約を進めた場合、相手方が詐欺であることを認識していれば取消すことができる

 

民法の意義を念頭に学習する

代理行為についての問題に正解するには、代理人の権利の範囲やトラブルが起こった場合の法解釈、誰にどんな責任・権利があるのかをきちんと理解していなければいけません。

民法は当事者の権利や当事者間の公平さを保つために制定されていると考えれば、どのようにそれを実現しているのかという点から理解しやすくなります。また、過去問をたくさん解くことで、法感覚が身に付くでしょう。

まとめ

今回は宅建にも頻出する「代理行為」について概要や判例を説明しました。

代理人・代理権など代理行為に関わる言葉の意味や違いについても理解いただけたかと思います。代理行為は実際の業務にも非常に関係する事象です。

宅建の勉強のためだけでなく、実務の理解を深めるためにも事例を確認しておきましょう。

 

次の記事を読む:【宅建】無権代理行為とは何かわかりやすく解説|条件と本人・相手方の権利保護

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。