借地借家法と建物の賃貸借契約|更新解約のルールと賃借権の対抗力
借地借家法は不動産専用の賃貸借の法律です。この分野は、宅建試験で毎年必ず出題される頻出分野です。
借地借家法は、建物の賃貸借について規定した「借家」と、土地の賃貸借について規定した「借地」に分かれています。
今回は、借地借家法の概要とともに、建物の賃貸借についてご説明します。契約期間や更新・解約のルール、賃借権の第三者に対する対抗力などを確認しましょう。
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「借地借家法とは/借家の基本と賃借権の対抗力」の試験科目
権利関係
「借地借家法とは/借家の基本と賃借権の対抗力」が含まれる試験分野
借地借家法
「借地借家法とは/借家の基本と賃借権の対抗力」の重要度
★★★★★ 宅建士の業務に直結
「借地借家法とは/借家の基本と賃借権の対抗力」過去10年の出題率
80%
2020年宅建試験のヤマ張り予想
借地借家法分野は、過去10年で出題率100%の上、ほぼ毎年複数問出題されます。そして、今回のテーマである建物の賃貸借=借家に関しても必ず出題されています。
借家の中でも今回解説する「建物の賃貸借契約の存続期間」に関する問題は、過去5年において100%の出題率です。
今年もかなり高い確率で出題されると考えていいでしょう。点数に直結する分野として、入念に学習しておきたいところです。
「借地借家法とは/借家の基本と賃借権の対抗力」の解説
借地借家法とは
「借地借家法」とは、土地と建物の賃貸借について定めた法律です。一般的に賃貸借について定めている法律は民法です。しかし、不動産の賃貸借は特別な配慮が必要であるため、不動産の賃貸借専用の法律が存在します。
民法とは別に借地借家法が定められている理由
民法は、取引における当事者間の公平性を保とうとする目的があります。
しかし、不動産は住居として使用することも多く、生活の基盤となるものです。民法の規定では、賃借人の生活が十分に守られず、賃借人が弱い立場に追い込まれやすくなります。
そのため、賃借人の権利を保護する目的で、借地借家法が定められています。
建物における借地借家法の適用範囲
建物に関しては、居住用であれ事業用であれ、原則として借地借家法が適用されます。
ただし、一時使用目的の建物賃貸借契約であれば、民法が適用されるため、借地借家法は適用されません。また、賃料を支払わずに貸し借りする場合は「使用貸借」と呼ばれ、こちらも民法が適用されます。
なお、借地借家法は1992年8月1日に施行された法律で、それ以前は旧借地法・旧借家法・旧建物保護法に賃貸借に関するルールが定められていました。そのため、賃貸借契約が旧法以前に締結されたものであれば、適用される法律も旧法となります。
◆借地借家法が適用されない場合
- 一時使用目的の建物賃貸借契約…例:選挙期間中のみ事務所として借りる建物、貸別荘など
- 無料で貸し借りする契約
- 1992年8月1日より前に締結された建物賃貸借契約
建物賃貸借契約の存続期間
一般的な賃貸借契約に適用される民法においては、賃貸借契約の存続期間は20年までと定められています。しかし、建物の賃貸借契約にはこの規定を適用しない旨が、「借地借家法」で定められています。
建物の賃貸借契約については借地借家法が優先されますので、存続期間を20年を超えて定めることが可能です。
存続期間を1年未満とした賃貸借契約の場合、期間の定めがないものとみなされます。ただし、契約そのものが無効となるわけではありません。
◆契約期間の制限
- 最長期間…制限なし
- 最短期間…1年未満とした賃貸借契約の場合、期間の定めがないものとみなされる
建物賃貸借契約の更新・解約
①契約期間の定めがある場合
当事者が期間満了の1年前から6ヵ月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知をしなかったときは、それまでと同一条件で契約を更新したものとみなされます(法定更新)。法定更新後の契約は、存続期間がないものとされます。
②契約期間の定めがない場合
建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合、解約の申入日から6ヵ月後に契約が終了します。
③契約
終了後も賃借人が使用を続けた場合
上記①②の場合に、通知・申入れをしたにもかかわらず、期間満了後に賃借人が使用を継続し、賃貸人がすぐに異議を述べなかったときには、契約を更新したものとみなされます(法定更新)。法廷更新後の契約は、存続期間がないものとされます。
④賃貸人による更新拒絶
賃貸人による更新の拒絶には、正当事由が必要です。
◆賃貸人の更新拒絶要件
- 建物の賃貸人および賃借人(転借人を含む)が建物の使用を必要とする事情
- 建物の賃貸借に関する従前の経過(当事者間の関係の変化や信頼関係の喪失、賃料の額に妥当性がないなど)
- 建物の利用状況・建物の現況
- 建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として賃借人に財産上の給付を申出た場合(立退料など)
建物賃借権の法的対抗力
・建物の所有者が変更した場合
建物の所有者である賃貸人が、建物を第三者に譲渡した場合に、新しい所有者が建物の賃借人に立退きを迫ったとしたら、賃借人は建物を明け渡さなくてはいけないのでしょうか。
この場合、賃借人は立退く必要はありません。
まず、賃借人が賃借権の登記を備えていれば、借り続ける権利があります。ただ、賃借人には登記請求権が認められておらず、現実的には賃借人が賃借権を備えることは一般的ではありません。
しかし、それでは賃借人の権利が十分に保護されません。そこで借地借家法では、賃借人が建物の引渡しを受けていれば、賃借権の登記を備えていなくても第三者に対抗できるとしています。
例えば、賃借人が鍵を受け取っている場合や、家具などを運び入れている場合などには、引渡しが完了しているとみなされます。
・借地権付き建物を賃借中に土地の契約が満了した場合
この場合、建物の賃借人は土地を明け渡さなくてはいけません。
ただし、土地の借地権の存続期間が満了することを、建物の賃貸人などから1年前までに知らされていなかった場合に限り、裁判所により明渡しまでに猶予を与えられます。
その場合の明渡し期限は、建物の賃借人が土地の存続期間満了を知った日から1年を超えない範囲で、相当の期間を設定されます。
「借地借家法とは/借家の基本と賃借権の対抗力」に関連する法律
この項目に関連する法律は、以下のとおりです。
借地借家法 (平成三年法律第九十号)
建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。 2 前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。 (以下省略)
期間を一年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。 2 民法第六百四条の規定は、建物の賃貸借については、適用しない。
建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。 (以下省略)
借地権の目的である土地の上の建物につき賃貸借がされている場合において、借地権の存続期間の満了によって建物の賃借人が土地を明け渡すべきときは、建物の賃借人が借地権の存続期間が満了することをその一年前までに知らなかった場合に限り、裁判所は、建物の賃借人の請求により、建物の賃借人がこれを知った日から一年を超えない範囲内において、土地の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。 (以下省略)
この章の規定は、一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合には、適用しない。 |
実際に過去問を解いてみよう
問題:
借地権の存続期間が満了する際、借地権者の契約の更新請求に対し、借地権設定者が遅滞なく異議を述べた場合には、借地契約は当然に終了する。(平成25年度本試験 問12より改題)
答え:✖
解説
賃貸人の更新の拒絶には正当事由が必要です。
この場合、正当事由のことは問われておらず、更新の拒絶を遅滞なく行った場合でも、「当然」に終了するとは言い切れないので、正しくないと判断します。
「借地借家法とは/借家の基本と賃借権の対抗力」ポイントのまとめ
この項目で押さえておくべきポイントは、以下のとおりです。
- 建物に関しては、居住用であれ事業用であれ、民法より借地借家法が適用される
- 一時使用目的の建物賃貸借契約や無料の使用貸借には借地借家法は適用されない
- 建物賃貸借契約の存続期間は民法の規定である20年を超えてもいい
- 存続期間を1年未満とした建物賃貸借契約の場合、期間の定めがないものとみなされる
- 期間満了の1年前から6ヵ月前までの間に解約の通知をしなければ、更新とみなされる
- 建物の賃貸人が解約の申入れをしたら、6ヵ月後に契約が終了する
- 賃貸人による更新の拒絶には、正当事由が必要である
- 建物の賃借人は、登記を備えていなくても、建物の引渡しを受けていれば第三者に対抗できる
最後に
借地借家法は、民法では十分に保護されない賃借人の権利を守るために定められています。しかし、所有者である賃貸人の権利も、当然に尊重されなくてはいけません。
対抗することもある両当事者の権利保護をできるだけ妥当な形で実現しようとしているので、どうしても細かい規定が多くなります。
宅建試験の受験者としては、覚えることが多くなり煩わしいところですが、出題率の高い分野ですので、丁寧に学習しましょう。
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