第10回【イベントレポート】不動産CVCナイト

投稿日 : 2025年03月20日
第10回【イベントレポート】不動産CVCナイト
登壇者
デロイトトーマツベンチャーサポート株式会社 小池 俊光 氏
MytePro Technology Japan株式会社  大島 洋 氏
野村不動産ホールディングス株式会社  榎本 英二 氏
東急不動産ホールディングス株式会社 月足 光 氏
【不動産CVCナイト】ビジネスマッチング部会
が、2025年2月13日に一般社団法人 不動産テック協会主催にて開催されました。

昨今、事業会社のCVC活動への注目が高まっています。DX化が叫ばれるなか企業を取り巻く環境は凄まじい勢いで変化しています。今回のイベントでは、CVC活動を行っている事業者が登壇し、各社がCVC活動で目指すことについてお話されました。

住宅ローン業務を軽減したい
不動産事業者様はこちら
\ 住宅ローン業務を軽減したい不動産事業者様はこちら/
資料請求・お問合せはこちら

不動産テック協会とは

不動産とテクノロジーの融合を促進し、不動産業界の健全な発展と公共福祉の増進に貢献することを目的として、不動産テック業務に関する調査・研究や情報発信、ルールの確立、ビジネス機会を創出するイベントの開催など、さまざまな事業を行っている協会です。
2018年の発足以降、不動産テックカオスマップの公開や様々な情報発信を精力的に行っています。

CVCとは

CVCとは
Corporate Venture Capitalの略称で、事業会社がその傘下にVC(Venture Capital)を持ち、自己資金でファンドを組成して主にベンチャー企業に出資や支援を行う活動です。
CVCの仕組み

一般的なベンチャーキャピタルが、さまざまな分野のベンチャー企業を投資対象とするのに対し、CVCは投資・支援活動・協業を通して自社事業へのシナジー効果や成長を目的としています。そのため、自社の事業内容と関連性が強い企業や、進出したい領域に強い企業へ投資する傾向にあります。

基調講演:デロイトトーマツベンチャーサポート株式会社

デロイトトーマツベンチャーサポート株式会社 小池 俊光 氏
登壇者
デロイトトーマツベンチャーサポート株式会社
小池 俊光 氏

挑戦する人とともに未来をひらく

デロイトトーマツベンチャーサポート株式会社はデロイトトーマツグループの社内ベンチャーとして立ち上がったイノベーションファームです。「挑戦する人とともに未来をひらく」をミッションに、スタートアップ支援・大企業イノベーションコンサルティング・官公庁や自治体との連携によるイノベーターの育成支援を軸に、イノベーションを加速させるための事業を行っています

戦略リターンと財務リターン

前述の通り、CVCは投資・支援活動・協業を通して自社事業へのシナジー効果や成長が目的です。継続的に投資活動を行うためにも、「戦略的リターン」と「財務的リターン」のバランスを考慮しながら適切なリターンを得られるように設計します。
■戦略リターン
自社事業へのシナジー効果や成長など、自社の戦略的目標に対して非財務的な利益や価値をもたらすリターンのこと。
■財務的リターン
キャピタルゲイン(株式の評価上昇分)やインカムゲイン(利益分配)、投資先企業のIPOやM&Aによる収益といった投資した資金に対する金銭的な収益によるリターンのこと。
小池氏
■全般トレンド
CVC全般の統計として、海外CVCは比較的財務リターンが有利か、両リターンを等しく重視する傾向にありますが、日本のCVCは戦略リターン重視のアプローチという傾向があります。

日本のCVCが重視する「戦略リターン」とは、何を指すのか?

  • 情報収集目的
  • 既存事業の拡大・新規事業の投資

主に、この2つに取り組まれています。

スタートアップ全体の資金調達動向については、日本もグローバルも同じように直近やや控え目になってきている傾向にあります。2021年、2022年あたりから少し減少し、本年もおそらく下落するだろうとみられています。
■CVCトレンド
CVCに特化したトレンドも同じような傾向であるといえ、2024年の統計が取り切れていないのですが、おそらく2023年よりも上がるのではないかと思われています。

国内CVCの設立件数は、直近は少なめになっていますが、大きな流れでは伸びてきています。投資トレンドは、投資者数がかなり増大しており、投資額が一定水準を保っているので一件当たりの投資額が小さめになってきているのかなという傾向が見て取れます。

不動産テック分野への投資状況

小池氏
グローバルのトレンドとしては、2021年をピークに落ちてきています。
国内についてはグローバルからだいぶ遅れて投資が増えてきたかなという印象です。2016年、2017年と日本にまだ不動産テックという言葉が浸透していない時期は少ない状況で、2022年頃から急にどんどん増えてコロナの後に注目を浴びた分野なのかなと思います。

括りずらいとこでもありますが、グローバルのリアルエステートテクノロジーの分野ではBtoC領域(生産性向上などに寄与するところ)が金額・件数ともに多くなっています。
日本で同じデータを取ると、ソフトウェアや業務効率化といったDXの延長にあるような分野が特に注目されています。

小池氏
個人的に考えている課題として、不動産開発との比較で投資を見られてしまっていると考えています。特に経営管理の方を見られてしまっていて、理解を得られにくい状況になっていると思っています。
あとは、事業部門とコミュニケーションが取りづらいとか、担当者の異動により投資スタンスが変更されてしまうこともあります。
投資期間についても、だいたい10年くらいのスタンス+チケットサイズが小さくなってしまうのでインフラ関係に投資がしづらい課題があります。

結果として、皆さん投資先が類似してしまい、特徴が出ずらくなってしまって株価に反映しにくいといった傾向があり、このあたりが課題だと感じています。

MytePro Technology Japan株式会社

MytePro Technology Japan株式会社   大島 洋 氏
登壇者
MytePro Technology Japan株式会社
大島 洋 氏

革新的なテクノロジーとオープンなエコシステムで不動産業界に力を与える

1997年に設立し創業27年となる不動産ソリューションのリーディングプロバイダであり、不動産・建設テックの最大手といわれるMytePro Technologyが日本市場に進出しました。

ディベロッパー、ゼネコン、アセットオーナー向けに幅広く製品とサービスを提供し、投資、建設、マーケティング、運営、管理の分野におけるデジタル変革を促進している同社。
業界のパートナーと協力し、アプリケーションソフトウェア、業界調査、管理トレーニング、デジタルコンサルティング、ソフトウェア開発および運用保守サービスの提供を通して不動産DXの
イノベーション促進を支援しています。

スマートエージェント

近年「スマート家電」「スマートハウス」「スマートシティ」など、日常の中で「スマート」という言葉をよく聞くようになりました。
スマートとは、「すっきりしている様」「賢い」という意味があります。IT分野における「スマート」は後者の「賢い」という意味あいで用いられています。

■IT分野における「スマート」の特徴

  • インターネットに常時接続されている
  • リアルタイムで状況に応じた対応や変化が可能
  • スマートフォンやタブレットなどの端末と連携し、遠隔操作が可能
  • IT関連のコアデバイスとして効率的・高品質なサービスを提供する
大島氏
スマートエージェントでは、さまざまなものをスマート化しています。ひとつは街。自社でドローン部隊を持っていまして、自社で撮影してVR化しています。日本では難しい部分もありますが、街全体をVR化することで街の価値を見える化させて物件の価値を上げていく取り組みをしています。
もう一つは、増えている外国人インバウンド需要へ対応すべく、海外SNS連携とAIを活用したサービスを展開しています。AIで住宅情報を外国語へ自動翻訳することで、海外の方が自分の国のSNSを使って日本の物件情報をみることができるという取り組みをしています。
三つ目のご紹介は、スマートバッチという商品です。営業マンが胸元にIOT搭載のバッチを装着するだけで、即座にお客様の情報がモバイルに表示されるというものです。

<スマートバッチで出来ること>

  • お客さま情報の表示
  • お客さまとの会話をテキストベースで書き出し
  • お客さま情報と会話の内容からベストな物件をAIが提示
  • バッチとモバイルが連動しているため、遠隔地にいる上司からの指示も瞬時に連携

全てのデータが自動で残るため、入力の手間がかかりません。究極の業務効率化を実現することができます。

スマートヘルメット

大島氏
建設系ではIOTとAIを組み込んだスマートヘルメット建設現場での勤怠管理や危険な領域での作業などをヘルメット1つで管理します。日本でも最近は勤怠の時間管理も厳粛化してきていますし、人手不足となる2025年問題といったところでもニーズのある商品です

弊社はこうしたスマートエージェントの製品開発・販売を行うと同時に、投資事業も行っており、不動産のデジタル化分野に焦点を当てて累計投資金額10億円を達成しました。MyteProは、日本のProptech企業様と多様な協業モデルが実現できるとおもっています。不動産・建設業界をDX推進するためにも、ぜひパートナーシップを構築していけたらと思っています

野村不動産ホールディングス

野村不動産ホールディングス株式会社   榎本 英二 氏
登壇者
野村不動産ホールディングス株式会社
榎本 英二 氏

まだ見ぬ、Life & Time Developerへ

デベロップメント分野では住宅部門/都市開発部門/海外部門を、サービス・マネジメント分野では資産運用部門/仲介・CRE部門/運営管理部門の2分野6部門の事業を展開している野村不動産ホールディングス株式会社。

2030年ビジョンとして「まだ見ぬ、Life & Time Developerへ」を掲げており、単に「不動産」を提供するのではなく、そこでの暮らし、働き方や生活の仕方、買い物、スポーツといった様々な生活“Life”や一人ひとりの過ごす時間“Time”を軸として新たな価値創造を目指しています。

デジタルを使って価値を創造しよう!

榎本氏
野村不動産ホールディングスは、人々を重視した「個に寄り添う姿勢」を戦略の根幹に据え、顧客のQOL向上に貢献する商品やサービス開発を目指しています。
■Techrum(テクラム)
オープンイノベーションの事例として「Techrum(テクラム)」というものを紹介します。これは、荷主・物流企業の“物流課題解決”のための「企業間連携型 物流DX推進プラットフォーム」で、112社(2025/1時点)の共創パートナーがいます。
1つの倉庫をワンフロア丸ごと空けて、ベンチャー企業の皆さんと一緒に物流の効率化・物流のDX化の実験場にしています。荷主・物流企業の課題に応える企業をマッチングするツールを用意しているので、1社だけでは対処できない課題を共創によって解決することができるようになります。実験場にすることによって、荷主さんや3PMの皆さんに実際に使ってもらうことができるので、ベンチャー企業の皆さんのサービスやプロダクトが実際に使われるようになっていきます。
■庫内シェアリング
株式会社IHIと当社で大規模物流施設『Landport横浜杉田』において、立体自動倉庫の「シェアリングサービス」と自動化機器の「レンタルサービス」の提供をしています。倉庫というのは年間を通して常に同じ物量の荷物が倉庫に保管されているということはなく、MAXの保管量に合わせて借りています。閑散期における未利用分にムダが発生している現状があるので、ここに立体・自動というテクノロジーを入れて荷主さんや3PMの方が”最適”を追求できるようにしています。”最適”を目指すとおのずと自動化機器のレンタルサービスといったものも生まれてきますこれが、ひとつの共創です。

共創と協業

榎本氏
当社がやっているベンチャーとの共創・協業のやり方は2つあります。
■協業創出
資本提携を伴わないベンチャークライアントモデル。資本提携を伴わなくても、良いサービス・良い思いつき、こういうことをやってみたい、という方と手を組んでいます。プレスリリース済みですと6社ほどありますが、リリースしていない会社とも20社ほど協業をしています。
■資本提携
何を目的に投資をするのかということを社内で議論した時に、様々な意見がありました。結論として、まずは協業をしていきましょう!となりました。協業をした上で、この会社とは戦略的に資本提携した方が良いとなったら、ある程度大きな単位で投資をさせていただきたいと考えています。
1〜2%とりあえず名前だけ載せてくださいという方法よりも、まずは当社がクライアントになり、「売上が立つ」「こうゆう実績が出る」と証明し、本業のベンチャーキャピタルの方から投資をしていただくという流れが王道なのではないかと思います。
当社が投資をする場合、この会社とは本当に資本提携したいという会社についてはIRRが10%あるから、ないから、出口がどうだという話ではなく「やる」と切り替えて投資をしています。

野村不動産ホールディングスは不動産業としてやっていますが、冒頭にお話したように6つの事業がそれぞれの専門の独立した会社があるといった規模感でやっています。同じプロダクトでも、それぞれの分野で活躍させることもできると思います。それぞれの分野で上手くいくように、協業をさせていただきたいなと思います。

東急不動産ホールディングス株式会社

東急不動産ホールディングス株式会社  月足 光 氏
登壇者
東急不動産ホールディングス株式会社
月足 光 氏

価値を創造し続ける企業グループへ

東急不動産ホールディングス株式会社は、東急不動産株式会社、株式会社東急コミュニティー、東急リバブル株式会社、東急住宅リース株式会社、株式会社学生情報センターの5つの事業会社を展開し、都市開発事業・戦略投資事業を行う「資産活用型ビジネス」と管理運営事業・不動産流通事業を行う「人財活用型ビジネス」を行っています。

既存事業の改革や新規事業の創出といった新しいビジネスモデルの創出を目指して、1.事業連携、2.CVC活動、3.インキュベーションサポートの3つの機能を元にグループ内外で連携を図りイノベーションを創出させています。

東急不動産ホールディングス、2つのビジネス

月足氏
「資産活用型ビジネス」では、伝統的な〔都市開発事業〕に加え、〔戦略投資事業〕というかたちで再生可能エネルギーの発電所や物流、データセンターといった次世代インフラの分野への投資を積極的に進めています。
「人財活用型ビジネス」は、〔不動産流通事業〕と、ノンアセットにあたるもので〔管理運営事業〕の拡充を進めています。事業運営に人手がかかっているところなので、省人省力化を日々模索しています
この2つのビジネス4事業について日々事業革新を探索しています。直近の金利上昇や人口動態を含めてビジネスを変えていかなければならないと、危機感を持って革新を急務として取り組んでいます。

そこで、イノベーション戦略としてスタートアップ企業と各事業の橋渡しを行い事業連携を強化させています。この事業連携を加速させる機能としてCVCを位置づけていますが、あくまでも事業連携を作っていきたいという思いでCVCを行っています。

事業連携を目指したファンド

月足氏

我々は2号ファンドまで組成しましたので、紹介します。

■1号ファンド
設 立 2017年10月(運用期間10年)
投資規模 50億円
投資数 37社
1号ファンドの特徴として、事業を新しくしていくというのはもちろんですが、我々が事業をしている渋谷エリアの価値向上に資する企業にスコープを持っていて、単純に事業だけではなく渋谷という街にどれくらい価値を還元できる連携を作れるのかということに焦点をあてていました。
そのため、業種や業界、投資ステージの縛りというものを設けず、幅広い領域に投資しているというのが特徴となっています。
既存事業の革新というのはもちろん、そこからどれくらい染み出していけるか。いかに新しい事業をスタートアップの皆様と作っていけるかというところが論点になってくるのかなと思います。
┃協業事例〔1.アルサーガパートナーズさま〕
DXコンサルやITサービスの自社開発を行っているアルサーガパートナーズさまと業務効率の連携をしました。東急リバブルにおけるSNS投稿業務の効率化に生成AIを導入するというもので、作業時間を約80%削減、SNS投稿件数を4倍程度に拡大することができました。
┃協業事例〔2.アクアビットスパイラルズさま〕
CVC出資先と新規事業を作った事例です。NFCタグを活用し、街でスタンプラリーやクーポンを配布することで街中でお客さまがどのように動いているのかというデータ収集し「こういう施策を打ったら人はこう動く」ということをデータ化。それを基に次の企画に活かしていこうというものです。サービス導入から新規事業に繋げられた事例となります。

┃協業事例〔3.Nature Innovation Groupさま〕
東急不動産HDが所有する物件を中心に100カ所以上のシェア傘スポットを設置しました。傘のいらない街 渋谷」と題うちまして、サスティナビリティ推進部が連携を進め環境貢献に取り組んだ事例になっています。

■2号ファンド
設 立 2025年1月(運用期間10年)
投資規模 50億円
注目領域としては1号ファンドに加えて3つ(1.ビジョン投資(環境・DX)2.国際的な都市間競争力の強化3.地域資源を基にした付加価値創出)の新しい投資スコープというものを追加しています。
長期ビジョンの環境経営・DXに資する事業や、街に視点をおいた投資スコープを持っているのが、国際的な都市間競争強化と地域資源を基にした付加価値創出。例えば、環境とひと言に言っても都市の環境ってどう良くしていけば良くなるのか、日本の地域資源(地方が持っている地域資源や産業)をいかに伸ばして日本全体として良くしていけるのか、我々の事業範疇の中でもどう連携していけるのかについても投資スコープに入っています。

大前提としてスタートアップ企業とはWin-Winな関係を築いていくことが長期的な関係性を構築していくうえでも重要だと考えています。最終的なゴールとして、スタートアップ企業と新規で何か共同開発ができているとすごく嬉しいなというふうに考えております。

パネルディスカッション

パネルディスカッション
MytePro Technology Japanは、中国のテック企業ですか?日本のテック企業に出資を検討している背景を教えてください。
大島氏:まず最初の質問ですが、親会社はシンガポールとなり、香港で上場しています。東南アジア系のコミュニティ(お客様)が多いです。日本進出については、かなり前から検討していました。日本には独自の文化があり、日本の企業にも得手不得手があります。例えば、AIとかIOTとかハードウェアのサプライチェーンを日本は結構苦手にしているので、そこをソフトを通して連携をする前提で出資をする。もしくはソフト連携は行わずとも出資をするのか等を検討しながら出資をしています。
野村不動産ホールディングスにとって、投資したくなるポイントはどんなポイントなのでしょうか?
榎本氏:企業なのでリターンは求めてはいるのですが、ベンチャー企業への投資として出口まで持っていってIRRが何%でしたというところを求めているわけではありません。我々と一緒になってやれば「まだ見ぬ、ライフ&タイム」という価値創造ができる。作った価値創造が、これから我々の本丸に入ってくるよね!?というビジネスに投資をしていきたいと思っています。
最近注目している投資テーマがあったら教えてください。
小池氏:物流関連はスタートアップと大企業の連携が欠かせない分野だと思っています。これから課題感・ゲインも大きくなっていきますし、グローバルと繋がって市場規模も大きくなっていきますので注目しています。
月足氏:アートの領域に注目しています。2号ファンドでも触れたところですが、国際的な都市間競争力の強化という中では都市が持つ文化的な側面の強化みたいなところを含めて、その文脈の中に不動産との相性というのも鑑みてアートといったものもあるのではないかと考えています。
榎本氏:社内の若手を集めてリノベーションを作りましょうという企画をしています。その中で、エネルギーやエンタメ、旅行など幅広い領域が話に出ています。不動産・住宅の価格も高くなってきたので、金融の技術を使ってそこの開発ができる企業はないか?そういうベンチャーはいないか?と注目しています。
大島氏:業界では不動産・建築となります。我々のソフトウェアと他社のソフトウェアがいかに連携できるかという視点を重視しています。具体的には、バッチ系のハードとAIの基本技術がありますので、この基盤上で細かいアプリを作れる企業に注目しています。
投資に対してのリターンはどれくらい求めていますか?
大島氏:我々は海外の企業では珍しくかなりロングで見ています。日本の文化的にロングの視点で見た方がいいだろうという判断をしています。具体的な期間だと、3年から5年くらいのスパンで見ていています。
榎本氏:基本的にベンチャー企業に投資する時に何%という話はしていません。比較感でいえば、不動産の都市開発に投資をしていくのであればIRRが7%は欲しいよね、という数字での比較感でいうのであれば、ベンチャー企業に投資するのに7%とは言えないよね。というところがあるので。
ただ、ベンチャーをやっている皆さんもそうだと思いますけど、IRRが10%もいかない事業に自分の人生をかけるということはないんじゃないのか?と思っています。なので、リターンについてひと言で答えろと言われたら、それは10%となりますね!
月足氏:IRRの考え方は同じです。投資倍率のところに言及していうのであれば、弊社都合で恐縮ですが、我々のCVCはSBIインベストメント社との二人組合でやっているので管理報酬が発生しています。何%かという話はさておき、そこをペイ出来るといいなと思います。絶対2倍で返してくださいという高いハードル感ではないですが、50億の出資を受けて50億を返すというのができると次も連携しやすいと思うので、そこが一定の目安感になってくるかと思います。
ここは出資して良かったという事例があったら教えてください。
榎本氏:協業が上手くいった会社は伸びています。我々が投資をした時に、この会社のこういう事業は伸びるだろうなと考えて投資をしますが、「伸びるだろうな」の裏にはこのサービスを使ったら一緒にこういうことができるだろうなとか、売上に繋がるだろうなとか。うちがこれだけ便利だと思うんだから、他にも使う人がいるだろうなといった思いがあります。ベンチャーキャピタルの考えかたは違うかもしれませんが、そういった関係を築けた会社は上手くいっています。
投資のチケットサイズ(投資額)検討期間を教えてください。
大島氏:小さなスタートアップで5000万円というのはありました。通常は億単位で10億いくかいかないかです。検討期間は早くて半年となります。
榎本氏:どちらかというと協業か共創かなので、本当にこことやりたいというのがあれば、そこそこ大きくても投資します。ビルを建てるのに比べればずっと安いので!逆に言うと、協業してその会社やプロダクトの良さが分っていれば検討期間も早くなります。
月足氏:チケットサイズは1号の時で3000万円から3億円のレンジで平均1億でした。もう少し額を上げていきたいなというのが2号ファンドです。検討期間は平均3ヶ月。頑張って2ヶ月のときもあります。
LP出資とスタートアップの直接投資はどちらが多いか?理由も合わせて教えてください。
月足氏:私は東急不動産ホールディングスの立場ですが、東急不動産でもベンチャーキャピタルにLP投資を行っていて、〔渋谷×スタートアップ企業〕の街づくりの文脈中でベンチャーキャピタルとご一緒しているものもあります。逆に東急不動産ホールディングスでは既存事業の変革・新規事業の創造のために、CVC投資・LP出資を行っています。
榎本氏:出資社数でいうとLP投資経由の方がまだ多いです。将来的には、スタートアップ企業への直接投資を増やしていきたいと思っています。
どのようにしてスタートアップ企業を探していますか?
月足氏:Plug and Play社を渋谷に誘致してご一緒させていただいてるので、国内外含めてスタートアップ企業のソーシングをさせていただいています。個人の担当者間ではいろんなイベントに参加して交流を増やし、CVC間でも情報を共有しています。
榎本氏:Morning Pitchもやらせて頂いたり、方法はいろいろですね。ベンチャーキャピタルから繋がることもあれば、こういった機会もありますし、突然友達から紹介を受けるということもあります。

大島氏:我々はこれからですが、海外の企業を日本に招待するツアーがあります。そこでいろんな企業との素地ができあがった段階で日本事務所を立ち上げています。

まとめ

今回のイベントではデロイトトーマツベンチャーサポートの小池氏による基調講演と、MytePro Technology Japan、野村不動産ホールディングス、東急不動産ホールディングス各社がCVC戦略を紹介しました。
日本のCVCは戦略リターン重視の傾向があり、今、不動産テック分野への投資が活発化しています。各社とも「財務リターン」より「協業・共創」を重視し、単なる出資ではなく、Win-Winの事業連携を通じた価値創造を目指す姿勢が共通していました。

不動産×テクノロジーの組み合わせによる新たな価値創造の波が広がっています。各社の戦略的投資と協業から生まれるイノベーションに、大いに期待が高まります。

関連情報

┃一般社団法人 不動産テック協会
https://retechjapan.org/
┃デロイトトーマツベンチャーサポート株式会社
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/dtvs/dtvs.html
┃MytePro Technology Japan株式会社
https://www.mytepro.com/jp/
┃野村不動産ホールディングス株式会社
https://www.nomura-re-hd.co.jp/

┃東急不動産ホールディングス株式会社
https://www.tokyu-fudosan-hd.co.jp/

to-page-top