マンション管理士は役に立たない!?活躍の場や将来の可能性について解説
マンション管理士に興味がある一方、「受験する価値があるのか」とお悩みの人もいるのではないでしょうか。
「マンション管理士は役に立たない」と言われることがあります。しかし、マンション管理士という資格は将来性・キャリアアップの両方を期待できる資格です。
ここではマンション管理士の実情をご理解いただくために、マンション管理士が役に立たないと言われる理由や将来性について解説します。
マンション管理士とは
マンション管理士とは、マンション管理の適正化を推進するため、2001年に創設された国家資格です。
マンション管理には法律や修繕、区分所有者間のトラブルへの対処に関する専門知識が必要です。とはいえ、現実的に管理組合がそれらの知識を持っているケースは多くありません。
マンション管理士は、管理組合が抱える問題解決のために、専門家の立場でアドバイスを行う資格です。
以下の記事では、マンション管理士の仕事内容や試験概要などについて解説しています。
あわせて読みたい:マンション管理士とは?仕事内容や試験概要、合格率などを解説!
マンション管理士が役に立たない、食えないと言われる理由
マンションの管理組合が抱える問題は多岐にわたるため、専門知識を有する人材の需要は高いと言えます。
しかし、「マンション管理士は役に立たない」という意見を耳にしたことがある人もいるでしょう。
ここでは、そのように言われる理由について解説します。
独占業務がなく、資格がなくても仕事ができる
マンション管理士が役に立たないと言われる理由の一つは「独占業務がない」ためです。
例えば、宅建士(宅地建物取引士)の独占業務には、重要事項の説明や契約書への記名などがあります。事業者が宅建業を営む際は、宅建士がいなければなりません。
「マンション管理士」という名称は、マンション管理士の試験に合格して、国土交通大臣の登録を受けた人のみが使用できます。しかし、2023年現在において、マンション管理士でなければできない業務はありません。
マンション管理士には独占業務がないため、独立して生計を立てることが難しいと言われています。
資格取得が決して容易ではない
資格取得の難易度の高さも、マンション管理士が役に立たないと言われる理由の一つです。
マンション管理士の合格率は10%程度、不動産関連の国家資格である宅建士や管理業務主任者の合格率は15~20%程度であるため、これらの資格と比べても難易度が高いと言えます。
難易度が高い割に宅建士のような独占業務がないため、「マンション管理士は役に立たない」という意見が出るのでしょう。
マンション管理士の試験が難しい理由には、出題範囲が広いことや、実務に沿った問題が多く出題されることが挙げられます。
合格者の中には「問題が難しすぎる」という声がある一方、「安易に難易度を下げるのもよくない」といった考え方もあります。
資格取得者としての活躍の場があまりない
マンション管理士の資格を取得後、専業として活躍している人は多くありません。マンション管理センターの調査によると、「マンション管理士として活動したことがない」と回答した人は75.8%でした。
マンション管理士の目的は「マンション管理の適正化に向けてアドバイスすること」です。「適正化」といっても、管理組合が抱える悩みやトラブルは個別の案件によって異なります。
区分所有者間のトラブルの解決、管理組合との信頼関係の構築など、知識があるだけでは対応できないこともあります。
「活躍の場がない」「資格の活かし方が分からない」と悩む人もいるのでしょう。
参考元:公益財団法人マンション管理センター マンション管理士の業務についてのアンケート調査結果の概要
マンション管理士が役に立つと言える理由
「マンション管理士は役に立たない」という意見がありますが、実際は需要が高く、役に立つ資格です。
マンション管理士が役に立つと言える理由を3つ解説します。
マンション管理の仕事がなくなることがない
マンションが存在する限り、マンション管理士の資格がなくなることはありません。マンション戸数は増加傾向にあり、日本の主な居住形態の一つです。
建物の老朽化や区分所有者の高齢化が進む中、マンションには多くの問題が生じています。時代の流れに伴って管理が複雑化する傾向にあるため、マンションの適切な管理には専門家の存在が欠かせません。
マンション管理の専門家としての需要は、今後も期待できるでしょう。
向上心のある優秀な人材と評価され、転職や就職に有利になる
マンション管理士は、不動産業界で重宝される資格です。年齢や学歴による受験資格の制限がなく、誰でも受験できるものの、簡単に合格できる資格ではありません。
合格すれば、努力と専門性を評価され、転職や就職時に有利です。
マンション需要は今後も増える可能性が高い
国土交通省の調査によると、2018年末時点でのマンションストック戸数は約654.7万戸となっており、過去と比べて増加しています。
また、東京都内や2025年に万博が開催される大阪市など、都市部を中心に再開発が進行中です。再開発に合わせて高層マンションが建設されていることも、マンション供給量の増加を後押ししています。
マンションは、駅の近く・都心へアクセスしやすいなど通勤・通学に便利な地域に建設される傾向があります。立地を重視する人は多いため、今後、マンションの需要が冷え込むことは考えにくいでしょう。
マンション管理士と相性のいい資格で効率よくキャリアップ
マンション管理士だけでは不安な人は、他の資格と組み合わせて専門領域の幅を広げることも選択肢の一つです。
マンション管理士と相性のいい資格とその理由を解説します。
マンション管理士×宅建士
宅建士は、不動産取引に欠かせない国家資格です。民法や登記、建築に関する法律など、マンション管理士と出題範囲が重なる点があるため、ダブル受験に向いているでしょう。
宅建士は宅地・建物の取引全般に関する専門家ですが、マンション管理士はマンションに特化しています。
宅建士と掛け合わせれば、マンションの取引・管理に深い知識を有する専門家になることが可能です。
宅建について詳しくはこちら
マンション管理士×管理業務主任者
管理業務主任者とは、マンション管理を受託した管理会社が業務を遂行するために必要な国家資格です。管理業務主任者には「重要事項の説明」や「管理事務の報告」といった独占業務があります。
マンション管理士と管理業務主任者は、どちらもマンション管理の適正化を推進するための資格です。そのため、出題範囲が重なる点が複数あります。
マンション管理士と管理業務主任者の違いは、以下の通りです。
- マンション管理士:管理組合や区分所有者から相談を受けて、アドバイスする人(管理組合の立場)
- 管理業務主任者:管理業者が受託したマンション管理を適切に行うための人(管理会社の立場)
双方の資格を取得すれば、管理組合と管理会社の両方の立場を考慮できる専門家として活躍できるでしょう。
あわせて読みたい:管理業務主任者とは?仕事内容や試験概要、合格率などを解説!
マンション管理士×行政書士
行政書士とは、各省庁や市役所などの官公署に提出する書類や、事実証明に関する書類の作成を代行できる資格です。
マンション管理には、総会議事録や会計帳簿の作成といった書類を作成する機会があります。見よう見まねで作成するケースもあるかもしれませんが、後のトラブルに発展するリスクを考えると専門家に任せた方が安心です。
マンション管理の専門知識と専門性の高い書類作成の知見を組み合わせれば、対応範囲が拡大します。
マンション管理士としての活動の場
マンション管理士の活躍の場は、マンション管理士事務所や不動産関連会社です。それぞれの活躍方法や求人について解説します。
マンション管理士事務所
マンション管理士の資格を最大限に活かしたい場合、マンション管理士事務所が有力候補です。マンション管理士事務所に所属すれば、本業としてのキャリアを形成できます。
ただし、専業のマンション管理士として活躍できるケースは多くありません。現実的には、後述する不動産業界の求人が多数派です。
不動産や工務店、不動産開発会社
マンション管理士の資格取得者は、不動産業界で専門知識を活かす道を選択する傾向にあります。求人の具体例は、マンション管理会社のコンサル営業、仲介会社の売買仲介営業、不動産開発会社の管理業務などです。
勤め先によっては資格手当が付くケースがあるため、年収アップを期待できるでしょう。
まとめ
多くの問題を抱えるマンションが増加傾向の中で、マンション管理士の需要の高まりが期待されます。
ただし、マンション管理士には独占業務がないため、専業として生計を立てるハードルは高めです。
マンション管理士と相性のいい資格とのダブル受験で専門領域を広げるなど、資格の特徴を最大限に活かせる選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。