ウッドショックとは|発生の原因と住宅価格への影響を解説

投稿日 : 2022年07月28日/更新日 : 2023年06月04日

ウッドショックで価格高騰のイメージ

住宅業界では「ウッドショック」が大きな話題になっています。

住宅の価格に転嫁されている現状から、住宅を検討している方の関心も高まっています。お客様から問い合わせを受けた住宅事業者も多いのではないでしょうか。

今回はウッドショックの発生原因と、今後の見通しについて解説します。

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ウッドショックとは

木材 製材

ウッドショックは、2021年から発生している「輸入木材価格の高騰」のことです。

2021年3月頃から住宅に使う木材の受給がひっ迫し、木材不足から価格が高騰、高止まりが続いています。

昔あった「オイルショック」になぞらえて、ウッドショックと名付けられました。

ウッドショック発生の原因

原因

ウッドショックが発生した要因は、アメリカや中国などで住宅需要が急増したことです。

日本は木材の自給率が40%程度と、全体の半分以上を輸入材に頼っています。輸入元の中国やアメリカなどの需要が高まったことで輸入材が調達しにくくなり、価格が高騰したことでウッドショックにつながりました。

特に影響が大きいのは木造住宅の「梁(はり)」です。

構造的に強い素材が求められる部分である一方、日本では梁に適したものが多くありません。どうしても輸入材に頼らざるを得ません。

逆に柱部分に多く使われる「スギ」「ヒノキ」は国産材でも調達が容易で、ウッドショックの影響は軽く済んでいます。

新型コロナウイルスで住宅の需要が増加

ウッドショックの引き金になったのがアメリカや中国の住宅需要の増加なのはすでに解説したとおりです。

アメリカではコロナ禍によってテレワークが増加し、自宅で仕事をするスタイルが急速に定着しました。加えてコロナ対策として住宅ローンの低金利政策が実施されたことで、2020年6月頃には住宅着工が急増しています。

2020年の夏ころからは、北米の製材価格が急騰する結果になりました。

中国でも同様の理由で木材価格の高騰が発生しています。

住宅需要の増加が木材価格に影響した

木造住宅の建築費用には、一般的に木材の価格が1割程度は影響すると言われています。

経済産業省によれば木材・木製品・林業産物全体の輸入価格は2021年9月の時点で前年比69%も値上げしています。丸太の国内価格に限っても、35%の上昇です。

引用:経済産業省|いつまで続くウッドショック;価格の高止まりが需要に影響?

2,000万円の住宅で木材の価格は200万円程度として、もし丸太材の35%値上げをそのまま転嫁した場合、住宅の建築価格が70万円上乗せされる計算になってしまいます。

日本の木材は輸入に頼り切り

日本は60%以上の木材を輸入に頼っていますが、その原因の1つは戦時中に森林伐採が行われたことです。

戦後に住宅需要がひっ迫して更に伐採が行われたことで木材の減少を招き、国産材の不足に繋がりました。木材は植林してから世に出るまで30年以上かかるため、海外からの輸入に頼るようになってしまったのです。

国内の森林が回復する前に林業に従事する方が減少したこともあって国内の林業は衰退し、輸入材に頼る構造から抜け出せなくなっています。

日本は森林大国なのに、なぜ人材不足?

日本は国土の68%が森林という世界的な森林大国です。「輸入材が高いなら国産材を使えば良いのでは?」という意見もあるでしょう。

2018年には建築基準法の改正で木材利用の規制が緩和されたこともあり、使おうと思えば国産材を使える環境にあります。

ただし、日本は林業そのものが先進国でも弱く、産業化ができていません。

北米では以前から大量植林→大量育林→伐採の流れがオートメーション化されています。

戦後に植林を再開した日本は価格でも品質でも勝てません。高度経済成長期の1964年には木材輸入が自由化され、価格の安い高品質な輸入木材の需要が高まったこともあって現在まで輸入に頼る状態が続いています。

本来であれば国産材に切り替えたいところですが、輸入材の市場価格が再び下落する可能性を考えると巨額の投資が難しいでしょう。

伐採後に製品化する製材所の不足など構造的な問題もあります。木材用のスギなどは育っていても、存分に活用できる能力がないのです。

世界的なコンテナ不足も原因

輸入材の需要が増加した以外にも、物流コストが増加したこともウッドショックの一因になっています。

巣ごもり需要に加えてワクチンの接種が進んで消費が急回復したことで、コンテナ物流が一気に増加しました。

一方で新型コロナの影響で港湾の労働者が不足しており、海上輸送が滞って海上輸送運賃が急激に値上がりしました。

木材の需要増だけでなく、運賃の増加も輸入木材の価格に影響しています。

ウッドショックの今後の見通し

見通し

住宅購入を希望する方が気にするのは、「ウッドショックがどこまで続くのか」「今後の木材価格はどうなるのか」ということでしょう。

丸太の輸入価格は前年末比23%の上昇を見せた一方、国内価格が35%も上昇しました。輸入の丸太を使用していた企業が国産化を検討することになれば、次第に国産木材の需要が高まることが考えられます。

ただし、国内のインフラや人材に課題を抱えている現状では、国内生産が短期的に大幅に増加することは考えにくいです。

集成材も同様に高騰が続いています。輸入価格が前年比末2.49倍の上昇があり、国内価格も2.27倍も上昇しました。国際競争力の低さや国内での生産体制に課題があることで短期的な需要を満たすことができず、輸入価格上昇の影響を大きく受けた格好です。

引用:経済産業省|いつまで続くウッドショック;価格の高止まりが需要に影響?

ただ、2021年8~9月で集成材の輸入価格が1ヶ月で63%も上昇した一方、国内価格は11%の上昇に留まっています。今後は国内価格が強く上昇する可能性もあり、市場の動向を注視する必要があります。

まとめ

今回はウッドショックの発生原因と、今後の見通しの予想について解説しました。

  • 米国や中国の住宅需要の増加
  • 新型コロナが原因の海上物流の悪化
  • 国産材に切り替えられない構造的な問題

上記の理由が重なったことで、国内価格が急騰したのが今回のウッドショックの要因です。新型コロナウイルスは依然として収束の気配がなく、木材価格は高止まりの状態が続くことが予想されます。

顧客に分かりやすく説明するための材料として、本記事をご活用ください。

この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。