請負はモノでなく仕事の契約|民法改正後の契約不適合責任と契約解除権とは
土地を購入された買主様がその土地に注文住宅を建てるときには、建築業者と請負契約を結びます。
土地を媒介する宅建業者としても「請負」については理解しておきたいところです。
また、2020年の民法改正により請負契約に関する条項にも変更があるため、宅建の試験勉強をしている人たちの間でも請負への注目度は高まっています。
請負とは何なのか、当事者には何の義務と権利が生まれるのか、請負契約による注文者への債務の履行や責任・解除について学びましょう。
宅建受験者はここをチェック!
「請負」の試験科目
権利関係
「請負」が含まれる試験分野
請負
「請負」の重要度
★ ★ ★ ☆ ☆ 2020年の試験問題には出題される可能性あり
「請負」過去10年の出題率
30%
2020年宅建試験のヤマ張り予想
請負は宅建試験の広い試験範囲の中で、比較的後回しにしても良いと考えられていた項目でした。
しかし、2020年4月に施行される改正民法では請負契約に関する変更箇所があるため、今年の宅建試験では出題される可能性があります。
宅建業の実務上において、請負契約はお客様が土地利用をご検討される際に必要ですので、決して無視できない問題です。
試験対策だけでなく実務に役立てるためにも、請負については基本的な事柄からしっかり押さえましょう。
「請負」とは
請負契約とはモノを売り買いする売買契約とは違い、何らかの仕事(行為・作業)を依頼して、相手方が行った仕事に対して報酬を払う契約です。
画像引用:南九州市ホームページ|南九州市建設工事請負契約書標準書式
「注文者」と「請負人」
モノの売買契約に「売主」と「買主」が存在するように、請負契約には「注文者」と「請負人」が存在します。
注文者 | 仕事を依頼する人 | ・目的物を受け取る権利がある
・報酬を支払う義務を負う |
請負人 | 仕事を受ける人 | ・目的物を引き渡す義務を負う
・報酬をもらう権利がある |
請負契約の履行
請負契約が成立すると、注文者と請負人にはそれぞれ債権(権利)と債務(義務)が発生します。
各自の債務履行は「目的物の引き渡し」と「報酬の支払い」が同時履行の関係に立ちます。請負人が仕事を完成させても、その目的物が注文者に引き渡されない限りは債務を履行したことにはなりません。
具体的に説明すると、注文住宅を請け負った建築業者が建築を完了させても、施工主への引き渡し完了までは工事代金が請求できないということです。
注文者の契約解除権
請負契約には「注文者の意向に端を発する仕事」という大前提があるため、注文者は自分の都合によって契約を解除できる解除権があります。
ただし、解除の意思表示ができるのは仕事の完成前に限ります。また、注文者が契約を解除したことにより請負人がこうむった損害があれば、その損害に対し賠償する義務があります。
請負人の契約不適合責任
請負人が引き渡した目的物に万が一瑕疵(かし)があった場合には、注文者は依頼した内容に適合するように要求する権利があります。これを契約不適合責任と言います。
なお、契約不適合責任はこれまで瑕疵担保責任と呼ばれていましたが、2020年4月に施行される改正民法により、当該責任の名称が変更されます。
民法改正前・改正後の違いは以下表のとおりです。
画像引用:日刊建設工業新聞[2019年12月26日1面]|四会連合/工事請負契約約款を改正/20年4月から全国で講習会
契約不適合により請負人に請求できる内容
引き渡された目的物が契約内容と異なっていた場合、注文者はまず以下の請求を行い、目的物の修正・修理によって契約に適合するように請求できます。
追完請求 | 不具合部分の修理の請求 |
損害賠償請求 | 契約不適合により発生した損害の賠償請求 |
注文者が追完請求をしても請負人が応じない、または追完しても契約内容に満たない場合には、さらに以下の請求も可能になります。
代金減額請求 | 請負代金の減額の請求 |
契約解除 | 契約の解除および支払い済代金の返還請求 |
注文者が契約不適合責任を請負人に追及できるのは、目的物の引き渡し後1年間です。
「請負」に関連する法律
この項目に関連する法律は以下のとおりです。
民法 (令和2年3月1日時点)
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。
前二条の規定は、仕事の目的物の瑕疵が注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じたときは、適用しない。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。 ↓ 【改正後】(令和2年4月1日施行) 前二条の規定は、仕事の目的物の瑕疵が注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じたときは、適用しない。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。
前三条の規定による瑕疵の修補又は損害賠償の請求及び契約の解除は、仕事の目的物を引き渡した時から一年以内にしなければならない。 2 仕事の目的物の引渡しを要しない場合には、前項の期間は、仕事が終了した時から起算する。 ↓ 【改正後】 前条本文に規定する場合において、注文者がその不適合を知った時から一年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。 2 前項の規定は、仕事の目的物を注文者に引き渡した時(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時)において、請負人が同項の不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、適用しない。 |
実際に過去問を解いてみよう
問題:
Aを注文者、Bを請負人としてA所有の建物増築の請負契約が締結された後、Bが仕事を完成しない間は、AはいつでもBに対して損害を賠償して本件契約を解除することができる。(令和元年度本試験 問8より改題)
答え:〇(できる)
解説
民法第641条の規定により、請負人Bの仕事が完成前であれば注文者Aはいつでも損害を賠償して契約の解除をすることができます。
「請負」ポイントのまとめ
この項目で押さえておくべきポイントは以下のとおりです。
- 請負はモノではなく仕事(行為・作業)の契約
- 目的物の引き渡しと報酬の支払いは同時履行の関係にある
- 注文者は仕事の完成前なら契約解除が可能
- 請負人は目的物の納品後1年間は契約不適合責任(瑕疵担保責任)がある
最後に
今回は請負契約について解説しました。
日常業務では請負契約を直接受けることはほとんどありませんが、不動産業界全体で考えれば、請負契約は非常に深い関わりがある契約になります。
不動産業界に従事する方は請負についても幅広い知識を持ち、自らの業務に活かしていきましょう。
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