団信の「がん50% vs 100%保障」どう選ぶ?がん治療費のリアルと後悔しない選び方
投稿日 : 2026年10月06日

住宅ローンを組むお客様にとって、がん団信の「50%保障」と「100%保障」のどちらを選ぶかは、マイホーム計画における大きな悩みどころです。「わずかな金利上乗せでどこまで手厚く備えるべきか」「本当にその保障が必要なのか」と相談されるお客様も少なくありません。
月々のわずかな負担の裏に隠された具体的なコストや、万一の病気が家計に与えるリアルな影響、そして見落としがちな契約の落とし穴までを知ることで、お客様のライフプランに寄り添った最適な提案が見えてきます。住宅ローンという途中でやり直せない選択だからこそ、お客様が心から納得し、後悔のないマイホームを実現するためのヒントをご紹介します。
がん50%保障と100%保障の「基礎知識と落とし穴」
がん50%保障と100%保障の基本
住宅ローンを組む際に入る「団体信用生命保険(団信)」は、契約者が死亡・高度障害になった際にローン残高をゼロにする仕組みです。これに「がんと診断された際のリスク保障」を追加したのが「がん団信」です。
一般的にがん団信には、保障内容によって「がん50%保障」と「がん100%保障」の2種類があります。
- がん50%保障:
- がんと診断されたらローン残高が半額になる
- 金利上乗せなし~0.1%程度の上乗せ
- がん100%保障:
- がんと診断されたらローン残高がゼロになる
- 金利+0.1%〜0.2%程度の上乗せ
見落としがちな共通の落とし穴(保障条件の罠)
「がんと診断されたらローンが免除される」という言葉だけで選ぶと、万が一の際に「保険金が出ない」という事態に陥るリスクがあります。特に注意すべき3つの落とし穴を押さえておきましょう。
「上皮内がん」は対象外になるケースが多い
がん細胞が粘膜などの表面(上皮内)にとどまり、奥の組織まで浸潤していない初期段階の状態(ステージ0)を「上皮内がん(上皮内新生物)」といいます。
転移リスクが低く手術で根治しやすいことから、多くの団信では保障対象外とされており、診断されてもローンが免除されないケースがほとんどです。
転移リスクが低く手術で根治しやすいことから、多くの団信では保障対象外とされており、診断されてもローンが免除されないケースがほとんどです。
「免責期間(待機期間)」がある
がん団信の多くには、ローン実行日(責任開始日)から最初の90日間(約3ヶ月)は保障が適用されない「免責期間(待機期間)」が存在します。この期間中にがんと診断されても保険金は支払われず、特約自体が無効になるため注意が必要です。
■最新トピックス:「待ち期間なし」のがん団信が登場!
これまで当たり前だった「90日間の免責期間」ですが、カーディフ生命・損保の商品改定により、ローン実行当日から保障される「待ち期間なし」のサービスが登場しました。PayPay銀行や三井住友信託銀行など(2026年12月〜)で導入され、契約直後の安心感を重視する人に注目されています。
(参考:カーディフ生命・損保)
これまで当たり前だった「90日間の免責期間」ですが、カーディフ生命・損保の商品改定により、ローン実行当日から保障される「待ち期間なし」のサービスが登場しました。PayPay銀行や三井住友信託銀行など(2026年12月〜)で導入され、契約直後の安心感を重視する人に注目されています。
(参考:カーディフ生命・損保)
「がん診断」だけで支払われるのか
銀行によって保険金の支払い要件が大きく異なります。医師から「がんと診断確定」された時点でローン免除の対象となる団信もあれば「〇日以上の就業不能(働けない状態)」等、がん診断に加えた支払い要件がある団信もあります。
万が一の際にトラブルとなるので、事前にしっかり確認するようにしましょう。
金利上乗せ(+0.1〜0.2%)で増える「実際のコスト」
がん保障や特定疾病保障は、金利+0.1%〜0.2%程度の上乗せとなっていることが多いです。一見するとわずかな金利差に見えますが、35年間という長期間ではどのくらいの差が生まれるのでしょうか。
返済条件(借入3,500万円・35年返済・元利均等返済・基本金利0.8%)で、上乗せなし・+0.1%・+0.2%の3パターンを比較してみましょう。
| 比較項目 | 上乗せなし | +0.1% 上乗せ | +0.2% 上乗せ |
|---|---|---|---|
| 適用金利(想定) | 年 0.80% | 年 0.90% | 年 1.00% |
| 毎月の返済額 | 95,571円 | 97,177円 | 98,799円 |
| 毎月の追加コスト | 0円 | +1,606円 /月 | +3,228円 /月 |
| 35年間の総返済額 | 40,139,745円 | 40,814,217円 | 41,495,820円 |
| 35年間の総追加コスト | 0円 | +674,520円 | +1,355,760円 |
| 主な保障内容の目安 | 死亡・高度障害のみ | がん50%保障 | がん100%保障 |
※上乗せ分の純粋な追加コストを分かりやすく比較するため、ベース金利を年0.8%固定として試算しています。
※上記数値は上記条件での試算値であり、金利変動や繰上返済等がない場合の計算結果です。
■+0.1%上乗せ(月々 +1,606円 / 35年総額 +約67万円)
外食1回分、またはカフェ数回分に相当する月々+約1,600円程度の出費増です。
一般の生命保険会社で「がん保険」に単体で加入すると、月額2,000円〜3,000円程度かかることが多いため、月々約1,600円で保障を追加できるのは団信特有の大きなメリットといえるでしょう。
外食1回分、またはカフェ数回分に相当する月々+約1,600円程度の出費増です。
一般の生命保険会社で「がん保険」に単体で加入すると、月額2,000円〜3,000円程度かかることが多いため、月々約1,600円で保障を追加できるのは団信特有の大きなメリットといえるでしょう。
■+0.2%上乗せ(月々 +3,228円 / 35年総額 +約135万円)
サブスク数個分あるいは毎月の通信費相当となる月々+約3,200円の出費増です。
35年の総額では約135万円と高額な出費のように思えますが、「もしがんと診断されたら残りのローンがすべて消える」という強力なリスクヘッジを得るための保険料と考えれば、十分検討に値する選択肢といえます。
サブスク数個分あるいは毎月の通信費相当となる月々+約3,200円の出費増です。
35年の総額では約135万円と高額な出費のように思えますが、「もしがんと診断されたら残りのローンがすべて消える」という強力なリスクヘッジを得るための保険料と考えれば、十分検討に値する選択肢といえます。
がん治療中の「月間家計」シミュレーション
がん治療にかかる費用はどのくらい?
もし、がんになってしまった場合、どのくらい費用がかかるのでしょうか。
厚生労働省の医療給付実態調査(令和5年度)を参考に1件あたりの医療費をまとめてみました。
厚生労働省の医療給付実態調査(令和5年度)を参考に1件あたりの医療費をまとめてみました。
| 傷病名(部位) | 入院 1件あたり医療費 | 入院 平均日数 | 入院外 1件あたり医療費 | 入院外 平均日数 |
|---|---|---|---|---|
| 胃 | 697,004 円 | 11.4 日 | 51,104 円 | 1.5 日 |
| 結腸 | 685,504 円 | 10.7 日 | 44,969 円 | 1.5 日 |
| 直腸S状結腸移行部及び直腸 | 798,978 円 | 11.5 日 | 59,919 円 | 1.6 日 |
| 肝及び肝内胆管 | 727,379 円 | 10.6 日 | 136,414 円 | 1.6 日 |
| 気管,気管支及び肺 | 738,028 円 | 11.0 日 | 104,805 円 | 1.6 日 |
| 乳房 | 626,368 円 | 8.5 日 | 60,964 円 | 1.6 日 |
| 子宮 | 699,887 円 | 9.2 日 | 44,838 円 | 1.5 日 |
| 悪性リンパ腫 | 1,350,165 円 | 14.7 日 | 85,647 円 | 1.5 日 |
| 白血病 | 1,902,504 円 | 17.9 日 | 99,480 円 | 1.6 日 |
| その他の悪性新生物 | 718,302 円 | 10.9 日 | 75,727 円 | 1.6 日 |
※厚生労働省の医療給付実態調査(令和5年度)をもとに「いえーる 住宅研究所」にて作成

固形がん(胃・大腸・肺・乳房など)の入院1件あたりの医療費は60万〜80万円程度、血液がん(白血病・悪性リンパ腫)だと130万〜190万円程度です。
日本の公的医療保険では窓口負担が3割のため、計算上は「18万〜24万円」や「39万〜57万円」となります。
しかし、実際には「高額療養費制度」があるため、事前に手続きをするか後から申請することで、平均的な所得(年収約370万〜770万円)の方であれば1か月あたりの自己負担額は約8万〜9万円程度に抑えられます。
がん治療中の「月間家計」シミュレーション
手取り約35万円、3人家族(夫婦+子ども1人)を基準とし、胃がんで「最初の1か月に入院(10日間)」、「残り11か月は毎月通院(外来)」した場合をシミュレーションしてみましょう。
■入院月の家計:一時的に約5.9万円の赤字
初月は入院〔高額療養費の上限適用(89,910円)+食事代(5,500円)等〕により、95,410円の医療費が発生します。
初月は入院〔高額療養費の上限適用(89,910円)+食事代(5,500円)等〕により、95,410円の医療費が発生します。
| 項目 | 普段の家計 | 1か月目(入院月) | 補足 |
|---|---|---|---|
| 手取り収入 | 350,000 円 | 350,000 円 | 傷病手当金等を使わない前提 |
| 基本生活費(住居・食費・光熱費等) | 299,000 円 | 299,000 円 | 従来の生活費 |
| 医療・保険費(がん治療費加算) | 15,000 円 | 110,410 円 | 元の1.5万円 + 治療費 95,410円 |
| 貯金・投資 | 36,000 円 | 0 円 | 貯蓄を取りやめても補えない |
| 単月の家計収支 | ±0 円 | ▲ 59,410円 | 赤字発生(預貯金からの取り崩しが必要) |
■2〜12か月目(通院月)の家計:毎月の貯蓄が半減
2か月目以降は外来通院のみとなり、月々の医療費増加は 約 15,000 円 で推移します。
2か月目以降は外来通院のみとなり、月々の医療費増加は 約 15,000 円 で推移します。
| 項目 | 普段の家計 | 2〜12か月目(通院月) | 補足 |
|---|---|---|---|
| 手取り収入 | 350,000 円 | 350,000 円 | 傷病手当金等を使わない前提 |
| 基本生活費(住居・食費・光熱費等) | 299,000 円 | 299,000 円 | 従来の生活費 |
| 医療・保険費(がん治療費加算) | 15,000 円 | 30,331 円 | 元の1.5万円 + 治療費 15,331 円 |
| 貯金・投資 | 36,000 円 | 20,669 円 | 毎月 約1.5万円の減額 |
| 単月の家計収支 | ±0 円 | 350,000 円 | 家計全体としては黒字を維持可能 |
「健康保険の自己負担割合(3割)」と「高額療養費制度」を適用して計算した結果、1年間の医療費総額は約26.8万円。これを平均すると、毎月約2.2万円 のコスト増となります。
計算上黒字は維持できますが、これまで毎月3.6万円できていた貯金が毎月約2万円に減少します。一見するとなんとかなりそうな気もしますが、実際には通院交通費や抗がん剤治療の影響で髪の毛が抜けてしまった際に購入するウィッグ代もかかります。さらに、「先進医療」を利用した場合には、全額自己負担となるため数百万円の医療費が発生します。
「がん団信」加入の年間収支シミュレーション
先で提示したベース金利を年0.8%固定として試算した場合の住宅ローン費用をもとに、「通常時(健康)」と「団信なし」「がん50%団信」「がん100%団信」の4つの違いがひと目でわかる比較表を作成しました。
| 比較項目 | ① 通常時 (健康な場合) | ② がん発症 (がん団信なし) | ③ がん発症 (がん50%団信) | ④ がん発症 (がん100%団信) |
|---|---|---|---|---|
| 手取り月収 | 350,000 円 | 350,000 円 | 350,000 円 | 350,000 円 |
| 住宅ローン(月額) | 95,496 円 | 95,496 円 | 48,589 円(半額) | 0 円(全額免除) |
| 通常生活費(ローン除く) | 203,504 円 | 203,504 円 | 203,504 円 | 203,504 円 |
| 【参考】生活費+ローン合計 | 299,000 円 | 299,000 円 | 252,093 円 | 203,504 円 |
| 保険費用 | 15,000 円 | 15,000 円 | 15,000 円 | 15,000 円 |
| 毎月のがん治療費(平均) | 0 円 | 22,350 円 | 22,350 円 | 22,350 円 |
| 毎月の貯金額(手元に残る額) | 36,000 円 | 13,650 円 | 60,597 円 | 109,146 円 |
| 年間の貯金額(合計) | 432,000 円 | 163,804 円 | 726,684 円 | 1,309,752 円 |
| 通常時(①)との年間収支差 | 基準 | ▲ 268,196円 | +294,684円 | + 877,752円 |
このシミュレーションでは、『がん団信なし』の万一の年間貯金(16.3万円)に対し、『がん100%団信』加入時は住宅ローン返済(年間約114.6万円)が免除されます。その結果、年間貯金額は130.9万円となり、年間収支で約114.6万円(実質負担軽減額で約87万円)もの差が生まれます。仮に、特約料(月々約3,200円)を自力で積み立ててこの差額(約87万円)を貯めようとした場合、実に22年8か月の期間が必要です。わずかな特約料で万一のローン負担をゼロにできるがん団信は、高額療養費制度でカバーしきれない医療費や雑費を補ううえでも、非常に大きな支えになるでしょう。
もちろん、がん団信は『健康なまま完済すれば掛け捨てになる』『返済が進むにつれて保障額(残高)も減っていく』という側面もあります。ですが、リスクが最も高く家計ダメージが大きい前半時期を、月々約3,200円で確実にカバーできる点においては、非常に合理的な備えと言えます。
後悔しない選び方
住宅ローンとセットで加入する団信は途中で解約することができません。そのため、現状の家計で毎月安全に返せることを最優先として検討することが重要です。
「毎月の返済負担」と「万一の時の家計防衛力」のバランスから見た後悔しない選び方
- まず「がん50%保障」の月額返済で資金計画を立てる
- 「無理のない返済」を基本とするなら、まずは50%保障がついた返済額(特約料込み)で家計に無理がないか確認
- 「+月々約1,600円」を払って100%にする価値があるか考える
- 「月1,600円増えても生活に何の影響もない」
- がん100%保障 へアップグレード(手厚い安心を買う)
- 「毎月固定で出ていくお金は少しでも減らしておきたい」
- がん50%保障 のまま確定(無理のない返済を最優先)
- 「月1,600円増えても生活に何の影響もない」
35年という長期間の支払いとなるため「無理のない返済」が最重要です。民間のがん保険を上手く併用しがん特約を付けないという方法もあります。
がんの発症リスクが最も高まり、かつ住宅ローン残高が多く残っている「40代〜50代」の家計ダメージをどう守るかという視点で選ぶと、健康な時も万一の時も後悔しない選択になります。
がんの発症リスクが最も高まり、かつ住宅ローン残高が多く残っている「40代〜50代」の家計ダメージをどう守るかという視点で選ぶと、健康な時も万一の時も後悔しない選択になります。
住宅ローンの「がん団信」には、金利上乗せや保障内容が異なる「がん50%保障」と「がん100%保障」の2種類が存在します。月々の返済負担は増えますが、がん団信に加入することで万が一の際の家計防衛力を大きく高めることができます。
手取り月収35万円の家庭の事例では、胃がん発症初月の入院時に約5.9万円の赤字が発生し、2〜12か月目の通院期間も毎月の貯金額が従来の3.6万円から約2万円へと半減しました。がん100%団信に加入していた場合には、発症時の年間貯金額が1,309,752円となり、団信なし(163,804円)と比べて年間で約87.7万円もの大きな収支差(家計防衛力)を生み出します。
がん団信に加入した方が「安心を買う」ことはできますが、ローン返済期間中の途中解約ができないため慎重に検討する必要があります。「毎月の返済負担」と「万一の時の家計防衛力」のバランスを考え、家計にあったプランを選択するようにしましょう。
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この記事の監修者
いえーる住宅研究所 編集部
運営・編集
いえーる住宅研究所編集部では、住宅ローンの最新金利動向や不動産売買・建築ノウハウを、分かりやすく正確にお伝えすることを目指しています。
国土交通省や住宅金融支援機構などの公的機関が発信する一次情報や公式データを元に独自取材・調査を行い、定期的に最新情報へ更新・発信しています。
運営会社:iYell株式会社 (https://iyell.co.jp/)


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