連帯保証契約書のテンプレート|民法改正による注意点も解説
連帯保証人を引き受けてもらうためには 連帯保証契約書(連帯保証引受承諾書)を作成する必要があります。
作成の際は連帯保証に関する民法改正の内容を盛り込むことが必要です。盛り込まない場合は連帯保証契約が無効になり、債務者だけでなく債権者の債権回収でトラブルになることもあります。
そこで今回は連帯保証の民法改正の内容と、改正を踏まえた連帯保証契約書について解説します。
保証契約とは
そもそも「保証契約」は、債務者が債務の支払いをしない場合に、第三者が債務者に代わって支払い義務を負う約束をする契約のことです。
なかでも連帯保証人は、本来の債務者と同等の責任を負うことを約束する人のことを指します。
アパートやマンションの賃貸借契約、金銭消費貸借契約などでは多くの場合、保証に関する規定が盛り込まれています。
関連記事:【民法】連帯保証・連帯債務とは何かわかりやすく解説|法的効力や通常の保証との違いを解説
保証人と連帯保証人の違い
単なる保証人と連帯保証人の違いは、以下の3つを主張する権利があるかどうかです。
- 催告の抗弁権
- 検索の抗弁権
- 分別の利益
「催告の抗弁権」は、保証人が債権者から債務の履行を請求された場合、最初に債務者に対して返済を請求できるように主張する権利のことです。
「検索の抗弁権」は債務者が弁済可能な資産を所有している場合に、保証人が債権者に保証債務の履行を拒否できる権利のことです。
「分別の利益」は保証人が複数いる場合、保証人の人数で割った金額だけを返済すれば済むという権利のことを指します。
単なる保証人は3つの権利を全て有していますが、連帯保証人は3つの権利いずれも持っていない点に違いがあります。
債務者に財産があっても保証人に支払いを請求できることで、債権者にとっては保証人よりも有利な保証契約といえます。
連帯保証についての民法改正のポイント
連帯保証に関しては、2020年の民法改正の内容を理解しておく必要があります。
民法改正のポイントを押さえておかないと「契約書の連帯保証の事項が無効になる」「代金未払でも連帯保証人に請求できない」といったトラブルにつながる可能性があるためです。
おさえておくべき3つのポイントは以下のとおりです。
- 個人根保証契約には極度額の設定が必要
- 保証意思の確認手続きが必要になった
- 連帯保証人への情報提供義務が新設された
個人根保証契約には極度額の設定が必要
根保証とは、継続する取引から発生する債務をまとめて保証する契約のことです。
旧来の民法では継続的な売買に関する契約書や保証契約書は以下のような文言になります。
「丙(連帯保証人)は、甲(売主)に対し、乙(買主)が本契約上負担する一切の債務を連帯して保証する。」
現時点では特定していない債務を保証することで、保証人が負う保証債務が大きくなる可能性があります。そこで改正民法では、個人が保証人になる場合に保証する上限額を設定することになりました。
継続的な売買や賃貸借の契約で個人を相手にした連帯保証では、連帯保証人の極度額を定めます。極度額を定めていない個人根保証契約は無効です。
保証契約の文言においても 「一切の債務を連帯して保証する」では不十分です。「一切の債務を極度額〇〇万円の範囲内で保証する」という書き方に変える必要があります。
保証意思の確認手続きが必要になった
個人事業主は事業性資金の融資を受ける場合、保証人は共同事業者や配偶者、友人になることが一般的です。
法人が融資を受ける場合の保証人は経営者や大株主でしょう。
何らかの事情で債務者が支払えないと想定外の金額を保証することになり、個人契約でも法人契約でも保証人が破産する危険性が高まります。
改正民法では個人が事業性融資の保証人になるとき、事前に公証人の保証意思の確認をしてもらう手続きが必要です。
保証契約締結1ヶ月以内に保証人になる人が公証役場に行って手続きを行います。この際、代理人は認められません。
公証役場では保障の意思を確認して「保証意思宣明公正証書」を作成します。この手続きをしない保証契約は無効です。
ただし、保証契約を結ぶ前に手続きをしている内容のため、連帯保証契約書の文言や内容には影響がありません。
連帯保証人への情報提供義務が新設された
保証契約は債権者と保証人の間で結ぶ契約であり、主たる債務者の財産状況を知る機会がないのが今までの法律でした。
改正民法では個人が事業による債務の保証人になるとき、主たる債務者から保証人になろうとする人に情報提供をしなければいけません。
主たる債務者は保証人の請求があった場合、主債務の支払い状況などを説明する義務があります。
主債務者が情報提供義務を怠り、情報提供しなかったことによって財産状況を誤解して連帯保証人になるなど、一定の条件を満たすと連帯保証契約を取り消すことができます。
債務者だけでなく売主の側にも「債権回収ができない」というトラブルが発生するので、保証契約に際して特に注意が必要になります。
請求に応じて情報提供が行われた場合、その情報を保証契約書に残すとのちのトラブル回避につながります。
なお、期限の利益の喪失によって一括払いが生じた場合は、それを知ってから2ヶ月以内に保証人にそのことを伝える必要があります。
連帯保証をつける場合の注意点
連帯保証契約を交わす場合、民法改正以外にも気を付けるべきポイントがあります。
連帯保証全体に関係する注意点を解説します。
口頭での約束だけではNG
保証を行わせるには、書面への明記が絶対に必要です。連帯保証を行うことについて単に口頭で約束するだけでは成立しません。
必ず保証契約書という形によって、書面で残しましょう。
承諾書への捺印は実印
連帯保証契約書(連帯保証人承諾書)は署名と実印の捺印を行ったうえで、「印鑑証明書」と併せて提出することになります。
印鑑証明とセットでない場合、本当に実印でも実印であることを第三者に証明できません。
賃貸借では契約更新後の取扱いも明記
賃貸借契約に対しての連帯保証の場合、連帯保証についても期間が定められています。
契約更新した場合の連帯保証についての取り扱いを記載することが必要です。
「賃貸借契約が更新された場合は、引き続き連帯保証人となる」という内容を承諾することを記載するのが一般的です。
連帯保証契約書のテンプレート(ひな形)
保証契約や契約書の保証債務についてテンプレート・ひな形を自社で持っている場合、民法改正に合わせた極度額設定などの対応が必要です。
そこで国土交通省が設けた賃貸借契約書で連帯保証人のテンプレート(ひな形)があるので紹介します。以下は国土交通省サイトの賃貸住宅標準契約書の連帯保証人型のひな形から一部抜粋しています。
こちらのリンクよりテンプレート(ひな形)が入手できます。
【リンク】国土交通省|賃貸標準契約書について
画像引用:国土交通省|「賃貸住宅標準契約書 平成30年3月版・連帯保証人型」
まとめ
今回は連帯保証の民法改正の内容と、改正を踏まえた連帯保証契約書について解説しました。
契約書に盛り込む内容は連帯保証の内容が根保証かなどで変わります。ただ、適切な内容が盛り込まれていないと連帯保証が無効になることもあるため、保証契約の際は現行民法に合わせた書類と手続きが必須です。
民法改正に対応した連帯保証契約書を準備しておきましょう。