国有地の払下げ(売り払い)とは?手続き・費用などをまとめて解説

投稿日 : 2022年10月17日/更新日 : 2023年04月10日

国有地の払下げ(売り払い)とは?手続き・費用などをまとめて解説

国が所有している財産の中には、現在利用されていないものがあります。そのような財産は民間に売却されることがあり、これを「払い下げ」と言います。

国有地の中には民間の土地に紛れているものもあるため、売主様が売却する際に初めてその存在に気がつくこともあるでしょう。

売却予定の土地に国有地が含まれている場合、不動産の価値が下がったり、売りにくくなったりすることがあるため注意が必要です。

今回は、国有地における払い下げの基本的な知識から、払い下げを受ける際の流れ、時間、費用などお客様を案内する際に役立つ情報をまとめて解説します。

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払い下げとは

払い下げとは、国が所有している不動産や物(国有財産)を民間に売却することです。

国有財産を大きく分類すると、行政財産と普通財産に分けられます。行政財産とは、国会議事堂や税務署のように国が直接使用する財産や、国道のように国民が使用する財産などの総称です。

普通財産とは、行政財産以外の国有財産を指します。

国有地の払下げ

国有地の中でも、普通財産に該当する土地は特定の目的で利用されていない土地です。

都道府県や市町村に貸し付けて有効利用される場合や、特に利用用途がないものは払い下げの対象となる場合があります。

一般的に、単独で利用できる宅地や山林などの国有地は、一般競争入札によって売却されます。

一般競争入札とは、国が最低価格を決めて、一番高い価格で入札した人が購入できる入札方法です。

一方、単独で利用できない国有地は、隣地所有者のみが購入可能です。

単独で利用できない国有地には、次に解説する赤道(あかみち)や青地(あおち)など旧法定外公共物と呼ばれるものがあります。

旧法定外公共物は、過去に里道や水路などであったものの、現在は利用されていないものを指し、国(財務局)が管理しています。(現在利用されているものは国から市町村へ無償譲渡されているため、管理者は市町村です)

赤道(あかみち)とは

赤道(あかみち)とは、道路法に該当する道路以外の道のことです。

里道(りどう)とも呼ばれています。法務局で備え付けられている公図上で、地番がなく赤く塗られた部分が赤道です。

日本では、明治時代に国道政策が行われ、道路が国道・県道・里道の3種類に分類されました。

その後、1952年に道路法が施行されて以来、複数回にわたり法改正され、現在の国道・都道府県道・市町村道の区分となっています。

つまり、赤道とはそれらの道路以外の道のことです。

地方分権一括法が施行された2000年当時、赤道として機能していたものは市町村が管理し、機能していなかったものは財務局が管理することになりました。

青地(あおち)とは

青地(あおち)とは、国有地の水路や河川敷のことです。

法務局で備え付けられている公図上で地番がなく、青く塗られた部分が青地になります。

青地が含まれている土地は、用途が農地に限定されているため売却時に注意が必要です。

国にとって、農地は農業生産をする上で大切な資源です。そのため、一定の農地を確保するために「農業振興地域」という地域が指定されています。

その中でも青地は「農用地区域」に指定され、原則、他の用途への転用が禁止されている区域です。(農業振興地域の中でも農用地区域でない地域は、白地と呼ばれています)

ただし、青地を農地以外の用途として転用せざるを得ない場合は、例外が認められることがあります。詳細は、農林水産省の公式サイトでご確認ください。

参考:農林水産省|農地転用許可制度について

不動産の払下げ(売り払い)

不動産の払い下げ(売り払い)を受ける場合、現況のままでの引き渡しとなり、相続税路線価、固定資産税評価額、実勢価格などを考慮した上で価格が決まります。

土地によっては、土地の中心を赤道や青地などの国有地が通過しているケースもあり、売却時の調査で発覚することも珍しくありません。

そのような物件は、売却しにくいリスクがあるでしょう。

国有地が含まれている土地は、事前に払い下げを受けておくことが大切です。

払下げを受けたい場合の流れ

払い下げを受けたい場合の流れは、以下5つのステップです。

  1. 市役所での打ち合わせ
  2. 土地の測量・境界確定
  3. 売払申請書の提出・売却価格の算定
  4. 売買契約の締結
  5. 代金納付・登記手続き(土地表題登記、所有権移転・保存登記など)

払い下げを受ける際の手続きは、大きく分けて「境界確定の手続き」と「購入手続き」に分かれます。

境界確定を行う前に、対象地域が道路や水路として利用されていないかを確認する必要があるため、各市町村の担当窓口へご相談ください。

また、払い下げを受ける際に必要な各書類は各地域の財務局公式サイトで確認できます。

参考までに、関東財務局公式サイトhttp://kantou.mof.go.jp/kanzai/pagekthp035000119.htmlをご覧ください。

参考:関東財務局|旧法定外公共物(旧里道・旧水路等)の境界確定・購入手続き

国有財産の売却情報を調べる方法

国有財産の売却情報は、各地域の財務局公式サイトで確認できます。

財務省の公式サイトから管轄地域の公式サイトへアクセスできますので、該当地域をご覧ください。

参考:財務省|国有財産の売却情報

また、各財務局の公式サイトを確認すると、近年、国有地の取得に関する架空話が増えていると注意喚起の記載があります。

国が、現在利用していない国有財産を売却する場合、原則、一般競争入札での売却となります。

そのため、国から民間に対して個別に話を持ち掛けるケースはありません。

このような注意喚起をお客様にしておくと、トラブル防止に役立つかもしれません。

国有地の払い下げにかかる時間

一般的に国有地の払い下げにかかる時間は、3ヶ月程度です。

ただし、手続きにかかる時間は個々の財産によって異なるため、急ぎの場合、事前に担当者へ相談しておくことをおすすめします。

国有地の払い下げにかかる費用

国有地の払い下げには、数十万円の費用がかかる場合があります。

一般的な不動産売買契約では、所有権保存・移転登記を司法書士へ依頼することをご存じの方がほとんどでしょう。

しかし、国有地の払い下げでは自治体へ提出する書類の作成、土地の境界確定など行政書士・土地家屋調査士といった各専門家との連携が必要な場合があります。

費用は、隣接地の数、地域区分、面積などさまざまな要因によって異なります。自治体の担当窓口へ相談の上、依頼先を検討すると良いでしょう。

まとめ

国有地が含まれている不動産の売買取引では、トラブルの原因となる場合があります。

売主様から相談を受けた際は、国有地の有無を確認し、必要に応じて払い下げの手続きを行いましょう。

払い下げを受ける場合、一般的な不動産売買取引よりも期間や費用がかかる可能性があるため、その旨もお伝えしておくことをおすすめします。

この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。