不動産AD(賃貸募集の広告料)とは|メリットと設定の際のポイントを解説

投稿日 : 2023年11月13日

不動産業界において賃貸物件を紹介する際に知っておく必要があるのが「仲介手数料」と「不動産AD」の2つです。

マイソクの右下部分に表示されていることを見たことがある方もいるのではないでしょうか。オーナーにとっては効率的な物件紹介に効果的な手段であり、仲介業者はAD付きの物件を成約することでインセンティブを得ることができます。

本記事では若手の不動産営業マンに向けて、「不動産AD」についての基礎知識について解説します。

不動産営業マンの知識としてADの意味と付ける理由を理解して、効果的にオーナーとの商談に使えるようにしましょう。

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不動産ADとは

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「AD」とは「advertisement(読み:アドヴァタイズメント)」の略称のことです。

ここでは不動産業界で使われる「不動産AD」についての概要を紹介します。

ADは大家が仲介業者に支払う広告料

不動産ADは仲介手数料と異なる広告費用のことです。

原則として、空室を抱えているオーナーが物件を紹介してくれる仲介業者に支払います。

仲介手数料の上限金額は合計で家賃の1ヶ月分と宅地建物取引業法で決められていますが、物件の競争力や時期によっては仲介手数料だけでは業者への報酬として不十分なことも少なくありません。

仲介業者に「労力と報酬が見合わない」と判断されると優先的に紹介してもらうこともできないでしょう。

こうした場合に、オーナー側から仲介業者に提示できるのが「不動産AD」です。

「法定の仲介手数料では賄いきれない特別な集客の費用を賄うもの」として使われるとされていますが、実務では稼働率の改善が急務である物件で仲介業者に優先して紹介してもらうためのインセンティブとして使っているのが実情です。

仲介手数料との違い

オーナーが自分の所有物件を業者に仲介してもらった際に支払うのが「仲介手数料」です。

仲介業者は賃貸借契約を成約できた場合、下記の金額を上限に仲介手数料を得ることができます。

  • オーナーから:家賃の0.5ヶ月分
  • 借主から:賃料の0.5ヶ月分

オーナーと借主のうち一方から賃料の1ヶ月分を受け取ることもできますが、両者から受け取る仲介手数料の合計は賃料の1ヶ月分以内であることが決まりです。

一方の不動産ADは、上記の仲介手数料に上乗せして支払われます。

不動産ADには法的な上限の定めがないため、仲介業者と物件オーナーの話し合いで支払額を決めることができます。

不動産ADの相場は家賃の1~2ヶ月分

ADの金額は時期やエリア、どれだけ優先的に取り組んでほしいかといったオーナーの意向によっても変わってきます。

一般的には家賃の1~2ヶ月分が相場です。

就職や大学入学などで入居希望者が入りやすい1~3月ではなく、それ以外の閑散期に活用されるケースが一般的です。

不動産ADのメリットは紹介率・成約率のアップ

成約率

仲介業者は、来店者の希望を聞き出したうえでそれに合う物件を探し、募集図面(マイソク)を使ってお客様に紹介を行います。

営業マンはADが支払われる物件から優先的に紹介していくため、不動産ADを活用することで以下のメリットを享受することが可能です。

  • 仲介業者による紹介率のアップ
  • 紹介率アップによる成約率のアップ

仲介手数料やADの大部分は仲介を行う営業担当者が直接受け取ることができるため、インセンティブを得るためにもAD付きの物件を優先して紹介することになります。

2つの物件で迷っているお客様にもAD付きの物件を優先しておすすめしてくれることで、結果的に成約率アップも期待できます。

不動産ADの設定ポイントと注意点

ポイント

不動産ADは入居者募集に効果的な手段ではありますが、闇雲に使うとオーナーのキャッシュフローを悪化させる可能性もあります。

不動産営業としては以下のような注意点も含めて、オーナーに伝えられるようにしておきたいものです。

FRも含めた最適な募集条件を考える

ADを出すだけで、必ず入居希望者が現れると決まったわけではありません。入居率の改善にはFRも含めた改善策を考える必要があります。

FR(フリーレント)は、入居者の家賃を一定期間無料とする契約のことです。

地方物件でも最寄り駅から徒歩数十分といった人気のない物件はADによる仲介業者へのインセンティブだけでは利用者にメリットがなく、入居希望者が現れないことがあります。

FRを利用することで入居の初期費用を抑えたい学生や安い物件を探している若手社員などに訴求することができるでしょう。

費用対効果を考慮してADを活用する

ADの金額を決める際は適当ではなく、費用対効果を考えることが必須です。

一例として、「ADを付けなかった場合に発生する空室期間」を基準にする考え方があります。

たとえば昨年の同時期に2ヶ月の空室が発生している物件なら、家賃1.5ヶ月分以内のADで入居者を獲得できれば費用対効果が見込めます。

また、あくまでも仲介業者へのインセンティブになるコストであって、物件そのものの価値を高めることはできません。

ADだけでなく、時には投資によって物件の入居率改善を考えることも必要です。

「3LDKの物件を2LDKにしてリビングを広く使えるようにする」「和室を洋室にする」などのリノベーションによって入居率が改善することもあります。

加えて、現状の家賃が地域の相場から外れていないかも、ADを出す前にチェックしておきたいところです。

不動産ADが効果的な物件の特徴

物件 間取り

不動産ADは闇雲に使ってもオーナーのキャッシュフローを悪化させるリスクがあります。

以下で紹介するような「効果的にADを活用できる物件」で利用すると良いでしょう。

郊外などADが前提の物件

東京をはじめとした三大都市圏への人口流入が続いている現在、郊外では賃貸ニーズが小さくなっており、熱心に営業しないと入居希望者が集まりません。

地方の中でも都市部については比較的入居希望者が多い地域もありますが、郊外では空室が長期化する傾向にあります。

ADを出すと決まりやすいというよりは、出さないと決まらないというほど必須になりつつあるのが実情です。

地方でADの重要性が高まる理由の1つに「家賃設定の違い」があります。

仲介手数料は賃料をベースに決められており、家賃が安い地方の仲介業者は都心の仲介業者と同じ仕事をしても仲介手数料は半分程度しか受け取れません。

そもそもの報酬が低いため、仲介業者としてもAD付きの物件を紹介する傾向にあります。

数ヶ月以上も内見希望者がいない物件

内見の希望者が集まっていない物件では、仲介業者が優先して営業していないことが考えられます。

ADを付けていない物件ならADを付ける、すでにADを付けているならADを上乗せするなどして状況が変わるかどうか様子を見ることも必要です。

まとめ

不動産ADは法律で上限が定められた仲介手数料に上乗せして、オーナーから仲介業者に支払うことができる広告費のことです。

郊外の物件や空室が危惧される物件などに勝代すると効果的ですが、費用対効果について考慮しながら金額を決めることが重要です。

不動産営業としては、オーナーが最適な選択をできるように、FRや家賃の見直しまで含めた効果的な提案を行いましょう。