不動産の耐用年数とは?減価償却や建物の価値を決める

投稿日 : 2023年02月16日/更新日 : 2023年06月08日

不動産の耐用年数とは?減価償却や建物の価値を決める!

減価償却資産を評価するときに用いられる指標として、「耐用年数」があります。ひとまとめに耐用年数と言いますが、いったいどのような年数のことなのでしょうか。

ここでは不動産にかかわる耐用年数について詳しく見ていきましょう。

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耐用年数は2種類ある

耐用年数とは、一言でいうと「減価償却資産の残り使用可能期間」のことです。資産相続などをおこなう際に、耐用年数を用いて減価償却資産の資産価値を決定します。この際、資産価値を評価する客観的基準が存在しなければ、相続税の算出などが難しくなってしまいます。

そこで、法によってある種の「耐用年数」の基準が作られています。しかし、このように理論上で決められた「耐用年数」と、私たちが一般的に用いている「耐用年数」の意味合いは少し異なります。

例えば、築50年のアパートを見たときに、物理的にあと30年もつかなと思った際には「このアパートの耐用年数は30年くらいかな」と言います。この例では、アパートの躯体材質が腐食・劣化することによって物理的に耐えられなくなるのが30年後程度だと予想されています。

つまり、例中で用いられている「耐用年数」は、法で定められたものではなく、科学的に、あるいは経験に基づいて算出しているものであるということです。このように、耐用年数と一言で言っても、法律で定められたものと、科学的なものの二つに分けて考えることができます。

減価償却の基準となる法定耐用年数

法定耐用年数とは?

耐用年数は、不動産を含めた減価償却資産の評価に用いられます。相続などの際には資産評価のきちんとした尺度が必要となるため、耐用年数も「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」という省令により定められています。このような耐用年数のことを「法定耐用年数」といいます。

理論上、法定耐用年数は、補修・修繕などの費用が改築費用を上回るまでの期間である「経済的耐用年数」と差異が大きくないことを前提としています。そのため、両者に乖離が見られる場合は法的耐用年数の適用は認められないはずなのですが、そうされていないのが実情です。

法定耐用年数は不動産の構造によって異なる

耐用年数の基準を設定するにあたり、目を付けられたのが建物の構造・材質です。

普通に考えれば材質によって腐食スピードが違うのは目に見えて明らかなので、その感覚を省令にも採用した形となっています。構造(材質)ごとに、法的耐用年数がいったいどのようになっているのか具体的に追っていきましょう。

まずは、RC造、つまり鉄筋コンクリート造りの建築物についてです。RC造の建物は耐用年数が一番長く設定されています。ただし、すべてが同じというわけではなく、用途によって耐用年数が異なります。

代表的なものを耐用年数が長い順から記すと、

  • 事務所(50年)
  • 住宅(47年)
  • 飲食店(41年)
  • ホテル・店舗・病院(39年)
  • 車庫・その他のもの(38年)
  • 公衆浴場・工場(31年)

基本的には、用途による耐用年数の順番は、多少の入れ替わりはありますが、RC造の建築物は、ほぼすべての構造の建築物に適応できます。つまり、事務所用がもっとも長い耐用年数を有しており、公衆浴場や工場などが最も短い耐用年数を有しているということになります。ただし、RC造でも、橋や鉄塔などの公共物はまた別にカテゴライズされています。

それでは、構造の違いによる耐用年数の違いを見ていきましょう。具体的に耐用年数の大きいものから並べてみると、以下のようになります。

  • RC造(47年)
  • れんが造・ブロック造・石造(38年)
  • 金属造で骨格材が4mmより大きい建物(34年)
  • 金属造で骨格材が3mmを超え、4mm以下の建物(27年)
  • 木造・合成樹脂造(22年)
  • 木骨モルタル造(20年)
  • 金属造で骨格材が3mm以下の建物(19年)
  • 簡易建物(10年)

※同じ条件で比較するために住宅用の建物の耐用年数で比較しています。

法定耐用年数を基準とした不動産の減価償却

法定耐用年数について詳しく見てきましたが、これを用いて減価償却をどのように計上するのかを確認しておきましょう。

まず、押さえておくべきは減価償却の計算方法には2通りあるということです。わかりやすいのは資産額を耐用年数で割って計上する方法です。これを定額法と言います。

対して、毎年の資産の価値に一定の割合をかけて計上する方法のことを定率法と言います。具体的には、前年までに償却した値を差し引いて残った資産価値に25%をかけて計上します。

このままでは少しわかりにくいので、簡単な例で考えてみましょう。

取得価値が4000万円で、法的耐用年数が5年の減価償却資産を持っているとします。定額法の場合は、単純に5分割して減価償却するので、初年度から5年目まで減価償却費は800万円で変わりません。

対して、定率法では、初年度は25%の減価償却なので1000万円、2年目の減価償却は残資産の3000万円の25%なので750万円となります。同様に3年目は2250万円の25%なので562万5000円というようになります。

個人事業主の場合、基本的には定額制なのですが、例からもわかるように定率制を採用すると初年度の税負担が軽くなります。ただし、個人事業主が定率制を採用する場合には、減価償却資産の償却方法の届出書を税務署に提出する必要があることに注意しましょう。

不動産の寿命を表す物理的な耐用年数

不動産の寿命を表す物理的な耐用年数

物理的耐用年数とは?

どんなものであっても、年月を経ると躯体、あるいは構成材が劣化してしまいます。ある減価償却資産を、物理的にあとどのくらいの期間用いることができるのかを表したものを「物理的耐用年数」と言います。基本的には、科学的・物理的原因による劣化により要求される限界性能を下回ってしまう状態のことを指します。

法定耐用年数を説明した際に少しだけ触れた「経済的耐用年数」と似た概念ではありますが、違いを押さえておくことが重要です。経済低耐用年数とは簡単に言うと、不動産が資産としていつまで価値を有しているのかということなので、物理的に限界を迎えるまでの期間である物理的耐用年数とは異なります。

科学的・物理的劣化は経済的耐用年数の短縮につながりますが、あくまで一因にすぎません。物理的耐用年数と経済的耐用年数について、相関関係はありますが、明確に異なります。

物理的な耐用年数は維持できる

法令上の耐用年数は決められていますが、必ずしも物理的耐用年数と一致しません。例えば、東大寺の正倉院などは古代に建築された木造建築物ですが、1000年位以上の時を経て現存しています。このことからもわかるように、物理的耐用年数は修繕工事などによって維持・延長させることができるのです。

逆もまた然りで、乱雑に扱われた建築物は法定耐用年数よりも、物理的耐用年数が短くなってしまいます。日本は地震などの自然災害も多く、災害による損害などによっても物理的耐用年数が短くなってしまうことがあります。

不動産売却時の査定額にも大きく影響する

不動産の資産価値は法的には法的耐用年数が影響しますが、売却時の査定は法定耐用年数だけで決まるものではありません。

むしろ、不動産の実際の状態をより正確に反映する物理的耐用年数、あるいは実際の資産価値を反映する経済的耐用年数を重視して査定されることの方が多いと言えます。そのため、不動産を資産目的で保有している場合には、不動産の状態には特に注意を払っておきましょう。

まとめ

耐用年数と一言でまとめても、法定耐用年数と、物理的耐用年数に分けられます。さらに細かく見るのであれば経済的耐用年数も重要です。

行政処理をおこなう場合は法定耐用年数をよく用いますが、不動産の価値を維持するためには物理的耐用年数や、経済的耐用年数が重要になってきます。それぞれどのような場面で用いるのかを押さえて、耐用年数を使いこなしましょう。

この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。