「契約の成立」口約束は契約になるか|意思表示の基本をチェック

投稿日 : 2020年03月04日

不動産売買では、最終的には売主と買主との間で「契約」が行われます。宅建士はお客様間の契約をサポートする立場の人間ですから、契約について細かい点まで知っておく必要があります。

日本国内でのさまざまな契約は、全て私法のひとつである民法により規定されています。「契約の成立」とは、民法の基本とも言える大変重要な項目です。

今回は契約の成立について、種類や効力を発するとき、期限、条件、無効になるケースなどの基本的な内容から学びましょう。

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この記事の監修者:
平山 和歌奈
宅建スペシャリスト

不動産会社や金融機関にて、ローンの審査業務、金消・実行業務などに従事。その過程で、キャリアアップのため自主的に宅建の取得を決意。試験の6ヶ月前には出勤前と退勤後に毎日カフェで勉強、3ヶ月前からはさらに休日も朝から閉館まで図書館にこもって勉強。当日は37℃の熱が出てしまったが、見事1発で合格した。現在はiYell株式会社の社長室に所属。

 

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「契約の成立」の試験科目

権利関係

「契約の成立」が含まれる試験分野

意思表示

「契約の成立」の重要度

★ ★ ★ ★ ★ 民法の基本とも言える最重要項目です

「契約の成立」過去10年の出題率

10%

 

2020年宅建試験のヤマ張り予想

「契約の成立」に関する問題は、過去10年では1回しか出題されていません。

内容的にもさほど難しくないため、2020年度の試験でも出題の可能性自体は極めて低いと考えられます。

ただしこの項目は、権利関係の試験科目では頻出分野である「意思表示」全体に関わってくる内容です。他の項目を学ぶ上でベースとなる部分として押さえておく必要があります。

 

「契約の成立」の解説

 

まずは契約の定義をはっきりさせておきましょう。

契約とは、一定の法律的効果を発生させる目的で成立する法律行為のことです。

申込をする申込者とその申込に対して承諾をする承諾者の2つの意思が、主観的合致(当事者間で契約を成立させる意図がある)・客観的合致(客観的に見て内容が一致している)ともに合致し、双方が意思表示を行うことによって契約が成立します。

意思表示は原則として、片方の意思が相手に到達した時点で有効となります。これを到達主義と言います。民法は到達主義が原則なので、たとえ片側が契約の意思を表していても、それが相手方に伝わっていなければ契約が成立したとは認められません。

逆に承諾の場合は、承諾者が承諾の意思表示を発信した時点で効力を発揮する発信主義をとります。

申込者と承諾者では意思表示をしたときに効力が生じる時期が異なることを覚えておきましょう。

 

諾成契約と要物契約

契約には、諾成(だくせい)契約と要物(ようぶつ)契約の2種類があります。

売買契約・請負契約・委任契約・贈与契約などは諾成契約に分類されます。諾成契約とは、両者間の合意だけで成立する契約のことです。

消費貸借および使用貸借・寄託、質権設定などは要物契約に分類されます。要物契約とは、両者間が合意するだけでなく“モノ”の受け渡しがあって初めて成立する契約のことです。

 

 

条件・期限付きの契約

通常の契約がなされた場合は直ちに効力が発生しますが、ある一定の要件を満たした場合にのみ効力を発揮するような内容の契約にすることもできます。

これを条件もしくは期限と呼びます。条件と期限の違いは「一定の要件が将来的に起こり得るかどうか」です。

 

条件付きの契約 将来の不確定な事実が実現したら契約の効力が生じる契約
期限付きの契約 将来的に起きることが確実な事実の始期・終期を定めた契約

 

条件を付加する契約の中には、一定の事実が発生した際に契約が成立する類の条件と、一定の事実により契約を停止される類の条件もあります。これを停止条件と言います。

期限を付加する契約は、確定期限不確定期限に分類されます。

 

確定期限 一定の事実が発生する日があらかじめ決まっている期限
不確定期限 事実発生日がいつになるかわからない期限(無期を含む)

 

例えば「私が死んだら〇〇をあげる」といった約束は、申込者(あげる人)がいつ亡くなるかはわからないために不確定期限となります。

 

 

契約の取り消し・無効

一度は成立した契約であっても、その後に当該契約をなかったことにすることができます。これを取り消しと言います。取り消しは申込者と承諾者のいずれからも可能ですが、相手に対して契約を取り消す旨の意思表示をする必要があります。

取り消された契約は、はじめから無効なものとして扱われます。

 

契約書の要不要

民法上、契約の成立に書面の取り交わしは必要ありません。口頭での約束事は法律的に有効だと考えられています。

売買契約などで締結する契約書は、あくまでも契約の事実を証拠とするために残すものです。契約書がないからといって契約自体が無効になるわけではありません。

例えば、プロポーズをして相手が承諾した時点で、その2人は『結婚の約束=婚約』をしたと主観的にも客観的にもみなされます。

 

「契約の成立」に関連する法律

この項目に関連する法律は以下のとおりです。

民法 (令和2年3月1日時点)

第555条(売買)

売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

 

第176条(物権の設定及び移転)

物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。

 

第97条(隔地者に対する意思表示)

隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。

【改正後】

第97条(意思表示の効力発生時期等)

意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。

2 相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。

3 意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。

 

第109条(無効な行為の追認)

無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。

 

「意思表示 ― 契約の成立」ポイントのまとめ

この項目で押さえておくべきポイントは以下のとおりです。

  1. 契約とは、申込者と承諾者の意思表示が合致して成立する「約束」のこと
  2. 口約束でも契約が成立する。契約書の締結は必須ではない
  3. 条件や期限を付加した契約もある
  4. 取り消しの意思表示により取り消された契約は初めから無効であったとみなされる

 

最後に

 

今回は権利関係の項目「契約の成立」について解説しました。

宅建試験で「契約の成立」は、あまりにも基本的な事項のために出題されることはほとんどありません。

しかし試験科目「権利関係」では、意思表示に関する問題はほぼ確実に出題されます。

権利関係の試験勉強をする上では、大前提となる“契約”の定義がしっかり理解できていないと、その後に関連してくる各ケースにも対応できなくなります。

これから宅建試験の勉強をする上では、出題がされるか・されないかに関わらず、基本中の基本として確実にポイントを押さえておきましょう。