マンション管理士とは?仕事内容や試験概要、合格率などを解説!
不動産や工務店に勤められている方の中には、「マンション管理士」の資格を取得しようか迷ってらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
マンション管理士は、不動産業界やマンション管理に興味がある人に向いている資格です。
ここでは、「マンション管理士とは何か」を知りたい人に向けて仕事内容や試験概要、将来性について解説します。
マンション管理士とは
マンション管理士とは、管理組合によるマンション管理の適正化を推進するための国家資格です。
マンション管理士試験に合格し、国土交通大臣の登録を受けた人のみが「マンション管理士」を名乗ることができます。
マンション管理士が創設されたのは平成13年となり、比較的新しい国家資格です。マンション管理士が創設された背景には、管理が適切に行われないことでマンションの安全性や資産価値の維持が難しくなっているという事情があります。
マンションの適切な管理には専門知識を要するものの、管理組合が専門知識を持っていないケースが珍しくありません。そこで、マンション管理士が専門家の立場で管理に関する助言を行います。
マンション管理士に向いている人の傾向
マンション管理士に向いている人は、マンション管理や不動産業界に興味がある人です。
どのような人が資格を有効活用できるのか、具体的に解説します。
マンション管理に興味がある
マンション管理士の資格取得者には、マンションの役員を経験した人が多い傾向にあります。
管理組合の理事長やその他役員を経験し、専門知識を深めたいと感じる人も多いのではないでしょうか。仕事としてではなく、自分が所有するマンション管理に役立てたい人はマンション管理士に向いているでしょう。
不動産会社やマンション管理会社に勤務している
マンションの管理会社を含む不動産業界の会社に勤めており、スキルアップのために挑戦する人もいます。
資格は客観的な知識の証明になるため、社内外で専門知識をアピールしたい人にも向いているでしょう。
キャリアアップしたい
マンション管理士は、シニア世代に人気の資格です。
現在の仕事から対応できる領域を広げるためや、セカンドキャリアのために取得するケースもあります。
例えば、長年、建築業界に勤めていた人が定年退職後にマンション管理士として活動すれば、建築の専門知識を活かした修繕対応のアドバイスができるでしょう。
宅建や管理業務主任者などとダブル受験を検討している
マンション管理士は、他の資格とのダブル受験で不動産関連の専門知識を強化したい人にもおすすめです。
例えば、宅建士(宅地建物取引士)や管理業務主任者の出題範囲は、マンション管理士の出題範囲と重なる部分があります。
特に、マンション管理士と管理業務主任者はどちらも「マンションを適切に管理するための資格」という共通点があるため、ダブル受験に向いているでしょう。
宅建についての詳しいコンテンツはこちら
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マンション管理士と管理業務主任者の違い
マンション管理士は、管理組合によるマンション管理の適正化を推進するために創設された資格です。
管理業務主任者は、マンションの管理会社が受託した業務を適切に行うための資格になります。前者は管理組合の立場でアドバイスする人、後者はマンション管理の事業者の業務に必要な人です。
マンション管理士にできることや仕事内容
マンション管理士のみにできることは、「マンション管理士と名乗って業務を遂行すること」です。
「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」では、マンション管理士として登録を受けていない人は、マンション管理士を名乗ってはいけない旨が定められています(第43条)。
マンション管理士の仕事は、「マンション管理の適正化をサポートすること」です。具体的には、以下3つが挙げられます。
- 管理規約や使用細則などの策定、見直し
- 長期修繕計画の策定、見直し
- 区分所有者間のトラブルへの対処
参考元:e-GOV法令検索 マンションの管理の適正化の推進に関する法律
管理規約や使用細則などの策定・見直し
それぞれのマンションには、区分所有者が守るべきルールが定められています。
管理規約などのルールは、各区分所有者が内容を理解し、遵守することが理想です。
しかし、現実的には区分所有者が購入時に内容を把握しておらず機能していないケースや、建設当初の状態から変更されておらず現状に適していないケースがあります。
マンションの管理組合が抱えている悩みや潜在化している問題点を洗い出し、課題解決に向けてアドバイスすることがマンション管理士の役割です。
長期修繕計画の策定・見直し
マンションの安全性・資産価値を維持するためには、計画的な修繕や12年~15年程度に1度の大規模改修が必要といわれています。
将来の修繕に備えて、区分所有者から修繕積立金を集めるケースが一般的です。
しかし、滞納者の影響で計画通りの資金が集まらなかったり、当初の計画よりも多くの修繕費がかかったり、修繕に関して何らかの問題を抱えていることがあります。修繕が計画通りに実施されない場合、建物の老朽化を早める原因になるでしょう。
マンション管理士は、そのような問題を解決するために滞納者への対応や長期修繕計画の見直しについて助言をします。
区分所有者間でのトラブルへの対処
一戸建てとは異なり、マンションは一つの資産を他人と共有する仕組みです。騒音のように物理的なトラブルだけでなく、規約や権利関係を要因とするものなどマンション特有のトラブルが生じるケースもあります。
投資目的による購入者や高齢者の増加などによって、区分所有者間でのコミュニケーションが難しくなっているマンションもあります。
そのような状況下でマンション管理を円滑に行うためにはどうすれば良いか、管理組合へ時間をかけて説明するなど、場合によっては根気のいる対応が必要です。
マンション管理士の試験日や試験概要
2023年度におけるマンション管理士の試験日程や試験概要をまとめました。受験を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
【試験日程】
9月 | 申し込み |
11月下旬 | 試験 |
翌年1月 | 合格発表 |
【試験概要】
受験料 | 9,400円 |
受験地 | 札幌市、仙台市、東京都、名古屋市、大阪市、広島市、福岡市、那覇市など |
出題形式 | 50問四肢択一 |
制限時間 | 2時間 |
内容 | 以下に関すること ・マンションの管理に関する法令、実務 ・管理組合の運営の円滑化 ・マンションの建物や付属施設の構造、設備 ・マンション管理の適正化の推進に関する法律 など |
※年齢・学歴などの制限はありません
※年度によって日程や内容が異なる可能性があるため、受験時は必ずマンション管理センターや国土交通省の公式サイトにてご確認ください
試験に合格後、マンション管理センター宛に申請し、登録を受けるとマンション管理士として活動できるようになります。
マンション管理士の試験難易度や合格率
マンション管理士の合格率は10%前後です。
同じ不動産系の宅建士や管理業務主任者の合格率は15~20%程度であるため、マンション管理士の方が難易度が高いといえます。
マンション管理といっても、出題範囲は多岐にわたります。各種法律、クレーム対応・判例など実務的な内容、構造や建物診断といった建築関連の内容など幅広い専門知識が必要です。
マンション管理士試験の勉強法
マンション管理士試験の問題には、法律のように内容を理解していれば解ける問題もあれば、特定の事例に関する実務的な問題もあります。業界未経験者など、人によっては独学では難しい可能性があるでしょう。
試験を実施している「マンション管理センター」では、過去の問題を公開しています。受験を検討している人は、内容を確認してみてはいかがでしょうか。独学の場合はテキストや過去問題での勉強、独学が難しそうな場合は通信講座などを利用してみてください。
マンション管理士の年収
マンション管理センターの調査によると、マンション管理士を本業として活動している人の18.8%が年収400万円以上という結果でした。中には、年収1,000万円を超える人もいます。
【マンション管理士を本業として活動する人の年収の割合】
収入を得たことはない | 10.6% |
100万未満 | 37.3% |
100万円以上400万円未満 | 30.4% |
400万円以上700万円未満 | 10.2% |
700万円以上1,000万円未満 | 3.3% |
1,000万円以上2,000万円未満 | 2.3% |
2,000万円以上 | 3.0% |
無回答 | 3.0% |
ただし、マンション管理士は比較的新しい資格のため、一般の人からの認知度が高くありません。その人のキャリアや人脈、働き方などによって年収が左右されます。同調査結果によると、個人事務所で活動している人よりも、会社などの組織に属している人の方が年収が高い傾向です。
参考元:公益財団法人マンション管理センター マンション管理士の業務についてのアンケート調査結果の概要
マンション管理士の将来性やキャリアパス
マンション管理士は、将来性に期待できる資格です。マンションの戸数が右肩上がりで増え続けていると同時に、過去に建築されたマンションの老朽化も進んでいます。
適切な修繕が行われずに建物が崩壊する、区分所有者の高齢化で管理組合役員の担い手が不足するなど、マンション管理に関する問題を抱えるケースは珍しくありません。
いわゆるタワーマンションなど大規模なマンションも増えており、マンション管理における専門知識の重要性が高まっています。専門家の立場でマンション管理の助言を行うマンション管理士は、今後、さらに必要とされるでしょう。
マンション管理士のキャリアパスとして、「独立・開業する」または「会社などの組織に所属して活動する」という選択肢があります。
独立・開業する場合
個人で事務所を構えて、顧問契約やスポットの業務委託契約を締結する方法です。ただし、独立の場合は人脈や実績がないと難しいかもしれません。
各地域には、マンション管理士会と呼ばれる団体があります。マンション管理士会に所属して、マンション管理士としてのキャリアを形成する方法も選択肢の一つです。
会社などの組織で活動する場合
会社などの組織で活動する場合、求人の多くは不動産業界の関連会社です。マンション管理会社だけでなく、リフォーム会社や仲介会社など、マンション管理に関する会社が候補に挙げられます。
職種は、コンサルタント、営業、管理事務全般など複数あるため、求人を確認してみてはいかがでしょうか。
まとめ
マンション管理士は、マンション管理に悩む管理組合をサポートするための国家資格です。区分所有者の高齢化や建物の老朽化によって、将来的にさらなる需要の高まりを期待できます。
宅建士や管理業務主任者など不動産関連の資格と相性が良いため、専門領域の拡大やステップアップとして検討してみてはいかがでしょうか。
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