実家の売却でつまずかない!遺産分割から新居購入までのロードマップ

投稿日 : 2025年06月09日
実家を相続した後の売却と新居購入は、多くの方にとって人生で数回あるかないかの重要な決断です。2024年4月からの相続登記義務化により、相続不動産の手続きが一層注目されています。最高裁判所司法統計によると、令和5年の遺産分割事件は16,687件(参考:令和5年 司法統計年報(家事編))と高止まり状態が続いており、適切な準備なしに進めると思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。
また、住宅金融支援機構の調査では、2024年4月〜9月に住宅ローンを利用した方の77.4%が変動金利を選択(参考:住宅ローン利用者実態調査2024年10月するなど、住宅購入環境も変化しています。
この記事では、遺産分割から実家売却、そして新居購入まで一連の流れを理解し、スムーズな住み替えを実現するための実務ポイントを詳しく解説します。

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相続した実家、売却前に確認すべき「遺産分割」の落とし穴

遺産分割協議の前に確認すべきこと

実家の売却を検討する前に、まず遺産分割協議を適切に進める必要があります。相続が開始したら、まず相続人の確定と遺産調査が欠かせません。
相続人の確定は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を収集し、すべての法定相続人を漏れなく把握することから始まります。この際、認知した子どもや養子、前妻・前夫との間の子どもなど、思わぬ相続人が判明するケースも少なくありません。
遺産調査では、不動産だけでなく預貯金、株式、債務なども含めて包括的に調査します。国税庁の令和4年相続税申告状況によると、相続財産総額に占める土地の割合は32.3%(7兆0,688億円)、家屋は5.1%(1兆1,092億円)となっており(参考:国税庁_令和4年分 相続税の申告事績の概要、不動産が相続財産の大きな部分を占めることがわかります。
相続人確定から遺産調査までのフローチャート

共有名義の不動産を売却する際の注意点

遺産分割協議がまとまらない場合、不動産は相続人全員の共有名義となります。しかし、共有名義の不動産売却には大きなリスクが潜んでいます。
共有名義のリスクとして、売却には共有者全員の同意が必要であり、一人でも反対すれば売却できません。また、時間の経過とともに相続人が増加し、話し合いがより複雑になる可能性があります。国土交通省の資料によると、相続登記をしないまま放置すると「手続きがどんどん複雑になり、相続人がどんどん増えて話し合いがうまく進まない」状況に陥ると警告しています(参考:相続登記義務化リーフレット
売却時の実務対応では、共有者全員が売買契約書に署名・押印し、決済時も全員が立ち会う必要があります。遠方居住者や高齢者がいる場合は、代理人の選任や委任状の準備も必要です。

売却がスムーズに進まないケースとその回避策

売却が難航する主なケースとその対策を整理すると:

ケース1:相続人間の意見不一致

  • 売却価格への不満
  • 売却時期の意見対立
  • 売却代金の分配方法への異議

回避策: 早期の専門家(司法書士、税理士、不動産鑑定士)への相談と、客観的な価格査定の実施

ケース2:所在不明・連絡困難な相続人の存在

  • 長期間音信不通の親族
  • 海外居住の相続人

回避策: 家庭裁判所への不在者財産管理人選任申立てを検討

ケース3:相続人の判断能力の問題

  • 認知症による判断能力低下
  • 精神的疾患

回避策: 成年後見人等の選任申立て

不動産登記は売却の要!相続登記をスムーズに進めるポイント

相続登記の手続きと必要書類(新義務化に対応)

2024年4月1日から相続登記が義務化され、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記申請しないと、10万円以下の過料が科される可能性があります(参考:東京法務局

相続登記の基本的な流れ:

  1. 登記事項証明書の取得:現在の登記状況を確認
  2. 必要書類の収集:
    • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
    • 相続人全員の戸籍謄本
    • 相続人全員の印鑑証明書
    • 遺産分割協議書(遺産分割協議を行った場合)
    • 不動産の固定資産評価証明書 など
  3. 登記申請書の作成:法務局指定の様式に従って作成
  4. 登記申請:管轄法務局への提出(窓口・郵送・オンライン)

登録免許税は、固定資産評価額の0.4%が基本ですが、2027年3月31日まで土地については免税措置が適用される場合があります。(参考:法務局

相続登記手続きの全体フロー

自分でやる?専門家に依頼する?メリット・デメリット

自分で行う場合:

メリット:

  • 費用を抑えられる(登録免許税のみ)
  • 手続きを通じて相続への理解が深まる

デメリット:

  • 書類収集・作成に時間と労力が必要
  • 法的知識不足によるミスのリスク
  • 複雑なケースでは対応困難

専門家に依頼する場合:

メリット:

  • 確実・迅速な手続き
  • 他の相続手続きも一括対応可能
  • 売却に向けた総合的なアドバイス

デメリット:

  • 司法書士報酬(8~15万円程度)が必要

迅速な登記が売却に与える影響

登記の遅延は売却スケジュールに直接影響します。

売却への影響:

  • 登記完了まで売却契約締結不可
  • 買主の住宅ローン審査に登記事項証明書が必要
  • 決済時に最新の登記事項証明書が求められる

一般的な傾向として、住宅購入は大きな買い物であるため住宅ローン利用者の購入検討期間は平均して数ヶ月から1年程度といわれています。登記の遅延により良い購入希望者を逃すリスクがあります。

遺産分割〜実家売却~新居購入まで!弊社が伴走する安心の住み替えプラン

「実家を売却したいけれど何から始めれば…」という方向けのステップ

STEP1:現状把握と方針決定(1~2ヶ月)

  • 相続人・相続財産の確定
  • 不動産の市場価値査定
  • 売却・新居購入の希望条件整理

STEP2:遺産分割協議と登記手続き(2~3ヶ月)

  • 遺産分割協議書の作成
  • 相続登記の申請・完了
  • 売却準備(必要に応じてリフォーム・清掃)

STEP3:売却活動(3~6ヶ月)

  • 販売価格の決定
  • 販売活動の開始
  • 購入申込みの検討・契約

STEP4:新居購入準備(売却活動と並行)

  • 資金計画の策定
  • 物件探し
  • 住宅ローン事前審査

STEP5:決済・引渡し・新居取得(1~2ヶ月)

  • 売却代金受領
  • 新居購入契約・決済
  • 引越し・入居

売却と購入のタイミングを合わせた資金計画のアドバイス

住み替えパターン別の資金計画:

パターン1:売却先行型

  • メリット:売却代金を新居購入に充当可能、資金計画が明確
  • デメリット:仮住まいが必要な場合がある

パターン2:購入先行型

  • メリット:ゆっくり新居を探せる、仮住まい不要
  • デメリット:つなぎ融資や自己資金が多く必要

パターン3:同時進行型

  • メリット:仮住まい不要、効率的
  • デメリット:スケジュール調整が複雑

住宅金融支援機構の調査では、ペアローンの利用者が26.4%、収入合算の利用者が12.6%となっており(参考:住宅金融支援機構_住宅ローン利用者実態調査、世帯年収を向上させて購入予算を確保する手法も一般的になっています。

専門家との連携で実現するスムーズな住み替え

実家の売却と新居購入を同時に進めることは、相続、税務、登記、そして不動産の売買と、多岐にわたる専門知識を要する複雑なプロセスです。お客様がこれらの手続きで迷うことのないよう、各分野の専門家や企業との連携が重要視されています。

一般的に、お客様の住み替えを強力にバックアップするためには、以下のような専門家との連携が考えられます。

  • 法務の専門家(司法書士・弁護士):
    • 相続登記の手続きや複雑な遺産分割協議書の作成をサポートします。相続登記義務化への対応も、彼らの専門知識があればご安心いただけます。
  • 税務の専門家(税理士):
    • 実家売却にかかる譲渡所得税や相続税に関するご相談、税額シミュレーション、申告のアドバイスを提供します。
  • 金融の専門家(金融機関・ファイナンシャルプランナー):
    • お客様の状況に合わせた最適な住宅ローンを提案し、売却先行・購入先行など、住み替えパターンに応じた資金計画の相談や、つなぎ融資の活用についてもサポートします。
  • 不動産売買の専門家(不動産会社):
    • 豊富な市場データと経験に基づき、適正な実家売却価格を査定。効果的な販売戦略を立案し、早期の売却成立を目指します。また、お客様のライフスタイルやご希望に沿った新居物件を厳選してご紹介し、購入交渉から契約までをきめ細やかに支援します。

このように、相続不動産に関するお悩みから新居探し、資金計画まで、住まいに関するあらゆるご相談に、それぞれの専門家が連携して総合的にサポートすることで、お客様はスムーズに新生活へと移行できるでしょう。

まとめ

実家の相続から売却、新居購入まで一連の手続きは複雑で、2024年4月からの相続登記義務化により、より計画的な対応が求められるようになりました。遺産分割協議では相続人全員の合意形成が重要であり、共有名義での売却リスクを避けるためにも早期の話し合いが不可欠です。相続登記は3年以内の完了が義務となり、これを怠ると10万円以下の過料が科される可能性があります。
売却と新居購入の成功には、適切なタイミング調整と資金計画が欠かせません。住宅ローン利用者の77.4%が変動金利を選択している現在の市場環境を踏まえ、金利動向も含めた総合的な検討が必要です。また、遺産分割事件が年間16,687件と高止まりしている現状からも、専門家による早期のサポートが重要であることがわかります。
このような複雑な住み替えを成功させるためには、お客様自身が各手続きのポイントを理解するだけでなく、法務、税務、金融、そして不動産売買の各分野の専門家と連携することが極めて重要です。それぞれの専門家が持つ知識と経験を活かし、適切なアドバイスとサポートを得ることで、トラブルを未然に防ぎ、安心して理想の住まいへと移行できるでしょう。
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