住宅ローンにおけるオーバーローン|営業が絶対に提案してはいけない理由

投稿日 : 2020年04月06日

住宅を購入する時は、家具代や引っ越し代、諸費用の支払いと様々な費用が発生します。ただし、不動産業者の側から「諸費用まで含めて水増しした金額でローンを組みませんか?」と聞いてはいけません。これは「オーバーローン」と呼ばれ、銀行との住宅ローン契約に違反した手法です。

今回は、不動産営業がオーバーローンを勧めてはいけない理由と、正しい提案方法の例を紹介します。

kobayashi この記事の監修者:
小林 紀雄
住宅業界のプロフェッショナル

某大手注文住宅会社に入社。入社後、営業成績No.1を出し退社。その後、住宅ローンを取り扱う会社にて担当部門の成績を3倍に拡大。その後、全国No.1売上の銀座支店長を務める。現在は、iYell株式会社の取締役と住宅ローンの窓口株式会社を設立し代表取締役を務める。

 

オーバーローンとは

住宅の購入価格の全てをローンでまかなう方法を「フルローン」と呼びます。

住宅購入分は全てローンを組むことが可能ですが、住宅購入以外の諸費用分は現金でまかなう必要があります。

この諸費用の分までローンを組んでしまおうというのが、「オーバーローン」です。

借入目的の住宅価格より高いローンを組むこと

登録免許税・不動産取得税の納付、登記費用等に代表される諸費用は、一般的に『物件購入価格の3~7%』かかることがあります。

3,000万円の物件であれば90万円~210万円を現金で用意することになり、フルローンを組もうとしている買主様には重い負担になります。

そこで「諸費用分までカバーできる金額で借りましょう」とオーバーローンを提案することで、買主様の購入意欲を刺激する不動産営業が現れるのです。

中には「自動車購入分までローンを組みましょう」と、さらにオーバーな金額を提案する事例も存在します。

オーバーローンを提案してはいけない2つの理由

近年は、諸費用まで含んだオーバーローンを認める金融機関も増加しています。

ローンを申し込む金融機関がオーバーローンを認めていれば問題ありませんが、認めていない場合は明確な契約違反です。

契約違反が発覚した、申し込みをした人(買主様)が以下のような事態に陥ることがあります。

  • 一括返済や違約金請求の対象になる
  • 自己破産を招く危険がある

一括返済や訴訟の対象になる

金融機関に虚偽の申告をするオーバーローンは、明確な契約違反、かつ詐欺行為です。契約者も不動産業者も「詐欺罪」で訴えられる恐れがあります。プロの不動産業者である以上、「知らなかった」は通りません。

更に「契約不履行」として、金融機関側から一括返済を請求される可能性もあります。自己資金で返済できない場合は、購入した物件を売却して返済資金を用意しなければいけません。

自己破産を招く危険がある

一括請求を要求されてしまうと、買主様は自己資金を使って返済します。それが足りなければ購入した住宅を売却しますが、それでも足りなければどうすればいいでしょうか?

その場合は、何らかの方法で借金をして一括返済を完了させることになります。高額な借金を返せなければ、最後は「自己破産」に進むことになるのです。
住み始めた瞬間に家の価値は2割下がる
購入した住宅を住み始めてすぐに売却したとしても、購入価格を全て賄うことはできません。

新築住宅の金額の2割程度は、不動産会社の利益が上乗せされているためです。つまり、購入金額から2割程度を差し引いた額が、本来の適正な不動産購入価格になります。

単純計算として、3,000万円で購入した住宅をすぐに売却しても、手元に入るのは約2,400万円です。自己資金でこれを用意できなければ、借金か自己破産か、という選択肢しか残りません。

オーバーローンはすぐに見つかる

 

銀行側は融資に際して厳重に調査を行います。したがって、偽の書類を出したとしても必ず発覚します。

タイミングとしては、主に以下の2つが考えられます。

  • 銀行が住宅購入価格を確認する時
  • 金融庁の「金融調査」

金融機関が住宅購入価格を確認する時

金融機関では、ローンの審査をする時に「不動産売買契約書」を確認します。

ここには住宅の購入費用が記載されているため、申し込みの金額との違いはすぐに分かります。「工事請負契約書」の確認でも同様です。

第三者による密告

家具代や高額な諸費用に悩んでいる友人に「うちは業者にお願いして水増しした見積書を作ってもらった!」と自慢気に話をしたことで、バレる可能性があります。

友人が金融機関に申し込みする際に、「ある人から水増しして借りられるって聞いたのですが…」と話してしまうのです。

オーバーローン以外の提案方法|諸費用までローンでカバーする

金融機関が認めていない以上、住宅購入金額より高い金額でローンを組むことはできません。

ただし、最近では諸費用まで借りることを認める金融機関が増加しています。このような金融機関のローンを利用すれば、もちろん合法です。

その他、住宅金融支援機構が提供する「フラット35」であれば、諸費用まで含めて借りることが可能になります。

諸費用を融資してくれる銀行を探す

近年では、「ネット銀行」を中心に、諸費用までカバーできる銀行が増加傾向にあります。

下記のいずれの銀行でも、「火災保険」と「不動産登記費用」は共通で借り入れ可能です。その他の項目においては、ネット銀行ごとに違いが見られます。

 

金融機関名 火災保険、登記費用で借りられるもの
住信SBIネット銀行 収入印紙代
イオン銀行 取扱手数料、印紙代、不動産仲介手数料、修繕積立金、水道加入負担金、借換時に発生する諸費用
auじぶん銀行 印紙税(売買契約書などに貼付)、司法書士、土地家屋調査士の手数料、住宅ローン借入れの際に発生する事務手数料、地震保険料、不動産仲介手数料、引越費用など
楽天銀行 融資事務手数料、金銭消費貸借契約書に貼付する印紙代、不動産仲介手数料、修繕積立一時金、水道負担金、引越費用等の住宅取得に関する諸費用

 

大手銀行では諸費用について明記していない銀行が目立つものの、「借り換えなら諸費用まで含めて対応可能」とするところもあります。

 

「フラット35」を利用する

ネット銀行以外にも、「フラット35」を利用する手もあります。フラット35では、諸費用を含めたローンの借入れが認められています。

【新築住宅を建てる場合】に借りられる諸費用の内訳と必要書類は以下の通りです。

 

対象となる住宅の費用 確認書類
① 外構工事の費用 請負契約書、売買契約書、注文書・注文請書
② 設計費用、工事監理費用
③ 敷地の測量、境界確定、整地、造成、地盤(地質)調査、地盤改良のための費用
④ 敷地内の既存家屋などの取壊し、除却の費用
⑤ 住宅への据付工事を伴う家具を購入する費用
⑥ 住宅の屋根、外壁、住宅用カーポートに固定して設置される太陽光発電設備の設置費用
⑦ 住宅の敷地に水道管、下水道管を引くための費用(水道負担金など)、浄化槽設置費用 [お客さまが請求先に直接お支払いをされる場合]

申請書、請求書、領収書

[住宅事業者がお支払いを代行する場合]

請負契約書、売買契約書、注文書・注文請書

⑧ 太陽光発電設備の工事費負担金
⑨ 建築確認、中間検査、完了検査の申請費用
⑩ 建築確認などに関連する各種申請費用※1
⑪ 適合証明検査費用
⑫ 住宅性能評価関係費用
⑬ 長期優良住宅の認定関係費用※2
⑭ 認定低炭素住宅の認定関係費用※3
⑮ 建築物省エネ法に基づく評価、認定に係る費用
⑯ 土地購入に係る仲介手数料※4 契約書、請求書、領収書
⑰ 融資手数料 取扱金融機関で算出した書類
⑱ 金銭消費貸借契約証書に貼付する印紙代(お客さまの負担分)
⑲ 請負契約書、売買契約書に貼付した印紙代(お客さまの負担分) 請負契約書、売買契約書
⑳ 火災保険料(積立型火災保険商品※5に係るものを除きます。)、地震保険料 保険会社が発行した見積書
㉑ 登記費用(司法書士報酬、土地家屋調査士報酬) 司法書士、土地家屋調査士が発行した見積書

※1〜4の注記内容については以下をご覧ください。

引用元:住宅金融支援機構|よくある質問

 

まとめ

今回は、オーバーローンがいかに買主様に迷惑をかけるのかを解説しました。会社の信用失墜にも繋がるため、絶対に勧めないようにしてください。

安易にオーバーローンに頼らなくとも、諸費用までローンでカバーすることは十分に可能です。買主様の希望を聞き取って、最適な方法を提案するようにしましょう。