賃貸借の対抗力と転貸・賃借権の譲渡における債務|宅建試験の重要点

投稿日 : 2020年04月29日

アパートや借地など不動産の賃貸借契約は、宅建士の業務の中でも代表的なもののひとつです。そのため、宅建試験での出題率は高い傾向にあります。

不動産の賃貸借について主に適用される法律は「借地借家法」ですが、借地借家法の基礎となっているのは民法の規定です。そのため、宅建試験で賃貸借に関する問題に確実に正解するには、民法における賃貸借の規定も理解しておく必要があります。

今回はその中でも、賃貸借における各権利者の対抗力、転貸・賃借権の譲渡についてご説明します。

kobayashi

この記事の監修者:
平山 和歌奈
宅建スペシャリスト

不動産会社や金融機関にて、ローンの審査業務、金消・実行業務などに従事。その過程で、キャリアアップのため自主的に宅建の取得を決意。試験の6ヶ月前には出勤前と退勤後に毎日カフェで勉強、3ヶ月前からはさらに休日も朝から閉館まで図書館にこもって勉強。当日は37℃の熱が出てしまったが、見事1発で合格した。現在はiYell株式会社の社長室に所属。

 

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「賃貸借の対抗力/転貸・賃借権の譲渡」の試験科目

権利関係

「賃貸借の対抗力/転貸・賃借権の譲渡」が含まれる試験分野

賃貸借

「賃貸借の対抗力/転貸・賃借権の譲渡」の重要度

★★★★☆  「転貸・賃借権の譲渡」が特に重要

「賃貸借の対抗力/転貸・賃借権の譲渡」過去10年の出題率

70%

 

2020年宅建試験のヤマ張り予想

今回のテーマは賃貸借契約における各権利の対抗力です。試験では、賃借権や賃貸人の地位が、物権変動の際にどのように変化するのかが問われます。

特に、転貸・賃借権の譲渡に関する問題の出題率がここ数年高くなっています。転貸・賃借権の譲渡が認められる条件や賃料の支払いについて、重点的に確認しておきましょう。

 

「賃貸借の対抗力/転貸・賃借権の譲渡」の解説

賃借権の対抗力

不動産の賃貸借契約において権利の移転が起こった時、賃借権が法的対抗力持つには、登記を備えている必要があります。

しかし、賃借人に登記請求権はありません。そのため、貸主は登記手続きに対応してくれないのが一般的です。

ただし、それでは賃借人の権利が十分に保護されません。そこで、不動産の賃借権についての法律「借地借家法」において、土地・建物の賃借権の対抗力について以下のように規定されています。

 

◆借地借家法の規定

  • 土地の賃貸借(借地権)…土地の上の建物の登記を備えていることで、対抗力がある
  • 建物の賃貸借(建物賃借権)…建物の引き渡しが完了している場合に、対抗力がある

 

 

賃貸人の地位の移転

賃貸人が不動産を第三者に譲渡した場合、賃貸人としての地位はどうなるのでしょうか。元の所有者=賃貸人をAさん、賃借人をBさん、譲受人をCさんとして、各事例をご説明します。

 

・賃借人が対抗要件を備えている場合

賃借人Bさんが前項で紹介した借地借家法における対抗要件を備えていれば、当該不動産の所有権がAさんからCさんに移転する際、賃貸人としての地位も当然に譲渡人Aさんから譲受人Cさんに移転します。このとき、賃借人Bさんの同意を得る必要はありません。

 

・賃借人が対抗要件を備えていない場合

賃借人Bさんが対抗要件を備えていない場合、元の所有者AさんからCさんに所有権が移転されても、賃貸人としての地位まで必然的に移転するわけではありません。AさんとCさんの間で、賃貸人としての地位を移転しないという合意をすることも可能です。

また、この場合も賃借人Bさんの同意は不要です。

 

・譲受人が所有権を備えていない場合

不動産の譲受人であるCさんが、所有権移転登記を行っていない場合、Cさんは賃貸人の地位を主張できません。この場合、CさんはBさんに対して賃料を請求することもできません。

◆賃貸人の地位の移転可否

所有権移転登記の有無 賃借人の対抗要件の有無 賃貸人としての地位の移転
譲受人が所有権移転登記を行っている 賃借人が対抗要件を備えている 譲渡人から譲受人へ自動的に移転
賃借人が対抗要件を備えていない 譲渡人と譲受人の間で合意があれば移転しないことも可能
譲受人が所有権移転登記を行っていない 賃借人が対抗要件は問わない 移転しない→賃料を請求できない

 

 

 

転貸・賃借権の譲渡

転貸」とは、賃借人が賃借物を第三者に又貸しすることです。又貸しを受ける第三者のことを「転借人」と言います。

そして、賃借権自体を第三者に譲ることを「賃借権の譲渡」と言います。

 

・転貸と賃借権の譲渡の違い

転貸と賃借権の譲渡の違いは、賃借人が変更されるかどうかです。転貸では賃借人は変わりません。一方、賃借権の譲渡の場合は、賃借人が第三者に変更されるため、元の賃借人は賃借人ではなくなります。

 

・転貸・賃借権の譲渡の条件

転貸または賃借権の譲渡を行うには、賃貸人の承諾を得る必要があります。原則として、賃貸人に無断で行うことはできません

もし無断で転貸・賃借権の譲渡を行った場合、賃貸人は賃貸借契約を解除できます。

【例外的に無断転貸・譲渡が認められる場合】

無断転貸・譲渡が認められない理由は、信頼関係を基礎とする賃貸借契約における背信的行為とみなされるからです。

そのため、親族へのアパートの転貸など、背信的行為とまでは言えない無断転貸・譲渡であれば、許容される判例が出されています。背信的行為と認められない場合は、賃貸人は賃貸借契約を解除できません。

 

・転貸・賃借権の譲渡における賃料

賃借人による第三者への転貸・賃貸借の譲渡が行われた場合、賃貸人は第三者に賃料を請求できるのでしょうか。

転貸の場合、転借人は、賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負います。

  • 転借料が賃料より高い場合→転借人は賃貸人に対して「賃料と同額」を支払えばいい
  • 転借料が賃料より安い場合→転借人は賃貸人に対して「転借料と同額」を支払えばいい

賃借権の譲渡の場合、賃借権の譲受人が新しい賃借人となります。賃貸人と新しい賃借人との直接契約となりますので、賃貸人は新しい賃借人に対してのみ賃料の請求が可能になります。

 

 

「賃貸借の対抗力/転貸・賃借権の譲渡」に関連する法律

この項目に関連する法律は以下のとおりです。

民法 (令和2年4月1日施行)

第605条(不動産賃貸借の対抗力)

不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。

 

第605条の2(不動産の賃貸人たる地位の移転

前条、借地借家法(中略)による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。

2 前項の規定にかかわらず、不動産の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。この場合において、譲渡人と譲受人又はその承継人との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人又はその承継人に移転する。

(以下省略)

 

第605条の3(合意による不動産の賃貸人たる地位の移転)

不動産の譲渡人が賃貸人であるときは、その賃貸人たる地位は、賃借人の承諾を要しないで、譲渡人と譲受人との合意により、譲受人に移転させることができる。

(以下省略)

 

第612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限)

賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。

2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

 

第613条(転貸の効果)

賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。

(以下省略)

 

実際に過去問を解いてみよう
問題:

AがBに甲建物を月額10万円で賃貸し、BがAの承諾を得て甲建物をCに適法に月額15万円で転貸している。BがAに対して甲建物の賃料を支払い期日になっても支払わない場合、AはCに対して賃料10万円をAに直接支払いよう請求することができる。(平成28年度本試験 問8より改題)

答え:〇(できる)

 

解説

転借人は賃貸人に対して賃料を請求することができます。
この場合、賃料(10万円)より転借料(15万円)の方が高いので、AはCに賃料と同額の10万円までを請求できます。

 

「賃貸借の対抗力/転貸・賃借権の譲渡」ポイントのまとめ

この項目で押さえておくべきポイントは以下のとおりです。

  1. 土地の賃貸借契約において、建物の登記を備えていれば、借地権に対抗力がある
  2. 建物の賃貸借契約において、引き渡しが完了していれば、賃借権に対抗力がある
  3. 賃貸借不動産を譲渡したとき、譲受人が所有権移転登記を備えていない場合は、賃借人に賃料を請求できない
  4. 転貸または賃借権の譲渡を行うには、賃貸人の承諾を得る必要がある
  5. 転借人は、賃借人の債務の範囲内で、賃貸人に対して債務を負う

 

最後に

各権利者の対抗力に関する問題を解くには、個別の判例を知っておく必要があります。どんな条件がそろえば誰の権利が認められるのか、または認められないのか、表や箇条書きで整理しておくと理解しやすくなります。

また、今回ご説明したのは主に民法における賃貸借の規定ですが、宅建試験では借地借家法の規定と合わせて出題されることもよくあります。関連する試験範囲を合わせて学習すると、習得が早いでしょう。