【必読】2027年適用へ!GX ZEHが変える住宅市場 従来のZEHとの決定的な違いを徹底解説

投稿日 : 2025年10月07日
2025年9月26日、経済産業省は、住宅の新しい省エネルギー基準となる「GX ZEH(ジーエックス・ゼッチ)」および集合住宅向けの「GX ZEH-M」を新たに定義したと発表しました。これは、2050年カーボンニュートラル実現に向け、住宅部門の取り組みを加速させる重要な一手です。
新基準では、従来のZEH基準から断熱性能が格段に引き上げられ、蓄電池などの設備導入が事実上必須化されます。
この転換期の情報把握に遅れれば、法制度への対応遅延により、顧客に提供する住宅の競争力は即座に失われます。この大きな市場の変化にいち早く対応し、優位性を確保するため、本記事では新基準の内容について徹底的に解説します。
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GX ZEHとは何か?

GX ZEH(ジーエックス・ゼッチ)は、2050年カーボンニュートラルという国の目標を達成するために、従来のZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の定義を厳しく見直した新しい高性能住宅です。
具体的には、高断熱な建材と非常に効率の良い設備を導入し、さらに太陽光発電などの再生可能エネルギーを活用することで、住宅が一年間に消費するエネルギーを実質的にゼロ、あるいはそれ以下にすることを目指します。

GX ZEHのポイント4

定義名称の変更

名称が「GX ZEH」および「GX ZEH-M」に!

ポイント2 省エネルギー性能の大幅な引き上げ

「外皮性能」と「一次エネルギー消費量削減率」の要件が大幅に引き上げ

ポイント3 戸建住宅 設備要件の必須化

更なるゼロ・エネルギー化と自家消費拡大を促進するため設備導入が必須要件に追加

ポイント4 集合住宅 Orientedの適用条件の見直し

再生可能エネルギー設備の設置が必須ではない「Oriented」の適用条件も見直しに

定義名称の変更

ZEH(ゼッチ)から GX ZEH (ジーエックス・ゼッチ)へ

「ZEH」「ZEH-M」が改称され「GX ZEH」と「GX ZEH-M」になります。定義そのものが見直され、より高性能な住宅を目指すことになったからです。新しい名称に採用された「GX」はGreen Transformation(グリーン・トランスフォーメーション)を意味し、現行の名称(ZEH・ZEH-M)を踏襲しつつ、定義が変更されたことによる違いを明確に識別するという目的で選定されました。

日本はエネルギー目標を達成したい

この名称・定義見直しの背景には、日本が掲げる環境・エネルギー政策の大きな目標があります。
■2050年までにCO2をゼロにする
日本は、地球温暖化を防ぐために、2050年までに、国全体で二酸化炭素(CO2)の排出を実質ゼロにするという目標(カーボンニュートラル/CN)を掲げています。家庭からのCO2排出量は国内全体の約15%を占めており、目標達成のためには工場や車だけでなく家を「究極の省エネ住宅」に変えていくことで家庭で使うエネルギーの削減していく必要があります。
■2030年には次のステップへ
国は目標達成への次のステップとして2030年度には新しく建てる住宅すべてに対して、現行のZEH基準の水準を「最低限の義務」とする方針です。ZEHはこれまでも省エネ住宅の牽引役でしたが、2030年以降はZEHレベルの省エネ性能が「当たり前」の基準になります。だからこそ、ZEH基準を大きく上回る高いレベルの目標を設定し、「より高い省エネルギー性能」と「ゼロ・エネルギー化の推進」を普及することが期待されています。
目標年 対象 目標水準 ZEHの役割
2050年 住宅のストック平均 ZEH基準の水準の省エネルギー性能の確保 2050年目標達成を牽引する
2030年度以降 新築される住宅・建築物 ZEH基準の水準の省エネルギー性能の確保 ZEH水準が義務化されるため、ZEHはさらに高い水準を掲げる必要がある

「GX ZEH」シリーズ

「GX ZEHシリーズ」という表記は、GX ZEH+、Nearly GX ZEH、GX ZEH Oriented(戸建)を含めた広い概念を表します。「GX ZEHシリーズ」は、再生可能エネルギー(再エネ)を含めた年間の一次エネルギー消費量の削減率に応じて、細かく分類されています。
シリーズ名 再エネを含む一次エネ削減率 意味合い
GX ZEH+ / GX ZEH-M+ 115%以上削減 年間の一次エネルギー消費量がマイナスとなる住宅(従来のZEH+を超える水準)
GX ZEH / GX ZEH-M 100%以上 115%未満削減 年間の一次エネルギー消費量の収支が正味ゼロまたはマイナスとなる住宅
Nearly GX ZEH / Nearly GX ZEH-M 75%以上 100%未満削減 ゼロに近づけた先進住宅
GX ZEH-M Ready (集合住宅のみ) 50%以上 75%未満削減 エネルギー消費量を半分以下とした先進住宅
GX ZEH Oriented / GX ZEH-M Oriented 再エネ導入は必須ではない 断熱性能は高いが、立地条件により再エネ導入が難しい場合に適用

省エネルギー性能の大幅な引き上げ

新しい「GX ZEH」「GX ZEH-M」の定義において、「外皮性能」と「一次エネルギー消費量削減率」の要件が大幅に引き上げられました。

「外皮性能」の引き上げ

家を暖かく快適に保つために最も重要なのが「外皮性能(がいひせいのう)」です。外皮とは、建物の外側、つまり壁、窓、屋根、床など、外の空気と接している部分のことを指します。
強化された要件:「断熱等性能等級6」の達成
新しい「GX ZEH」シリーズでは戸建・集合住宅ともに、外皮性能について「断熱等性能等級6」という基準を満たすことが必須になりました。従来のZEH(断熱等級5)よりもさらに高い断熱レベルです。
断熱性能が上がれば、夏は涼しく、冬は暖かく過ごすことができ、冷暖房を使う量が大幅に減ります。徹底した省エネルギーを推進することが出来るようになります。

一次エネルギー消費量削減率の引き上げ

「一次エネルギー消費量削減率」とは、家で使うエネルギー(電気、ガスなど)の量を、国が定めた基準の家と比べてどれだけ減らせたかを示す割合です。この数字が大きいほど、省エネ性能が高いことになります。
強化された要件:エネルギーの削減率35%以上
「GX ZEH」シリーズは戸建・集合住宅ともに再生可能エネルギー(太陽光発電など)を除いた、暖冷房、換気、給湯、照明などで使うエネルギーの削減率を、35%以上にすることが必須になりました。従来のZEHの基準が20%以上の削減率であったため、大幅な引き上げです。
高性能な設備を導入することで、断熱だけでは補えない、日々のエネルギー消費を最小限に抑えることができるようになります。

省エネルギー性能の定義比較

現行「ZEH」の定義 新「GX ZEH」の定義
戸建 集合 戸建 集合
断熱性能 断熱等級 断熱等級5 断熱等級5 断熱等級6 断熱等級6※
一次エネルギー消費量削減率(省エネのみ) 20% 20% 35% 35%
集合住宅の特別ルール:「断熱等級6」の例外規定
高性能な集合住宅である「GX ZEH-M」には断熱性能について「期間限定の特別ルール」が設けられています。
新しい「GX ZEH-M」では、家全体を「断熱等級6」にすることが求められています。しかし、集合住宅の場合、角住戸などは建物の外側(外気)に接している面が多く熱効率が悪いという特徴があります。そのため、角住戸(天井、床、壁、窓といった外気に接している面が3面以上ある部屋は最長2030年までという期間限定の特例として断熱等級5以上であれば良いと認めています。ただし、この例外措置には2つの条件があります。
  1. 全住戸の外皮平均熱貫流率(UA値)の平均値が断熱等性能等級6の基準値を満たすこと
    • いくつかの部屋(角住戸など)で等級5に緩和したとしても、マンション全体の断熱性能を示す平均値は、目標である「等級6の基準値」を下回ってはいけない
  2. 全住戸の外皮平均熱貫流率(UA値)の平均値は各住戸の面積を考慮した加重平均値とする
    • 面積の広い部屋こそ、必ず高い断熱性能(等級6)をクリアして、全体の平均を引き上げなければならない
また、販売主は、その部屋が断熱等級6を満たしていないことを必ず説明しなければならないと決められています。

戸建住宅 設備要件の必須化

戸建て住宅「GX ZEH」「GX ZEH+」「Nearly GX ZEH」において、2050年のカーボンニュートラル目標の達成を牽引するため従来のZEHよりも高い水準の省エネルギー性能に加え、エネルギーの「自給自足」を強く推進するために設備導入が必須要件に追加されました。
家で使うエネルギーを、できるだけ自分で作り、自分で賢く使う。「更なるゼロ・エネルギー化」を促進する新しいルールです。

高度エネルギーマネジメント

高度エネルギーマネジメントは、家全体のエネルギーを賢く管理・制御するためのシステムです。
  1. 見える化(データ把握)
    • 太陽光発電(ソーラーパネル)で今どれくらい電気を作っているかや、家中のエアコン、給湯器、照明などが今どれくらい電気を使っているかを常に計測し把握する
  2. 賢い制御
    • データに基づいて、冷暖房や給湯設備などの家電を最適なタイミングで動かすようにコントロールする
  3. 蓄電池の管理
    • 「蓄電池」の電気を、いつ充電し、いつ家で使うかをコントロールする役割も担う(GX ZEH Orientedを除く)
高性能な家電を導入するだけでなく、発電した電気を最大限無駄なく自家で消費し、家全体として最も効率の良い使い方をするように促します。将来、電力会社からの要請に応じて一時的に電力消費を減らすこと(ディマンドレスポンス: DR)にも貢献する仕組みです。
項目 内容 備考
対象 戸建住宅 GX ZEHの導入が必須要件とされます。
必須要件 エネルギー計測・制御装置の導入 HEMS(Home Energy Management System)などがこれに該当します。
求められる機能 1. 再生可能エネルギー発電量等の把握 太陽光発電などの発電量を計測し、把握できること。
2. 住宅内設備の制御 計測情報に基づき、冷暖房設備や給湯設備などを統合的に制御できること。
※ ただし、再生可能エネルギーの導入が必須ではない「GX ZEH Oriented」は除く。
3. 蓄電池の充放電制御 蓄電池の充電量・放電量を制御できること。
導入の役割 省エネ・自家消費の促進 発電量やエネルギー使用量を把握し、統合制御により効率を高めます。
ディマンドレスポンス(DR)への貢献 将来的に電力系統の要請(DR)に応じるための基礎機能となります。

定置用蓄電池

発電した電力を貯めるためのバッテリーの設置が必須となります。ただし、太陽光発電設備(再生可能エネルギー)を導入しない場合は、蓄電池の設置も必須ではありません。
  1. 自家消費の促進
    • 太陽光発電は昼間に電気をたくさん作るため、蓄電池の導入は、昼間に発電した電気を貯蔵し、夜間や発電できない時間帯に自家で消費することを可能にする
  2. エネルギー自給率の向上
    • 自家消費を促すことにより、電力会社から購入する電力量が減り、家で使うエネルギーの自給自足が進行する
  3. レジリエンス(災害への強さ)
    • 災害などによる停電時、蓄電池に貯蔵された電力を使用することで、自宅のレジリエンス(回復力や強さ)が高まる(GX ZEHの定義要件としてではなく、国民のくらしにおけるエネルギーの自立化による効果として言及)
国は、エネルギー自立の観点から、太陽光発電で得た電気を全て電力会社に売る「全量買取」ではなく、余った電気を売る「余剰電力の買取」を進めるべきだとしています。
項目 内容 補足・例外
対象となる住宅 GX ZEH+、GX ZEH、Nearly GX ZEH となる戸建住宅 上記のグレードを目指す場合、原則として導入が必須となります。
必須要件の水準 初期実効容量が 5kWh以上 これは、現行のZEH+(令和7年度から)に求められる水準と同じです。
導入の例外 再生可能エネルギーの導入がない場合 例えば、日照条件が悪く太陽光発電を導入しない場合は、蓄電池の設置は求められません。
導入の主な役割 1. 自家消費の促進とエネルギー自給率の向上 再生可能エネルギー(主に太陽光発電)で発電した電力を貯め、夜間などに使うことで、電力会社からの購入を減らします。
2. 将来的なDR(デマンドレスポンス)への対応 電力需要の逼迫時に充放電を制御するDRへの貢献に必要な機能を充足できるか、今後見直しが検討されます。
また、必須要件ではないものの、EV充電/充放電設備(V2H設備)についても、敷地内に駐車スペースがある戸建住宅では、将来的なEV保有を妨げないよう、導入検討に必要な情報を建築主に対して説明することが推奨事項として追加されています。これにより、EVを「走る蓄電池」として活用し、更なる自家消費拡大とレジリエンス(災害対応力)の向上を促すことが意図されています。

戸建住宅 設備要件の定義比較

現行「ZEH」の定義 新「GX ZEH」の定義
戸建 戸建
設備要件 ①高度エネマネ
②蓄電池
※(太陽光発電設備ありの場合)

集合住宅 Orientedの適用条件の見直し

従来の「ZEH」「ZEH-M」シリーズには、高い省エネ性能は満たすものの、立地制約などで再エネ設置が難しい場合に認められる「Oriented」という区分がありました。
特に集合住宅(ZEH-M)では、太陽光パネルを設置できるはずの低層・中層でも「Oriented」認定が増加しました。
国が目指すのは、「ZEH」より高い「GX ZEH」水準(断熱等級6)の普及と、脱炭素への移行です。そのため、再エネ導入が必須ではない「Oriented」が、この高い目標と整合するよう、地域性や建物特性を考慮した適用条件の見直しが必要となりました。これが今回の見直しの背景です。

新しい「特例」が認められる条件

「GX ZEH-M Oriented」では、以下のどちらかの特別な事情がある場合に限り認められます。
多雪地域に建っている場合
雪が多い地域では、屋根に太陽光パネルを置くと、雪の重さや、雪が落ちてくるときの危険性(落雪リスク)があるため、一律に設置を義務付けるのは困難となります。そのため、垂直積雪量が100cm以上と、法律で定められた多雪地域の場合は、特例対象となります。
高層マンションである場合
低層や中層のマンションに比べて、高層マンションでは、屋根の面積が、建物の総面積に対して小さくなります。住宅として使われる部分が6階以上の比較的高い高層マンションでは十分な量の太陽光パネルを設置することが困難となるため、特例対象となります。
この見直しにより、低層・中層の集合住宅で太陽光発電などの再生可能エネルギーを導入しない場合は、原則としてGX ZEHシリーズの認定を受けられなくなります。

集合住宅 Orientedの適用条件の定義比較

現行「ZEH」の定義 新「GX ZEH」の定義
集合 集合
地域性・建物特性
(Oriented適用条件)
(条件なし) 多雪地域
6階以上
GX ZEH-M Orientedは再生可能エネルギーの設置が必須ではありませんが、Orientedが認められる場合であっても、建築士は建築主に対して個々の住宅の立地環境や建物の形状などの諸条件を考慮した上で、再生可能エネルギー(例えば太陽光発電設備)の種類や規模について、導入検討に必要な情報の説明を行い、再生可能エネルギー設置の検討を促すことが推奨事項として追加されています。

導入スケジュール

新しいGX ZEH定義に基づく新規認証は、2027年度から開始される予定です。 なお、現行定義(ZEH/ZEH-M)の新規認証は2027年度まで可能ですが、2028年4月以降も、2028年3月までに建設された住宅を改修する場合は、現行定義での新規取得が可能です。

引用元:経済産業省「更なる省エネ・非化石転換・DRの促進に向けた政策について

まとめ

2025年9月に定義された「GX ZEH」および集合住宅向けの「GX ZEH-M」は、2050年カーボンニュートラル達成に向けた住宅政策の目標達成のための新しい指針であり、住宅市場の競争軸を塗り替えます。
この新基準の核は、「ZEH水準(等級5)が2030年には最低限の義務になる」ことを見据えた、抜本的な性能の底上げです。

必須対応の3大ポイント

  1. 究極の省エネ:断熱性能は断熱等級6、一次エネ削減率は35%以上を必須化
  2. 自家消費の義務化:戸建ではHEMSと蓄電池(5kWh以上)の導入が事実上必須に
  3. 再エネ設置の原則化:集合住宅の「Oriented」特例を「多雪地域」と「6階以上の高層」に限定。低・中層マンションでの太陽光発電導入が原則必須
2027年度から新規認証が開始されます。この転換期に迅速に対応できなければ、お客様に提供できる商品の競争優位性を維持できません。新基準を「高性能化への成長機会」と捉え、ぜひ事業戦略へ反映させてください。
┃参考:経済産業省「GX ZEH・GX ZEH-M定義 <戸建住宅・集合住宅>
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