空き家率13.8%の衝撃――令和7年最新データで読み解く住宅販売の未来
投稿日 : 2025年06月05日

2025年3月公表の「令和5年住宅・土地統計調査」(総務省)は、日本の空き家問題が深刻化している現状を明らかにしました。全国の空き家数は過去最多を更新し、空き家率も上昇傾向が続いています。本記事では、令和7年公表の最新データをもとに、空き家率上昇の現状と要因、住宅販売市場への影響、データを活用した再販戦略、そして住宅販売事業者が今後取るべき実践的アクションを、専門的かつ具体的に解説します。
Table of Contents
空き家率上昇の現状と将来予測
最新統計データから見る空き家率の推移
令和5年10月1日現在、全国の空き家数は900万戸、空き家率は13.8%と過去最高を記録しました。前回調査(平成30年)から空き家数は約50万戸増加しています。

引用元:総務省 令和5年住宅・土地統計調査をもとに作成
空き家率
総住宅数に占める空き家の割合です。
都道府県別では、和歌山県(21.2%)、徳島県(21.2%)、山梨県(20.5%)など、地方圏で高い傾向が続いています。
空き家増加の主な要因(人口減少・高齢化・相続)
空き家増加の主因は以下の通りです。
- 人口減少・少子高齢化
- 高齢者世帯の増加や人口減少により、住まなくなる住宅が増えています。
- 相続問題
- 相続した住宅の管理・売却が進まず、空き家化する事例が増加。
- 都市部への人口集中
- 地方から都市部への人口流出で、地方住宅の需要が減少。
相続空き家
相続によって所有者が変わったものの、活用・売却されず空き家となった住宅。

2043年までの空き家率予測と地域差
最新の公的推計によれば、2043年には全国の空き家率が25%前後に達する可能性が指摘されています。今後も地方圏を中心に空き家率の上昇が続く見通しです。

引用元:住宅・土地統計調査 統計表をもとに作成
空き家増加が住宅販売市場に与えるインパクト
需給バランスの変化と価格への影響
空き家増加により、住宅市場の供給過多が進行しています。特に地方圏では、売却希望物件が増加し、需要とのギャップが拡大。これにより中古住宅の価格下落圧力が強まり、売却期間の長期化も顕著です。
需給バランス
市場における供給量と需要量の関係です。

売却物件の増加と競争激化
空き家増加に伴い、売却希望物件が急増。住宅販売事業者間の競争が激化し、従来の販売手法だけでは成約率の維持が難しくなっています。築年数が古い物件やリフォームが必要な物件は、特に買い手から敬遠される傾向が強まっています。
成約率
販売活動を行った物件のうち、売買契約が成立した割合。
地域経済・生活環境への影響
空き家の増加は、防災・防犯性の低下、ごみの不法投棄、景観悪化など、地域社会にも大きな影響を及ぼします。国や自治体は、空き家の適切な管理・活用を地域経済の活性化や住環境維持の観点からも重視しています。

データ活用による再販戦略の立案方法
空き家データの収集と分析ポイント
住宅販売事業者が再販戦略を立案する上で、公的機関の空き家データ活用は不可欠です。
主なデータソースは、総務省「住宅・土地統計調査」や自治体の空き家バンク情報など。
主なデータソースは、総務省「住宅・土地統計調査」や自治体の空き家バンク情報など。
■分析ポイント
- 地域別・築年数別の空き家分布
- 空き家の種類(賃貸用、売却用、その他)
- 空き家の状態(老朽度、管理状況)

ターゲット層の選定とニーズ把握
データ分析を通じて、ターゲット層(例:若年層・移住希望者・投資家など)の選定とニーズ把握が可能です。
地方の空き家は移住希望者やリノベ志向層向け、都市部は投資用・セカンドハウス需要など、エリア特性に応じた訴求が重要です。
地方の空き家は移住希望者やリノベ志向層向け、都市部は投資用・セカンドハウス需要など、エリア特性に応じた訴求が重要です。
ターゲット層
販売戦略上で重点的にアプローチすべき顧客層。
差別化できるリノベーション・リフォーム提案
築年数が経過した空き家は、リノベーションやリフォームによる価値向上が有効です。
地域ニーズやターゲット層に合わせた間取り変更、省エネ設備導入、デザイン性向上など、差別化ポイントを明確にすることで競合物件との差別化が図れます。
地域ニーズやターゲット層に合わせた間取り変更、省エネ設備導入、デザイン性向上など、差別化ポイントを明確にすることで競合物件との差別化が図れます。

住宅販売事業者が取るべきアクション
法改正・税制変更への対応
2023年12月施行の「空家等対策特別措置法」改正で、管理不十分な空き家は固定資産税の優遇対象外となりました。住宅販売事業者は、法改正や税制変更の最新動向を把握し、空き家所有者への情報提供や管理指導を強化する必要があります。
参考:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」
参考:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」
空家等対策特別措置法
空き家の適切な管理・活用を促進するための法律。
地域連携・官民協働の事例
自治体やNPOと連携し、空き家バンクやリノベ補助金制度を活用した再販事例が増加。地域課題の解決とビジネスの両立を目指し、官民協働による空き家再生プロジェクトが全国で進行中です。

今後の市場変化に備える組織戦略
今後の市場変化に備え、データ活用人材の育成やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進、新規事業モデルの構築が求められます。空き家再生を軸とした新たな収益源の確立や、持続可能な住宅流通モデルへの転換が重要です。
まとめ
令和7年公表の「住宅・土地統計調査」によれば、日本の空き家数は900万戸、空き家率は13.8%と過去最高を更新しました。人口減少・高齢化・相続問題など複合的な要因により、今後も空き家率の上昇が予想されます。住宅販売市場では供給過多による価格下落や競争激化が進み、事業者にはデータを活用したターゲット戦略やリノベーション提案が求められます。
法改正や地域連携の動向も踏まえ、柔軟かつ実践的な再販戦略を構築することが、今後の競争力と持続的成長のカギとなります。最新データの積極的な活用と市場変化への迅速な対応を通じて、住宅流通の新たな価値創造を目指しましょう。