第8回【イベントレポート】基調講演 生成AI活用普及協会「国・企業の動向から紐解く生成AI導入。いま企業に求められる「生成AI人材」の育成」

投稿日 : 2024年12月27日

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基調講演:「国・企業の動向から紐解く生成AI導入。いま企業に求められる「生成AI人材」の育成」

一般社団法人生成AI活用普及協会 事務局次長 小村氏

2024年11月26日に一般社団法人 不動産テック協会主催の【設立6周年記念イベント】が開催されました。2022年11月にOpenAI社が開発した対話型生成AIのChatGPTは、 ディープラーニング(深層学習)・自己学習能力を活用し、従来のAIとは異なる新たなコンテンツを自動生成する機能を誰でも簡単に使えるアプリケーションとしてリリースしたことで、私たちの日常生活や仕事に大きな変化をもたらしました。生成AIが普及し利用することが当たり前となるなか、ハルシネーションといった信頼性の問題や著作権侵害の問題など様々な課題も山積しているのが現状です。創造的AI時代に企業はどのように向き合うべきか、「生成AIパスポート」や「人材育成支援」を行っている一般社団法人 生成AI活用普及協会の事務局次長 小村 亮 氏が登壇され、いま企業に求められる「生成AI人材」の育成についてお話されました。

登壇者
小村 亮 氏 一般社団法人 生成AI活用普及協会 事務局次長

 

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不動産テック協会とは

不動産とテクノロジーの融合を促進し、不動産業界の健全な発展と公共福祉の増進に貢献することを目的として、不動産テック業務に関する調査・研究や情報発信、ルールの確立、ビジネス機会を創出するイベントの開催など、さまざまな事業を行っている協会です。
2018年の発足以降、不動産テックカオスマップの公開や様々な情報発信を精力的に行っています。

活動内容

不動産テック協会は6つの部会を組織し、活動を行っています。

不動産オープンID推進部会
「住所」や「物件名」などの表記方法が統一されていないため、不動産情報の連携が困難であるという問題が生じています。この課題を解決すべく、不動産オープンID推進部会は、Geolonia社と共同で「不動産オープンID」プロジェクトを実施住所の表記揺れや軽微な誤入力を正規化し、正しい住所が返答できる「不動産オープンID」をリリース
しています。2022年からは国土交通省が推進している不動産IDプロジェクトに検討会メンバーとして参加しています。
ビジネスマッチング部会
不動産会社とテック企業をつなぐビジネスチャンスを創出することを目的とした議論の場を提供しています。2022年の設立から現在までに計23回の開催、登壇企業数は65社を超え、参加人数も900名以上に達しています。
多くの不動産会社とテック企業が交流することで、新しいビジネス提携が次々と生まれています。
不動産金融部会
不動産金融の実態を把握するための活動を行っています。
近年では、オンラインで不動産投資をするマーケットが広がりをみせています。特に、不動産クラウドファンディング、不動産特定共同事業法(不特法)の電子取引業務をつかったマーケットに着目をしています。今年の夏時点ではオンライン不動産投資を行っている会社が81社あると確認し、これから益々増えていくと考えています。
健全な業界の発展のために、中立的な協会の存在が必要だと考え2023年8月に「一般社団法人 不動産クラウドファンディング協会」を発足し、信頼性・透明性・認知度を高める活動を実施しています。
業界マップ部会
不動産業界において不動産テックがどのように活用され、どのように業界自体を変えているかをわかりやすく伝えるコンテンツ「不動産テックカオスマップ」を作成、更新しています。カオスマップ改定にあたって全掲載サービスについての生存・実態確認を行い、2024年8月に第10版を発表
しました。各カテゴリーの理解を深めるため、業界マップの各カテゴリーに属する企業の登壇イベントも開催しています。
海外連携部会
海外の新しいテック企業のリサーチと海外のテック団体との連携を行っています。昨年はスペインのテック団体との対談イベントを行うなどの活動を実施しました。今年は12月に韓国の不動産テックの協会と協議をしています。
世界のテック企業のトレンドなどの事例調査と発表、有識者を招聘した勉強会などを開催
しています。
AI活用推進部会
2023年6月に生成AI(人工知能)技術の急速な発展を背景に発足したAI活用推進部会。業界におけるAI活用の方向性、取り組み方、リスク検討、ガイドライン提供について指南できる議論の場を提供することを目的としています。ホワイトペーパーの発行や、定期勉強会などを開催
し、最新のAI技術と不動産業界での具体的な応用例について、理解を深められる機会を創出しています。

国・企業の動向から紐解く生成AI導入。いま企業に求められる「生成AI人材」の育成

一般社団法人 生成AI活用普及協会

一般社団法人 生成AI活用普及協会 事務局次長 小村 亮 氏

登壇者
一般社団法人 生成AI活用普及協会 事務局次長
小村 亮 氏

GUGAとして知られる「生成AI活用普及協会(Association to Generalize Utilization of Generative AI)」は、生成AIリスクを予防する資格試験「生成AIパスポート」の実施や、生成AI活用のスキルを有する人材の育成支援として企業向けの研修や有識者による最新の生成AI活用講習、生成AI活用に関する市場動向や最新技術などの情報提供、政策提言を通じた産学官連携の推進など、生成AIの社会実装に向けて、生成AIパスポート(人材育成)を軸としたサービスを展開し、多くのステークホルダーの方々とともに生成AIインフラの企画・提供を推進しています。

GUGAの活動内容
Copyright©2024 一般社団法人生成AI活用普及協会

生成AIとは

生成AIとは、⼊⼒された内容に対して出⼒すべき内容を推定し、コンテンツを⽣成するAIのことをいいます。日常的に使う言葉(自然言語)でAIを使えることが大きな特徴
となっており、テキスト生成・画像生成・音楽生成・音声生成・動画生成など様々なコンテンツを簡単に創造することができます。
これまであった従来のAIはエンジニアやデータサイエンティストなどの技術職の方々が、いかに精度の高いモデルを作るかという「作る」が主体となるものでした。対して生成AIは、すべての人が自身のビジネスなどに対していかに付加価値を高めるために使うかという「使う」が主体となります。誰もが使えるようになったことで、AIは「作る」ものから「使う」ものへと変化
しました。
すべての人が事前に学習されたモデルを使って、いかに付加価値を高めていくかにこだわっていく必要がある。今、「AIの民主化」の入口に差し掛かってきたのだと思います。
そして、生成AIのトレンドはすでに移り変わっております。独自のデータを活用して特化型に仕上げていくことがトレンドになってきています。

 

■生成AIトレンドの流れ
  1. 【これまで】汎用型の普及
    1. ChatGPT(OpenAI)
    2. Copilot(Microsoft×OpenAI)
    3. Gemini(Googleの対話型AI) など
  2. 【現在】組織特化型の開発
    1. 社内のデータ・マニュアルを汎用型に学習させたり、RAG(検索拡張生成)を用いてAIが検索できる環境を整えたりして、組織に必要な情報をアウトプットできる状態を整える
  3. 【これから】産業特化型・個人特化型へ派生
    1. 社内だけではなく、産業全体、業界共通の課題を解決する動きに派生していく。
    2. AIエージェントと呼ばれるような、より個人に特化したAIが誕生してくる。

 

■生成AI導入の4つのステップ

生成AI導入の4つのステップの画像
Copyright©2024 一般社団法人生成AI活用普及協会

今、多くの企業が生成AIの導入・活用に向き合っていらっしゃいますが、企業の⽣成AI導⼊・活⽤は、4つのステップに分けて考えることが重要だと考えています。
ここでいうステップは「順番」ではなく「階段の高さ」のように捉えてください。上の図ではステップ1の難易度を「低」としていますが、ステップ1〜4を相対的に比較すると低いというだけで、決して簡単というわけではありません。
現在、既にステップ4の技術活用ができるところまで進んでいますが、多くの企業がステップ1で苦戦しているのが現状です。

生成AIに関する市場動向と未来予測

内閣府は2023年5月に第1回「AI戦略会議」を開催しています。そこから2024年9月の現時点までの国の動きとして主に11の生成AIに関するトピックが挙げられます。これらから生成AIについて国が本気で施策を推進していることが伺えます。
2024年4⽉19⽇、総務省・経済産業省が共同で発表した「AI事業者ガイドライン(第1.0版)」では、構成に『AI利⽤者に関する事項』を、対象者に『AI利用者』が記載されています。これまで開発がメインで語られてきたAIですが、これからは”どの立場”でもAIに携わる以上押さえておかなければならない観点が存在するということです。
これは、すべてのビジネスパーソンがAIと向き合う必要性があると言及しているとも言えます。

生成AIに関する実態調査の図1

引用:PwCコンサルティング合同会社「生成AIに関する実態調査2024 春 ―試行錯誤の中で見え始める二極化の兆し:生成AIを経営資源の1つとする変革の始まり」

 

PwCコンサルティング合同会社の調査レポートをみると、生成AIの活⽤の推進度合いでは、『活用中・推進中・検討中』の合計が2023年秋の調査時よりも増加していることが分ります。他社事例への関⼼度でも『とても関心がある』が前回調査時から4ptプラスとなっています。
関心度の上昇が伺える一方で、活用前段階となる『推進中・検討中』が48%と前向きではあるものの、まだまだ足踏みをしている様子が伺えます。

生成AIに関する実態調査の図2

引用:PwCコンサルティング合同会社「生成AIに関する実態調査2024 春 ―試行錯誤の中で見え始める二極化の兆し:生成AIを経営資源の1つとする変革の始まり」PDF版

なぜ企業は足踏みをしてしまうのか。企業が抱える課題についてもアンケート調査が出ています。「必要なスキルを持った人材がいない」「ノウハウがなく、どのように進めれば良いか、進め方が分らない」こういったところのポイントが高く出ています。
「AIの民主化」が起こったことにより、すべての人がAIを利用できるようになりました。が、裏を返せばAI初心者が多く生まれたともいえます。
AI初心者のリソースだけではAIの推進が進まず、採用・育成・外注といったAI人材の確保の必要性が顕在化しているというのが企業の現状となっています。

これから先、⽣成AI活⽤が当たり前となる社会が訪れます。生成AI を安全に活用できることが、取引や就職、転職などで選ばれる前提条件となるとすると、「⽣成AI活⽤レベル」を証明することが「選ばれる企業・⼈材」になるために重要なアクションとなります。

生成AI人材採用宣言

参照:生成AI活用普及協会

GUGAは、多くの企業・団体さまとともに、生成AI 人材を採用する意志を表明する共同プロジェクト「生成AI 人材採用宣言プロジェクト2024」を2024 年1 月10 日(水)に始動しました。1ヶ月程度の短い募集期間でしたが、92 の企業・団体さまに賛同を表明いただき、人材・教育・マーケティングなど幅広い業界でAI 人材への需要の高まりを感じております。

生成AI人材育成のキホン

「生成AI人材」の需要の高まりについてお話してきましたが、実は「生成AI人材」にこれまで明確な定義がされていませんでした。
そのため、GUGAでは暫定的に下記のように「生成AI人材」とはどのような人材かを定義づけています。
「生成AI人材」の定義
⽣成AIを学び続けている⼈材
生成AIが発達したことで、新たな職種が誕生しました。
  • 生成AIコンサルタント
  • 生成AIマネージャー
  • 生成AIアンバサダー
  • プロンプトエンジニア
こうした職業はテクノロジーの進化に応じて増えていく可能性もあれば、減っていく可能性もあります。社会が急速に変化する時代においては「学び続ける」ことが重要といえます。

生成AI人材4つのタイプの画像
Copyright©2024 一般社団法人生成AI活用普及協会

GUGAでは生成AI人材を大きく4つのタイプに分類しています。②の『駆使する人材』を増やしていくことが理想ではありますが、まずは③の『協働する人材』を育てて行くことが重要だと考えています。生成AIとの協働とは、個⼈の「苦⼿の補助・⼿間の削減」において⽣成AIを活⽤することです。誰でも代替が効く作業といった部分をAIに担ってもらい、⾼度な専⾨性が求められる部分を人間が行う。AIを実践的に活⽤するスキルと安全に活⽤するためのAIリテラシーの両方を備えた『協働する人材』の育成
が今、企業に求められているといえます。

AIリテラシーの重要性

AIリテラシーとは
スキルを最⼤限発揮するための「運転免許証」のような役割を担うもの。
「AIリテラシー」を身につけることで、AIとの付き合い⽅や”OK・NG”の線引きを把握することができ、⾃信を持って活⽤することができるようになります。
「スキル」を横軸に、「リテラシー」を縦軸に置いた場合、4象限のタイプの人材が出てきます。
  • AIを安全かつ実践的に活用できる人材
  • AIを安全に活用できる人材
  • AIに代替されていく可能性が高い人材
  • AIを活用するリスクが最も高い人材

生成AI人材4象限タイプの図
Copyright©2024 一般社団法人生成AI活用普及協会

「1.AIを安全かつ実践的に活用できる人材」や「2.AIを安全に活用できる人材」にあたる人材を目指すことは素晴らしいことですが、GUGAでは「4.AIを活用するリスクが最も高い人材」になることを避けましょう!と提唱しています。
スキルが高く様々な活用をすることが出来る一方で、リテラシーが低いということはリスクに関する観点が抜けているということなので、その分トラブルに発展しやすいことを意味しています。
生成AIのリテラシーを高めていくことが、安全に活用する土壌形成に必要不可欠といえます。
また、生成AIのリテラシーを向上すると次のようなメリットもあります。
《生成AIリテラシー向上のメリット》
  • 共通言語化
    • 生成AIに対する知識レベルが揃うことで、コミュニケーションが円滑になる
    • プロジェクトが推進しやすくなる
  • 利用率向上・活用定着
    • 入門的なスキルを習得することで、自分にあった活用がイメージでき応用できるようになる
  • リスク予防
    • 正しくリスクを把握することで、生成物や用途を適切に疑いトラブルの顕在化を防げる

生成AIパスポート

AIリテラシーの向上を図る手段として、生成AIパスポートをご紹介します。
生成AIパスポートとは
⽣成AIパスポートはAI初⼼者のために誕⽣した、⽣成AIリスクを予防する資格試験のこと。
AIを活用したコンテンツ生成の具体的な方法や事例に加え、企業のコンプライアンスに関わる個人情報保護、著作権侵害、商用利用可否といった注意点などを学ぶことができます。

【生成AIパスポート公式サイト】

https://guga.or.jp/generativeaiexam/

体型的に網羅している主な4つのポイントCopyright©2024 一般社団法人生成AI活用普及協会
個⼈受験・団体受験ともに「2⽉/6⽉/10⽉」の年3回開催、オンラインで完結する試験となっています。これまで累計受験者数は9,376名、累計有資格者数は7,161名(2024年10⽉時点)と産業を問わず多くの方が受験されてきたとのこと。これからも、その必要性から益々受験者数が増えていくと思われます。
生成AIパスポート試験「年間スケジュール」
申込期間 受験期間
第1回 10⽉1⽇ 0:00 〜 1⽉31⽇ 23:59 2⽉1⽇ 0:00 〜 2⽉29⽇ 23:59
第2回 2⽉1⽇ 0:00 〜 5⽉31⽇ 23:59 6⽉1⽇ 0:00 〜 6⽉30⽇ 23:59
第3回 6⽉1⽇ 0:00 〜 9⽉30⽇ 23:59 10⽉1⽇ 0:00 〜 10⽉31⽇ 23:59
※受験期間のお問い合わせ対応可能時間は、平⽇10:00〜19:00となります。

⽣成AIのポテンシャルを引き出すも、リスクを招くも、最終的に判断する役割を担う「⼈間次第」です。AIツールを導⼊するだけではなく、「⽣成AI⼈材」の育成が企業における⽣成AI導⼊の鍵を握ります。

まとめ

一般社団法人 生成AI活用普及協会(GUGA)小村事務局次長による基調講演でした。
ChatGPT(OpenAI)の普及により、私たちの生活は大きく変わりました。今はまだアンテナを高く張っていち早く情報をキャッチする層がメインプレーヤーとなっていますが、誰もが当たり前に生成AIを活用する日が来るのも遠くありません。
便利である一方で、正しく使えなければ個人情報保護、著作権侵害、商用利用可否といった権利侵害のトラブルを引き起こす可能性もあり、全体的なリテラシーの向上が不可欠となっています。

これからの社会で必ず必要とされるスキルである「生成AI」。

「生成AIパスポート」の資格試験を活用して、⽣成AIリスキリングの第⼀歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

関連情報

│一般社団法人 不動産テック協会
https://www.reinfolib.mlit.go.jp/

┃一般社団法人 生成AI活用普及協会
https://guga.or.jp/

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