親が高齢でもローンを組める「親子リレーローン」はおすすめ?メリット・デメリットを紹介
住宅ローンは1人だけで契約するものの他に、2人がペアを組んで借り入れる商品もあります。例えば、親子2代で1つのローンを組む「親子リレーローン」もその一つです。
今回は親子リレーローンの制度内容とメリット・デメリットを解説します。
不動産の営業として顧客から住宅ローンの相談を受けることもあるでしょう。ローンの選択肢として説明ができるように、この機会に知識を深めておきましょう。
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親子リレーローンとは
親子リレーローンは親子で1つの住宅ローンを契約し、2世代にわたるリレー形式で返済する制度のことです。
フラット35を提供する住宅金融支援機構では「親子リレー返済」と呼ばれていますが、民間の金融機関ではそのまま「親子リレー住宅ローン」と呼ばれています。
名称に「親子」とついていますが、実際には祖父母と孫(の配偶者)といった組み合わせでも利用できます。
借入してから一定期間が経過したあとは、親から子へ住宅ローンの返済義務が引き継がれる点が一般的な商品にはない特徴です。
「親の年齢ではフルでローンを組むことができない」「子の収入では希望額を借りられないかもしれない」といったケースでは、返済期間・希望額の両方についてメリットを享受できます。
親子リレーローンの利用条件
親子リレーローンは親と子で条件が設定されます。
例えばフラット35の「親子リレー返済」では、後継者である子に以下のような条件がついています。
【親子リレー返済の後継者の要件(次の1~3までのすべての要件に当てはまる方)】
- 申込みご本人の子・孫等(申込みご本人の直系卑属)またはその配偶者で定期的収入のある方
- 申込時の年齢が満70歳未満の方
- 連帯債務者になる方(1名のみとなります。)
引用元:住宅金融支援機構|親子リレー返済
借入期間や金利は一般的な住宅ローンと差はないものの、子の年齢によって最長で35年に渡る返済が行われるだけに、安定して返済できることが重要視されます。
なお、すでに住宅ローンを返済期間中であっても、他の金融機関で親子リレーローンに借り換えることはできます。
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親子リレーローンの手続きの流れ
手続きの流れは以下の通りで、一般的な住宅ローンと大きく変わりません。
- 申込み
- 仮審査
- 本審査
- 住宅ローン契約
- 融資実行
審査基準は公表されていませんが、原則として審査項目は一般的な住宅ローンと変わりません。
借り手の返済能力が調査されるのですが、なかでも子の経済状況・返済能力は重点的に確認されることになるでしょう。
理由は、子が親の返済義務を将来的に一手に引き受けることになるためです。自動車ローンやカードローン等の借入が多かったり、返済が滞ったりしていると審査に通らないケースもあります。
親子リレーローンの特長
親子リレーローンの特長は以下の3つです。
1.親子の収入を合算できる
親子リレーローンの特長として、収入合算ができる点が挙げられます。親子でタッグを組むことで、1人だけでローンを組む場合と比較して借入金額を大きく増やすことが可能です。
2.親が高齢でもローンを組める
親が高齢であっても、返済期間を長くできる特長があります。
住宅ローンは満年齢80歳と設定されることが多く、親が60歳になっていると20年しかローンを組めません。
親子リレーローンでは子の年齢が基準になるため、長期の返済期間を設定できます。返済期間を長くとることで毎月の返済額を抑えられ、安定して返済しやすくなるでしょう。
3.親子で住宅ローン控除を受けられる
条件を満たすことで、親子それぞれの持ち分に対して住宅ローン控除が適用されます。
住宅ローン控除は住宅ローンの利用者を対象に、金利負担の軽減を図る制度です。条件を満たした住宅ローンで自宅を購入した場合、年末時点のローン残高の一定割合に相当する金額(2021年までの購入は1%、2022年からは0.7%)が所得税から税額控除されます。
住宅の持ち分を親子で2分の1ずつにする場合、住宅ローン控除は親子それぞれが年末の借入残高に2分の1をかけた額が基準とされます。ローン残高3,000万円で持ち分が2分の1なら親1,500万円、子1,500万円といった具合です。
親子リレーローンの注意点
特長だけでなく、親子リレーローンの注意点も把握しておきましょう。
別のローンに申し込めなくなるリスクもある
親子リレーローンでは将来的にローンを引き継ぐ子が「連帯債務者」となる性質上、返済期間中は「親も子も借金している」という状態です。
返済期間中に別の住宅ローンを組もうと思っても、新規の契約が難しいケースがあります。
団体信用生命保険に1人しか加入できない
住宅ローンに申し込む際、一般的には申込者本人が返済途中に死亡したり高度障害になったりした場合に残りの住宅ローンが全額弁済される「団体信用生命保険」(以下、団信)に加入します。
この団体信用生命保険は1つのローンで1人しか加入できません。親が団信に加入した場合には、保障期間終了後に子が団信に加入するなどの対応が必要です。
親が団信に加入していれば残債が消え、子が支払いを引き継がなくてもよくなります。ただ、契約によっては子しか団信に加入できないケースもあります。その場合は子が残りのローンをすべて引き継がないといけません。
例えば子が団信に加入して親が早くに亡くなった場合、子の返済負担が増加する可能性もあります。
相続時にトラブルになるリスクもある
親が亡くなると財産がある家庭で必ず発生するのが「相続」です。不動産については持ち分が相続されます。
ただ、親子リレー返済の住宅ローンの債務を子が引き継ぐことがネックになる場合があります。返済は契約した子が後継者として続けていくのに、不動産の持ち分は他の相続人と分け合わないといけない可能性があるためです。
贈与とみなされるリスクもある
親子リレーローンで購入した不動産について、親と子のローン比率に合わせて不動産の持分を登記しないといけません。
面倒だからと全てを子の名義にしてしまうと、親名義の不動産を子に贈与した「みなし贈与」と判断されてしまう可能性があります。
まとめ
今回は親子リレーローンの制度内容とメリット・デメリットを解説しました。
「親が高齢で通常の住宅ローンを組めない」「子の収入だけでは希望額を借りられない」といったケースで利用でき、条件が揃えば住宅ローン控除も親子で受けられる強みがあります。ただし、新しいローンを組みにくくなること、相続の際にトラブルの種になることには注意が必要です。
今後の営業でローンの話題が出た時を想定して、この機会に商品の特徴を把握しておくと良いでしょう。
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