不動産鑑定士とはどんな職業?仕事内容や魅力などを解説

投稿日 : 2023年02月15日/更新日 : 2023年10月16日

不動産鑑定士は全国に約8,000人しかいない希少価値の高い職業ですが、それだけにあまり一般に知られているとはいえないものです。ここでは不動産鑑定士とはどういった職業なのか、その仕事内容や魅力、そしてなり方などについて紹介します。

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不動産鑑定士とは

不動産鑑定士とは、土地や建物などの不動産を鑑定し、適正な価格を決める仕事です。「不動産の鑑定評価に関する法律」に基づいて定められた国家資格で、不動産の鑑定評価は不動産鑑定士の独占業務となっており、無資格者が行うと罰せられます。

専門的な知識と能力を身に着け、国家試験合格によってそれが証明された人のみが行うことのできる、専門性の高い職業といえます。不動産鑑定士の仕事は土地などの適切な価格形成にも影響するため、社会的な責任も非常に重いものです。

土地を売る、貸す、譲るといったときにはその土地の価値を正確に鑑定し、適正な価格を決める必要があるため、取引に当たって依頼人は不動産鑑定士に鑑定評価を依頼することになります。その際、土地の有効活用について相談するというケースも多く、不動産鑑定士にはコンサルタントとしての側面もあるのが実際のところです。

不動産を貸すことによって得られる利益の運用や、不動産に関する様々な法律相談にも対応するなど、不動産鑑定士の仕事は金融・法律を含め幅広い知識を必要とします。

不動産鑑定士の仕事内容

不動産鑑定士の仕事内容は、大きく分けて以下の二つです。

鑑定評価

不動産の鑑定評価は、その名称からもわかる通り不動産鑑定士の主たる仕事といえます。土地・建物の経済価値、すなわち金額は、立地などの地理的条件や法律・市場経済との関連など様々な条件によって決まるものです。

不動産鑑定士はこれらすべての条件を鑑みたうえで、適切な鑑定評価額を導き出し、「不動産鑑定評価書」というレポートを作成、提出します。この「不動産鑑定評価書」を作成できるのは、国家資格を持つ不動産鑑定士だけです。

不動産鑑定士が鑑定を行うのは民間企業や個人が所有する不動産だけでなく、相続税課税のための路線価の評価など公的機関から依頼されるものも含みます。

コンサルティング

不動産鑑定士は、不動産鑑定の経験や専門知識を生かして企業や個人に対するコンサルティング業務を行うことも多いです。

不動産の有効活用や税金対策、市街地再開発に伴う権利関係の調整、それに不動産の資産管理、いわゆるプロパティマネジメントなど、不動産の鑑定評価に基づいたアドバイスが必要な場面では、不動産鑑定士の能力が大いに役立ちます。

また、単に相談に乗るだけではなく、新たなビジネスモデルを構築するなどクリエイティブな面もあるのがこの仕事の特徴です。扱う不動産の種類は多岐にわたり、また海外向けのビジネスを展開することもできるなど、大きな可能性を持った分野といえます。

不動産鑑定士の仕事先

不動産業界

不動産業界における不動産鑑定士の活躍の場としては、不動産会社の鑑定部門のほか、鑑定を専門とする不動産鑑定事務所もあります。鑑定業務に集中的に取り組み、専門家としてスキルアップして将来は独立開業も視野に入れているというのであれば、不動産鑑定事務所はキャリアを積むのに適した就職先といえるでしょう。

不動産会社であれば、不動産関連の企画立案や開発・管理など不動産全般の業務に関わることが可能です。いずれの職場も、理論とデータをもとに不動産の適切な価格をはじき出す、という不動産鑑定士本来の業務がメインとなります。

金融業界

銀行・信託銀行や資産運用会社など金融関連の企業でも、不動産鑑定士が必要とされています。不動産鑑定士の持つ高度な知識と技能は、融資の際に担保となる不動産の鑑定評価にも役立ちますし、不動産の管理・運営方法などについての相談を受けるなど、仕事の幅を広げることも可能です。

コンサルティング業界

資産運用などのコンサルティングを行う会社では、不動産鑑定士としての知識を生かつつ、一歩進んだ仕事に取り組むことができます。マンション建て替えに関するコンサルティングや、街づくりに関する戦略策定、あるいは不動産を投資対象として収益を拡大したいという人からの相談に応じるなど、幅広い仕事で活躍できます。

不動産鑑定士の魅力

不動産鑑定士は不動産関連の資格では最高峰といわれており、難易度が高いこともあってその数は非常に少なく、希少価値が高いというのが大きな魅力です。専門知識だけでなく幅広い分野の知識に精通しており、不動産鑑定業務が独占業務となっていることもあって、独自性の高い仕事といえます。

不動産関連の仕事というと景気に左右されるイメージがあるかもしれませんが、不動産鑑定士の場合は土地の価格や不動産取引の有無が仕事に直接影響するわけではないので、むしろ不況には強いです。

仕事内容や仕事先の項目で解説した通り、不動産鑑定士の仕事は鑑定評価にとどまらず、そこから出発して幅広い分野で活動することが可能になっています。

大手不動産会社や金融機関、コンサルティング会社などに就職すれば安定した収入が得られますし、独立開業して思う存分腕を振るい収益を伸ばしていくことも可能です。就転職にも有利となり、不動産業界だけでなく金融機関や官公庁、あるいは街づくりを手掛ける鉄道会社などターゲットを広げていくことができます。

不動産鑑定士になるにはどうすれば良い

不動産鑑定士になるには、不動産鑑定士試験に合格した後1~2年の実務修習を受ける必要があります。

不動産鑑定士試験は短答式試験と論文式試験の2段階になっていて、短答式試験は毎年5月、論文式試験は毎年8月に行われています。受験資格は特になく、年齢・学歴・経験を問わず受験することが可能です。

短答式試験で合格ラインに達した人だけが論文式試験に進むことができ、論文式試験に通れば合格となります。ただし合格率は短答式試験が30%台前半、論文式試験が14%程度と、いずれもかなりの難関です。短答式試験では行政法規や鑑定理論について、論文式試験では民法、会計学、経済学や鑑定理論について問われます。

なお、短答式試験合格後に論文式試験で不合格となった場合、2年間は短答式試験免除で論文式試験のみの再チャレンジが可能です。

不動産鑑定士試験に合格したら、次は実務修習と呼ばれる研修です。1年コースと2年コースから選ぶことができ、eラーニングによる実務に関する講義や、ゼミ形式で行われる基本演習、指導鑑定士の元で行われる実地演習を通して不動産鑑定士としての実務に必要な知識を身に付けます。

最後に記述式と口述式による修了考査があり、これに合格し国土交通大臣の確認を受ければ、不動産鑑定士として登録することが可能になります。

不動産鑑定士と関連がある職業

同じ不動産業界の職業として、土地家屋調査士があります。土地家屋調査士も国家資格で、登記の専門家として建物の調査や土地の測量など登記に必要な調査を行い、登記の作成や申請手続きを行います。

不動産鑑定士が鑑定評価を行う際には、土地家屋調査士が作成した測量図や登記の内容も参考にするので、まさに切っても切れない間柄といえるでしょう。

宅地建物取引士(宅建士)も不動産の専門職で、不動産鑑定士と関連がある職業です。宅建士の仕事は売買や賃貸などの不動産取引の仲介をすることで、物件の紹介や契約に関する業務を行います。

様々な法律が絡む不動産取引において、豊富な専門知識を持って介入し、契約を円滑に運ぶのが宅建士の役目です。宅建士も国家資格ですが、不動産鑑定士とダブルライセンスを持つことでステップアップすることが可能です。

ステップアップや収入増も!不動産鑑定士は持っていて損はない資格

不動産鑑定士は専門性が高く難関の資格ではありますが、それだけに様々な業界で求められており、希少価値も相まって就職・転職で有利になる資格です。

より専門的な仕事がしてみたい人、高収入を目指したい人や仕事の幅を広げたい人におすすめです。

この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。