第1回【イベントレポート】 不動産テック協会主催「オフィステック特集」
2024年6月13日に一般社団法人 不動産テック協会主催のビジネスマッチング部会が開催されました。
第21回目の開催となる今回は「オフィステック特集」をテーマに、”オフィス”と”テクノロジー”の融合により成長を続ける企業を代表するパネラー達が、それぞれの視点から不動産業界の課題に向き合い、どのようにその課題にアプローチしているか等を語りました。
谷 健太郎 氏
株式会社アットオフィス 取締役 社長 CEO
https://www.at-office.co.jp/
久保 裕丈 氏
株式会社クラス 代表取締役 社長
https://clas.style/
稲吉 修 氏
株式会社キャリアインデックス 不動産事業部 部長
https://careerindex.co.jp/
不動産テック協会とは
不動産とテクノロジーの融合を促進し、不動産業界の健全な発展と公共福祉の増進に貢献することを目的として、不動産テック業務に関する調査・研究や情報発信、ルールの確立、ビジネス機会を創出するイベントの開催など、さまざまな事業を行っている協会です。
2018年の発足以降、不動産テックカオスマップの公開や様々な情報発信を精力的に行っています。
不動産テックとは?
不動産テック協会では「不動産テック」を次のように定義づけています。
”不動産テック(Prop Tech、ReTech:Real Estate Techとも呼ぶ)とは、不動産×テクノロジーの略であり、テクノロジーの力によって、不動産に関わる業界課題や従来の商習慣を変えようとする価値や仕組みのこと。”
イベント概要「ビジネスマッチング部会」
2022年の初開催依頼、不動産会社と不動産テック企業の情報交換及びビジネスマッチングの場を設けることを目的とし、毎月1回開催されているビジネスマッチング部会。
これまで延べ900名以上が参加する人気のイベントです。第21回目の今回は、「オフィステック特集」というテーマでオフィステックの分野で活躍している3社が登壇されました。各社約10分ずつのプレゼンを行い、その後20分間のパネルディスカッションを実施。
その後の名刺交換会では多くの方々が交流を通して意見交換をされていらっしゃいました。
イノベーションを起こすための3つのルール
会場の入口に用意された軽食とドリンク。参加者は入場と同時に、好きな食べ物やドリンクを選んで席につきます。
「ビジネスマッチング部会」ではイノベーションを起こすためのルールとして次の3つを掲げています。
- 最初からアルコールOK!お酒飲みながら楽しく聞いてください
- 記憶が新しいうちにアンケートに答えてください!
- 積極的に名刺交換を!
全員ドリンクを手に取り「乾杯!」和気あいあいとした雰囲気の中、各社のプレゼンがはじまります。
オフィス仲介事業を中心とした、様々な不動産領域に「挑戦」
株式会社アットオフィス 取締役社長CEO 谷 健太郎 氏
「『はたらく』をつなげる。」をミッションに、オフィスの事業を中心に、内装デザイン・設計施工や物件の選定など仲介事業を展開している。
他にもクリニック仲介事業・家賃保証サービス・起業家向けメディアサイトの運営などにも取り組む。
オフィス仲介事業を中心とした様々な不動産領域に挑戦しており、オフィス移転事業においては累計10,000社以上の支援実績を誇る。
まず始めに登壇されたのは、株式会社アットオフィス 取締役社長CEO 谷 健太郎 氏。
東京・神奈川エリアを中心にオフィスの移転コンサルティング事業を行っている同社のプロダクト「at OFFICE」についてご紹介くださいました。
オフィス・SOHO・レンタルオフィス・シェアオフィスなどの物件の選定 ~ 内装の設計・施工〜 引っ越しまでをワンストップで提供する「at OFFICE」。圧倒的な物件量・情報鮮度・スピードと豊富なネットワークをもって、企業のオフィス移転をサポートしている同社ですが、不動産テックという領域においてどのように活躍し、またどのような課題を感じていらっしゃるのでしょうか。
検索に革命を起こす
それまでオフィスの賃貸情報は不動産会社が独占していました。
「at OFFICE」は、それまで不動産会社だけが持っていた情報をWEBに解放しました。WEB上にオフィス情報を解放することで、競争の原理が働くようになり情報の非対称性をなくしていくことを目指しています。
「at OFFICE」は”テック”よりは”デジタル化”に近いんですね。
それまで紙で管理されていた情報をWEB上に公開する。このデジタル化された状態を継続しているというのが「at OFFICE」のオフィス領域。テックにおける現状と捉えています。
物件情報を公開するには、建物情報と部屋情報を定期的にメンテナンスし続けなければならないのですが、この部屋情報の空き状況についての正確な情報は世の中に公開されていません。空いているのか埋まっているのか、といった情報は現在人海戦術で確認しています。
物件写真においても一棟一棟を回り、撮影をしているため、膨大な時間とコストがかかっているのが「テック」の裏側という実態になります。
これからのオフィスに求められる、生産性の最大化
皆さんもご存じの通り、コロナの外的環境変化でパラダイムシフトが起きました。仕事をする場所という機能しか持っていなかったオフィスが、生産性を高める、コミュニケーションを取って成長していく場へと変化しました。ここで一度、今の日本の現状について考えてみたいと思います。
まず、世界的に見た時、ユニコーン企業(時価総額1億円以上の企業)がスタートアップ企業の中から出てきている中で、日本もそれに追いつくために2022年をスタートアップ元年とする政策が打ち出されています。
にも関わらず、働く場所がそれに適応できていないというのが現状なんです。
スタートアップ企業に求められるものは何なのか?「オフィス」で括っていったら、その課題はなんなのか?
私は、柔軟性・フレキシブルさだと思っています。
では、オフィスにおけるフレキシブルさとは?なにか。
一般的に賃貸借契約には2〜5年といった期間が定められています。そして、ある程度の与信がないと審査に通らない、入居ができないという性質があります。
ところが、スタートアップ企業には与信がないんですね。BS/PLが揃っていない。その状態から急成長する前提で走っているのがスタートアップ企業です。(日本もスタートアップ企業からユニコーン企業を創出しようとしたとき)このままでは対応ができません。
現状の「オフィスの決められた前提」の改革・フレキシブルさを出したサービスというのが世の中に今求められていると思っています。
そういった課題を外側・内側から解決するのが、今回一緒に登壇されている株式会社クラス・株式会社キャリアインデックスのJUST FIT OFFICEだと思っています。
まとめますと、「at OFFICE」が提供する”テック”というのは「検索の機能」。そして、デジタル化が継続しているオフィスという市場環境の中で課題となるのは「フレキシブルさ」です。この後登壇されます2社が提唱するのが「フレキシブルさ」。
これを提供する価値・サービスにぜひこの後着目して聞いてみてください。
業界最大物件数を誇る事業用賃貸オフィス仲介サイトを運営していらっしゃいますが、今回のテーマ「不動産テック特集」にはとても悩まれたそうです。
不動産仲介業の中心でご活躍されていらっしゃっても、どんな企業があったっけ?と悩まれてしまうほど、まだまだ不動産テックが進んでいないのが現状だと語られておりました。
デジタル化からDX化へと世の中は以降しつつありますが、不動産業界はまだまだ、その波に乗れていないのが現状です。「紙」からの脱出を図り、業界を牽引する同社の活躍に期待が高まります。
テクノロジーの力で、最適化空間を提供する
株式会社クラス 代表取締役 社長 久保 裕丈 氏
働く環境も含めて自由に軽やかにしていきたいというところから、「”暮らす”を自由に、軽やかに」とビジョンを掲げ、個人向けEC事業と法人向け家具・家電のサブスクリプションサービスを展開している。
法人事業部ではクライアントごとに異なる課題を最重要ミッションと捉えて最適なプランを提案するなど最適なオフィス作りのサポートを行っている。
谷氏のバトンを受けて、次いで登壇されたのが、株式会社クラス 代表取締役 社長の久保 裕丈 氏。
お酒を飲みながら楽しく!という趣旨のもと、改めて乾杯から講談スタート。同社のサービスについて、現代社会が抱えている環境問題の現状を交えてご紹介くださいました。
家具・家電のサブスクリプションサービスは、一見すると今回のテーマである「オフィステック」とは縁遠い業種のように感じられます。
「テックの話はどうしたの?と心配される方もいるかもしれませんが、後半に向けてテックの話になっていきます!」と語る久保氏。物品のサブスクリプションサービスを成功させるために行っている様々な工夫をお話くださいました。
「耐久消費財(耐久財)の循環型ビジネス」を運営
我々が主として扱っているのはイス・テーブル・プロジェクターなどといった耐久消費財となりますが、これら(耐久消費財)を買って廃棄をしてを繰り返すとコストもかかりますし、温室効果ガスの排出量も増加します。今、世界でみた時の排出量は23億トン。
今後30年弱の間に65%も増えてしまうというデータがあります。これを循環させていくと当然ながら温室効果ガスの排出量、それに係るコストも抑えられます。
我々のサービスは耐久消費財、いわゆるデカくて重いものを所有することなく必要なタイミングで必要な物だけを利用して要らなくなったら返して貰う。そんなサービスを提供していて、これを利用すれば所有して廃棄をするのに比べてCO2の排出量・廃棄物の廃棄量などが4割くらい減らせます。
これからの企業の方々は、物を買って廃棄をするといった耐久消費財との付き合い方が、徐々に所有せずに循環させるといった方向に変わっていくと思います。
我々のビジネスに関して「家具のサブスク・レンタル」と言われることが多いですが、実は家具だけではなく、オフィスに置くような大き目の防音ブースだったり、サウンドソファーと呼ばれるようなオフィス用の什器なども扱っています。ユーザーの人たちに必要なタイミングで必要なものだけを使っていただく。
そして、戻ってきた時には我々のチームで、全部をリバービッシュ・クリーニング・修理をしてまた次のお客様に回していく。循環型のビジネスを主業として行っています。
導入したものの社員の評判がすこぶる悪い。
ほどんど使われていない空間があるといった場合にはどんどん返却・交換をして、空間をアップデートし続けながら理想とする空間が出来上がるまで常にテストを繰り返していくことが可能となります。
成長途上でどんどん人が増え、移転がスピーディ。コロナを経て新しい働き方にチャレンジしたい。
高額な物を博打的に入れて、使えなかったら目も充てられないですから。特殊なものを試したい。ですとか、万博のようなワンタイムで利用して、キャッシュアウトを抑えたい。といった企業の方にご利用いただいています。
”インフラ”を運営する企業
ウチが何屋なのかをひと言で表すと「インフラ屋さん」だと思っています。これだけフレキシビリティの高い・自由度の高い物の使い方。
これを実現するためには極めて複雑なオペレーションやデータの管理をしないといけません。それを実現するためのインフラを運営している企業だとお考えください。
安定したインフラがあって、企業様の様々なユースケースに応じた製品を提供できます。
そして、適切な在庫管理によりこの循環をずっと継続させていく。実は難易度が高いビジネスなんです。
このビジネスを運営して利益を上げていくためには、複雑性の高いKPIを常に適正値の中に保つていう努力が必要です。ただ上げればいいわけではなく、完全にクリーニング・リペアできるよう効率化をはかり、大体5000種類ぐらいの在庫の稼働率・返却率・循環率これも担保しなければいけない。
じゃあ、これを実現していくっていうのがもうまさにこれがDXの力だと思っています。
これを実現するため、KPIを適性値に保つために何をやっているのか。このビジネスを運営するために必要なあらゆるシステムインフラ、配送以外のオペレーションインフラ。これをすべて内製化しています。
「プライシングによる各KPIコントロール」「需要×返却予測=最適発注の自動化」「部品単位かつ個別管理」「ユニークのリペアデータや売上データ管理」このようなデータを使ってKPIのコントロールをしたんです。
我々はこの数千種類ある商品、それらの一個一個に全て異なる料金のプラン設定しています。これらを全部ウィークリーで仕切る。そうすると返却率がコントロールできたり在庫の稼働率がコントロールできたりすると考えているんです。
裏側には当然、価格をどう弄ったらそれらのKPIにどう影響するのかという反応度なんかを分析しています。
これだけのものっていうものを常に適正な稼働率で運営していくためには、発注数量などを自動化して適正化をしていく。
このようなデータインフラが整えて、これだけフレキビリティ高いサービスを運営することができています。
POCスタート間近ではあるんですけれども、セットアップオフィスを運営しているお客様は、この空間の中にたくさんの資産を置かれています。この資産の入替や廃棄など、そういった資産をお預かりして我々がタイムリーに資産管理を行っていく。
お預かりした資産をToC・ToBのお客様にお貸出ししてマネタイズをして、それをまたクライアントに戻しする。
そんなオフィス業界との取り組みというのも、このDX化されたインフラを活用して始めています。
日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しています。今後、企業はこれまで以上に環境を考慮した企業運営が求められます。
同社のビジネスは不動産業界に留まらず、これからの社会に必要なビジネスといえるでしょう。そして、こうしたビジネスを支える徹底したKPI管理は、DX化されたデータインフラが整ってこそだとのことでした。
働き方の自由化が進み、オフィスにも様々なニーズが生まれつつあります。これから益々発展していくこと間違いなしの同社のビジネスから目が離せません。
フレキシブルオフィスと国内スタートアップの話
株式会社キャリアインデックス 不動産事業部部長 稲吉 修 氏
HR領域を祖業に2005年に設立をした株式会社キャリアインデックス。
「もっと便利に」「もっと有意義に」「もっと楽しく」をモットーに求人情報サイトや物件情報サイトの運営、人材採用における支援ツールなど様々な分野で価値・サービスの提供を行っている。
最後に登壇されたのは、株式会社キャリアインデックス 不動産事業部 部長の稲吉 修 氏。
「アルコールが入っていないので、テンションがついていけていなければ仰ってください!」明るいご挨拶から同社で行っているサービスについてご説明くださいました。
転職・採用といった領域でアグリゲーションメディアを運営してきた同社ですが、2022年から不動産業界へメディアという観点から参入。
今回は、「JUST FIT OFFICE」という日本最大級のフレキシブルオフィスのマッチングプラットフォームについて、スタートアップ企業とフレキシブルオフィスの親和性についてお話しくださいました。
国内外のフレキシブルオフィス市場
まず最初に。実はですね、不動産テックカオスマップ右側の真ん中にですね、いるんです。
JUST FIT OFFICE!何をやっているのかというと、シェアオフィスであったり、レンタルオフィスのポータルサイト運営をしております。2019年にスタートして、2021年に賃貸に近いような形でフレキシブルオフィスのプランニングサービスというものを始めてさせていただいております。
もう一つ、仲介会社さん向けにフレキシブルオフィスを検索したりとか、お客様向けに提案できるような資料を生成するというようなデータのプラットフォームを運営。
さらに、「関連メディア・市況レポート」と呼ばれているような、全国フレキシブルオフィスの状況といったものをマーケティングレポートとして不動産会社・デベロッパーの方たちに提供させて頂く、そんなサービスも行っています。
掲載している施設数は、2019年4月末の段階で42施設だったのが2023年12月の時点で1204施設まで増えてきておりまして、外資系ブランドオフィスから国内ブランドオフィスまでかなりの数を掲載させて頂いており、市場からいいまして8割から9割くらいシェアオフィス・レンタルオフィスというものが掲載されているという状況になっております。
仕組みというところでは、月額の掲載より初期費用を含めて無料で掲載をいただいております。そこからお客様も紹介させていただいて、成約に至ったらそこの部分を費用として頂いております。
お客様からしてみれば仲介手数料など全て無料でフレキシブルオフィスを紹介してもらえるという形になっております。
そもそもフレキシブルオフィスって何なの?っという話なのですけれども、利用形態・期間・契約の形態、費用面が非常に柔軟性があるオフィスのことをフレキシブルオフィスと呼んでいます。我々が取り扱い専門で行っているのは、フレキシブルオフィスでして、コアワーキングオフィス、またはバーチャルオフィス・フリーデスクと呼ばれているようなオフィスでして月契約のプランを提供しております。
世界で見た時に、フレキシブルオフィスってどうなの?というところの予測が結構出ており、2023年は347億ドルです
2030年までに967億ドルまで、予測期間中に15.76%のCAGRで成長すると予測されています。特にアジア太平洋内のインド・日本・中国・シンガポールが大幅に伸びる市場として期待されているマーケットでございます。
国内の市場はどうなの?というところですけれども、東京23区内のフレキシブルオフィス数は1,260拠点、床面積は23.9万㎡で23区のオフィスストックの1.8%となっています。
少しスコープを広げて見てみるとアジア太平洋地域全体では23年時点でオフィス総量の4%くらいがフレキシブルオフィスとして提供されている。
シンガポールでは2030年までに10‐15%まで伸びると予測されていることから、東京の1.8%と比較すると相当の幅があるので、まだまだ伸び代は大きいと思っております。
昨年度、我々のシェアオフィスランキング(JUST FIT OFFICE)を発表させて頂きましたが、フレキシブルオフィスの市場のほぼほぼを外資系の企業が占めているというところが現状です。
「アクセスの良さ」「ビルのグレード」「入居後の満足度の高さ」が人気で、ランキングに影響している印象です。
国内スタートアップ✖フレキシブルオフィス
フレキシブルオフィスをどんな方が利用されているのかというと、「現在利用中のオフィスからの移転」という方が多いですけれども「起業」の方もやっぱり多いです。
東京10区では港区、千代田区のオフィスが5割のオフィス登録数を占めている。伸び率でいくと港区がこの3年間で圧倒的に多いです。
2022年11月、政府により「スタートアップ育成5か年計画」が策定され、スタートアップへの投資額を現状の8,000億円から10兆円規模まで引き上げられました。そんな中でビジネス環境といったところは非常に重要視されていますので、そこに貢献できる部分があるんじゃないかと思っております。
「JUST FIT OFFICE」は起業した時にバーチャルオフィスを展開できますし、グローバル企業の登録もありますので、海外進出した時にも沢山紹介できます。
スタートアップとフレキシブルオフィスは相性抜群といったところがありますので、何かあればお声かけ頂ければと思います。
世界的にも、国内的にも活性化しているフレキシブルオフィス市場。政府施策の「スタートアップ育成5か年計画」も追い風となり、今後急速に発展する市場ともいえます。
国内市場では外資系企業がシェアを占めている現状があり、内資系企業がこの先どれほど席巻していくか期待が高まります。
そして市場活性化の一助を担うのが、フレキシブルオフィスのポータルサイトを運営しているJUST FIT OFFCE。圧倒的な掲載施設数はもちろんのこと、特徴や料金を比較したマガジンも充実しています。
これからスタートアップを検討している方、海外進出をされる企業は、ぜひJUST FIT OFFCEで検索してみることをオススメします。
パネルディスカッション
Q1:シェアオフィス事業の今後の需要について
谷氏:個人的な見解になりますが、全体の市場としてはフレキシブルオフィスは先ほどの資料にあったように伸びていくと思うんですけれども、ただシェアオフィスという業態が同じように成長していくかというと、私は懐疑的にみています。なぜならば、シェアオフィスを成立させるための要件が「良いビルに」「莫大な床面積」「内装をつけて」「高く賃料を設定して」貸すということなんです。
一般的な賃貸借契約だと2-5年という期間で制限をかけられるんですけれども、それができないんです。非常に危うさもはらんでいるなと私は思っています。ゆえに、広がるんですけれども勢いは鈍化するんじゃないかなと私は思っています。
稲吉氏:日本市場に関していうと確実に伸びていきます。ここに絶えず参加する企業がいるかというと、どこまで増加するのかというところは懐疑的ではあります。
今、運営する事業者さんも非常に増えてきているので、おそらく3-5年後には淘汰されていくと思います。吸収合併されていって生き残っていくみたいな会社さんがいらっしゃるのかな、と。
司会:ということは、供給量は増えるけれどもユーザーがついてこなかったら事業撤退といった嵐が吹き荒れるといった可能性もあるんじゃないかと。でも供給はされるだろう、と?
稲吉氏:そうですね。シェアオフィスの事業は苦しいところが多いので、クラスさんのサービスとか運輸費用とかが課題になってくるんじゃないかと思います。
Q2:クラスさんのサービスについて
久保氏:ございます。いわゆる普通のスチール家具といったようなものだと思いますが、それらも常にリペアやクリーニングといったノウハウを高めながら循環させて使っています。なので、それなりにお安く、大手の三大家具メーカーさんといわれるようなところと比較しても、それなりのお値段でお貸出しできていると思います。
Q3:家具サブスクの事業特性について
久保氏:このビジネスはすごくハードルが高いんですね。今日、開始する前にPLをはじいてみたんですけれども。単独で、そもそも営業利益150億の資産がいる。さらにその次にキャッシュフローが黒字化になるところまでの必要投資額というのが最低40億円。ベースラインケースでみると60億縁くらい投資をしないと単独での継続は難しい。
シェアオフィスというのは実はすごく体力のいる商売なんです。且つ、KPIの管理というのが同じく難しい商売なんだと思います。なぜかというと、我々が扱っている在庫の稼働率。これの適正範囲が80%前後、90%になると今度は機会損失が生まれて継続収益の成長がなくなります。
70%になった瞬間に保管コストが一気に高ぶれして、なおかつCLからのキャッシュアウトが莫大になってしまう。このたった10%の差でPLのキャッシュフローの構造が大きく変わってしまう。極めて高いセンシビリティがあります。
先ほどお話した、45社、調達額累計で40億。総括累計額で言うと今50億円くらい。もちろん、エクイティファイナンスだけじゃなくて、我々は在庫に対して生産リリースバックをあてるみたいなことをやっています。
なぜ、そんなことをしているのかというと、まず最初に我々は仕入れを行う。キャッシュアウトがどんどん出ていくわけですよね。それに対して、お客様から利用料を頂戴して回収をしていく。キャッシュアウトが早くてキャッシュインが遅いという事業特性があります。在庫を仕入れる時に生産リリースバックという仕組みを取り入れる。
一回、我々が仕入れ、それを金融機関さんに買い取っていただく。その買い取っていただいた金額っていうのをお客様から頂戴した利用料で戻している。これによってキャッシュアウトを補足する。さらに、これに対して売上を早期に回収するためにファクタリングも行っています。
将来債券が確定しているものに対しては、お金を頂戴してそれを返済っていうふうな…。資本政策をとんでもなく、さらにエクイティファイナンスも累計で40億円ぐらい。これだけお金を集めてKPIの管理をゴリゴリやって。あともう一つ、リペアですね。戻ってきたものを完全にクリーニングしてリペアしないといけないんですけど、例えばテーブルとかであればこれがクリーニング工程を40工程くらいに分けて、それぞれの標準時間を何秒と決めて、この工程を改善するともう5秒の時間の短縮ができる。
このような改善をずっと繰り返しています。リファービッシュというのは完全に内製化していたり、配線・配送すら一部内製化していたり、どういうルートで配送すると配送コストが低くなるのかという配車組みまで全部自社でやっていたり。ここまでやって初めてギリギリ黒字が出来始めます。たぶん、(その会社は)そこの読みを違えたんだと思います。
司会:ちなみに在庫って、どこか大きな倉庫の中にどーんって持ってるんですか?
久保氏:坪数でいくと数千坪単位のところを関東だと千葉県、関西では大阪において運用しています。
Q4:ここが変だよ!オフィス市場!!part1
谷氏:仲介の切り口でお話をさせていただきますと、悩ましいことは大きく分けると二つあると思ってます。
ひとつは、物件検索サイトの運営コストが重いというところ。人海戦術なので人件費がすごく乗ってくる。それが非常にシンプルに重い。ここに対するウェブからの集客っていうのをしっかりと飛躍率高く、契約数ではなくて契約金額みたいなものでしっかりと集客したものに対してアウトプットを出していかないと事業的には厳しい。
あとは、同業の会社で仲介手数料無料でやりますっていうようなビジネスがあるんですけれども、無料になると質が下がるんですが、無料には飛びつきたくなるじゃないですか。それは人間の心理だと思うので、やっぱりそういったところを考えなければいけないってのは非常に悩ましい課題だなと思っています。
司会:ちなみに普通の住宅の賃貸でいくと管理会社がオーナーから早く埋めてくれって言われて、空き室を埋めるために自ら物件情報サイトに出稿するじゃないですか。空室を埋めたいからどんどん情報を流通させる。オフィスってそうじゃないんですか?
谷氏:住宅ほどではないかなと思っていますが、掲載してくださいってくる時もあります。
稲吉氏:悩ましいことは、二つ。ひとつは、ウェブのメディアでデジタルリードのサイズ感が大きくなりにくい。(入居人数が)4名以下であれば強いですが、5名以上になってくると非常に弱い。仲介会社にお願いしていますと言う会社が多いですし、フレキシブルさを賃貸で!というとなかなか賃貸ではできないんですね。そこのところが非常に悩ましい。
もう一つはデジタル企業。ずっとデジタルでやってきたがゆえに不動産の実業に弱い。なかなか仲介業界に慣れなくて、どうやったら仲良くなれるのなっていうところを模索しながらやっております。
司会:素朴な疑問なんですけれども、垣根を超えて仲良くなるってことはないんですか?
例えばアットオフィス様に集まったお客様をフレキシブルオフィスの運営会社さんへ仲介するとか。逆にフレキシブルオフィスの運営会社さんに来たお客様に、アットオフィス様が提携している仲介会社に送客して手数料を頂戴するとか。そういう取り組みはされないんですか?
谷氏:丁度いま、業務委託契約書を巻いている感じですね。
司会:お互いの強みを助け合う!ありがとうございます。
久保氏:我々、広く言えば空間事業をやらせて頂いているんですけれども、どういった空間を良しとするのかっていう判断の軸というのが難しいなというところが一つあると思っています。今までは、買い切りというのが前提だったので、とりあえずデザイン会社さんが入って、デザインを提案する。経営者の方がそれにテンション上がってバンっと買っちゃって、結局思ってたのと違う…となったり。そういうのが一般的でした。
我々であれば、そこのPDCAを繰り返せますっ。PDCAを繰り返した先に、空間の生産性だったり、社員の方たちのコミュニケーションの活性度だったり。ゴールの仕様は様々ですが、それを正しく汲み取り、空間との相関というのをどう取るか。ここがまだ難しいなと感じています。得意先となるお客様に対して、定期的なアンケートを全従業員の方にお送りして企業のアーキタイプ、性格診断を行っています。
オフィスに対する従業員の方の考え、経営者の方の考え。それらとオフィスがフィットしているのか。しっかりとしたアンケートは取っていますが、本来であれば先進技術なども組み合わせながら、生産性や業績、エンゲージメントがどう上がっていくのか、空間と結果指標を結びつけていくというのがまだ難しいなと思っています。
Q5:ここが変だよ!オフィス市場!!part2
谷氏:ここが変だよオフィス市場は、敷金高すぎ問題。スタートアップの成長を心から願っているので、キャッシュフローを貯めなきゃいけないという中で敷金が12ヶ月とかで、12ヶ月もいる!?って思います。結局、原状回復とかで使うみたいなことは言うんですけど差し引きしないで一回全額戻してから原状回復として払うみたいなことがおこったりするので・・・不思議。
稲吉氏:オフィス市場というところでいうと我々デジタルリードというところの話をさせて頂くと、国内ではほとんどケースがないんですけれども、我々ウェブブローカーという呼ばれ方をされるのですが、海外のですね特にオーストラリアなんかは3割か4割くらいがウェブブローカーがリードしている市場でして、だけど国内だとほぼいない。
一応ウェブブロッカーとしては我々が一番だと言われてるんですけれども、まだまだ市場が小さいです。ウェブ化というですね。デジタル化。もっと頑張っていっていいと思っています。
久保氏:オフィスを作るという段階で一発勝負が横行しているなと思っているんですよね。オフィスという空間というのが従業員の方だったりとか来店する方に対してどうゆうユーザー体験を与えたいのかっていうインターフェース。これがオフィスだと思っています。
例えばWEBを作るときって当たり前ですけど理想的なUXを実現するためにひたすら改善を繰り返していくじゃないですか。UIに対して。これが何故、全く同じようなことなのに行われていないんだろう。今までずっと行われてきたいないんだろうというのが気持ち悪いなと思っていて、そこを改革していきたいなと思っています。
まとめ
3者の登壇とパネルディスカッション。合わせて1時間のスケジュールでしたが、1時間とは思えない濃厚な情報が満載のイベントでした。「オフィステック」をテーマとしてそれぞれの視点からお話がありましたが、「フレキシブル」という言葉が共通したキーワードだったように思います。
コロナを機にそれまで当たり前だった、仕事とは、オフィスとは、かくあるべきといった固定概念が崩れ、個人も企業も自分らしさ・自分たちらしさを求める傾向が強まってきています。
そのニーズに応える環境・サービスをどれだけ早く提供できるかが、企業成長のカギともいえます。不動産業界においては、まだまだテクノロジーの活用が進んでいない現状ですが、できることから工夫と試行錯誤を繰り返すことで早期に ニーズを掴み業界をリードすることになるでしょう。
不動産テック協会のビジネスマッチング部会では、講演終了後に参加者同士の名刺交換会が開催されます。ここでの交流から生まれる新しいビジネスが、時代を先駆することもあるかもしれません。
ぜひ、不動産テック協会主催のイベントは会員の方はもちろん、非会員の方参加可能となっています(講演内容により異なります)。
ご興味がある方は、ぜひ参加してみてください。
一般社団法人 不動産テック協会
https://retechjapan.org/
株式会社アットオフィス
https://www.at-office.co.jp/
株式会社クラス
https://clas.style/
株式会社キャリアインデックス
https://careerindex.co.jp/