宅地建物取引士証の取扱いと義務|住所変更を忘れたときの罰則も紹介
宅地建物取引士証(宅建士証)は、宅建士の身分証明書となるものです。これがないと宅建士として働くことができません。
そのため、取扱いは厳重にする必要があり、宅建士証所持者にはいくつかの義務が課せられます。義務違反に対しては罰則規定も設けられており、宅建士になろうとする者であれば、必ず知っておかなければいけない知識です。
今回は、宅地建物取引士証の取扱いと規則について解説します。
「宅地建物取引士証」の解説
宅地建物取引士証とは
宅地建物取引士証(以下、宅建士証)とは、宅地建物取引士(以下、宅建士)であることを証明する書類です。宅建士証を持っていなければ、宅建士の専門業務に従事することはできません。
宅建士証の記載内容
宅建士証には、以下のような項目が記載されています。
- 氏名
- 顔写真
- 生年月日
- 住所
- 資格者登録番号・登録年月日
- 宅建士証の交付年月日
- 宅建士証の有効期限年月日
- 登録都道府県(の知事氏名)
▼宅建士証のサンプル
画像引用:一般社団法人 岩手県宅地建物取引業協会|宅地建物取引士
※書式や記載内容は都道府県により異なります。
宅建士証の有効期限
宅建士証の有効期間は5年間で、任意で更新も可能です。また、宅建士証は交付された都道府県以外でも使用することができます。
旧宅地建物取引主任者証の効力
宅地建物取引士(宅建士)は、2015年4月1日の宅建業法改正で「宅地建物取引主任者」から名称変更され、新たに規定された資格です。
そのため、それ以前に取得した宅地建物取引主任者証も、宅建士証と同じであるとみなされ、有効期間が満了するまで使用することができます。
宅地建物取引士証の交付申請方法
法定講習
宅建業者の免許と違い、宅建士証の交付には特別な条件はなく、申請すれば交付されます。ただし、交付や更新に際して、国土交通省の定めによる講習(法定講習)を受ける必要があります。
法定講習は、資格者登録の際に実務未経験者が受講する登録実務講習とは全く異なりますので、注意が必要です。
◆法定講習の条件
- 資格者登録をしている都道府県にて受講する
- 宅建士証の交付申請前6ヵ月以内に受講する
- 更新に際してはその都度受講する
ただし、以下の者は、例外的に法定講習を受ける必要はありません。
- 試験合格日から1年以内に宅建士証の交付を受けようとする者
- 登録移転の申請にともない宅建士証の交付を受けようとする者
登録移転の申請と宅建士証
宅建士資格者は、勤務地の変更などの理由があれば、登録都道府県を変更(登録移転)することができます。
その場合、前の都道府県知事に対して、登録移転申請を行います。前都道府県知事は資格者の申請を受けて、次の都道府県知事に新しい宅建士証の交付を要請します。
登録移転をすると、前の宅建士証は効力を失います。宅建士資格者は、失効した前の宅建士証と引換えに、新しい宅建士証を受け取ることができます。
その際、前の宅建士証の有効期限が新しい宅建士証に引き継がれます。そのため、法定講習を改めて受講する必要はありません。
つまり、前の宅建士証の有効期限が残り2年であったら、新しい宅建士証の有効期限も2年となり、2年後に更新する場合に法定講習を受講することになります。
宅建士証に関する義務
宅建士証を所持する者には、次の義務が課せられます。
①提示義務
宅建士は、重要事項説明を行う際に、必ず宅建士証を提示しなければいけません。相手からの請求がなくても、必ず提示することが、宅建士の義務となっています。
そのため、宅建士証を紛失または滅失した場合には、再交付を受けるまで重要事項説明を行うことはできません。
これに違反すると、10万円以下の過料に処せられます。過料とは、違反に対して支払いを科すことで制裁とするものです。刑罰を科すほどではない軽い違反に対して適用されます。
また、重要事項説明のときでなくても、取引関係者から請求があった場合には、必ず宅建士証を提示しなければいけません。ただし、この義務には罰則は設けられていません。
②書換え交付申請義務
宅建士は、氏名または住所を変更したときは、資格者登録への変更と合わせて、宅建士証の書換え交付を申請しなければいけません。
③提出義務
宅建士は、事務禁止処分を受けたときは、速やかに宅建士証をその交付を受けた都道府県知事に提出しなければいけません。
これに違反すると、10万円以下の過料に処せられます。
なお、都道府県知事は、禁止期間満了後に宅建士証の提出者から返還の請求があれば、直ちに宅建士証を返還しなければならないとされています。
④返納義務
宅建士は、登録を消除された場合や宅建士証が失効した場合には、速やかに宅建士証をその交付を受けた都道府県知事に返納しなければいけません。
これに違反すると、10万円以下の過料に処せられます。
また、宅建士証を紛失し再交付を受けた後に、紛失していた宅建士証が発見された場合にも、速やかに発見した失効済みの宅建士証をその交付を受けた都道府県知事に返納する必要があります。
◆宅建士証に関する義務のまとめ
義務の内容 | 義務が生じる場合 | 違反した場合 |
①提示 | a.重要事項説明のとき | 10万円以下の過料 |
b.取引関係者から請求された場合 | 罰則規定なし | |
②書換え交付申請 | 氏名または住所を変更した場合 | |
③提出 | 事務禁止処分を受けた場合 | 10万円以下の過料 |
④返納 | a.登録を消除された場合 | |
b.宅建士証が効力を失った場合 |
「宅地建物取引士証」に関連する法律
「宅地建物取引士証」に関する法律には、以下の条文が挙げられます。
宅地建物取引業法(令和元年9月14日時点)
第十八条第一項の登録を受けている者は、登録をしている都道府県知事に対し、宅地建物取引士証の交付を申請することができる。 2 宅地建物取引士証の交付を受けようとする者は、登録をしている都道府県知事が国土交通省令の定めるところにより指定する講習で交付の申請前六月以内に行われるものを受講しなければならない。ただし、試験に合格した日から一年以内に宅地建物取引士証の交付を受けようとする者又は第五項に規定する宅地建物取引士証の交付を受けようとする者については、この限りでない。 3 宅地建物取引士証(第五項の規定により交付された宅地建物取引士証を除く。)の有効期間は、五年とする。 (中略) 6 宅地建物取引士は、第十八条第一項の登録が消除されたとき又は宅地建物取引士証が効力を失つたときは、速やかに、宅地建物取引士証をその交付を受けた都道府県知事に返納しなければならない。 7 宅地建物取引士は、第六十八条第二項又は第四項の規定による禁止の処分を受けたときは、速やかに、宅地建物取引士証をその交付を受けた都道府県知事に提出しなければならない。 (以下省略) 宅地建物取引士証の有効期間は、申請により更新する。 2 前条第二項本文の規定は宅地建物取引士証の有効期間の更新を受けようとする者について、同条第三項の規定は更新後の宅地建物取引士証の有効期間について準用する。 宅地建物取引士は、取引の関係者から請求があつたときは、宅地建物取引士証を提示しなければならない。 第二十二条の二第六項若しくは第七項(中略)の規定に違反した者は、十万円以下の過料に処する。 |
宅建受験者はここをチェック!
「宅地建物取引士証」の試験科目
宅建業法
「宅地建物取引士証」が含まれる試験分野
宅地建物取引士
「宅地建物取引士証」の重要度
★★★★★ →4年連続出題中の頻出問題
「宅地建物取引士証」過去10年の出題率
80%
2023年宅建試験のヤマ張り予想
「宅地建物取引士証」に関する知識は、宅建士分野の中では最も出題率が高い試験範囲です。宅建士として正式に働くことを可能にする証明書だからこそ、その取扱いについてしっかり理解しておかなくてはいけないからです。
宅建試験の合格ラインは、正解率75%と言われています。そのため、ほぼ毎年出題されている今回のテーマは出題される前提で取り組み、確実に正解したいところです。
宅建士を目指している方は「目指せ!宅建士への道」を参考にしてみてください。
「宅地建物取引士証」ポイントのまとめ
「宅地建物取引士証」の試験範囲で重要なポイントを、以下にまとめました。
- 宅建士は、宅建士証を持っていなければ、宅建士の専門業務に従事することはできない
- 宅地建物取引士証の有効期間は5年間で、任意で更新も可能である
- 宅建士証の交付・更新の申請をする場合、申請前6ヵ月以内に法定講習を受ける必要がある
- 宅建試験合格日から1年以内に宅建士証の交付を受けようとする者は、法定講習を受講しなくてもよい
- 登録移転をして新しい都道府県で宅建士証の交付を受ける場合、前の宅建士証の有効期限が引き継がれる
- 宅建士は、重要事項説明のときと取引関係者に請求されたとき、必ず宅建士証を提示しなければならない
- 宅建士は、事務禁止処分を受けたときは、速やかに宅建士証を都道府県に提出しなければならない
- 宅建士は、登録消除の場合や宅建士証が効力を失った場合、速やかに宅建士証を都道府県に返納しなければならない
- 重要事項説明時の提示義務・提出義務・返納義務に違反した場合、10万円以下の過料に処せられる
最後に
宅建試験合格と資格者登録は一生有効である一方、宅建士証には有効期限があります。そして、更新する場合はその度に講習を受ける必要があります。
それは、宅建士の業務が多くの法律に関わるため、法改正があっても最新の情報に基づいて業務に従事できるようにするためです。
そのため、宅建試験も毎年出題傾向に差があり、法改正により年度によって正解が異なることもあります。つまり、2020年の受験者は2020年の試験に合わせた対策をすべき、ということです。
このサイトでは、2020年の宅建試験に合わせた解説を掲載していますので、引き続き学習に活用していただければ幸いです。
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