なぜ、あの営業マンは契約が多いのか?瑕疵担保責任制度の「深掘り説明」が鍵!

投稿日 : 2025年06月26日
住宅の売買は、お客様にとって一生に一度の大きな決断です。特に自己居住用の住宅においては、購入後の「安心」がいかに提供できるかが、販売事業者様の競争力を左右します。
本記事では、住宅販売事業者様が知っておくべき「住宅瑕疵担保責任制度」の最新の運用状況と、販売戦略に活用するための具体的なポイント、そして実務における注意点について解説します。法改正による変更点や、新築・中古を問わない瑕疵保険の活用法を理解し、お客様に「安心して買える」住宅を提供するためのヒントを掴んでいきましょう。

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住宅瑕疵担保責任制度の基本をおさらい

そもそも瑕疵担保責任制度とは?

住宅瑕疵担保責任制度は、住宅の引き渡し後に発見された欠陥(瑕疵)に対して、住宅を供給する事業者が一定期間責任を負うことを定めた制度す。特に「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づき、新築住宅の売主や建設業者は、構造耐力上主要な部分(建物の重さを支える柱や梁など)や雨水の浸入を防止する部分(屋根や外壁など)の瑕疵について、引き渡しから10年間は責任を負うことが義務付けられています。
この責任を確実に履行するため、「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(住宅瑕疵担保履行法)」により、事業者は「保険」への加入か「供託」のいずれかの資力確保措置(万が一の欠陥に対応するための資金を確保する仕組み)を講じることが義務化されています。
瑕疵(かし)
住宅の「欠陥」を意味します。この法律では、特に構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分の欠陥を指します。
資力確保措置(しりょくかくほそち)
住宅事業者が、瑕疵担保責任を確実に果たすための資金を事前に確保しておく制度のこと。保険加入か供託のどちらかを選びます。
また、既存(中古)住宅の売買においては、「宅地建物取引業法」が関連します。2018年4月1日の法改正により、宅地建物取引業者(宅建業者)には、媒介契約締結時に建物状況調査(インスペクション)のあっせんに関する書面を交付し、買主に対して調査結果の概要を重要事項として説明することなどが義務付けられました。これにより、買主は中古住宅の状況を事前に把握でき、保護が強化されています。

制度が販売戦略に与える影響

住宅瑕疵担保責任制度は、売主が負う責任を明確にすると同時に、それを補完する「瑕疵保険」の存在が、買主への大きな安心材料となります。特に新築住宅の場合、事業者が倒産した場合でも、住宅購入者には保険法人から直接、補修費用などの保険金が支払われるため、万が一の事態に対する不安を軽減できます。
この「安心」は、販売戦略において強力な差別化要因となります。お客様が購入を検討する際、目に見えない建物の品質に対する不安は常に存在します。瑕疵保険に加入していることを積極的にアピールすることで、お客様は「この住宅販売会社は、引き渡し後の責任までしっかりと考えている」という信頼感を抱き、安心感を持って購入に踏み切ることができるでしょう。
住宅瑕疵担保責任保険の図

引用元:国土交通省「住宅瑕疵担保制度ポータルサイト」

令和時代の住宅瑕疵担保責任制度:最新の変更点とポイント

「契約不適合責任」への移行で何が変わったか

2020年4月1日に施行された民法改正により、従来の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」へと変更されました。この変更は、売買契約における売主の責任範囲を「隠れた瑕疵」から「契約の内容に適合しないもの」へと拡大した点が最も重要です。
具体的には、引き渡された住宅が種類、品質、数量に関して契約の内容に適合しない場合、買主は追完請求(修理や代替品の引渡し)、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除ができるようになりました。従来の瑕疵担保責任では「隠れた瑕疵」に限定され、買主は解除や損害賠償請求しかできませんでしたが、契約不適合責任ではより多様な請求が可能となり、買主の保護が強化されています。
住宅販売事業者様は、契約書に記載する住宅の性能や品質について、より詳細かつ明確に記述するよう注意が必要です。曖昧な表現は、後々の契約不適合を巡るトラブルの原因となる可能性があります。契約書の内容を精査し、買主との間で認識の齟齬が生じないよう、事前説明を徹底することが求められます。
瑕疵担保責任と契約不適合責任の比較
項目 瑕疵担保責任 契約不適合責任
適用開始日 ~2020年3月31日 2020年4月1日~
責任の範囲 隠れた瑕疵 契約内容との不適合
買主の主な請求内容 解除・損害賠償 追完請求・代金減額請求・損害賠償・契約解除
期間制限 買主が瑕疵を知ってから1年以内(特約で2年) 買主が不適合を知ってから1年以内に通知(権利行使期間は別途定めによる)

リフォーム瑕疵保険の活用

新築住宅だけでなく、リフォーム済み中古住宅の販売においても、瑕疵保険の活用は買主の安心感を高める上で非常に重要です。リフォーム瑕疵保険は、リフォーム工事部分に瑕疵が発見された場合に、補修費用などを保険金でカバーする制度です。
この保険に加入することで、以下のメリットをお客様に提供できます
  1. 品質の担保:
    • 保険加入には、リフォーム工事の前に専門家による検査が行われるため、工事の品質が一定水準以上であることが保証されます。
  2. 万一の補償:
    • リフォーム後に瑕疵が発見された場合、リフォーム事業者様の倒産などの万が一の事態でも、保険法人から直接保険金が支払われるため、買主は安心して補修を受けることができます。
  3. 情報開示の促進:
    • リフォーム瑕疵保険の加入は、その住宅が第三者のチェックを受けていることを示す明確な証拠となり、情報開示に積極的な事業者としての信頼性を高めます。
特に「安心R住宅」制度は、インスペクション(建物状況調査等)を実施し、既存住宅売買瑕疵保険の検査基準に適合していることや、リフォームが実施されている、またはリフォーム提案書があることなどを特徴としています。リフォーム済み中古住宅を販売する際は、リフォーム瑕疵保険と既存住宅売買瑕疵保険を組み合わせることで、買主にとって「安心」「きれい」「わかりやすい」の三拍子揃った価値を提供できます。子育てグリーン住宅支援事業でも、リフォーム瑕疵保険への加入が補助対象とされており、補助金も活用できます。
リフォーム瑕疵保険の概要
項目 内容
支払い対象 リフォーム工事を実施したすべての部分
保険期間 1~10年(保険商品により異なります)
保険金額 100万円~2,000万円(請負金額によります)
免責金額 10万円
填補率 事業者へ80%、発注者(消費者)へ100%(事業者倒産等の場合)
保険料 個々の保険法人で設定されます(例:請負金額400万円のリフォーム工事で3万円程度)
参照:国土交通省

トラブルを未然に防ぐ!実務における注意点と対策

説明義務の徹底と重要事項説明

住宅販売事業者様は、買主に対して住宅瑕疵担保責任制度や関連保険について、十分に説明する義務があります。特に宅建業法では、既存住宅の売買において、宅建業者が建物状況調査の結果の概要を「重要事項」として説明することが義務付けられています。
説明の際には、以下のポイントに留意し、トラブルを未然に防ぎましょう。
  • 専門用語の平易な説明:
    • 「瑕疵」や「契約不適合責任」「インスペクション」といった専門用語は、お客様には理解しにくい場合があります。図やイラストを交えながら、平易な言葉で具体的に説明することが重要です。
  • 責任範囲と期間の明確化:
    • 売主が負う責任の範囲(構造耐力上主要な部分、雨水の浸入を防止する部分など)と、その期間(新築10年間、既存・リフォームは保険による期間など)を明確に伝えましょう。
  • 保険のメリットの強調:
    • 瑕疵保険が買主にとって、万が一の際の補修費用をカバーする安心材料であることを強調し、その具体的な補償内容(保険期間、保険金額、免責金額など)を丁寧に説明します。
  • 書面による交付と確認:
    • 口頭での説明だけでなく、説明内容を記載した書面を交付し、買主が理解したことを確認することが不可欠です。建物状況調査の結果概要など、重要事項説明書への記載漏れがないよう細心の注意を払いましょう。

保険加入のメリットと適切な手続き

瑕疵保険への加入は、買主への安心提供だけでなく、住宅販売事業者様自身のリスク軽減に直結します。
  • 事業者リスクの軽減:
    • 万が一瑕疵が発生した場合でも、保険金が補修費用に充てられるため、事業者様の自己負担を抑えることができます。事業者の倒産時など、責任が履行できない場合でも、保険法人から住宅取得者へ直接保険金が支払われるため、信頼性維持にも繋がります。
  • スムーズな紛争解決:
    • 瑕疵保険付き住宅は、住宅紛争処理制度の対象となり、弁護士や建築士が関与する裁判外の紛争解決手続きを利用できます。これにより、トラブル発生時の迅速かつ公正な解決が期待でき、訴訟リスクや対応コストの低減に繋がります。
保険加入には、国土交通大臣が指定する「住宅瑕疵担保責任保険法人」(株式会社住宅あんしん保証、住宅保証機構株式会社、株式会社日本住宅保証検査機構、株式会社ハウスジーメン、ハウスプラス住宅保証株式会社の5法人)と契約を締結する必要があります。

適切な手続きのポイントとしては、以下の点が挙げられます。

  • 早めの事業者登録:
    • 住宅省エネ2025キャンペーンのような補助事業を利用する場合、事前に「住宅省エネ支援事業者」への登録が必要です。交付申請や予約の前に登録を完了させましょう。
  • 必要書類の正確な準備:
    • 共同事業実施規約、工事請負契約書、住宅性能を証明する書類、工事写真、本人確認書類など、各申請に必要な書類を正確に準備し、不備がないように確認することが重要です。特に、過去の申請では、納品書の不備や工事前・工事後写真の不備が多く報告されています。
  • 電子申請の活用:
    • 国土交通省の基準日届出システムなど、オンラインでの手続きが可能な場合もありますので、積極的に活用し、手続きの効率化を図りましょう。
  • 情報連携と最新情報の確認:
    • 複数の補助事業を併用する「ワンストップ申請」もリフォームでは可能ですが、条件があるため注意が必要です。また、制度内容は随時更新されるため、国土交通省や各保険法人の最新情報を定期的に確認することが不可欠です。

まとめ

住宅瑕疵担保責任制度は、お客様に「安心」を届けるための重要な基盤です。2020年民法改正による「契約不適合責任」への移行は、売主の責任範囲を広げ、より詳細な契約内容と説明の重要性を高めました。これは住宅販売事業者様にとって、お客様との信頼関係を一層強固にする機会でもあります。
新築住宅の販売では、住宅瑕疵担保履行法に基づく新築かし保険がお客様の購入後の不安を解消し、事業者様の経営リスクを軽減します。また、リフォーム済み中古住宅の販売においては、リフォーム瑕疵保険や既存住宅売買瑕疵保険の活用が、物件の品質を可視化し、お客様に「安心R住宅」のような明確な価値を提供します。
お客様への丁寧な説明と、瑕疵保険の適切な活用は、販売戦略における強力な武器となり、万が一のトラブル発生時にもスムーズな解決に導きます。常に最新の制度情報をキャッチアップし、適切な手続きを怠らないことで、お客様に選ばれる「安心」の住宅販売事業者として、さらなる成長を実現していきましょう。
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