【民法】連帯保証・連帯債務とは何かわかりやすく解説|法的効力や通常の保証との違いを解説
今回は「連帯保証」「連帯債務」について解説します。
保証制度には、通常の保証と連帯保証とがあり、住宅ローンなどにおいて採用されるのは、ほとんどが連帯保証です。また連帯債務は、夫婦共同で不動産を購入する買主様に関わる問題です。
そのため、今回取り上げるテーマは、宅建士にとって関わりの深い問題です。
過去の出題率はそれほど高くはありませんが、合格者15%に入るためにはぜひ押さえておきましょう。
「連帯保証・連帯債務」の解説
連帯保証とは
連帯保証は、保証人が主たる債務者と連帯して債務を保証するため、通常の保証より保証人の責任が重くなります。
連帯保証も、通常の保証と同様に、主たる債務者が債務不履行に陥った際に、代わりに債務を履行します。
その他、連帯保証と通常の保証の共通点と違いについてまとめました。
・連帯保証と通常の保証の共通点
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・連帯保証と通常の保証の違い
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連帯債務とは
「連帯債務」とは、複数人の債務者が連帯して同一の債務を負うことを言います。
通常、複数人で債務を負う場合、債務の全額を人数で割り、分割された額をそれぞれが等しく負担します(分割債務)。
一方、連帯債務では、実際の支払いは連帯債務者全員で分担しつつも、債務(=支払う義務)については全員で同一のものを連帯して負います。
それぞれの連帯債務者が分担する支払い額を負担部分と言います。連帯債務の負担部分も分割債務と同じく、特別の取り決めがなされない場合は、債務総額を人数で割った額となります。
【連帯債務の例】
AさんとBさんが100万円の連帯債務を負った場合、実際の支払い予定額は各50万円ですが、債務はAさんBさんそれぞれが100万円を負います。 |
「連帯保証」と「連帯債務」との違いは、当事者の立場の違いです。
「連帯保証」では、主たる債務者とその保証債務を負う連帯保証人がおり、保証される側と保証する側に分かれています。そして、基本的には主たる債務者により債務が履行されることを前提としています。
しかし「連帯債務」では、両方の連帯債務者が対等な関係で、共に主たる債務者となります。
・連帯債務の特徴
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連帯債務における「絶対効」と「相対効」 ←民法改正ポイント!
上記の他にも、連帯債務同士が相互に影響し合う「絶対効」となる場合と、影響し合わない「相対効」となるケースがあります。
・絶対効のケース
- 履行…誰か1人でも履行により債務が消滅すると、他の債務者の債務も消滅する
- 更改…債務者の1人が既存の債務を消滅させて新しい債務を成立させた場合は、他の債務者の債務も消滅する
- 相殺…債務者の1人が債権者に対する反対債権により債務を相殺して消滅させた場合、他の債務者の債務も消滅する(相殺を援用=利用しない間は、他の債務者は相殺可能な債務者の負担部分と同額の履行を拒否できる)
- 混同…相続などにより1人の債務者と債権者の地位が同一人になり債務が消滅した場合は、他の債務者の債務も消滅する
・相対効のケース
- 債務者1人に対する債務の免除・契約取消・時効消滅は、他の債務者の債務に影響しない
「連帯保証・連帯債務」に関連する法律
この項目に関連する法律は以下のとおりです。
民法(令和4月1日施行)
連帯債務者の一人と債権者との間に更改があったときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。 連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。 2 前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
連帯債務者の一人と債権者との間に混同があったときは、その連帯債務者は、弁済をしたものとみなす。
第四百三十八条、第四百三十九条第一項及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。ただし、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。
連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額(中略)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する。 (以下省略) |
実際に過去問を解いてみよう
問題:
A、B、Cの3人がDに対して900万円の連帯債務を負っている。DがAに対して履行の請求をした場合、B及びCがそのことを知らなくても、B及びCについて、その効力を生じる。(平成29年度本試験 問8より改題)
答え:✖
解説
債権者が連帯債務者の1人に対して履行の請求をしたとしても、他の連帯債務者に対しては影響しません。
宅建受験者はここをチェック!
「連帯保証・連帯債務」の試験科目
権利関係
「連帯保証・連帯債務」が含まれる試験分野
保証・連帯債務
「連帯保証・連帯債務」の重要度
★★★☆☆ 2022年の民法改正点
「連帯保証・連帯債務」過去10年の出題率
20%
2023年宅建試験のヤマ張り予想
今回解説するテーマの過去出題率はかなり低めです。しかし、2020年の民法の大幅改正に含まれる項目のため、出題される可能性はあります。
住宅ローンを取扱う宅建士にとって必須の知識ですので、重要度は高いです。
また、関連テーマである「通常の保証」についての問題は、出題率40%とやや高めです。「通常の保証」と「連帯保証」を比較しながら学習すると覚えやすいでしょう。
宅建士を目指している方は「目指せ!宅建士への道」を参考にしてみてください。
「連帯保証・連帯債務」ポイントのまとめ
この項目で押さえておくべきポイントは以下のとおりです。
- 連帯保証人には補充性が認められず、主たる債務者より先に催告されても拒否できない
- 連帯保証人に生じた混同・更改・相殺・混同などの事由について、主たる債務者にも効力が生じる
- 連帯債務とは、複数人の債務者が連帯して同一の債務を負うことである
- ひとつの連帯債務が免除・取消になっても他の連帯債務は残る
最後に
今回のテーマである「連帯保証」「連帯債務」は、2020年の民法改正点であるため、同年の宅建試験での出題確率は例年より大幅に高まると考えられます。そのため、このテーマの学習を確実に行っておけば、合格に近付くことができます。
学習内容は一見すると難易度が高そうに見えますが、基本のルールがあり細かい判例は少ないため、覚えやすいでしょう。焦らず確実に暗記することが大切です。
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